僕が警備員を辞めた理由

新年度に入り、４月半ばに予定されている入札が迫ってきました。
守衛室から正規職員が廃止され新しく来た嘱託職員も困惑気味です。

突然決まった入札ですから、これまでのシナリオは通用しないのか。
随意契約が主流だった当時単年契約の委託物件は珍しかったようです。

O隊員曰くこんな何でもありなら隊員ごと警備会社を身売りすればよい。
別途経営者を決めて隊員は同じで制服だけ変わればよい、と語る。

こんな発言が出てくる背景からして、余程イレギュラーな入札だった
のでしょう。本気で言っているとは思えませんでしたが・・・

ついに市役所警備入札の日がやってきました。当然業務は遂行中。
A社K部長が慌ただしく市役所入札室へ入って行きました。

旗振りに行かされるなら辞表を出す、と多くの隊員は思っていた
でしょう。僕は決まってから考えればよいとのんきにしてました。

入札が終わり、K部長が渋い顔で戻ってきました。万事休すか？
すると落札したとの事。とりあえず一年首がつながったようです。

しかし、今後管財課から要求の人事を遂行しなければなりません。
除外される事が当確のZ隊長は知らずに喜んでいたようでした。

とりあえず一年間我々の首がつながったようです。Z隊長に代わり
台頭してきたO隊員はノートに「至誠、天に通づ」と書きました。

一方、水道局側も含め正規職員を廃止し嘱託のみとした守衛さんたち。
警備業者も決まり新年度の体制始動といったところでしょうか。

管財課守衛責任者M氏は戸籍受付の課に異動になりましたが、時々
守衛室にやってきました。影響は残したかったのでしょう。

そして、我々警備隊の機構改革も始めなければなりません。
まずは、問題のZ隊長の更迭が迫っていました。

Z隊長を更迭することでA社は動いていました。しかし以前
管財課守衛責任者M氏は僕を隊長に推していましたが・・・

入札から約一週間後、Y課長が市役所にやってきました。
そして、Z隊長の後任に台頭してきたO隊員を指名したのです。

T副隊長はそのまま留任となりました。Y課長はこの人事について
僕を近くに呼び、管財課から君を隊長にとの声はあったのだが・・・

「（隊長としては）まだ若いからね」それは当然。しかし以前交通誘導
で「まだ若いだろう」とコキ使っていたのに矛盾してませんか？

若手N隊員の失敗談。土日閉庁時に玄関自動ドアの修理を
することになりました。作業開始と終了時に警備員は対応。

すなわち、作業中は玄関自動ドアは空いているけど立哨は
要らないとの事でした。朝業者を迎え玄関の鍵開錠するN。

しかし、作業終了の連絡行き違いから終了後しばらく施錠せず。
たまたま出勤していた管財課Ｓ係長が気付きＮは大目玉をもらう。

Nは警備員としての注意力に欠けているシーンが時々ありました。
勤務中も居眠りしたりして私生活もどうしたものか・・・

Y課長にとって、Z隊長が更迭されるのは渡りに船でした。というのは
秘蔵っ子であるI隊員を満を持して投入できるからです。

I隊員は、交通誘導警備それも片側交互通行の現場の需要が多く活躍し
ていましたがそれが落ちついたので、市役所に配属される運びに。

彼はA社の交通誘導のレベルは低いと度々語っていましたが、施設警備は
初めてです。Y課長は市役所へ研修に送り込みました。

一方、Z隊長はI隊員がやってきてまだ実感はなかったようでしたが、
何となく自分がチェンジになる不安を感じていたようでした。

I隊員の研修が終わりに近づいてきた頃、Y課長はZ隊長の
更迭を言い渡しました。覚悟していたものの、憮然とするZ隊長。

理由は管財課から隊長不適と評価され、降ろされた隊長が隊員として
勤務するのは相応しくない、とY課長は説明したようです。

一方Y課長にとって誤算だったのは、この一年で僕が管財課から隊長に
推されるほど評価された事です。何としてでもI隊員を隊長にしたいY課長。

I隊員は最初から評価されようと躍起になっていました。しかしこの一年の
試練を乗り越えた経験値の差は、Y課長・I隊員にとって想定外でした。

入札で勝ち、I隊員を迎え新体制発足となった市役所警備隊でしたが
これを記念？して飲み会を開こうと言い出したのがK隊員でした。

彼は地元自治体の正規職員でしたが、退職しA社に入り道路で旗を振って
いた頃、Y課長に見出され市役所立ち上げ半年後に来る。歳はアラフォー。

前職から飲み会が好きだったらしく、後に飲み会を企画する宴会部長
となるわけですが、I隊員とのコンビで市役所隊を牛耳る事になります。

A社としてもひと山乗り越えた訳だし、飲み会の話は悪くない。
こんなK隊員の浮かれムード？に冷や水を差す事件が起きたのです。

入札に勝ち、新規一転ムードに水を差す事案が起こりました。
宴会を企画していたK隊員ですが、４月末のある日突然休むと電話。

その後分かったのは、入院手術が必要で復帰までおよそ二か月らしい。
K隊員は酔って帰宅中、川の土手に転落し膝を粉砕骨折したとの事。

慌てたのはA社幹部で、これまでの経緯からK隊員を除外する事もできず
かといって日勤専門の隊員を呼び二か月引っ張るのも無理があります。

７人体制のボロが出たような事案でしたが、Y課長には秘策がありました。
今後ますます市役所警備隊の迷走を促すような矛盾した人事でした。

ケガで二か月欠場のK隊員の穴埋めに、誰を充てるのか？Y課長が
選んだのは一週間前に市役所警備隊から更迭したZ元隊長でした。

これにはさすがにZ元隊長も抗議しました、矛盾した人事だと。
するとY課長は一転やさしくなだめ、復帰を促したのです・・・

一週間で市役所に戻ってきたZ元隊長。それもK隊員が復帰すれば
お役御免です。管財課からの信用を無くし除外されたはずなのに・・・

K隊員のケガの原因（酔って転落）はY課長たちは社長には伏せていた模様。
社長が真実を知れば、交代を命じてこれもまた変な事になるとの思惑か。