2016年03月09日
ウィルスや菌すらも「記憶」する!? 深い睡眠が脳の本当のチカラを呼び覚ます
今年も風邪やインフルエンザが流行する時期がやってくる。ウイルスに感染しても全員が発症するわけでもなく、たとえ発症してもその症状には重い軽いがある。その違いはどこからくるのか。
それは、身体を守る「免疫力」によるところが大きいといわれている。最新の研究で、どうやらこの「免疫力」は「深い睡眠」と密接に関連していることが分かり、風邪予防には良質の睡眠が大切ということが、あらためて明らかになった。
■敵から身体を守る免疫とは
免疫力とは身体にとって有害なものを守ってくれる力のことで、体内にウイルスや細菌が侵入したり、体内でがん細胞が発生したりすると、それを「敵」とみなして攻撃を始め、死滅させて体外に排出させる働きがある。
この免疫には血液中の白血球の一種であるマクロファージ、顆粒(かりゅう)球、リンパ球(T細胞、B細胞)などが関係する。体内で初めて出会った「敵」を処理するには時間がかかるが、一度やっつけた敵は記憶しているので、次に同じ敵が侵入したときには攻撃態勢を早く整えてやっつけることができるという。
ウイルスに感染しても発症しなかったり、発症しても軽く済んだりするのは、過去に戦った敵を覚えているからだと言える。
■深い睡眠が免疫力をアップさせる
ところで、睡眠は脳の長期にわたる記憶を形成することがこれまでに分かっているが、この度ドイツのチュービンゲン大学の研究者らは、睡眠が免疫における記憶も高めることを発見したという。
睡眠中は脳波が段階的に変化していくのだが、脳を休ませる眠りのノンレム睡眠の中でも特に深い眠り(熟睡)のときには、徐波睡眠(じょはすいみん)という周期の小さい波が現れる。
研究者らはこの徐波睡眠のときに免疫の記憶を担当する「メモリーT細胞」の情報が増加されていることを見付け、深い眠りが免疫学的な記憶を高める可能性を発見したという。
熟睡ができていると免疫がうまく働くが、浅い眠りだとメモリーT細胞の記憶を強化するプロセスが踏めないために免疫力が低下、風邪にかかりやすくなる、というのだ。
■冬は風邪が流行しやすい
つまり、病気に負けない身体を作るためには、普段から深い睡眠をとって免疫力を低下させないことが大切、ということだ。
これから迎える冬の時期は、気温が低く空気は乾燥しているため、喉(のど)が乾燥して炎症を起こしやすく、風邪やインフルエンザウイルスに感染しやすくなる。
年末にかけてはクリスマスや忘年会などで忙しくなるが、夜更かしは避け、深い睡眠がとれるように心掛けたい。