2022年08月27日
Alchemy of Actor epigenetics 03
Alchemy of Actor epigenetics 03
ヒストン修飾
クロマチンはヒストンにDNAが巻き付いたヌクレオソーム構造を持つ複合体。
DNAがヒストンに巻き付いている状態が変われば、
クロマチンリモデリング(再構築・再構成)がおき、遺伝子発現もまた変化す。
ヒストンのメチル化は1964年に発見されたが、その生理的意義は長い間不明であった。
その後の研究によって数多くの化学修飾が発見され、
それら翻訳後修飾の役割は酵母・動物・植物で共通していることが多いことも判明。
ヒストン修飾はアミノ酸配列全体を通して発生するが、
ヒストンのN末端(ヒストンテール)が特に高頻度で修飾される。
これらの修飾には、アセチル化、メチル化、ユビキチン化、リン酸化 SUMO化が含まれる。
よく研究されている化学修飾 アセチル化
Exc,ヒストンアセチル基転移酵素 (HAT;histone acetyltransferase ) による
ヒストンH3テールのK9、K14のリジン アセチル化は、高い転写能力と相関す。
ヒストンのリジン残基は、(+)に荷電したN窒素原子を含むアミノ基を側鎖に持ち、
DNA骨格の(-)に帯電したリン酸基と結合しやすい。
リジン残基のアセチル化はアミノ基の(+)を中和し、
ヒストンとDNA間の相互作用を弱めることにより、転写因子がDNAに接近することを可能にす。
このように
ヒストン修飾がヌクレオソームの構造を変化させることによって転写に影響を与える説明:「シス」モデル。
ヒストン修飾による機能「トランス」モデル;
ヒストン修飾酵素が作用して他のタンパク質との結合部位を作り、
そのタンパク質がクロマチンに会合することによって転写を制御す。
Exc,トランスモデル概念は、H3K9メチル化により裏付けされている。
H3K9のメチル化は恒常的な転写不活性クロマチン(構造的ヘテロクロマチン)と関連付けられてきた。
メチル化されたH3K9は、
クロモドメイン(メチルリジン特異的結合ドメイン)を持つ転写抑制タンパク質HP1をリクルートする。
リジン残基メチリジン残基メチル化は、
修飾を受ける残基・同一残基が受けるメチル化状態(モノ, ジ, トリ)の種類が多く、
作用も転写の活性化と抑制の双方があり、他のヒストン修飾に比べて複雑。
H3K9メチル化とHP1の関係は、
ショウジョウバエの位置効果による斑入り (PEV) でのヘテロクロマチン領域の拡大とも関連している。
他方、H3K4のメチル化は
ユークロマチンでの遺伝子発現の活性化と関連し、複数の因子がH3K4トリメチル化を誘導する。
ヒストンリジンメチル基転移酵素 (KMT;lysine methyltransferase ) は、
ヒストンH3,H4に対してメチル化活性を担っている。
この酵素は
SETドメイン (Suppressor of variegation, Enhancer of zeste, Trithorax) と呼ばれる触媒活性部位を利用。
SETドメインは遺伝子活性の調整に関与する130アミノ酸配列。
SETはヒストンテールに結合し、ヒストンのメチル化を引き起こす。
ヒストンH3,H4は、
ヒストンリジン脱メチル化酵素 (KDM,lysine demethylase )によって脱メチル化されることも。
この酵素は十文字ドメイン (JmjC) と呼ばれる触媒活性部位を持っている。
十文字ドメインが複数の補因子を使ってメチル基をヒドロキシル化して除去したとき、
脱メチル化が起きる。
十文字ドメインは、メチル基を1-3個持つ基質を脱メチル化することが可能。
ヒストンコード
複数,動的なヒストンの化学修飾による遺伝子制御の概念,仮説
この仮説は、
「ヒストン化学修飾の特定の組み合わせが、あたかも暗号(コード)のように働くことにより、
多種多様な反応を誘導してクロマチン機能を制御する」という。
個別のヒストン修飾の影響が明らかになってきている一方で、
複数の修飾が協調的あるいは対立的な影響を持ちながら共存する例や、
同一の修飾が存在する条件によって異なる影響をもたらす例が知られている。
このことから、
数種類のヒストン修飾に制御されるエピジェネティックな過程の複雑さを理解するには、
ヒストンコード仮説が有効であると考える。
クロマチンリモデリング
クロマチンリモデリングは、DNAとヒストンの間の位置関係が変化すること、
およびそれによって遺伝子発現が促進あるいは抑制されること。
ヒストン修飾とATP依存リモデリング因子(SWI/SNFなど)によるクロマチンの変化を指す。
神経系細胞分化におけるヒストン修飾の役割
哺乳類 中枢神経系は、発生段階に共通の神経幹細胞から分化・産生される
ニューロン、アストロサイト、オリゴデンドロサイトにより構成され、
精妙な相互作用で高度な神経活動が維持される
マウスでは細胞の増殖や神経管形成、心臓の発達が起こらずに胎生致死
神経系遺伝子のプローター領域のヒストンのアセチル化増進を介して神経発生を制御し
マウスでは胎生期の神経発生異常に起因するとする疾病を引き起こす
成体ラット海馬由来の神経幹細胞にニューロン分化促進 中枢神経障害疾患に作用
ヒストンのメチル化やメチル化酵素、脱メチル化酵素の働きが脳機能や多くの精神疾患に関与
ヒストン修飾は脳の発達や機能にさまざまな役割を果たしており、脳において重要な機構。
H3K9のメチル化酵素;
成熟ニューロンにおいて非神経性遺伝子やニューロン前駆遺伝子の働きを抑制し、
この複合体の欠損は、学習や意欲、環境への適応などの脳の高次機能に影響を与える
H3K4のメチル化酵素,変異マウスでは海馬の可塑性やシグナルの異常に伴い、
学習能力と記憶形成能の低下がみられる
H3K27のメチル化は、うつ様行動の発生に関与。
マウスに社会的ストレスを繰り返し与えることにより
ヒトのうつ患者と同様な行動や神経化学的変化を引き起こす。
うつモデルマウスでは海馬の脳由来神経栄養因子遺伝子
(brain-derived neurotrophic factor:BDNF)プロモーターでのH3K27のメチル化が増加
これはうつモデルマウスがストレスのない環境へ移されたとしても持続する。
と たのしい演劇の日々
ヒストン修飾
クロマチンはヒストンにDNAが巻き付いたヌクレオソーム構造を持つ複合体。
DNAがヒストンに巻き付いている状態が変われば、
クロマチンリモデリング(再構築・再構成)がおき、遺伝子発現もまた変化す。
ヒストンのメチル化は1964年に発見されたが、その生理的意義は長い間不明であった。
その後の研究によって数多くの化学修飾が発見され、
それら翻訳後修飾の役割は酵母・動物・植物で共通していることが多いことも判明。
ヒストン修飾はアミノ酸配列全体を通して発生するが、
ヒストンのN末端(ヒストンテール)が特に高頻度で修飾される。
これらの修飾には、アセチル化、メチル化、ユビキチン化、リン酸化 SUMO化が含まれる。
よく研究されている化学修飾 アセチル化
Exc,ヒストンアセチル基転移酵素 (HAT;histone acetyltransferase ) による
ヒストンH3テールのK9、K14のリジン アセチル化は、高い転写能力と相関す。
ヒストンのリジン残基は、(+)に荷電したN窒素原子を含むアミノ基を側鎖に持ち、
DNA骨格の(-)に帯電したリン酸基と結合しやすい。
リジン残基のアセチル化はアミノ基の(+)を中和し、
ヒストンとDNA間の相互作用を弱めることにより、転写因子がDNAに接近することを可能にす。
このように
ヒストン修飾がヌクレオソームの構造を変化させることによって転写に影響を与える説明:「シス」モデル。
ヒストン修飾による機能「トランス」モデル;
ヒストン修飾酵素が作用して他のタンパク質との結合部位を作り、
そのタンパク質がクロマチンに会合することによって転写を制御す。
Exc,トランスモデル概念は、H3K9メチル化により裏付けされている。
H3K9のメチル化は恒常的な転写不活性クロマチン(構造的ヘテロクロマチン)と関連付けられてきた。
メチル化されたH3K9は、
クロモドメイン(メチルリジン特異的結合ドメイン)を持つ転写抑制タンパク質HP1をリクルートする。
リジン残基メチリジン残基メチル化は、
修飾を受ける残基・同一残基が受けるメチル化状態(モノ, ジ, トリ)の種類が多く、
作用も転写の活性化と抑制の双方があり、他のヒストン修飾に比べて複雑。
H3K9メチル化とHP1の関係は、
ショウジョウバエの位置効果による斑入り (PEV) でのヘテロクロマチン領域の拡大とも関連している。
他方、H3K4のメチル化は
ユークロマチンでの遺伝子発現の活性化と関連し、複数の因子がH3K4トリメチル化を誘導する。
ヒストンリジンメチル基転移酵素 (KMT;lysine methyltransferase ) は、
ヒストンH3,H4に対してメチル化活性を担っている。
この酵素は
SETドメイン (Suppressor of variegation, Enhancer of zeste, Trithorax) と呼ばれる触媒活性部位を利用。
SETドメインは遺伝子活性の調整に関与する130アミノ酸配列。
SETはヒストンテールに結合し、ヒストンのメチル化を引き起こす。
ヒストンH3,H4は、
ヒストンリジン脱メチル化酵素 (KDM,lysine demethylase )によって脱メチル化されることも。
この酵素は十文字ドメイン (JmjC) と呼ばれる触媒活性部位を持っている。
十文字ドメインが複数の補因子を使ってメチル基をヒドロキシル化して除去したとき、
脱メチル化が起きる。
十文字ドメインは、メチル基を1-3個持つ基質を脱メチル化することが可能。
ヒストンコード
複数,動的なヒストンの化学修飾による遺伝子制御の概念,仮説
この仮説は、
「ヒストン化学修飾の特定の組み合わせが、あたかも暗号(コード)のように働くことにより、
多種多様な反応を誘導してクロマチン機能を制御する」という。
個別のヒストン修飾の影響が明らかになってきている一方で、
複数の修飾が協調的あるいは対立的な影響を持ちながら共存する例や、
同一の修飾が存在する条件によって異なる影響をもたらす例が知られている。
このことから、
数種類のヒストン修飾に制御されるエピジェネティックな過程の複雑さを理解するには、
ヒストンコード仮説が有効であると考える。
クロマチンリモデリング
クロマチンリモデリングは、DNAとヒストンの間の位置関係が変化すること、
およびそれによって遺伝子発現が促進あるいは抑制されること。
ヒストン修飾とATP依存リモデリング因子(SWI/SNFなど)によるクロマチンの変化を指す。
神経系細胞分化におけるヒストン修飾の役割
哺乳類 中枢神経系は、発生段階に共通の神経幹細胞から分化・産生される
ニューロン、アストロサイト、オリゴデンドロサイトにより構成され、
精妙な相互作用で高度な神経活動が維持される
マウスでは細胞の増殖や神経管形成、心臓の発達が起こらずに胎生致死
神経系遺伝子のプローター領域のヒストンのアセチル化増進を介して神経発生を制御し
マウスでは胎生期の神経発生異常に起因するとする疾病を引き起こす
成体ラット海馬由来の神経幹細胞にニューロン分化促進 中枢神経障害疾患に作用
ヒストンのメチル化やメチル化酵素、脱メチル化酵素の働きが脳機能や多くの精神疾患に関与
ヒストン修飾は脳の発達や機能にさまざまな役割を果たしており、脳において重要な機構。
H3K9のメチル化酵素;
成熟ニューロンにおいて非神経性遺伝子やニューロン前駆遺伝子の働きを抑制し、
この複合体の欠損は、学習や意欲、環境への適応などの脳の高次機能に影響を与える
H3K4のメチル化酵素,変異マウスでは海馬の可塑性やシグナルの異常に伴い、
学習能力と記憶形成能の低下がみられる
H3K27のメチル化は、うつ様行動の発生に関与。
マウスに社会的ストレスを繰り返し与えることにより
ヒトのうつ患者と同様な行動や神経化学的変化を引き起こす。
うつモデルマウスでは海馬の脳由来神経栄養因子遺伝子
(brain-derived neurotrophic factor:BDNF)プロモーターでのH3K27のメチル化が増加
これはうつモデルマウスがストレスのない環境へ移されたとしても持続する。
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