2016年08月26日
中学で睡眠教育 欠席や体調不良の原因の大半は寝不足だった?
もし中学生の子どもが朝起きられなくなり、頭痛や腹痛が続いて学校に行けなかったりしたら……。親としてはいじめや悩みがあるのではないかと、心配することだろう。ところが、その原因の一つが、家庭での寝不足にあることが分かった。
大阪府堺市立三原台中学校では、原因不明の頭痛や腹痛で休む生徒の増加に悩んでいた。そこで、生徒の欠席日数を減らすために「睡眠教育」(眠育)に取り組んだところ、休みが多い生徒の4割で欠席が減少した。
□睡眠不足と欠席数が比例
三原台中学校は、体調不良により欠席する生徒の増加に悩み、眠育を提唱する熊本大名誉教授の三池輝久氏に、調査と協力を依頼した。
全校生徒の睡眠を調査したところ、7割の生徒が午前0時前に就寝していた。ところが、年30日以上休む31人中25人は午前0時以降に就寝。さらに3時台が7人で、4時台も5人もいたことが判明した。寝る時間が遅くなる原因としては、スマホでのLINEメッセージがやめられないため、などがあった。
そこで、睡眠の心得を分かりやすく「睡眠を考える本」という冊子にして全校生徒に配布し、具体的に個別指導も行った。
□三池教授の提唱する「睡眠5つの心得」
三池名誉教授は「睡眠を考える本」で、「睡眠5つの心得」を指導した。
1.毎日遅くても夜0時までには就寝
2.自分に必要な時間を確保(8〜9時間以上)
3.朝は自ら起床できるように生活を組立てる
4.食事の時間は朝昼夜とも一定の時間帯
5.朝食をとる(睡眠不足では食欲がわかず朝食が食べることができない)
睡眠を指導した結果は、はっきりと良い方向で表れた。欠席が年20日以上あった28人の生徒の4割にあたる12人の欠席日数を減少させることができた。そして、ひと月に10日間休んだ生徒の欠席が0日に、11日間休んだ生徒の欠席が2日だけになったのだ。
□心当たりがあるときは要注意 寝不足・睡眠障害のサインかも
「なんか、しんどい」、「やる気が出ない」、「朝起きられず、遅刻する」、「だんだんと休みがちになる」というときは、要注意だ。心や体の不調は、寝不足や睡眠障害のサインなのだ。
もちろん、睡眠不足が原因の全てではない。人間関係やその他の悩みが影響していることも考慮すべきだ。ただ、睡眠不足は心や体に影響を与えるので、他の悩みも元をたどると睡眠不足に起因している場合が考えられるだろう。睡眠不足でイライラして不安になり、ストレスを抱えて友達関係が悪くなる場合などだ。
他の悩みがある場合でも、睡眠不足であれば、まず睡眠不足を改善することから始めてみてはいかがだろうか。
□家庭でできる睡眠教育
朝ごはんの大切さや、バランスよく食べる大切さを伝えることは、食育として浸透してきた。しかし、朝すっきりと起きられないと朝食も食べられず、新しい一日が朝からつまずくことにもなりかねない。眠育は食育とも関係があるのだ。
具体的には、寝だめはできないことを知り、中学生は1日8〜9時間の睡眠を確保する。遅くとも午前0時までには、就寝しよう。寝る直前のスマホ・テレビは眠りが浅くなるので、禁止するべきだ。一度、睡眠の記録をとってみると、客観的に生活を見直すことができる。スマホをやめられない子どもは、スマホを預かるか、同じ部屋に就寝してスマホを使わせないようにしよう。
□睡眠は脳を守り、育てる。 食育の次は眠育?
三原台中学校では、難しい年頃の子どもたちを指導するため、専門家の協力を得たり医学的な根拠を示して生徒を納得させた。家庭でも書籍や三原台中学校などの事例を示すことで、子どもを指導しやすくなるかもしれない。
睡眠は脳を守り、育てる。食育の次は眠育に取り組んでいこう。