2016年08月25日
動物の冬眠メカニズムで SFのようなよみがえりが現実に?
「あきになりました。もりには、きのみがいっぱい。どうぶつたちは、ふゆのあいだのたべものあつめに、いっしょうけんめいです。」
わが家の子どもたちが大好きな絵本の一節だ。リスやクマなど冬眠、あるいは、冬ごもりする動物たちが、みんなで協力して食べ物を集めているというお話。
小さな子どもでも、こうした絵本を通して、冬眠する動物がいるのだということを知っている。しかし、冬眠のメカニズムや冬眠している間の動物の行動についてはよく知られてない。今回は、冬眠について詳しく、そして、将来の医療への可能性についてもお伝えしたい。
□冬眠といってもずっと寝ているわけではない
「冬眠」というと、動物が冬の間、土の中でずっと寝ていること…そんなイメージを抱く人が多いかもしれない。それは少々違う。一般的には、哺乳類の体温が下がって活動が低下することを指すが、ずっと寝ているわけではなく餌なども食べるのだ。
ずっと寝ているわけではない証拠に、動物たちは、冬眠中に食べる餌をきちんと集めている。
□「冬眠」 気温が下がるからではなく 自ら体温を下げる
しかも、体温が下がるのは、気温の低下に伴って、ではない。自ら体温を下げているのだ。朝が来ると起きて、夜が来ると寝るという1日周期の「概日リズム」と同じように、1年周期で、季節の変化に対応する「概年リズム」を持つ動物が存在する。
冬眠する動物は概年リズムに従って、気温が下がる前に体温が低下するのだ。
□リスは5度の低体温に
例えばリス。通常は体温が37度ぐらいあるが、冬眠中はなんと5〜6度まで下がる。
しかし、1週間に1回ほど体温が上がり、起きて餌を食べたり、排せつしたりもする。人は、体温が5度になってしまったら心臓が止まって死んでしまう。
冬眠する動物には、低体温でも心臓が止まらないように、心臓の収縮の役割を担うカルシウムイオンをコントロールする機能が生まれながらにして備わっている。
□もし、体温を下げる物質が人間にもあったら・・・
冬眠を引き起こす特殊なタンパク質も発見されている。冬になると自動的に体温を下げてくれるものだ。このタンパク質は血液中に存在し、冬になると脳内に移動して体温中枢に働きかけ、低体温を引き起こすという仕組みだ。
この特殊なタンパク質が働く詳しいメカニズムは、まだ分かっていない。もし、このタンパク質を人の医療にも生かせるようになれば、意識的に低体温の状態にして細胞にダメージを負わせることなく時間をかけて難手術をする、といったことも期待できそうだ。
低体温の状態で眠り続けた人が、何年か後に、細胞に何の損傷もなく、元通りに眠りから覚める。映画のような世界が現実のものとなるのかもしれない。