2016年08月20日
今夜から結果が出るかも? 体内時計は腸内フローラと食生活で変わる
人間には朝になると目が覚めて、夜になると眠くなる体内時計が備わっている。意識しなくても1日周期でリズムを刻み、体と心を活動と休息に導いてくれる。
夜になると自然に眠くなるのは、暗くなるとメラトニンというホルモンが脳から分泌され、体内時計に働き掛けるためだ。夜になると眠くなるのはこの仕組みのためだとされている。
□体内時計は人間の体内に100兆個ある腸内細菌にもある?
ここで気になるのは、体内時計はいったいどこにあるのかということだ。脳からメラトニンが分泌されるのであれば、脳の中に体内時計があるように想像するのが自然だ。
その想像通り、まず、脳の深部にある視交叉上核(しこうさじょうかく)で、哺乳類の体内時計である「主時計」が見つかった。ここは目から入った光の情報を受け取り、メラトニンを分泌する脳にある「松果体」という器官へ信号を送る部分だ。
さらにその25年後に、体内時計をコントロールする時計遺伝子が発見された。この時計遺伝子は脳の視交叉上核だけでなく、心臓、肝臓、肺、筋肉、皮膚などあらゆる細胞に存在しており、脳の「主時計」に対して「末梢時計」と呼ばれる。
さらにさらに、最近では細胞だけではなくおよそ100兆個の腸内細菌までもが、体内時計の「末梢時計」であることが分かってきたのだ。
□腸と眠りの密接な関係
腸は睡眠を促すメラトニンの合成にも影響を与える。メラトニンの材料となるのは、トリプトファンという必須アミノ酸だ。トリプトファンは葉酸やナイアシン、ビタミンB6などの作用でセロトニンの前駆体をつくり、腸から吸収されて脳に送られる。そして松果体でセロトニンからメラトニンへと合成される仕組みで、腸と睡眠は密接な関係にあるのだ。
□腸内フローラと食生活が快眠のカギ
腸や、腸の中の細菌の集まりである「腸内フローラ」が良い状態であることが、いい眠りにも大切だ。そして腸内フローラや食生活が概日リズムに大きな影響を与えることが、シカゴ大学のユージン•チャン教授らの研究で分かった。
研究グループは、腸内フローラを持たない無菌マウスと腸内フローラを持つ従来のマウスの2種類を用意した。食事が腸内フローラと体内時計に与える影響を調べるため、低脂肪食または高脂肪食のいずれかを与えた。
□快眠には低脂肪の食生活が大切
その結果、無菌マウスは腸内フローラがないので、食べたものとは関係なく、24時間の体内時計が狂ってしまった。そして従来のマウスも、高脂肪食を与えると体内時計が乱れ、通常とは異なる時間に餌を食べるようになり、肥満になった。
ところが、腸内フローラを持つ従来のマウスに低脂肪食を食べさせたところ、時計遺伝子も通常通りで、正常な概日リズムを保つことができた。腸内フローラや食事の内容が、時計遺伝子や眠りに大きく影響を与えているのではないかと考えられる。
□今日の食事がすぐに影響する!
この腸内フローラが変化するサイクルは、数日から数週間かかると思われていたが、数時間で変化し始めることが分かった。これは、人類が狩猟採集生活をしていた時代に、手に入れた食料を最大限に吸収するのに大いに役立ったのではないだろうか。
「あなたは、あなたが食べたもので作られている」というが、今日食べた食事は、あなたにすぐに影響を与え、今日や明日の睡眠にも影響を与える。
これはとても良い知らせと言えそうだ。バランスの良い食事に改善すれば、すぐに眠りにも良い影響を与えてくれるかもしれないのだから。