2016年08月17日
レム睡眠=夢を見るだけではない レム睡眠の意義を日本人が解明
2015年11月、科学雑誌Scienceに、筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構の林悠(はやし ゆう)助教らと、理化学研究所脳科学総合研究センターの糸原重美チームリーダーらの共同研究グループによる、レム睡眠に関する研究論文が掲載された。
レム睡眠は私たちが夢を見る時の睡眠状態であるが、何故このような睡眠が起きるのかは分かっていないのだ。
研究グループによる論文では、これまで謎とされていた、レム睡眠の役割やレム睡眠が学習や記憶に貢献する可能性について報告されている。レム睡眠を科学的に解明する第一歩でもある本論文について紹介する。
□レム睡眠とノンレム睡眠を切り替えるスイッチの発見
1953年にレム睡眠が発見され、夢を見る時にはレム睡眠の状態であるということが分かった。しかし、なぜ睡眠中にレム睡眠の状態になり、そこで担われている役割は何なのかについて、科学的な根拠や背景は60年以上たった今でも分かっていなかった。
今回、研究グループは、マウスの遺伝子操作技術を用いた研究の結果、マウスの脳部位において、レム睡眠からノンレム睡眠へと切り替えるスイッチの役割を担う神経細胞を発見した。
さらに研究グループは、レム睡眠を操作できるマウスの開発に成功した。このマウスを用いてレム睡眠の解明に挑んだ。
□レム睡眠がデルタ波を強める作用を持つことを発見
その結果、レム睡眠が増すことで、もともとノンレム睡眠時に生じやすいデルタ波がさらに強くなることが実験的に証明された(※1)。
デルタ波は、学習や記憶形成を促す効果があり、また、脳の神経細胞どうしをつなぐ構造であるシナプスを強化することが知られている(※1)。レム睡眠を上手にコントロールできるようになれば、学習や教育などの分野にも大きな影響があるかもしれない。
この発見は睡眠だけではなく、脳発達や不眠症治療薬との関連も示唆されており、こういった分野の発展にも今後期待していきたい。