2015年08月20日
台所のおと
さてさて、本日はこちらです
幸田文著『台所のおと』
幸田さんはぶれない。
短篇集です。収録されているのは
「台所のおと」「濃柑」「草履」
「雪もち」「食欲」「祝辞」
「呼ばれる」「おきみやげ」
「ひとり暮し」「あとでの話」
の10篇
幸田さんの描く女性は
みな、しんと強く哀れで
美しい……
幸田さんの、女性への
やわらかな眼差しを感じます
尽きない悩みに
重い息を吐いて、
そんな女性をとりまく
情景はしかしながら
美しく読者の心に
迫ってくる
静かで、派手ではないけれども
美しい小説の代表だと
改めて思わされる作品
それも、幸田さんだからこその
他にはちょっとないような
幸田さんのような女性
でなければ、という文章
読んでいる間は、何にも
邪魔されたくない、と
思うような、そんな短編が
詰まっています。
特に表題の「台所のおと」は
至高です
女性だけではなく
夫婦の間の細やかな
やりとりが描かれ
これが、いい。
料理人である夫が
病に倒れ、
妻の台所のおとを聞く
そんな、病床から聞く
台所のおとが、幸田さんの
絶妙な日本語で
しっとりと描かれていて
はじまりから、もう
映画の中に
迷い込んだような
そんな圧倒的な
雰囲気があります
佐吉曰くあきはもともと
静かな台所をする女
だそうですが、
冒頭、本当にあきは
しめやかに台所をしている
そうして、そのかすかな
音を聞けば
佐吉は、自分が庖丁をとり、
さい箸を持って働いているに
等しいほどに
何がどう料られていくのかが
わかる。
そして、病人の気持ちは
一時、晴れる
佐吉には過去に
2人女房がおり、
この女についての
回想もあるけれども
そのような回想をしてなお
佐吉とあきの間にある
他の何者も入りこめは
しない雰囲気が
巧みに描き出されています
あきの気丈さには
心を打たれるものが
ありますし、
あきの台所のおとで
全てを悟りながら
肝心の自分のことについて
てんで分からない
佐吉の自然な優しさ
本当に、このような
小説には滅多にお目に
かかれないものと
思います、いやはや。
兎にも角にも、まずは
手にとってみて下さい
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タグ:幸田文
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