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2021年03月18日

ピルスネル、お前もか(三月十五日)



 いつの頃からだっただろうか。もらった名刺に「再生紙を使用しています」なんて文句が印刷されるようになった。それで私たちの会社は森林の保護に力を入れていますよとアピールしようとしていたのだろうけど、それなら名刺自体を廃止するなり、配る数を減らすなりしたほうがはるかにましだろうにと思ってしまった。いや、名刺を再生紙で作ること自体に文句をつけるつもりはない。ただ、それを自慢げに名詞に刷りこむ感性が理解できなかったのだ。
 この手の、自分の正しさを声高に主張する(少なくともそのように感じられる)行為には正直な話、嫌悪感を覚えてしまう。かつて割り箸が森林破壊の原因として槍玉に挙げられていたころに、自前の箸を持ち歩くことを自慢していた連中にも、同じように黙ってやれよと思ったものである。最近なら、ちょっと前に流行った、チャーチルなど歴史上の偉人を、人種差別主義者だったとして糾弾するブームにも、自分は人種差別主義者ではないと弁護するための行動としか思えず、騒いでいる連中こそが人種差別主義者なんじゃないかとさえ感じたものだ。

 だから、自分の正しさを疑うことを知らないくせに、つねに自分の正しさを確認したがり、その正しさを大声で自慢したがる連中とは、できればお近づきにはなりたくないのだが、困ったことにチェコ最高のビール会社であるピルスナー・ウルクエルまでが、世界的な流行に巻き込まれてしまった。チェコのビール業界は、世界的な流行には背を向けてわが道を行くのが素晴らしいところだったのに、アサヒに買収されたのが原因だろうか。
 テレビを見ていたら、みょうちくりんなピルスナーのコマーシャルが流れたのだ。その詳細と考えはこちらのページを見ていただきたいのだが、自然保護の観点から、ビール瓶のラベルなどを変更したというのである。自然保護などとおためごかしなことは言わずに、デザインを変更したとだけ発表すればよかったのに、興ざめとしか言いようがない。

 変更点は、まず瓶の上部の細くなっている部分から王冠まで包むように貼られていた金色のアルミ箔を廃止して、紙のものに変えたこと。これで年間48トンものアルミを節約できると自慢している。またアルミ箔がなくなることで、洗浄の際にはがれるラベルが全て紙製のものになり、まとめてリサイクルに回せるともいうのだけど、色と糊の付いた紙ごみを資源として再利用するのにどれだけの環境コストがかかるのだろうか。
 王冠は、ネックラベルのデザインの変更でむき出しになり、樽作りを象徴するデザインに変えられているだけで、瓶の下部の中心となるラベルには、再生紙を使用すると主張するいう名刺の愚を犯している。そのラベルの上にあった小さなラベルは廃止され、工場の門をデザイン化したものなどが瓶に直接描き込まれることになっている。

 こんな中途半端なことをするぐらいなら、王冠は仕方がないにしても、ラベルは、原材料等を表示するものを除いて、全部廃止すればよかったのにと思う。瓶は回収して再利用されるわけだから、外側にラベルが貼られていることは、洗浄のための手間、何よりも必要な水の量が増えることを意味する。世界的な水不足も叫ばれる現在、ペットボトルに直接印刷して使い捨てにするのと、瓶を回収して洗浄して再利用するのと、トータルで環境にかかる負荷はどのぐらい違うのだろうか。いずれにしても、ラベルがないほうが負荷が軽くなるのは言うまでもない。
 ヨーロッパ流の環境保護の議論で、不満でならないのは、部分的な個々の環境負荷については取り上げられても、例えば使用中だけでなく、生産から破棄された後の処理までにかかる全体的な環境負荷についてはほとんど話題にならないところである。肥沃な畑をつぶして太陽光発電とか、食用作物をバイオ燃料用の作物に転換するとか、全体的に考えると全体的な状況の改善にはあまりつながらないような気がするのだけど、具体的な数値を出して説明してくれないものだろうか。

 そう考えると、緑色の瓶にラベルが貼られていなかったハートランドビールは、時代をはるかに先取りしていたのだなあ。専用の瓶を使用して、ラベルの代わりに直接瓶に意匠を描きこむというのは、昔のやり方で、逆に先祖がえりだったという可能性もあるけれども、それならそれで、温故知新という言葉できれいにまとめることができるだろ。
2021年3月16日22時30分。










posted by olomoučan at 07:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 戯言

2021年03月17日

引き分け(三月十四日)



 もったいない、本当にもったいない試合、勝てる試合、いや勝つべき試合だった、というのがロシアとの試合の感想で、同時に最後負けなくてよかったというのも否定できない。とまれ、チェコ代表は、特に前半の25分ぐらいまでは、格上のロシアを相手に、完全に試合を支配していた。このまますんなりいくとは思わなかったけど、勝ってほしかったなあ。

 前半の立ち上がりは、フェロー諸島との試合と似ていた。チェコはディフェンスとキーパーの連携で、ロシアの攻撃をしばしば止め、最初に失点したのは五分過ぎのことだった。その一方で、ロシアのキーパーはチェコの選手たちのシュートを止めることができず、チェコのリードは次第に大きくなり、最大で4点差をつけたのである。このまま4点差で終わっていればよかったのだろうけど、チェコのミスも多く、最後にキーパーのいないゴールに超ロングシュートを決められて、16−14と2点リードで前半を終えた。
 よかったのは、守備専門のフランツとソラークのカルビナーコンビが、退場を食らうことなく攻撃的な守備でロシアの攻撃を分断できていたこと。特にフランツは今回の予選のロシアでの試合が代表初出場だと言うのに、代表になれたベテランのような存在感を発揮していた。髭を生やしていることといい、大柄な体格といい、プレー振りといい、ホラークと見間違えてしまいそうなぐらいだった。フェロー諸島との試合では早々に二回目の退場を食らって、守備での出番を減らしたソラークも、この試合では、比較的慎重にプレーしていたのか、前半は退場なしで切り抜けた。

 逆によくなかったのは、ウジェクが最初のほうこそポストプレーがうまく行っていたものの、次第にロシアのディフェンスとのポジション争いに負けて、ポストプレーが機能しなくなっていたこと、それと関連してゲームメーカーであるババークのポストへのパスが奪われて速攻を食らう機会が多かったこと、怪我が治りきらないカシュパーレクがあまりシュートを打てなかっただけでなく、パスミスも目立ったことだろうか。ムルクバが止めたボールを確保できないシーンも二回ほどあったし、もったいないプレーがいくつもあったせいで、ロシアの追い上げを許してしまったのである。
 ポストプレーヤーに関しては、前半の途中でフェロー諸島との試合ではベンチにも入っていなかったペトロフスキーが出場したのには驚いた。アナウンサーの話では、ドイツの中でも、規制の厳しい州のチームでプレーしているため、代表に合流してから練習に参加するまでに時間がかかったらしい。同じドイツでプレーする選手でもババークは最初のロシアでの試合から出場していたし、ドイツのやることもわけがわからない。

 後半が始まることにネットの状態が悪くなって、見られるようになったときには、18−18の同点に追いつかれていた。その後逆転されて2点差つけられたのだが、相手がミスしたり、キーパーのムルクバが7メートルスローを止めたりした結果、チェコが再度逆転、2点差で3点差に向けて攻撃となったときには、いけると思ったのだけど、残り45秒で同点に追いつかれて、チェコの攻撃ということになった。このとき、チェコは退場者を出していたのでキーパーを引き上げて6人で攻撃することになった。
 時間をかけて攻撃して、残り2秒ぐらいでシュートを決めて勝利というのが、チェコ側のシナリオだったのだろう。数年前の、たしかこれもロシアとの試合で、同じような展開になって、ベチバーシュが、残り5秒ぐらいでシュートを決めて勝ったことがあるはずだ。その再現を狙ったのだろうけど、審判がパッシブプレーの警告サインを出した後にタイムアウトを取るという失敗もあって、ババークがシュートに行くと見せて、ポストに落としたボールを奪われてしまう。見え見えだったからなあ。
 これで一転、チェコは失点即敗戦の危機を迎えたのだが、ロシアの選手がボールを奪った地点から空のゴールに向けて投じたボールは、てんてんと何度かバウンドしながらゴールに向かったが、僅かにそれて、見ていたこちらはほーっと安堵の一息をもらすしかなかった。結局27−27の引き分けに終わった。ウクライナもロシアとの対戦を1分1敗で終えているから、グループ2位の座は、直接対決で決めることになった。3位でも勝ち点を十分に稼いでいれば勝ちぬける可能性があるというから、今回ロシアとの引き分けは大きい。

 この試合、チェコ代表は総計で20分もの退場時間があった。全後半60分のうち3分の1は一人少ない状態でプレーしていたことになる。これだけ退場者を出してよく引き分けたというべきか、退場を減らせというべきか、難しいところである。退場覚悟の激しいディフェンスのおかげでロシアの攻撃を抑えることができたのもまた事実なのだし。それからロシアのキーパーに止められたシュートはそれほど多くなかったが、ゴールポストに当てて外れたシュートは多かった。これもまた点差を広げきれず、最後に同点に追いつかれた原因のひとつである。
 だが、ここは何よりもかによりも、最後の最後まで結果のわからない白熱した試合が見られたことを喜ぶべきであろう。最後は本当に心臓に悪かったけど。勝てそうにないという予想が外れたこともついでに喜んでおこう。
2021年3月15日18時30分。












2021年03月16日

選手兼任協会長誕生(三月十三日)



 一月の世界選手権出場辞退騒ぎで、空席になったのは代表監督の座だけではなく、チェコハンドボール協会の会長も解任の決定に対する不満から、辞任していたのだった。その協会長を選ぶための選挙が、状況からして仕方がないとはいえ、オンラインで行われた。どのような条件で誰が立候補しているかという情報は、ほとんど入ってこなかったが、結果はニュースで伝えられた。元代表キャプテンのオンドジェイ・ズドラーハラが選出されたというのである。
 ズドラーハラは、代表の選手としては昨年末のスロバキアとの親善試合にも出場しているから、問題がなければ。一月の世界選手権にも招集されていた可能性は高い。今回のヨーロッパ選手権の予選に召集されていないのは、所属チームに禁止されたとか、出入国の条件が合わなかったとかいう理由かと思っていたのだが、会長戦に立候補したことが、理由になっていたのかもしれない。年齢的にも37歳と選手生活の晩年に入っているわけだし。

 オストラバ出身のズドラーハラは、フリーデク・ミーステクを経て加入したカルビナーでの活躍によって代表に呼ばれるようになった。それが2005年のことだったというから、かれこれ16年も代表を続けていることになる。もちろん、代表キャリアの最初のほうは、イーハなどの陰に隠れていて、こちらが名前を覚えるほどの存在感を見せ始めるのは、2010年を過ぎてからのことで、特にここ数年はババークとともにチームを支える柱になっていた。

 そのキャリアの最高の瞬間とも言うべきものが、2018年のヨーロッパ選手権で、チェコ代表も6位という過去最高に並ぶ成績を収めたが、ズドラーハラも全7試合で55ゴールを挙げて大会の得点王に輝いた。同時にヨーロッパハンドボール連盟によって、大会の行なわれた2018年1月の最優秀選手に選出されたが、これはチェコの選手では初めての栄誉だったという。
 ハンドボール協会の代表選手紹介のページのデータによると、チェコ代表での成績は出場125試合、得点448点となっている。ただしこれは他の選手のページを見ると世代別代表の結果も含んだ数字のようである。一番下に1試合だけユース代表の出場試合が上がっているから、出場124試合、得点448点というのがA代表での最終成績でいいのかな。

 チェコリーグのカルビナーを出た後は、ドイツやデンマーク、ノルウェーなどのチームで活躍したが、現在はカタールのアル・ワクラフ(と読むのかな)でプレーしているという。契約は最低でも今シーズン終了までは残っているはずだから、それまではカタールから選手権会長で、来シーズンからチェコの帰ってきて選手も続けるのかと期待したのだけど、ズドラーハルの話では選手兼任を続けるのは四月までで、そこでカタールリーグの前半戦が終わるので、残りの契約を解除して会長選任になる予定だという。
 わずか1ヶ月内外とはいえ、選手権協会長、チェコ語で「hrající předseda svazu」なんて前代未聞の存在が誕生したわけである。これは触れずばなるまいということで二日続けてハンドボールがテーマになった。いや日曜日にロシアに負けなければ三日連続ということにしよう。最近、ねたの搾り出しに苦労しているからちょうどいい。

 ズドラーハラの会長就任が成功するかどうかは、周囲にどんな人を集めるかによって決まるだろう。サッカー協会もシュミツルかポボルスキーが会長になるかもしれないようだし、全体的にそういう方向に向かっているのかな。10年ほど前のハシェクによるサッカー協会改革は、完全にうまく行かないまま終わったけど、今回は陰の実力者が逮捕されて協会から追放されたという追い風も吹いているから、何とかなるかな。
 ハンドボール協会のほうは、どうだろう。個人的には代表が強くなって、テレビでの中継が増えれば言うことはないのだけど。サッカーと違って特に利権なんてものもないだろうし、政府から出る補助金の額も不正する意味があるほど大きくはなさそうだしさ。チェコのスポーツとして、サッカー、アイスホッケーに次ぐ三番目を目指せとは言わないけど、バスケットやバレーと同じぐらいの人気やテレビでの露出があってほしいものだと思う。そのためにはチェコのチームがヨーロッパのチャンピオンズリーグに出場するのが一番いいのだろうけど、優勝チームでも資金難で出場を辞退することがあるからなあ。最初の課題は資金集めということになるだろうか。
2021年3月14日24時30分。









タグ:協会 会長選

2021年03月15日

久しぶりのハンドボールチェコ代表(三月十二日)



 一月にチェコでの検査で陰性になった選手だけを集めてフェロー諸島まで出かけたものの、現地での再検査で陽性の選手が出たことで、試合が中止になり、チェコでの試合も含めて延期になっていた、来年のヨーロッパ選手権に向けた予選の試合がブルノで行われた。本来この予選は三つの期間に分けて、毎回一つの対戦相手とそれぞれのホームで一試合ずつ行うという形で行われる予定で、チェコの相手は、一月はフェロー諸島、三月はロシア、四月はウクライナとなっていた。没収試合なんてことになったら困ると思っていたフェロー諸島との試合は、結局ロシア、ウクライナとの試合の合間にはさまれて、中一日で三試合ずつ行われることになった。

 予選最初の試合は十日の水曜日にモスクワで行われた。グループ内でおそらく一番強いと思われるロシアが相手で、監督交代という問題が起こった上に、さまざまな事情で欠場する選手もいるという状況だったから、惨敗も覚悟していたのだが、27−28という1点差での敗戦だった。惜しかったというよりは、あと1点を詰めきれないのが、今のチェコとロシアの力の差を表しているのだろう。敵地で1点差負けだから、ホームでなら勝てるかもと楽観的にはなれない。
 ゴールキーパーのガリアが、トルティーク監督の希望もあって、コーチ兼任になって、出場機会を減らすという話もある。後継者としては一人はムルクバがいるけれども、ハンドボールのキーパーの場合には、しばしば当たらない日があることを考えるともう一人、ヨーロッパレベルで頼りになるキーパーがほしいところである。ガリアも代表どころか選手としての引退も近づく年齢になっているので、そろそろ後任を育ててくれという監督の希望だろうか。

 モスクワでの試合から一日置いて、十二日には、ブルノでフェロー諸島との試合、さらに一日置いて十四日にはまたブルノでロシアとの試合というのが、今回の予選のスケジュールである。フェロー諸島もチェコ同様、三連戦となるが、ロシアは一月のウクライナとの試合をこなしているので、十二日はお休みである。
 フェロー諸島は、ハンドボールの世界では弱小国といってもいいのだが、最近は宗主国デンマーク(こんな言い方が正しいのかどうかは知らないがフェロー諸島はデンマークの自治領である)の影響でチームの強化が進んでいるという。選手の中にもデンマークなどの北欧諸国のチームに所属している選手や帰化選手もいて決して侮ってはいけないというのが、試合前の解説者の話。実際キエフでのウクライナとの試合は、負けたとはいえ4点差しかつけられていない。

 午後八時というチェコで行われるハンドボールの試合としては遅い時間から始まった試合は、チェコ代表が試合開始直後から最後まで支配した。一時的に差を詰められる時間帯は、前半も後半もあったけれども、全体的な傾向としてはすこしずつ差を広げていき、最終的には28−20と8点差で勝利した。特に試合開始直後は、ディフェンスとキーパーの協力が最高に機能していて、フェロー諸島の攻撃をことごとく封じ込めるのに成功していた。解説者はこの開始直後に稼いだリードが、後々役に立つといっていたが、そのとおりで、多少差を詰められることは覚悟でいろいろな選手を試すことができたようだ。

 嬉しい驚きは、ペトロフスキー不在の中、ポストのウジェクがチーム最多の6得点を挙げたことである。このカルビナー所属のベテラン選手が、ロシアとの試合でも同様の活躍ができれば、勝利に近づけると思うのだけどどうかなあ。もうひとつの驚きは、利き手の左手を負傷していてロシアでの試合を欠場したカシュパーレクが、出場したことだった。左手にはテーピングを巻ていて、いつもの豪快なシュートは影を潜めていたが、日曜日のロシアとの試合に向けて確認のための出場だったのだろう。パスミスも多かったし、現状では無理をしないほうがいいと思うのだけどなあ。
 他にも、カルビナーのソラーク、パツル、フランツ、ドゥクラのクリーマなど国内チーム所属の選手たちが、主力扱いされているといってもいいレベルで出場してそれぞれの役割を果たしていたのは素晴らしかった。特に守備専門で出ていたフランツとソラークが出場している時間帯のチェコの守備は堅かった。クリーマも攻守にいい仕事をしていたし、この辺りの選手たちが、以前ガリアが語っていた世界選手権に連れて行く予定だった若手選手ということになるのだろう。

 この勢いでロシア戦もといいたいところだけど、ロシアも修正してくるだろうし、無観客では、チェコ代表が勝利を重ねているというブルノの会場の魔術もかからないだろうし、勝つのは難しいだろうなあ。上位二チームが勝ち抜ける予選だから、ウクライナに勝つことに集中するのも言ってだとは思うのだけど、ロシアに惨敗したのではウクライナにも勝てなくなってしまう。いやそんな細かいことは気にせず。試合を楽しみに見ればいいか。多分PCで見ることになるだろうけど。
2021年3月13日24時。










2021年03月14日

チェコサッカー界の状況(三月十一日)



 去年の秋の、規制の再強化の時期に、せっかく定期的な検査がうまく行って、アイスホッケーと比べたら選手関係者の集団感染がはるかに少なかったサッカーリーグも、自分は規制を守らないプリムラ厚生大臣によって開催を禁止されたため、今シーズンは例年になく過密日程になっている。秋のシーズンが長引いて十二月下旬まで試合が行われたのは、暖冬だったからまだよかったにしても、規制の再緩和と重なったことで、感染状況の悪化につながった可能性もある。
 ハンドボールの男子リーグも、試合前の定期的な検査を取り入れたことで、活動停止に追い込まれるチームは最低限で済み、現在プラハのドゥクラが活動停止中だけど、リーグ戦は順調に、秋に無駄な開催禁止で延期になった分も含めて開催が進み、プレーオフ進出チームも決まりつつあるようだ。それにしても、秋のプロリーグの開催禁止は、チームが活動を停止したことで、感染対策が徹底できなくなり、そのせいで感染する選手が出るという結果をもたらした。これもまた、スポーツ界に政府の感染対策、ひいては疫学の専門家の規制強化の意見を信じられない、受け入れられないという人が多い理由になっている。

 ただ、国全体の感染状況の悪化は、サッカーリーグにも大きな影響を与えていて、ブルバを監督に迎えてチームの建て直しが進む、スパルタが活動停止に追い込まれたと思ったら、現在絶好調でスラビアの次に強いんじゃないかと思われるスロバーツコが陽性者が複数出たことで、隔離状態におかれチームとしての活動を停止することになった。これで、チームの調子と成績が悪化するなんてことになったらやってられない。
 そして、スパルタが二週間の活動停止から復帰して延期になって、平日に行われたプシーブラムとの試合に完勝したとおもったら、今度は週末のスパルタの対戦相手であるプルゼニュが、二週間の活動停止になってしまい、楽しみにしていた試合が延期されてしまった。スパルタの監督になったブルが、自分が最強チームに育て上げたプルゼニュと対戦するのだから、ブルバ時代のベテラン選手も残っていることだし、大きな注目を集めるのは当然である。その試合が延期で平日開催になるのはどちらのチームにとってもありがたいことではあるまい。

 さて、この日は、エデンでヨーロッパリーグの、スラビアとレンジャーズの試合が行われたのだが、またまた観客が、少数だったとは言え入っており、テレビの中継でも声が聞こえてきた。今回は政財界の大物が選ばれてと言う事ではなかったようだが、レスター戦の時期よりも、感染症対策の規制がはるかに強化され、余暇のための外出は自分の住む市町村の外に出てはいけなくなっている中、観客を入れたのは、許可した厚生省に何の目的があったのか。リーグ戦でも観客を入れるための実験なんて話は、現状ではありえないのだから、通用しない。
 試合のほうは、前半開始早々からスラビアが一方的に優勢で、1点しか取れていなかったけれども、今日は勝てそうだと思ってみていたたら、30分過ぎにセットプレーから失点。最近スラビアは、以前と比べるとセットプレーから、ミスで失点するシーンが増えているという話なのだが、非常に残念なもったいない失点だった。以後はスラビアの攻撃が正確性を欠いて、チャンスもなかなか作れなくなった。それでも終了間際にコーナーキックからマソプストが放ったヘディングシュートはほぼ完璧で、アナウンサーもゴールと叫んだのだけど、相手キーパーが片手で信じられないようなセーブを見せて得点にならず引き分けに終わった。レスターともプラハでは引き分けたわけだし、グラスゴーで買ってくれることを祈ろう。

 サッカー協会では、影の権力者だったベルブル氏が逮捕されたのだが、以後おそらく警察のリークで、審判とベルブル氏の電話での会話や、審判の控え室でハーフタイムに金銭のやり取りが行われているビデオなどがニュースで取り上げられてきた。それによって、どのような方法で審判に圧力をかけ、もしくは審判の担当を決めて試合結果に影響を与えていたかが明らかになりつつある。
 そんな状況に見ていられなくなったのか、サッカー協会の会長に立候補すると言い出したのが、ブリュックネル監督時代の中心選手の一人ポボルスキーである。この件に関してはシュミツルもサッカー界の改革を訴えて運動を起しているから、会長船に立候補する可能性もある。自分たちの支援する候補が協会の地方支部の会長選挙で勝ったなんて自慢もしていたし、場合によってはシュミツルとポボルスキーが一騎打ちなんてことになるのかもしれない。見たいような見たくないような……。
2021年3月12日24時。









2021年03月13日

ゼマン大統領がまた(三月十日)



 大統領も二期目に入って、次の選挙を気にする必要がなくなったせいか、一期目以上に問題発言を繰り返して、チェコの社会を混乱させ、分断を助長しているゼマン大統領が、また物議を醸すような発言をして批判を受けている。ブラトニー厚生大臣と、チェコ国内で使用する医薬品の認可や管理を担当している役所である医薬品管理局(と訳しておく)の局長を解任するように、バビシュ首相に求めたのである。
 その理由は、ゼマン大統領が推し進めるロシアと中国製の未認可ワクチン、とくにロシアのワクチンの導入を拒否していることである。ブラトニー氏は、自分が厚生大臣である間は、絶対にEUで認可されていないワクチンを接種させることはないとまで断言している。医薬管理局の局長は、仮にチェコ国内で、EUの認可の前に、特別に認可することが可能だとしても、現在ロシアから提供されているワクチンの情報だけでは、認可のしようがないというようなことを言っている。
 スロバキアの認可担当の役所の長官も同様のことを言っていたし、これがおそらくヨーロッパ中のワクチン専門家たちの意見の一致するところではないかと思う。少なくともロシアのワクチンに関してはEUの認可を求める手続きが取られたという話なので、情報の不足というのが本当に足りないだけなのか、何か隠されていることがあるのか明らかになるだろう。

 ゼマン大統領はこの意見に対して、西側のものはすばらしくて、東側のものは駄目という思い込みから認可できないといっているのではないかと非難した上で、大切なのはワクチンが手に入って接種できるということであって、どのワクチンかは二の次だとのたまう。そして、ワクチンの接種が遅れることで死者の数が増えたら、その責任はロシアのワクチンの導入を拒否した厚生大臣と管理局長にあると付け加えた。

 どれだけあるかも確認されていない副作用、中国のものは生産者が認めているだけで数十に登るとか言ってたけど、その副作用で亡くなる人が出た場合の責任はゼマン大統領が取るというのだろうか。感染症で亡くなる人が出るのと、その感染症に対する未認可ワクチンを接種して副作用で亡くなる人が出るのと、どちらが政治の責任が重いかと言えば後者に決まっている。
 それに現在のチェコの最大の問題は、政府が言うようなワクチンの不足ではなく、ワクチン接種のためのシステムが、チェコ語で言うところのグラーシュで、非常に非効率的で混乱を極めているところにある。供給されたワクチンの全てがそのまま接種にまわされるのではなく、一時的に保管されているうちに行方不明になるものもあるように思える。そうなると、ロシアのワクチンを導入しようが中国のワクチンを導入しようが、種類が増えて混乱が大きくなることはあっても、ワクチン接種が効率的になって、一日辺りの接種数が大幅に増えるなんてことは想像しづらい。

 ゼマン大統領は、この二人に加えて、外務大臣のペトシーチェク氏の解任も求めている。この人事は、連立政府内の協定によって、バビシュ首相が決められることではなく、社会民主党の内部で、最終的にはハマーチェク党首が決定することになるようだが、現時点では解任に応じるとは思えない。党内でハマーチェク下ろしの動きもあると言われているから、社会民主党の内紛をあおるための発言だったのかもしれない。
 ゼマン大統領が解任を求めている理由は、これもロシア、中国がらみで、外務大臣が原子力発電所の増設に関する入札に、ロシア企業と中国企業を除外するように求めていることである。外務大臣としては、ロシア企業や中国企業がチェコに入ってくるとそれを隠れ蓑にスパイ活動する工作員が増えることを危惧しているのかもしれないし、ロシアや中国にチェコの原子力技術が漏れる可能性を危惧しているのかもしれない。個人的にも、チェコのエネルギー政策の柱である原子力発電所の建設にロシア、中国という得体の知れない、何をしでかすかわからない国の業者が関るのは避けるべきだとは思う。それが国の安全保障というものである。
 ゼマン大統領は、それなりの技術があれば、安いほうがいいと考えているのか、ロシアや中国と関る危険性を完全に無視している。いや、逆にロシアや中国と関ることをメリットだとしか考えていないようである。だからつねに、EUの枠内であっても、ロシア、中国の肩を持つ発言を繰り返すのである。ロシアはまだしも中国は、絶対にやめておいたほうがいいと思うのだけどね。軒先を貸して母屋を奪われることになりかねないわけだしさ。
2021年3月11日24時。




スロバキアの厚生大臣は、マトビチ氏とは違う党の人だと思っていたのだが、そうではなく、マトビチ氏のロシアワクチン導入に積極的に関っていたらしい。それで連立を組む他の政党から、マトビチ氏以上に強く辞任を求められていた。そして、マトビチ氏がかばいきれなくなったのか、トカゲの尻尾きりだったのか、辞任したというニュースが入ってきた。スロバキアでもロシアのワクチンをそのまま使うのではなく、独自の検証を行なう予定だというのだが、それならEUで認可されたワクチンの入荷を待つのと大差ない結果になるような気もする。











2021年03月12日

六格の使い方(三月九日)



 チェコ語の格変化の6番目の格は、単独では使われることはなく、つねに前置詞と共に使われる。そのため前置格と呼ばれることもあるようだ。そんな説明を受けたら、前置詞はつねに6格に結びつくと思いたくなるのだが、全くそんなことはなく、前置格をとる前置詞の数も実はそれほど多くない。看板に偽りありだと感じたチェコ語学習者も少なくないのではないかと思う。

 六格をとる前置詞として絶対に覚えておかなければならないのは、場所を表す「v」と「na」である。どちらの前置詞をとるかは、後に来る名詞によって異なるが、細かいことはこちらの「場所を表す前置詞」をご覧頂きたい。チェコ人にとってはルールがあるようだが、学習して覚えるしかない外国人にとっては、ルールなんか存在しない迷宮のようなものである。個人的には、原則的に「v」を使って、「na」を取る名詞は頑張って覚えることを推奨している。
 また、「v」と六格の組み合わせは、時間を表す場合にも使用される。ただし、慣用的に使用できるものが決まっているので、覚えていくしかない。サマースクールで復習したときの記録は「チェコ語の時間を表す表現についてB」にまとめてある。一言で言えば、頑張って覚えるしかない。それに対して「na」と六格で時間を表すのは、「na jaře」しかないので、楽である。

 次に重要な六格をとる前置詞は、「o」であろうか。日本語の「〜について」とほぼ対応するので、日本人には使いやすい前置詞である。ただし「興味を持つ」の場合には、前置詞は同じ「o」だが、後ろに来るのは四格なので注意しなければならない。また、週末、クリスマス、イースターなど特殊な名詞と組み合わせて時間を表す表現として使われることもあるが、これは数が少ないので覚えればいい。

 続いては「po」である。「後で/その後」を意味する「potom」を知っていれば、「tom」が「ten」の六格であることに気づけるだろう。一つ目の使い方は、時間の前後関係を表す「〜後」で、名詞に付けて、「po škole(学校が終わった後)」「po práci(仕事の後)」などのようにも使えるし、時間を表す順序数詞と組み合わせて、「po páté(五時過ぎ)」などと使うこともできる。
 また、「旅行する」など移動を伴う動詞の、移動する場所を表すのにも、「po」が六格とともに使われる。「チェコに旅行する」なら、方向を現す「do」を使うが、「チェコ(国内)を(あちこち)旅行する」の場合には「po」が必要になる。「道を歩く」などの日本語の助詞「を」の特殊な使い方に近いと考えてもいい。
 他にも動詞の中には、「po+六格」を必要とするものがあるけれども、それについては、上に書いたことも含めて、改めて一文物することにする。

 最後に取り上げる、六格を取る前置詞は「při」である。これも「po」と同様、一語化した「přitom(同時に)」という言葉が存在する。意味としては「〜の際に」と訳すことが一番多いだろうか。これが使えなくても、「když(〜時)」を使った節で代用できるので、あまり困らない。ただ、ややこしい長い文を作るときに、うまく使えるとわかりやすい文になるから、覚えて損はない言葉である。特別にこの前置詞を必要とする動詞は思いつかないけれども、これについても用例を挙げて一本書くことにしよう。
2021年3月10日23時。











タグ:六格 前置詞

2021年03月11日

ひきこもり生活再び(三月八日)



 三月の初めに、チェコ政府が企業に対して従業員の感染検査を義務付けてからも、うちの職場では、うちは対象外だとして、検査はしないと言っていたのだが、今日になって検査義務の対象になっていたから、やはり検査を行うという連絡が来た。期日までに検査を受けないと職場の建物に入れなくなるらしく、以後は週に一回の検査が義務付けられるようだ。
 これが、政府が目論んでいた簡易検査キットで自分で検査するというタイプの検査なら、面倒くさいと思いつつ検査をしていただろう。しかしうちの職場では、場所はまだ決まっていないけど、検査会場に出向いて検査すると言っていて、正直そこまでして職場での仕事にこだわりたいとは思えないのである。
 仕事は職場でするほうがオンとオフのメリハリが着いて効率がいいし、ネットの接続も安定しているのでオンラインでの会議なども問題は少なくなる。今日は建物全体のネットがダウンしてオンラインの会議のためにあわてて自宅に戻ったけれども、こんなのは例外である。だけど、わざわざ検査を受けに出かけるぐらいなら、多少の不便は我慢して、いわゆるホームオフィスにしてしまったほうがましである。

 そもそも、外出を減らして自宅から仕事をするように求められているのは、他人との接触を極力減らすためである。その点、現在の職場での仕事は、広い部屋の中に一人だけで仕事をしており、せいぜいトイレや水を汲みに部屋を出るときに廊下でまれに同僚とすれ違うぐらいで、他人との接触はほとんど発生しない。建物の受付のおばちゃんと話すこともあるけど、あっちはガラスで仕切られたブースの中にいるから、もちろんお互いレスピレーターもつけているし、感染につながるような接触にはならない。
 それが、どこになるかはわからないけど検査会場まで出かけるとなると、他人との接触を極力減らすために予約制にするとは言っているけれども、ゼロになることはありえないし、毎日職場まで行って一人で仕事をして帰るまでの間の接触よりはるかに多くなることは明らかである。去年の今頃、日本である漠然とした不安に駆られた人たちが検査を求めて検査機関に殺到したのと同じで、本末転倒じゃないかと思ってしまう。

 そういえば、職場に出ている従業員に一日一枚のFFP2レベル以上のマスクを支給するというのも企業に義務付けられたはずなのだけど、うちの職場ではまだ実行されていない。建物の受付で配布を始めるとかアナウンスだけはあったけど、チェコの政府と同じで現時点では約束だけで、このままだと働いている人たちの信頼を失うぞ。選挙なんかないから支持を失っても気にも留めないのだろうけどさ。
 職場においてある仕事用の資料や、職場のPCにしか保存していないやりかけのファイルなんかを取りに行かなければならないから、明日はまだ職場に出るとして、明後日から引きこもり生活を再開しよう。去年の運動不足は堪えたから、毎日ちょっとだけ散歩に出るようにしようか。散歩で外を歩くだけなら、FFP2のマスクじゃなくてもいいはずだから、知り合いが置いて帰った外科用マスクっぽく見えるのを使ってみようかな。
 自分自身が感染することには特に抵抗はないのだが、症状が出て陽性と判定されて、自宅隔離を共用されたり、入院させられるような事態はできれば避けたい。今の生活で感染したりさせたりする可能性はほとんどないとは思うけれども、精度が高い検査でも一定数出るとされる誤判定で陽性なんてことになったら、面倒くさいことになるから、検査は避けて自宅での仕事にシフトしたほうがいいよな。全く政府も面倒なことを始めたものである。
2021年3月9日9時30分。








2021年03月10日

チェコのニュースが日本で(三月七日)



 今週末になって立て続けに、インターネット上の日本語のメディアでチェコの現在の惨状を紹介する記事を見つけた。一つ目はCNNの「失策重ねるチェコ、コロナ新規感染者数が過去最悪に迫る」という記事。CNNはチェコのテレビ局のプリマと組んでCNNプリマというチャンネルを始めているから、チェコについても情報が入りやすくなっているのだろう。なかなか正確な記事である。記事を書いた人の名前も「イバナ・コトソバ」でチェコ人っぽい苗字だし。

 あれこれ小さな不満はあるが、一番大きな不満を挙げるとすれば、イギリスの研究者のカルペイト氏の発言だろうか。氏は「チェコのメディアが流行初期の混乱の一部を招いた」として、「賛否両論のロジック」が使われていたと批判する。しかし、去年の今頃、ヨーロッパでも流行の兆しが見え始めた頃からの経緯を思い返すとこの批判は正しいとは言い難い。
 少なくとも、チェコテレビでは、チェコ国内で患者が出てからも、しばらくはゲストで呼ばれる専門家は、政府の公式見解と同じで、適切な対応さえすればそんなに恐れるべき病気ではないことを強調する人ばかりだった。それが政府が衛生局の局長を更迭して方針を180度変えたときから、逆に危険性を訴える人ばかりが呼ばれて解説するようになった。当時はまだ政府の記者会見も含めて関連番組を真面目に見ていたのだが、チェコテレビの報道に対して、手のひら返しやがったと思ったのは明確に覚えている。政府の政策に合わせた報道をすることで社会の混乱を防ごうとしたのかもしれないが、これを「50対50」の報道というのは無理があるような気がする。

 ついでなので、オストラバ大学の「マダール」氏こと、マジャル氏についても触れておこう。この人、どうも去年の春の感染症対策の主役となったプリムラ氏とあまり関係がよくないようで、ボイテフ厚生大臣が辞任したときに、これまでで一番いっしょに仕事がしやすい大臣だったと述べて辞任することを残念がる発言をしていた。その後オストラバ大学の医学部の学部長の選挙に出て選出されるのだが、プリムラ氏は対立候補を支援していたといわれる。こういう専門家同士の対立ってのも対策を実施し徹底するのにはよくなかったと思われる。プリムラ氏は自分で決めた規制を自分は守らないという人で、多くの人に規制をまじめに守るのは馬鹿しいと思わせるのに成功したし。
 マジャル氏が学部長に就任したのは、オストラバ大学の医学部が文部省によって認可の取り消しを受けたことで、前任者が辞任、もしくは解任されたからである。ニュースでは、入試に不正があったことが原因だといっていたが、日本的な裏口入学ではなく、定員割れを防ぐために合格基準に達していない学生も入学させたんだったかな。確か6月か7月には、新しい学部長の選挙が秋に行なわれることが決まっていたはずだから、この記事にある辞任の理由が正しいかどうかは……。

 とまれ、チェコ国内で生活している人間としては、政府の対策が遅れたことよりも、政府とその政策、規制が信頼を失って、規制が出されても守らない人が増えていることが、現在の最悪の状況の最大の原因だと感じている。信頼を失った原因の多くはバビシュ首相を初めとする与野党の政治家が、規制を政治にしてしまったことだろうけど、プリムラ氏を初めとする専門家とされる人たちの言動もある程度は影響を与えているはずだ。

 もう一つの記事は、「コロナ感染急増のチェコ、患者の国外移送検討医療崩壊の恐れ」というAFPの記事。CNNと比べると正確さに欠ける印象である。感染者数なんかのデータには間違いはないからいいけれども、末尾の「コロナ流行の第1波では本格的なロックダウン(都市封鎖)が行われ、比較的小規模な流行で済んだ。だが政府は、今回は同様の措置を取らないことを決めている」というのは大間違いで、現在の規制は去年の「本格的なロックダウン」とされるものよりもはるかに厳しいものになっている。
 去年も春の国境の封鎖などはロックダウンとは呼んでいなかったと思うのだけど、リトベルを封鎖したのは、確かにロックダウンと呼んでもいいものだったかな。ただ、チェコ政府が「ロックダウン」という外来語を使い始めたのは、秋になってからだった。秋もロックダウンはしないと言いながら、実質的にはロックダウンだったし、現在は、ロックダウンと呼んでいるかどうかは知らないけど、これまではなかったレベルでの移動の制限が課されている。この記事バビシュ首相の言葉のごまかしに影響されたかな。

 それにしても、ここに紹介した二本の記事はどちらも外国系の通信社が配信している翻訳記事で、日本のマスコミは何をやっているんだと言いたくなる。チェコのようなヨーロッパの小国には関心がないのだろうか。まあ、どうせでたらめを書き散らかされると考えたら、現状のほうがはるかにましか。
2021年3月8日23時










posted by olomoučan at 07:15| Comment(0) | TrackBack(0) | チェコ

2021年03月09日

チェコ語コーパス(三月六日)



 知り合いからチェコ語のコーパスってないのという質問が来た。自分では使ったことがないのだが、デジタル化が大好きなチェコのこと、存在していないはずはないということで探してみた。最初に見たチェコ語の正字法などを決めている国立チェコ語研究所(と訳しておく)のサイトには、コーパスはあったけれどもテレビやラジオの放送データを基にした話し言葉のコーパスしかなかった。

 それでさらに捜索を続けると、「チェコ国営コーパス」とでも訳せるようなものが出てきた。こちらは書き言葉中心のコーパスで、話し言葉のコーパスも含むいくつかの部分から成り立っているようである。日本語のコーパスなんか使う気にはならないけれども、チェコ語のものならちょっと遊べそうな気もする。どんな機能があるのか試してみた。
 とりあえず「Japonsko」を入れてみた。よくわからないのは、何もしてないのに英語表記になっていることで、しかも右上には英語表示に切り替えるボタンがある。念のために英語ボタンを押すと、チェコ語ボタンが現れたので、それを押したらチェコ語表示に切り替わった。うーん、何の意味があるのだろうか。

 「Japonsko」はチェコ語においては、100万語に約35回の割合で現れるとか、話し言葉と書き言葉、書き言葉の中でも専門書やフィクションに現れる割合なんて情報もあるのだが、一番目を引いたのはどの形でどのぐらい使われているかという情報だった。それによると、「Japonsko」が29.1パーセント、「Japonska」が27.4パーセント、「Japonsku」が39パーセント、「Japonskem」が4.5パーセントという結果になった。
 「Japonskem」が一番少ないのは、この形になるのが7格しかないからだろう。「Japonska」も2格だけだが、「do Japonska」「z Japonska」という移動の目的地、もしくは起点を表す表現がよく使われることを示している。1格と4格、5格の形である「Japonsko」よりも、3格と6格の「Japonsku」のほうが割合が高いのは意外だったが、場所を表す「v Japonsku」が使われる機会が一番多いからだと考えてよさそうである。
 他の地名も試してみれば、地名の場合には場所を表す6格の形が一番よく使われているなんて傾向が出てくるのかもしれないけれども、そこまでする気にはならない。それよりも重要なのは、我がチェコ語の名詞を格変化させるときのモットー、「困ったらU」が、少なくとも「Japonsko」に関しては有効であることが確認できたことである。

 またコロケーションのデータでは、中国や韓国などの他の国名と共によく使われていることがわかるが、津波と地震も頻繁に一緒に使われる言葉として上げられているのが注目に値する。しかも津波は、最近の「cunami」というチェコ化した表記ではなく、「tsunami」という日本式のローマ字表記が使われている。これはひょっとしてと、考えたらその通りだった。
 通時的な使用割合の変化を表すグラフも表示されるのだが、使用数が圧倒的に多いのが2011年だった。言わずと知れた東日本大震災の際に、津波と地震を伴って日本という言葉が例年よりもはるかに多く使われたのである。確かにあの頃は、地震に限らず日本に関する記事やニュースが多く、直接は関係のないものでも、枕、もしくは結語として地震に触れるものも少なくなかった。この手のデータから事情を推測するのはなかなか楽しい。

 ちなみに、形容詞の「japonský」は「japonské」という形で使われる割合が最も高く、福島という言葉と共によく使われているようだ。「japonské」は女性の単数2、3、6格、複数の1、4、5格、中性の単数1、4、5格、男性名詞の複数1(不活動体のみ)、4、5格と、この変化形になる格が多いことを考えると、当然だとも言えそうである。
 チェコ語を勉強していてちょっと飽きたときには、このコーパスで遊んでみると、勉強を続ける意欲がわくかもしれない。
2021年3月7日24時30分。



ちなみにコーパスはチェコ語では「korpus」となる。発音はもちろん「コルプス」である。






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チェコとスロヴァキアを知るための56章第2版 [ 薩摩秀登 ]



マサリクとチェコの精神 [ 石川達夫 ]





















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