2021年03月20日
キラキラネーム(三月十七日)
ヤフーでこんな記事を見つけて読んでしまった(リンク先はヤフーではなく出稿元のもの)。ユーチューバーなるものには全く興味はないのだが、名前の付け方、漢字の読ませ方は気になるところである。記事では、読みにくい名前全体を問題にしているようだが、難読の名前でも読み方を聞いて納得できるものと、納得できないものがある。いわゆるキラキラネームは、後者の読み方が納得のできないものを指すのだろう。確か呉智英が「暴走万葉仮名」と名付けていたのがこれだと思う。
ヤフーのコメント欄にもいろいろ自分の体験を書いている人がいたけれども、以前に比べると、小説の中なんかでも、漫画の登場人物じゃないんだからと言いたくなるような名前が増えているような気がする。芸能界なんかだと以前からその手の名前をたまに見かけることがあったことを考えると、親の自己顕示欲が子供の名前に現れたと考えるのがいいのだろうか。子供にとってはたまったものではないだろうけれども。
この手の当て字の名前を全て否定する気はない。森鴎外の子供たちの名前のように、外国語の名前に漢字を当てて付けられた名前でも、漢字の読み方が納得できるものであれば、特に気にはならない。一般的な音読み訓読みが組み合わされたものであれば、文句はないのだ。しかも鴎外の子供の場合には、名前の音自体が、「オト」とか「マリ」とか、日本語に存在する音の並びであることも、違和感を持てない理由になっている。「マクス」はどうかなと思わなくもないけど、「真樟」という字を見るとあってもおかしくない気がしてくるから、鴎外はやはり流石である。
最近のこの手の当て字名前の中で、個人的に読ませ方が気になるのは「心」だろうか。この字を名前で使うこと自体が以前は一般的ではなかったと思うのだが、一字名で「こころ」と読ませるものならまだ納得がいく。名前ではなく号のようにも聞こえるけど、「○心」で音読みの「しん」を使うのも理解できる。だけど、いくつかの小説の登場人物の中には「ここ」とか「こ」とか読ませているものがあって、それだけで登場人物の魅力が失われるような気がした。ギャグ漫画なら何でもありだけど、真面目な話で重要な登場人物がこんな名前だとついていけなくなる。
もちろん、「心」よりもはるかにひどいのはいくらでもある。しかし、そんなのは脳が受け入れるのを拒否するので、覚えていないのである。つまり文章に取り上げることもできない。幸いにして、外国にいるおかげで、そういう名前の人と個人的には会う機会はないのだけど、会ったときにどんな反応をすればいいのか悩んでしまう。名字なら、読めなければ聞けばいいし、というよりは、いくつか読み方が考えられる場合には、聞いておかないと困ったことになる。「やまざき」と「やまさき」、「なかだ」と「なかた」など、どちらで読むかこだわっている人も多いしさ。
また、例によって枕が長くなってしまったのだが、チェコ語には、この手のキラキラネームのようなものはないのかと言うと、なくはないのである。漢字がないので当て字のひどい名前というのはないのだが、チェコ語の名前の体系から完全に外れた名前を付けようとする親がいるのである。チェコではカレンダーのそれぞれの日の下に、その日の聖人の名前が書かれている。一般にはその名前の中から子供の名前を選ぶのだが、外国の有名人やドラマの登場人物の名前を子供につけて喜んでいる親もいるんだとかつて師匠が愚痴っていた。
その名前が英語起源、ドイツ語起源の名前なら、国際化の名の下にあまり問題にされることはない。以前は名前も翻訳していたので、チェコ語で使う名前と、ドイツ語で使う名前が違うなんてこともよくあったのだが、最近は普通に英語っぽい名前、ドイツ語っぽい名前を使っている人も多い。ただ普段は、その名前のチェコ語形から作られたあだ名で呼ばれることが多いだろうけど。
問題は、ラテンアメリカあたりのテレノベラとよばれる安っぽいつくりのドラマの主人公の名前を付けられた子供たちで、師匠が教えてくれたのは、エスメラーダだったかな。こんなのチェコ語のバージョンも存在しないし、チェコ語の中では浮いてしまって子供がかわいそうだと言っていた。
最近は、日本語のできる知り合いが、チェコの役所から「キララ」とかいう名前をつけたいという親がいるんだけどという相談を受けて、日本語の名前としてどうなのという質問がこちらにまで回ってくるなんてことがあった。漫画かなんかの登場人物の名前なんだろうけど、とりあえず普通の名前ではないよと答えておいた。それにしても、男の子だったのだろうか、女の子だったのだろうか。命名が認められたのだろうか。
2021年3月18日20時30分。
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