2021年03月13日
ゼマン大統領がまた(三月十日)
大統領も二期目に入って、次の選挙を気にする必要がなくなったせいか、一期目以上に問題発言を繰り返して、チェコの社会を混乱させ、分断を助長しているゼマン大統領が、また物議を醸すような発言をして批判を受けている。ブラトニー厚生大臣と、チェコ国内で使用する医薬品の認可や管理を担当している役所である医薬品管理局(と訳しておく)の局長を解任するように、バビシュ首相に求めたのである。
その理由は、ゼマン大統領が推し進めるロシアと中国製の未認可ワクチン、とくにロシアのワクチンの導入を拒否していることである。ブラトニー氏は、自分が厚生大臣である間は、絶対にEUで認可されていないワクチンを接種させることはないとまで断言している。医薬管理局の局長は、仮にチェコ国内で、EUの認可の前に、特別に認可することが可能だとしても、現在ロシアから提供されているワクチンの情報だけでは、認可のしようがないというようなことを言っている。
スロバキアの認可担当の役所の長官も同様のことを言っていたし、これがおそらくヨーロッパ中のワクチン専門家たちの意見の一致するところではないかと思う。少なくともロシアのワクチンに関してはEUの認可を求める手続きが取られたという話なので、情報の不足というのが本当に足りないだけなのか、何か隠されていることがあるのか明らかになるだろう。
ゼマン大統領はこの意見に対して、西側のものはすばらしくて、東側のものは駄目という思い込みから認可できないといっているのではないかと非難した上で、大切なのはワクチンが手に入って接種できるということであって、どのワクチンかは二の次だとのたまう。そして、ワクチンの接種が遅れることで死者の数が増えたら、その責任はロシアのワクチンの導入を拒否した厚生大臣と管理局長にあると付け加えた。
どれだけあるかも確認されていない副作用、中国のものは生産者が認めているだけで数十に登るとか言ってたけど、その副作用で亡くなる人が出た場合の責任はゼマン大統領が取るというのだろうか。感染症で亡くなる人が出るのと、その感染症に対する未認可ワクチンを接種して副作用で亡くなる人が出るのと、どちらが政治の責任が重いかと言えば後者に決まっている。
それに現在のチェコの最大の問題は、政府が言うようなワクチンの不足ではなく、ワクチン接種のためのシステムが、チェコ語で言うところのグラーシュで、非常に非効率的で混乱を極めているところにある。供給されたワクチンの全てがそのまま接種にまわされるのではなく、一時的に保管されているうちに行方不明になるものもあるように思える。そうなると、ロシアのワクチンを導入しようが中国のワクチンを導入しようが、種類が増えて混乱が大きくなることはあっても、ワクチン接種が効率的になって、一日辺りの接種数が大幅に増えるなんてことは想像しづらい。
ゼマン大統領は、この二人に加えて、外務大臣のペトシーチェク氏の解任も求めている。この人事は、連立政府内の協定によって、バビシュ首相が決められることではなく、社会民主党の内部で、最終的にはハマーチェク党首が決定することになるようだが、現時点では解任に応じるとは思えない。党内でハマーチェク下ろしの動きもあると言われているから、社会民主党の内紛をあおるための発言だったのかもしれない。
ゼマン大統領が解任を求めている理由は、これもロシア、中国がらみで、外務大臣が原子力発電所の増設に関する入札に、ロシア企業と中国企業を除外するように求めていることである。外務大臣としては、ロシア企業や中国企業がチェコに入ってくるとそれを隠れ蓑にスパイ活動する工作員が増えることを危惧しているのかもしれないし、ロシアや中国にチェコの原子力技術が漏れる可能性を危惧しているのかもしれない。個人的にも、チェコのエネルギー政策の柱である原子力発電所の建設にロシア、中国という得体の知れない、何をしでかすかわからない国の業者が関るのは避けるべきだとは思う。それが国の安全保障というものである。
ゼマン大統領は、それなりの技術があれば、安いほうがいいと考えているのか、ロシアや中国と関る危険性を完全に無視している。いや、逆にロシアや中国と関ることをメリットだとしか考えていないようである。だからつねに、EUの枠内であっても、ロシア、中国の肩を持つ発言を繰り返すのである。ロシアはまだしも中国は、絶対にやめておいたほうがいいと思うのだけどね。軒先を貸して母屋を奪われることになりかねないわけだしさ。
2021年3月11日24時。
スロバキアの厚生大臣は、マトビチ氏とは違う党の人だと思っていたのだが、そうではなく、マトビチ氏のロシアワクチン導入に積極的に関っていたらしい。それで連立を組む他の政党から、マトビチ氏以上に強く辞任を求められていた。そして、マトビチ氏がかばいきれなくなったのか、トカゲの尻尾きりだったのか、辞任したというニュースが入ってきた。スロバキアでもロシアのワクチンをそのまま使うのではなく、独自の検証を行なう予定だというのだが、それならEUで認可されたワクチンの入荷を待つのと大差ない結果になるような気もする。
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