いじめをなくす為の組織『いじめ更生委員会』
更生委員の潮見ヒヨリはいじめの恐ろしさを全国の子ども達に伝える為
星の砂小学校6年2組の子ども達と共に道徳ビデオを制作することになる。
ビデオで人生を破壊されたクズ達の群像劇です。
▼え…何これ…何このゲーム…
なんだかすごいゲームをやってしまった感があるな…
まず本作最大のキーアイテムである道徳ビデオ…
これはいじめを無くすための啓蒙ビデオ……のような物だ。
なんとも素晴らしい物に思える。
…だがそこは、お約束ともいえるダークな作風…
道徳ビデオの撮影は胸くそな末路を辿る
…
当たり前だよなぁ?
…こんなもの、上手く行く筈がない。
そもそも『いじめ更生委員会』の時点で胡散臭いし、道徳のための教材を子供に作らせる、しかも演技させることに歪なものを感じるのだが、やはり子供とは制御できないものなのだ
…
そんな大方の予想通り、道徳ビデオは多くの人生を破壊する…
▼…ところがこのゲームの恐ろしいところは、そんな胸くそアイテムである道徳ビデオが、転じて登場人物たちに幸せを呼び込むアイテムになる事なんだよな。
正直なところ…これにはたまげた。
とんでもない逆転劇だ。
道徳ビデオのコンセプトは仕掛け人である潮見ヒヨリも言及していたが…
それでもこのような形での破壊からの再生が待っているとは…
まさか16年もの時を経て…潮見ヒヨリの仕掛けた道徳ビデオが不幸な子供や大人に幸福をもたらすとは…想像もつかなかった…
人間模様も大きく絡ませたった1つのアイテムをめぐるストーリーをここまで膨らませるとは、ストーリーテリングの上手さに驚かされる
▼ただの赦しではない。
終わってみれば潮見ヒヨリをはじめとした、皆が幸せな人生を辿っている。一度は地獄に堕ちたのに。
このジェットコースターのような激しいストーリーを、是非みなさんにも体験して欲しい。
16年後の未来が描かれるエンディングでは、人は変われるんだなと…爽やかな感動に包まれる筈だ。
▼作者が得意とするダーク〇〇、ダークBLは本作でも健在。
支配関係が逆転しているナギトとミナミには「ネコ実験室」を連想するが、本作はこれまでと違い2組の男女が登場する。密接に絡み合う4人が、作品に密度の濃さを生んでいる。
私としては…
ネタバレなので伏せるが、ナギトとミナミ以外の、もう1組のカップルに感情移入してしまった。
相手の罪ごと、お互いの人生を受け入れる…
そんな2人で歩む人生とは、なんと充実したものか。
これこそ理想のパートナーではないか。
憎しみの果てに最愛の人と出逢い、
憎しみを忘れてしまうほどの愛に支配される…
…そして迎えた結末とは……
…
人間の儚さを感じる。
評価B+
75点
作者のゲームは主人公たちがどんな不幸のどん底に叩き落とされても爽やかな結末を迎えますが、
本作は落ち具合が半端ではなかったため「ここからどう盛り返すんだ?」「どうやって感動的な結末に持っていくんだ?」とハラハラした。
…しかし未完成だった呪われしビデオを完成させることで幸福に導くとは、思いもよりませんでしたね。
HAPPY ENDでもTRUE ENDでもないけれど、これが彼らの幸福でしょう。
登場人物みんなクズとはいうものの、ただ環境が恵まれなかっただけで真人間ばかり。
女の子はみんなオッパイが大きくて可愛いし(ヒヨリは8年後のほうが断然エッチ)、罪、赦し、愛がテーマの作品をお探しのあなたには、特におすすめの良作です。
…
続いては恒例のフリーゲームコラム、管理人の小話…
本日は3本立て。
【先日レビューした「幸を運ぶ怪物」だが、ストーリーが”一部ノンフィクション”らしい】
▼注意書きの表示が、一瞬のため見落としていた。
レビュー感想の「創作で自己表現をしたり、自分の体験談を他人に知って欲しい…驚きや感動を共有したい…」…という文言は全くの偶然であり、作者の体験談が元になっているという前情報は、いっさい知らなかった。
まだ創作者が自由にフリゲを作っていた時代の香りを嗅ぎ取った為と、話の流れから、この文言を書いたにすぎない。
…
▼しかし私はこの「一部ノンフィクション」が、とても腑に落ちた。
…その理由は……
…
「幸を運ぶ怪物」から「色は黒に包まれて」に近しいものを感じたから。
ご存じの方も多いだろうが名作「色は黒に包まれて」は、作者の実体験を元にしたフリーゲームである。
ブラック企業(色は「黒」だけに)勤務時代の余りにも熾烈な体験や、それ以前の作者の人生までもが、フリーゲームという自己表現に乗せて語られている…
フィクションというにはあまりにもリアリティがあり、怖くなるほどだ。
…そんな黒い物を、「幸を運ぶ怪物」からも感じたんだよね。
…で、実際にノンフィクションだったと。
…我ながら非常に鋭い嗅覚を持つレビュアーだと、熱い自画自賛をしてもいいだろう。
▼しかし一部とは何が一部なんだろうか?
エピソードなのか、キャラクターなのか?
………それっぽいのは、水無親子か凩かな(一番リアリティがあるのは虐待オヤジだけど、さすがに題材にできないだろう)。
正解なら、熱い自画自賛を繰り返す。
…ちなみにこのゲームは「鬱ノベル」とのことだが、
鬱ゲーというにはエンディングでむしろ希望が残ったと解釈した。
夏鈴花も人間になれたし、彼女は多くの人を救ったから。
なかなかに荒唐無稽だし文章がところどころ変だが…そもそも登場人物たちが変だから、彼らの言葉や思考と思えば違和感もない。
ある種の傑作なので、是非プレイして欲しい。
この勢い、感じて。
【配信から3カ月が経過した「血怨 -完全版-」。レビュー感想では異例の200点という超高評価をしたが……敢えてスルーした最大の欠点に、そろそろ触れたい】
▼名作といえど、むろん欠点がないわけではない。世の中に完璧な物は存在しない。完璧と言う言葉自体が矛盾である。
難易度が高すぎるという批判が多いようだが、私はこの程度ちょろいとまで思っている。
実際、すべての謎は瞬間的に解いた(頭良いでしょ?)。
ストーリーも上質と評価している。話の続きも結末も、とても気になった。
では、私が考えるこの名作最大の欠点は何か?
…
それは…
ラスボスが安っぽい。
これだ、これに尽きる。
敢えてレビュー感想からはカットしたが、本当に安い。
なんだろうあの、ベタな悪の親玉みたいな喋りは。世界観と違うし、浮いている。あまりにも雑な芝居めいており、興醒めしたこともある。
PS2の名作ギャルゲー「ゆめりあ」で主人公がラスボスに「その悪の親玉みたいなノリ、やめませんか?」と言ってたが、
私も「血怨 -完全版-」のラスボスに、そう言いたくなった。
作者は「血怨 -完全版-」を作るにあたってある程度古語の知識を持ち合わせおり勉強もしただろうが、それを台詞に落とし込むのは苦手だったんじゃないか。あのような時代劇めいた悪党は、作るのが難しいだろう。
もしラスボスのキャラクターが意図的なのだとしたら、かなりスベっている。
【月イチのお約束】
▼1年前のその月にレビューした良作から更に良作を選りすぐる。
今回紹介する1年前の7月配信の良作は…
明日、初めて彼女と
自動生成ダンジョン!……ならぬ、自動生成ヒロインを用いた一風変わったギャルゲー。
ビジュアルも改造可能。
ストーリーは割と胸くそ?
出会い系の闇って、こんな感じなのかなぁ?
【このカテゴリーの最新記事】