ざっとレビューと軽い攻略をしていきます。ネタバレ全開なので、クリア後に読むことをオススメします
「少年は自問自答を繰り返す。」
街に住む大人になりたくない少年が、
人の思いに触れて少しだけ成長するお話。
▼オリジナリティ
普通のADVだが児童文学的で詩的な文章センスが凄い。ただ誤字脱字寸前の変な言い回しも多い。
いわゆるギャルゲーや乙女ゲーと違って攻略対象がおばあちゃんとか旅人とか、一風変わった人たちなのも面白い。昔こういうゲーム、よくあったよね
▼グラフィック
PS2初期を思わせる、古臭くも懐かしいタッチ。ひつじ村とか思い出した。総じて、絵がとても上手い。一枚絵がないのが惜しい。そしてエンディングに驚きの演出が(後述)
マナローラの画像を使ってるみたいだが、イメージビジュアルに海があったり、鳥が飛んでたりする割には海岸の街感は、0
▼音楽
フリー音源だが使い方が上手い。聞いてるとフリー音源でも好きになる
▼システム
快適で、スキップだけじゃなく次の選択肢までのカットも可能。ただ次の選択肢までを選ぶと重くなる
▼シナリオ
前述のようにフリーゲーム、同人ゲームでは滅多にない、児童文学的、詩的な文章表現、セリフ表現がとてもうまい。
逆にフリゲ、同人ゲーにありがちなラノベチックな文章が全く無い。
フリーゲームの面白いシナリオ数あれど、殆どがラノベ的、マンガ的なので、作者が何を題材にシナリオを吸収したのかは謎だが、こういう文章を書けるセンスは非常に貴重。特にお嬢様のセリフは知的で皮肉が効いてて面白い。
何故か大人になりたくないと思い込んでいる少年(13才くらいかな?)の大人になるための成長物語をベースに、恋愛、家族愛、兄弟愛などをミックスしている
攻略キャラは4人で、それぞれEDがノーマルエンドとグッドエンドで2種類、累計8種類のエンディングがある。リストでは上がノーマル、下がグッドで一覧を確認できる(普通は逆じゃないか?)
▼お嬢様編
唯一の恋愛シナリオ。
身分の違う幼馴染、というテーマだが本当に好きな人との恋愛をしたいお嬢様が定番の財産狙いの輩ども相手に奮闘。
執事もカッコイイ。(こういうキャラって大抵敵として出てくるからね)
ラストの手紙の連続は面白い演出だった。
2人はこの後、友達から恋人になるんだろうなあ…
2人で大人になる(意味深)なんやろなあ…
でもお嬢様、体調大丈夫かな?というところで終了。
恋愛の結末は描かれないが、決意を新たにしたことで、子供ながらに将来を誓い合う。ハートフルかつ、なかなか爽やかなカタルシス。80点。
…の筈だったのだが…
その時は想像もできなかったよ……
籠の街がこんな風になるなんて…(後述)
ノーマルエンドはドタバタ劇のまま終了で、恋愛にもならないし、ウェイトが何も成長できない。他のノーマルEDのような「今が楽しきゃいいじゃん!幸せ!」とムリに思い込むシーンもなし
▼おばあちゃん編
ウェイトがクソガキすぎてさっきのお嬢様編に比べると凄いギャップ
好きな女の前ではかっこつけても、祖母の前ではこんなもんなんだろう。
おばあちゃんが孫に厳しいという現実でさえ稀有なタイプで、その理由も深い。ちゃんと自分の死後のことも考えてる。
なんか高齢ニートの息子に対する母親のセリフみたいだな
凄いリアルだった。もしかしてモデルとか、いる?
80点
ノーマルエンドではそんなおばあちゃんがクソガキ相手に折れてしまう。
ウェイトがクソニートそのもので酷い
もうこれ半分バッドエンドだろ
▼坊や編
子供から大人へ、というテーマが一番顕著。
坊やが泣きながら家での現状を語るシーンで、不覚にも貰い泣きしそうになった。
このシナリオのウェイト、おばあちゃん編とはまた打って変わって、精神的に大人すぎる
お前もう、現代の大抵の大人より大人だよ
90点
バッドエンドは恒例の、何も成長せず今が幸せならいいじゃん(いいじゃん)エンド
実は最初こっちのEDになって、え?これがグッドエンド?と思った。
グッドエンドが見れない原因は最初旅人に会ってしまったから
これをやると1日浪費してしまい、どのルートでも強制ノーマルになる。引っかかった人、多いでしょ
▼旅人編
タイトルの籠の街の正体が明かされる。
何故か最後じゃなくても見れるが、シナリオ完結編
序盤から意味深なシーンが連続するが、他のシナリオと雰囲気がガラリと変わり、暗い話。まさか籠の街が流行り病によって主人公以外が死滅した街だったとはね…
伏線が実に巧妙で、旅人と出会うシーンで掠れたセリフが「懐かしい、僕は子供だった」と読めたり、「やっと人に会えた」「夜になればわかる」と街が滅亡していることを示唆していたり、序盤で回答を提示しているのが上手い。
この街が何もない地方都市である、というしつこく振っている話も見事な伏線になっている(そもそも「街」は都会を表すんだが、ってのがずっと疑問だった)。
ウェイトが「この街にあなたの期待するようなものはない」というシーンで、私は地方だから何もないと言ってるのだな、と、見事にミスリードされてしまった。これは作者の策略通りだろう
▼既に死んでしまったおばあちゃんたちからの手紙も泣ける。ネーミングをしない作風だと思っていたが、ここで初めて登場人物の名前が分かるのも妙なインパクトがある
更に、このシナリオで、初めて選択肢
無言だとグッドエンドだが、旅人相手に「言うつもりはない」にしてしまうと何故かバッドエンドになる。ウェイトの反応は同じなのに
この選択肢でエンディングが変わる必然性は、無い気が。ここでバッドになったプレイヤーも多いだろう
▼旅人の正体が大人になったウェイトなのは途中で気付いたが、まさかタイムスリップすることが夢というセリフが伏線になってるとは思わなかった。
携帯電話などの現代アイテムも出ないし、中世ヨーロッパっぽい(背景素材は現在のだろうけど)世界観でタイムスリップ?なんじゃそりゃ???と疑問に思ってはいたが、盲点だった(SFがメジャーじゃない時代にこんな発想をする少年、まあいないだろうし)
▼エンディングでともに旅立つ2人のシーンが、まさかのアニメムービー。
これにはビックリしたね。まさか動画まで作ってるとは。しかもデキが凄くいい
しゃろうのmorningも最高にマッチしてる(これ、フリー音源史上最高のBGMだと思う)
▼悲しい現実に絶望し、ずっと塞ぎ込んでいた主人公にまた笑顔が戻るシーンでは、この音楽も相俟って、涙腺が緩んじゃったよ。
そんな籠の街のピークは、間違いなくここ
そしてラストに籠の街ロゴが出て、旅人の正体に変わったタイトル画面に戻るまでが、ワンセット。
うわぁぁああ…
まるで映画のような演出だ。カタルシスが素晴らしい
怒涛の展開にはかなり引き込まれたし、感動もした。
いいシナリオだ、95点
▼総合評価、90点。ルーキーということでさほど期待してなかっただけに凄い良作でビックリだ。
何よりシナリオが泣けるわ。
泣きゲーだぞ、って方向性で押したほうがもっとDLされただろうね
公式HPのアクセス数(いまだに600〜。1000すらいかない…)などを見ても、ヒットしたとはいい難いが、これは記録より記憶に残る、隠れた良作だよ
作者は現在ウィッシュルーム(ラストウィンドウ)っぽいウタヒメトジュウセイというゲームを作ってるが、籠の街とはかなり違う雰囲気だが、これにも期待だ
▼最後に疑問だが、結局このゲームは、どこまで「大人になりたくない子供ウェイト」の妄想だったんだろうね
冒頭、旅人に話し掛けても他のキャラのルートに入り、ノーマルエンドは見れるので、ここだけ見ると同じ時系列に思われる。だが旅人と会った時点で街は滅亡していないとおかしい
3人のエンディング後のストーリーが旅人編なんだろうか
それとも、このゲームは全て旅人編でウェイトが見た妄想なんだろうか。
それはあまりにも切ないし、物的に手紙の存在が残ってるし、旅人は最初出てこないので、やはり3人のエンディング後のストーリーが旅人編と解釈した
どのエンディングも未来と希望があるだけに、街や住人が死滅してしまうのが本当に切ないゲームだね。
…え?そもそもSF的には、同一人物が同一時間に存在出来ない?出会った瞬間にお互いが消滅する、だからこの話はおかしい、だって?
(籠の街、冒頭風に)
いくら中世だからって、流行り病で死滅した街やそこに1人で住む少年を行政が放置するのはおかしい?
そんな街に残った食べ物なんかがクリーンなのはおかしい??汚染されるのが普通だって???
そもそもウェイトだけ病気にならないのはもっとおかしい???
重機もなにもない時代に、子供が1人であれだけの墓を作れるなんておかしい、どんな無尽蔵のスタミナだよって?????
家にあった手紙にずっと気付かなかったのは、もっとおかしい?????
おいおいよしてくれよ…感動に水をさすのは…
ウェイトは植木屋で鍛えられてるから、きっと体力があったんだよ…(小声)
えっ?まだあるのかい?????
そもそもご都合主義と矛盾に満ち溢れたシナリオ、設定だって??????
…か、籠の街はファンタジーだから…(震え声)
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