長期予報通り今年の残暑は長くて厳しく、9月末というのに未だにツクツクボウシが鳴いているという、私の記憶にない長い夏になっている。会社帰りにせっせと駅まで歩くとしっかり汗をかいてしまうほどまだまだ気温は高めだ。去年も残暑が過ぎたらあっという間に冬になった記憶があるが、今年も秋を感じられないまま冬を迎えそうだ。
19/09/29(日)21:00〜21:49 NHKスペシャル『AIでよみがえる美空ひばり』が放送された。私はひばりファンではないので、何でもタイトルに”AI”を付ければいいものではないだろうにと冷やかし気分で見始めた。
参考:AIでよみがえる美空ひばり
https://www6.nhk.or.jp/special/detail/index.html?aid=20190929
番組前半はボーカロイドの説明に、美空ひばりのボーカル音源を使ってディープランニングを行い、AIが歌唱方法を解析する技術的な話が淡々と進む。試しに『アナと雪の女王』の「Let It Go」を歌わせる場面があったが、確かに美空ひばりぽくカバーしており感心させられた。
中盤では秋元康が30年ぶりにひばりの新曲の作詞を行う心情、その新曲に合った振付を天童よしみがモーションキャプチャーで演じる経緯、歌詞に語りがあるため新たな音声データが必要になり、加藤和也が小学生の時に母が童話を朗読してくれたカセットテープを提供したこと、森英恵が新曲発表用に衣装をデザインする話、そのステージの髪形を結ってもらいCGデータを起こしたこと、と関係者の熱意ある協力でAIひばりに血肉が通ってくる。
後半は関係者へのモニタリングで歌がひばりぽくないと酷評され、その原因追及と解決方法を模索する。そしてプロジェクトから1年経過したこの9月に関係者を招いての新曲発表会が行われた。
AIひばりが新曲「あれから」を歌い始めると残暑が厳しいせいか私の目から汗が流れ出て困ってしまった。『プロジェクトX』みたいに困難に立ち向かう人々の努力が報われたことに感動したのか、感涙に咽び泣く関係者の姿にもらい泣きしたのか分からない。
再び故人に会いたい、声を聞きたいという人類普遍の願いを現代技術のAIとCGが可能にしたことを見て、鬼籍に入った親戚の小父さん達を思い出していたのかもしれない。
このAIひばりの反響が大きければ新曲「あれから」が発売されるかも、その結果次第ではカバー曲を収めたアルバムも作られるかも、今年の『紅白歌合戦』にAIひばりが出場し、ボカロ繋がりでミクと共演して「千本桜」を歌うかもしれないと色々想像が広がってしまう。
この番組は高齢者に最先端技術のAIやCGで何が出来るのか教えてくれる良いショウケースになっている。
数年後には遺族の希望で個人の姿や声を再現するビジネスにこの技術が応用されることが予想出来る。ここまで本格的な再現性を望まなければデータを流し込み自動的に作ったデータでも十分で、期間も費用も現実的な範囲で収まりそうだ。
生前故人がこのサービスのデータベースにアマゾンやツイッターのアカウントをリンクさせておけば性格や興味まで似せてくれることだろう。もうこうなると「俺が死んだらパソコンのハードディスクを壊してくれ!」では済まないほど個人の秘密が暴かれてしまいそうだ。(^_^;;