慢性的な睡眠不足の状態では、高血圧などさまざまな病気を起こすリスクが高まる。新しい研究によると、高血圧状態は夜間もみられるという。高血圧のなかでも、特に夜間の高血圧は心臓病の原因ともなるので注意が必要だ。
■睡眠不足で夜間の血圧が上昇する
米サンディエゴで行われた米国心臓病学会(ACC) の第64回年次学会で、ミネソタ州の総合病院、メイヨー・クリニックが演題発表を行った。
同クリニックは、19歳〜36歳で標準体重の健常被験者8人に16日間入院検査を行い、最初の4日間を順化期、次の9日間を睡眠制限(4時間)と標準睡眠(9時間)に分けて被験者をグループ化し、さらに最後の3日を回復期として、試験期間を通して被験者の血圧を測定した。
この結果、被験者の平均夜間血圧は、睡眠を制限されたグループで115/64mmHg、睡眠が事足りているグループでは105/57mmHgと、差が認められた 。夜間に血圧を測定することはあまりないが、研究グループは、昼夜を通して血圧を測定することで、睡眠時間が制限された状況では夜間の血圧が上昇するということを発見したのだ。さらに、血圧同様、心拍数も上昇したという。
■高血圧は脳や心臓の病気を招く
高血圧状態を長期間放っておくと動脈硬化をまねき、脳卒中などの脳血管疾患や心臓病、腎臓病といった多くの病気の発生リスクが高くなる。
日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2014」によると、診療室血圧値で140/90mmHg、家庭血圧で135/85mmHgが高血圧の基準とされ、これ以上の場合は治療が必要になる。
食塩の取り過ぎ、肥満、精神的ストレス、喫煙は血圧を上昇させることが知られているが、今回、睡眠不足も要因のひとつであることがわかったのだ。
■睡眠の質を向上させ、睡眠不足を防ぐ7つのTIPS
そのほかにも、睡眠不足は高血圧、糖尿病、肥満、うつ病、がん、早死になどの発症リスクがあるほか、QOL(クオリティー・オブ・ライフ)や生産性の低下、日中の眠気による交通事故の発生なども問題となっている。
・眠る1時間ほど前から部屋を少し暗くしよう。暗くすることで睡眠ホルモン「メラトニン」の分泌が増える
・リラックスできる就寝環境を整えよう
・寝室の温度は16〜19度に設定しよう
・マットレスや枕などの寝具は自分に合ったものを選ぼう
・防音対策をしよう
・就寝前は電子機器の使用を控えよう。夜間に目から入った光は体内時計を昼間の時間にセットしてしまい、不眠や浅眠を引き起こす
・就寝前のアルコール、カフェイン、ニコチンの摂取は控えよう。これらの物質には覚醒作用がある
■たった数日の睡眠不足でも高血圧に
そのほかにも、よく眠るためには規則正しい生活リズムや食生活、運動の習慣、ストレスをためない生活などが重要となる。メイヨー・クリニックが行った研究では、睡眠制限の被験者グループが4時間睡眠を続けたのは9日間だったわけだが、たった数日間の睡眠不足でも、夜間の血圧上昇を起こす危険性があるのではと考えさせられることだろう。