2014年09月21日
スザニを求めて広島県立美術館に行ってきた スザニと食べ物の意外な接点とは?
9月のはじめ、出張で広島に行く機会があったので、ついでに広島県立美術館に行ってみた。1996年にリニューアルオープンしただけあって、建物が新しく驚くほどりっぱ。館内は天井が高く広々としていて、とてもきれいだった。
訪問の目的はウズベキスタンのスザニ。実は、広島県立美術館には貴重なスザニが多く所蔵されている。
スザニとは?
広島県立美術館は、リニューアルをきっかけに重要収集方針の1つである「アジアの工芸」の収集に力を入れた。なぜ数あるアジアの工芸のうちウズベキスタンのスザニのコレクションを充実させたのか、その経緯は分からないが、広島県が手縫い針の生産で全国1位(国内シェアの100%)であることと関係していると思う。ウズベキスタンのスザニにも、広島の針が使われているとか。
広島県立美術館には朝10時に行って、とりあえず朝ごはんを食べることにした。3Fにトムソーヤというカフェがあり、そこでは飲み物付きの朝食セット(パンとスープorおにぎりとみそ汁)が550円で食べれる。ケーキセットも550円。ぼったくりが多い美術館内のカフェとしては、良心的な値段。私はケーキセットを注文した。窓辺の席だと、隣にある縮景園という緑豊かな庭園を眺めながら食事をすることが出来る。泊まっていたビジネスホテルで朝ごはんを食べる選択肢もあったが、ここにして正解だった。
ウズベキスタンのスザニは常設展にある。常設展のみならチケット510円。スザニのモチーフは実は食べ物と深い関係があるので、「食」という観点から広島県立美術館のスザニを紹介する。
こちらは19世紀後半のブハラのスザニ。
円形の花模様は、食器をひっくり返して丸いアウトラインを描いていることから、ブハラではこの模様を円の大きさに応じて、「大きなカップの花」「茶碗の花」「お皿の花」と呼んでいるそうだ。
こちらは19世紀末のフェルガナのスザニ。
白く囲ったものがおそらくアーモンドか唐辛子の模様。色が赤くないので、アーモンドだと思われる。アーモンドと唐辛子は良く描かれるスザニのモチーフで、2つとも悪霊から家を守るという意味がある。唐辛子は魔よけのためにドアに吊るす習慣があり、そこからスザニにも描かれるようになった。アーモンドは魔よけのイメージがないが、アーモンドの種類によっては、食べられないほど苦いものがあり、その苦さが魔よけになると考えられている。
こちらは1870年代のシャフリサブスのスザニ。
端にある細長い模様はおそらく台所包丁のモチーフ。アーモンドや唐辛子以上に強力な邪気祓いの効果があると考えられていた。包丁のモチーフはかなり抽象化されて、植物の葉やツルに同化しているものが多い。台所用品の代表的なモチーフとして「穴あきしゃくし」もあるが、広島県立美術館には、それっぽいものを見つけられなかった。
ちなみにこのスザニが制作された1870年代から、スザニは市場でも買えるようになり、現在では大抵の人が嫁入り道具のスザニを買っている。
19世紀後半のブハラのスザニ。
花の模様に見えるが、全部が花という訳ではなく、人参、カブ、トマトといった野菜のモチーフもあると思う。野菜の他に、果物も良く使われるモチーフで、特にザクロはたくさんの実がつまっていることから、豊かさの象徴とされ、縁起が良いとされている。
いろいろと解説を入れながら、スザニを紹介したが、実は美術館には解説がほとんどなく、スザニの制作時期と場所だけの表記だ。
よりスザニを楽しむには、事前に調べてからの方が良いと思う。おすすめなのは、広島県立美術館の学芸員の福田浩子さんがネットで一般公開している以下のスザニ紹介。
中央アジアの刺繍布(スザニ)について 福田浩子
福田浩子さんが書いた他の論文も、広島県立美術館のHPから無料で読める。
広島県立美術館 研究紀要
私が参考にした本はこちらの本。すごいの一言。スザニを研究している人で、この本を知らない人はいない有名な本らしい。先週日本に来たウズベク人の友達に頼んで、買ってきてもらった。英語版もある。
堅苦しい論文よりもきれいな写真をたくさん見たい方は、9/19に発売された「BIRD 7号」がおすすめ。トルコ、イラン、ウズベキスタンの伝統工芸特集で、スザニや民族衣装、陶芸品の写真が盛り沢山で、美しい写真を見ているとシルクロードへ旅行したくなる。
(クリックするとAmazonの画面が開く)
☆おまけ☆
ウズベキスタン料理のブログだが、せっかくの広島なので、広島のグルメを紹介。広島県立美術館の後は、お昼ごはんを食べに、広島の友達にすすめられた「お好み焼き みっちゃん」に行った。広島駅構内の新幹線口の近くにある。私は広島風お好み焼きを食べるときはいつも「豚玉そばネギトッピング」。
広島県民はお好み焼きを短冊状に切る。ケーキのように切るのは邪道な東京人だ。
みっちゃんのお好み焼きは生麺を使っていて、とてもおいしかったけど、私は海田市の「たがわ」のお好み焼きの方が優しい味がして好きだなぁ。
訪問の目的はウズベキスタンのスザニ。実は、広島県立美術館には貴重なスザニが多く所蔵されている。
スザニとは?
「針仕事」の意味で、「刺繍したもの」を示します。中央アジアでは、結婚の前に一族の女性たちで作り、花嫁はスザニを持参します。
掛布や壁掛け、お祈りの時の敷布などに使用され、スザニは長い間(時には100年以上も!)大切に扱われてきました。
中央アジアの刺繍布(スザニ) 広島県立美術館チラシより
広島県立美術館は、リニューアルをきっかけに重要収集方針の1つである「アジアの工芸」の収集に力を入れた。なぜ数あるアジアの工芸のうちウズベキスタンのスザニのコレクションを充実させたのか、その経緯は分からないが、広島県が手縫い針の生産で全国1位(国内シェアの100%)であることと関係していると思う。ウズベキスタンのスザニにも、広島の針が使われているとか。
広島県立美術館には朝10時に行って、とりあえず朝ごはんを食べることにした。3Fにトムソーヤというカフェがあり、そこでは飲み物付きの朝食セット(パンとスープorおにぎりとみそ汁)が550円で食べれる。ケーキセットも550円。ぼったくりが多い美術館内のカフェとしては、良心的な値段。私はケーキセットを注文した。窓辺の席だと、隣にある縮景園という緑豊かな庭園を眺めながら食事をすることが出来る。泊まっていたビジネスホテルで朝ごはんを食べる選択肢もあったが、ここにして正解だった。
ウズベキスタンのスザニは常設展にある。常設展のみならチケット510円。スザニのモチーフは実は食べ物と深い関係があるので、「食」という観点から広島県立美術館のスザニを紹介する。
こちらは19世紀後半のブハラのスザニ。
円形の花模様は、食器をひっくり返して丸いアウトラインを描いていることから、ブハラではこの模様を円の大きさに応じて、「大きなカップの花」「茶碗の花」「お皿の花」と呼んでいるそうだ。
こちらは19世紀末のフェルガナのスザニ。
白く囲ったものがおそらくアーモンドか唐辛子の模様。色が赤くないので、アーモンドだと思われる。アーモンドと唐辛子は良く描かれるスザニのモチーフで、2つとも悪霊から家を守るという意味がある。唐辛子は魔よけのためにドアに吊るす習慣があり、そこからスザニにも描かれるようになった。アーモンドは魔よけのイメージがないが、アーモンドの種類によっては、食べられないほど苦いものがあり、その苦さが魔よけになると考えられている。
こちらは1870年代のシャフリサブスのスザニ。
端にある細長い模様はおそらく台所包丁のモチーフ。アーモンドや唐辛子以上に強力な邪気祓いの効果があると考えられていた。包丁のモチーフはかなり抽象化されて、植物の葉やツルに同化しているものが多い。台所用品の代表的なモチーフとして「穴あきしゃくし」もあるが、広島県立美術館には、それっぽいものを見つけられなかった。
ちなみにこのスザニが制作された1870年代から、スザニは市場でも買えるようになり、現在では大抵の人が嫁入り道具のスザニを買っている。
19世紀後半のブハラのスザニ。
花の模様に見えるが、全部が花という訳ではなく、人参、カブ、トマトといった野菜のモチーフもあると思う。野菜の他に、果物も良く使われるモチーフで、特にザクロはたくさんの実がつまっていることから、豊かさの象徴とされ、縁起が良いとされている。
いろいろと解説を入れながら、スザニを紹介したが、実は美術館には解説がほとんどなく、スザニの制作時期と場所だけの表記だ。
よりスザニを楽しむには、事前に調べてからの方が良いと思う。おすすめなのは、広島県立美術館の学芸員の福田浩子さんがネットで一般公開している以下のスザニ紹介。
中央アジアの刺繍布(スザニ)について 福田浩子
福田浩子さんが書いた他の論文も、広島県立美術館のHPから無料で読める。
広島県立美術館 研究紀要
私が参考にした本はこちらの本。すごいの一言。スザニを研究している人で、この本を知らない人はいない有名な本らしい。先週日本に来たウズベク人の友達に頼んで、買ってきてもらった。英語版もある。
堅苦しい論文よりもきれいな写真をたくさん見たい方は、9/19に発売された「BIRD 7号」がおすすめ。トルコ、イラン、ウズベキスタンの伝統工芸特集で、スザニや民族衣装、陶芸品の写真が盛り沢山で、美しい写真を見ているとシルクロードへ旅行したくなる。
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☆おまけ☆
ウズベキスタン料理のブログだが、せっかくの広島なので、広島のグルメを紹介。広島県立美術館の後は、お昼ごはんを食べに、広島の友達にすすめられた「お好み焼き みっちゃん」に行った。広島駅構内の新幹線口の近くにある。私は広島風お好み焼きを食べるときはいつも「豚玉そばネギトッピング」。
広島県民はお好み焼きを短冊状に切る。ケーキのように切るのは邪道な東京人だ。
みっちゃんのお好み焼きは生麺を使っていて、とてもおいしかったけど、私は海田市の「たがわ」のお好み焼きの方が優しい味がして好きだなぁ。
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