2014年11月01日
人質の朗読会
さてさて、本日ご紹介するのはこちら
小川洋子著『人質の朗読会』
小川洋子さん、といえば
やはり、『博士の愛した数式』が
有名でしょうか???
でも、この『人質の朗読会』も
ドラマ化?されたようですね
私、そちらは見ておりませんが
内容は、タイトル通り
とある旅行者の8人が
ゲリラに襲撃され、人質と
なってしまったその時に
行われた
彼らの、一番印象的だった
時を語る、そんな
朗読会です
そして、この朗読会は
人質たちが
犯人と共に、全員死亡したことが
淡々と告げられた後に
語られ始めます
読者は、もうこの世にいない人の
話を、これから聞いて行くのです
8人の物語に耳を傾けていく……
人質の人々は、ちゃんと
下書きをして、
淡々と、理論整然と語っていきます
他愛が無い、といえば
他愛が無いのかもしれない
その人の大切な「日常」もしくは
思い出ではありますが
劇的な何か、という訳でもない
しかし、人質たちは
静かにその話を聞き、
最後に拍手を贈る
何とも言えない、緊張感とも違う
静けさ……
8人いるうち、何となく
個人的に印象的なのは
「槍投げの青年」6人目の、
女性が語ったお話です
電車の中で、偶々、
大きな荷物を持った青年を
見かけて、
気づけば、彼の後を
つけてしまう
着いた先は、楕円競技場で
青年は、荷物をあけて
槍を出し、それを投げ始める
私は、それを眺める
ずーっと眺める
青年との会話はない
しーん、と静かな空間で
槍が空を切る音
地に刺さる音
それだけが、聞こえている
そんな光景が、
目の前に見えてきて、
心に残っています
何とも言えず、ゆっくりと
余韻が心の中を締めていく
お話でした。
人質、なのだから
不安が胸を締めていて
それでいて、もしかしたら…
という希望も捨てきれず
しかし、誰も、未来の話はしない
静かに、静かに過去を語る
それは朗読会であって
朗読大会ではないから
それぞれのお話を
評価するだとか、そういう
こともなくて
切ないながらも
悲劇的とは言えない、
何とも、個人的に好みな
雰囲気が満ち満ちている
作品です
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