2015年06月01日
殺意
おはようございます。
先日訪れて下さった方、
すみませんでした・・・
朝早いですが、
本日は、こちらです
乃南アサ著『殺意』
兄弟も同然の親友を殺害した人間による
独白体の小説
ぷつん
という音と共に、心の中の箱から出てきてしまった、殺意
穏やかで、むしろ喧嘩からほど遠いイメージの が
あるきっかけを境に、一変してしまう
それまでの自分とは、全く違う自分に変わり
そして戻れなくなってしまう
それは、第三者から見れば奇怪に過ぎる事件でした
犯人は、全く計画性なく犯行に及んだことが
指紋を含む様々な証拠が、あまりに無防備に投げ出されている
ことから分かるというのに
その犯人の行動は、あまりに落ち着いたもので、
取り乱すことも無く、ごくごく普通に帰宅している
そして、親友を殺してしまった事に対する罪悪感が何も見えない
彼は、そもそも人生を失う覚悟の上だったため
犯行をあっさりと認めるのだが
なぜ、殺したのだ?
これに対しては、ひたすら沈黙をつらぬく
怒り、宥め、罵倒し、首をかしげ、彼に対峙する人々
彼が考えていることは、常人には到底理解できないためでしょう
何度も何度も繰り返し彼によって呟かれるのです
彼の思うこと、心のうち……
それが、まるで当たり前であるかのように……
しかし、彼が甘かったというか、なんというか
取り調べ含む様々な事柄は、
勿論彼の望む通りに進む訳ではなく……
淡々とした口調で、自分の殺意について
分析し、語っている
自分を犯罪者として扱い、見つめてくる人々のことも
非常に冷静な目で、しかし確かに恨みを込めて、見つめている
そして、彼が最終的に辿り着いた結論は……
無差別でもない、大量殺人でもない、そのような類の
おぞましさを持つ事件ではないにもかかわらず
どこか、ちぐはぐで、どこか判然としない事件
ひたすら沈黙を突き通す殺人犯を、一体どう扱うのか。
獄の様子も、非常に冷たい目線で彼は分析していて
それもなかなか、考えさせられるのですが、それ以上に
彼が、囚人の中でも異質な存在であるということ
警察が、このようなケースは珍しい、と首をかしげるところ
しかし、そのような彼の異質さが無視されて
気づけば淡々と彼に判決が下され、
そうしてしまえば、もう、ただただ懲役が下され、
そして時さえ経てば元の世界へ戻されてしまうのだということ……
ここに気づくと、少し愕然としてしまいます
一体「反省」とは、「懺悔」とは、何なのか。
さらに、彼の話を読んでいると、段々、自分の心の奥底にも、どこかに
殺意の種があるのではないかと思われて……
戦慄が走り、心の奥がひんやりしてくるような作品です
読んでいて楽しい! かどうかは一寸分からないのですが
あまりに生々しく描かれた狂気に、引き込まれてしまうと思います
表紙の禍々しい花も
読了後に眺めると
さらに禍々しい笑
是非一度お試しください
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タグ:小説
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