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2021年03月30日
チェコがデジタル化をすると(三月廿七日)
日本では、確か五年に一度行われる国勢調査だが、チェコでは十年に一度行われることになっており、今年がその年に当たっている。前回の2011年の調査の際は、配布された調査用紙に記入して提出したはずなのだけど、どうやって用紙をもらって提出したかは覚えていない。ニュースを見ていると、どうも調査担当の人が配布して回収するというのが従来のやり方のようなのだけど、どうだったかなあ。滞在許可持ちの外国人も対象で、回答しないと罰金とられるという話だったから、頑張って回答したのは確かである。
今年の調査は、非常事態宣言下で、人と人の接触をできるだけ減らそうとしている中で行われるためなのか、以前からの計画だったのかは知らないが、原則としてオンラインで行なわれ、期間中に回答しなかった人のところには、調査担当者が調査用紙を配布するという形になるようだ。同時に担当者は直接家に行ってはいけないなんてこともいっていたから、実際にどのように配布するのかは理解できなかったけど。
そのオンラインの国政調査は、今日の午前0時、つまりは昨日の夜中の12時から回答できるようになっていた。どうして週末の深夜の不都合が起きたときには誰も対応できないような時間帯に開始するのだろうか。平日の朝9時とかの開始であれば、問題が起こったとしても対応しやすいはずである。そして、この手のオンラインシステムのスタートで、問題が起こらないはずがない。
朝起きたら、うちのが笑って、国勢調査のサイトが、予想通り時間になっても利用できない状態だったというニュースを教えてくれた。深夜のこととてすぐに対応できるはずもなく、朝の時点ではまだ回答はできない状態だった。その後、統計局は、問題を取り除いて回答できるようになったと発表したが、回答を始めることは可能になったものの途中で回答できなくなるという問題が発生したらしく、再度回答の受付を停止した。
全ての問題が解決して最後まで解党できるようになったのは、夕方になってからだっただろうか。しかし、午前0時から回答しようと待ち構えていた人たちが殺到したためサーバーがダウンするという事態を引き起こしていた。統計局の局長が今すぐに解答する必要があるというわけではないのだから、もう少し待ってくれとか、一度に回答しようとしないでくれなんてことをニュースで言っていた。
バビシュ首相は、統計局長の責任は重いとして辞任を求めているようだが、統計局長はそこまで重大なことだとは考えていないようで、週明けに政府に対して事情の説明をすると話していた。局長が軽く考えいているのは、これまで政府が導入したオンラインシステムが悉く不調、初期不良を露呈しているからだろう。1月に運用が始まったワクチン接種の予約システムでも、当初はまともに登録ができず、優先的に登録できるはずだった高齢者とその家族が頭を抱えていたし、高速道路の通行券の販売システムも、初日はまともに機能していなかった。
だからといって、オンライン化の失敗の責任は誰も取らないかと言うとそんなことはなく、昨年は高速道路の通行券のオンライン販売サイトの問題で運輸大臣が辞任して、ハブリーチェクマルチ大臣が誕生している。バビシュ政権に限らずチェコ政府がオンラインシステムを導入したり、システムを変えたりすると、決まって最初の何日かはまともに機能しない印象がある。古くは、十年以上前に、自動車の登録システムを刷新使用として大失敗して、運輸大臣が二、三人、次々に解任されたことがある。就任早々前任者の責任を取られた人もいたなあ。あのときは市民民主党の内閣だっただろうか。
だから、現在まことしやかにささやかれている、今秋行なわれる予定の下院議員選挙でオンラインでの投票を可能にするというのには、やめといたほうがいいんじゃないのとしか思えない。ヂステムが機能しなくて投票できないと言うのなら、まだましで、同じ人が何回か投票できたり、意図的かどうかはともかく、自動的に特定の政党に票が入るようなシステムができあがりかねない。
2021年3月28日24時30分
2021年03月24日
規制は続く、意味もなく(三月廿一日)
今月初めから、強化された規制については、三週間と期限が切られていたはずなのだが、延長されることが決まった。非常事態宣言も、野党のあの反対は何だったんだといいたくなるような対応で延長されることが確実視されている。最悪なのは、実際に規制が効果を発揮したのかどうかの検証もないままに、規制が継続されることである。
感染状況は、改善しつつあるというが、政府が期待したほどのものではなく、それが規制の延長が必要な理由だというのだが、それは規制にあまり意味がなかったということではないのか。ゆっくりながら進むワクチン接種と、感染経験者の数が全人口の15パーセントほどになりつつある事実が、感染の拡大の鈍化に寄与してはいまいか。なんてことをちゃんと分析して語ってくれる人は、存在しない。
とりあえず、規制を強化したら多少感染の拡大が鈍化したから、効果があったということだろうという評価は短絡的に過ぎる気がする。実際、三月から外を歩く際にも、普通のマスクではなく、FFP2レベル以上のものを使うことが強制されることになったが、マスクをせずに歩いている人の数は、相変わらず多く、この規制の変更が大きな効果をもたらしたとは思えない。以前から屋内の、屋外でもバス停などの人の集まるところでは、FFP2レベル以上のマスクの着用が求められていたのだから。
ニュースで流される映像だと、ほとんどの人がマスクをしているけれども、実態とはちょっとかけ離れた印象である。笑ってしまったのは、この規制、屋外で煙草を吸う人のことを想定していないため、マスクをはずして煙草を吸うと規制に違反しているとして、警察から注意されたり、罰金を取られたりする可能性があるという。ということは、飲食も禁止されていると思うのだけどね。
もう一つの目玉だったオクレス間の移動を禁じるという規制についても、政府は、移動する人の数が減ったと非常に肯定的に評価しているが、実態はどうなのだろう。オクレスの境界の道路上では警察が自動車を止めて、仕事など不可欠な用のない人はUターンさせているというニュースも流れていた。しかし、実際は全ての車を止めているわけではなく、チェックしているのは何台かに一台に過ぎないようだ。
公共交通機関を使った移動でも、規制が始まったときには、駅や電車の車内で書類をチェックする警察の姿が報道されたが、知り合いの話によると、全く警察の姿はないらしい。その人は、3月に入ってスロバキアに戻ったのだが、チェックがあったのは国境を越えるときだけだったと言っていた。さらに最近オロモウツに戻ってきたときには、何のチェックもなかったという。つまり、その気になればオクレスの境界どころか、スロバキアなら国境も問題なく越えられるのである。
考えてみれば、警察の仕事が多すぎる。ある程度は各自治体の警察に任せられるとは言え、街中でのマスクの着用状況もチェックしなければならず、非常事態宣言下だからといって犯罪捜査がなくなるわけではない。レストランなどの営業禁止違反を摘発するのにも人員を割く必要があるし、監禁生活で増えている家庭内暴力にも対応しなければならない。
そんな状況を考えると、警察が全てのオクレスを越える道路に検問を張ったり、全ての長距離列車の乗客の確認をしたりするのは不可能なのである。だから、政府を、ひいては政府の導入した規制を信じられない人の中には、移動の禁止を無視して、穴を見つけてあちこち動いている人もいるはずだ。オクレスを越えて移動することに対する心理的抵抗は大きくなった可能性はあるけど、それで移動をやめる人は、規制の導入前から外出をできるだけ控えていたのではないかとも思う。
散歩やスポーツなどで住んでいる市町村の外に出てはいけないという規制は、さすがに撤廃されてオクレス内であれば出かけられるようになる。これはそもそもの規制がおかしかったのであって、どこまでがその市町村に属するのか、道端に表示がないし、オロモウツなら、スバティー・コペチェクに行こうと思ったら、サモティシュキという別の村に入ってしまうので同じ市内だけど、事実上禁止になる(守ってない人も多いけど)という意味不明なことが起こってしまうのである。
企業や役所に義務付けられた従業員の検査も、これまでの週に1回から、週に2回に拡大しようという声もある。また中国から余剰の検査キットの押し付けを受けているのかな。ワクチンに関してはゼマン大統領の圧力を撥ね退けて、ロシア、中国製の者は使わずに済ませることになりそうだけどさ。この自宅からほとんど出ない、気のめいる生活が何かの役に立っているのか、それが問題である。
2021年3月22日24時30分。
2021年03月10日
チェコのニュースが日本で(三月七日)
今週末になって立て続けに、インターネット上の日本語のメディアでチェコの現在の惨状を紹介する記事を見つけた。一つ目はCNNの「失策重ねるチェコ、コロナ新規感染者数が過去最悪に迫る」という記事。CNNはチェコのテレビ局のプリマと組んでCNNプリマというチャンネルを始めているから、チェコについても情報が入りやすくなっているのだろう。なかなか正確な記事である。記事を書いた人の名前も「イバナ・コトソバ」でチェコ人っぽい苗字だし。
あれこれ小さな不満はあるが、一番大きな不満を挙げるとすれば、イギリスの研究者のカルペイト氏の発言だろうか。氏は「チェコのメディアが流行初期の混乱の一部を招いた」として、「賛否両論のロジック」が使われていたと批判する。しかし、去年の今頃、ヨーロッパでも流行の兆しが見え始めた頃からの経緯を思い返すとこの批判は正しいとは言い難い。
少なくとも、チェコテレビでは、チェコ国内で患者が出てからも、しばらくはゲストで呼ばれる専門家は、政府の公式見解と同じで、適切な対応さえすればそんなに恐れるべき病気ではないことを強調する人ばかりだった。それが政府が衛生局の局長を更迭して方針を180度変えたときから、逆に危険性を訴える人ばかりが呼ばれて解説するようになった。当時はまだ政府の記者会見も含めて関連番組を真面目に見ていたのだが、チェコテレビの報道に対して、手のひら返しやがったと思ったのは明確に覚えている。政府の政策に合わせた報道をすることで社会の混乱を防ごうとしたのかもしれないが、これを「50対50」の報道というのは無理があるような気がする。
ついでなので、オストラバ大学の「マダール」氏こと、マジャル氏についても触れておこう。この人、どうも去年の春の感染症対策の主役となったプリムラ氏とあまり関係がよくないようで、ボイテフ厚生大臣が辞任したときに、これまでで一番いっしょに仕事がしやすい大臣だったと述べて辞任することを残念がる発言をしていた。その後オストラバ大学の医学部の学部長の選挙に出て選出されるのだが、プリムラ氏は対立候補を支援していたといわれる。こういう専門家同士の対立ってのも対策を実施し徹底するのにはよくなかったと思われる。プリムラ氏は自分で決めた規制を自分は守らないという人で、多くの人に規制をまじめに守るのは馬鹿しいと思わせるのに成功したし。
マジャル氏が学部長に就任したのは、オストラバ大学の医学部が文部省によって認可の取り消しを受けたことで、前任者が辞任、もしくは解任されたからである。ニュースでは、入試に不正があったことが原因だといっていたが、日本的な裏口入学ではなく、定員割れを防ぐために合格基準に達していない学生も入学させたんだったかな。確か6月か7月には、新しい学部長の選挙が秋に行なわれることが決まっていたはずだから、この記事にある辞任の理由が正しいかどうかは……。
とまれ、チェコ国内で生活している人間としては、政府の対策が遅れたことよりも、政府とその政策、規制が信頼を失って、規制が出されても守らない人が増えていることが、現在の最悪の状況の最大の原因だと感じている。信頼を失った原因の多くはバビシュ首相を初めとする与野党の政治家が、規制を政治にしてしまったことだろうけど、プリムラ氏を初めとする専門家とされる人たちの言動もある程度は影響を与えているはずだ。
もう一つの記事は、「コロナ感染急増のチェコ、患者の国外移送検討医療崩壊の恐れ」というAFPの記事。CNNと比べると正確さに欠ける印象である。感染者数なんかのデータには間違いはないからいいけれども、末尾の「コロナ流行の第1波では本格的なロックダウン(都市封鎖)が行われ、比較的小規模な流行で済んだ。だが政府は、今回は同様の措置を取らないことを決めている」というのは大間違いで、現在の規制は去年の「本格的なロックダウン」とされるものよりもはるかに厳しいものになっている。
去年も春の国境の封鎖などはロックダウンとは呼んでいなかったと思うのだけど、リトベルを封鎖したのは、確かにロックダウンと呼んでもいいものだったかな。ただ、チェコ政府が「ロックダウン」という外来語を使い始めたのは、秋になってからだった。秋もロックダウンはしないと言いながら、実質的にはロックダウンだったし、現在は、ロックダウンと呼んでいるかどうかは知らないけど、これまではなかったレベルでの移動の制限が課されている。この記事バビシュ首相の言葉のごまかしに影響されたかな。
それにしても、ここに紹介した二本の記事はどちらも外国系の通信社が配信している翻訳記事で、日本のマスコミは何をやっているんだと言いたくなる。チェコのようなヨーロッパの小国には関心がないのだろうか。まあ、どうせでたらめを書き散らかされると考えたら、現状のほうがはるかにましか。
2021年3月8日23時
2021年03月08日
パベル・パベル(三月五日)
モアイと言って、真っ先に思い浮かぶのは、渋谷駅のハチ公像に次ぐ待ち合わせ場所だったモアイ像である。大学に入るために上京して、高校時代の先輩と初めて会うときに指定されたのが、モアイ像のところだった。確か、ハチ公像の周りは人が多すぎてお互いを見つけるのが大変だから、穴場で待ち合わせにしようというのが先輩の説明だった。一年とはいえ先に東京に出た人の言葉に、そんなもんかと反対しなかったのだが、後悔することになる。
ハチ公像は田舎でも存在が知られているくらい有名だったので、何回か見に行ったこともあってどう行けばいいかも知っていた。モアイ像はあることすら知らず、先輩には簡単に見つかるといわれたけど、念のために早めに出かけた。駅に着いたのは待ち合わせの10分前だったが、駅の地図で場所を確認したのに、見事に迷ってしまって、モアイ像のところに着いたときには待ち合わせの時間を大きく過ぎていた。東京に出たての田舎者には、太刀打ちできないぐらい渋谷駅は巨大で複雑だったのだ。
では、チェコでモアイと言うと言うと、当然イースター島のモアイ像が思い浮かぶのだが、それと密接に結びついているのがパベル・パベルという人物である。この人、もともとは建築技師だが、実証主義的な考古学者としてのほうが有名である。簡単に言えば、古代の建造物について机上でどんな方法で建造したとか、いやそれは不可能だとか喋喋するだけでなく、実際にできるかどうかやってみようというタイプの研究者で、コンチキ号のヘイエルダールや、古代船を建造して朝鮮半島を越えた角川春樹と同じように、古代技術を再現する活動をしている。
最近たまたまこの人を取り上げたドキュメント番組を見たのだが、一部のオカルト主義者が超古代文明が云々というイギリスのストーンヘンジーの建設を再現するために、同じサイズの石を準備し、木と縄、そして人力だけで建ててみる様子も写っていた。残念ながらちょっとした問題が発生して完成はしなかったというが、映像で見る限りほぼ完成して、あと一つか二つか石を載せれば出来上がりというところまではいったようだ。
その映像の中で、パベル氏は、技術的には古代「イギリス人」にも建設できたことが証明できたというようなことを語っていた。それはまだビロード革命が起こる前のできごとで、個人的には、共産党政権下で、このような研究、実験が行われていたという事実に一番驚かされた。
そのパベル氏を一躍世界中で有名にしたのが、イースター島のモアイ像の移動実験である。作成された場所から、現在立っている場所までどのようにして運ばれたかについては、いろいろな説があるようだが、パベル氏は、1980年代半ばに、それまでの定説を覆して、モアイ像が立った状態で移動させられることを証明し、世界に衝撃を与えたらしい。世界中で公演を行ったというから、当時の共産党政権にとっても、チェコスロバキアの学問レベルの高さを宣伝するいい機会だったのかもしれない。
パベル氏は、まずチェコで、巨大なモアイ像のレプリカを作成し、それを横倒しにすることなく動かす方法を実践し可能であることを確認してから、イースター島まで出向き、実際のモアイ像を使って、動かす実験を行った。実験は、長距離を動かしたというわけではなく、遺物の保存を考えてもそんなことはできないだろうし、せいぜい数メートルの移動だったようだが成功し、機械はなくても、人力と時間さえかければ移動が可能であることを証明した。
番組では、パベル氏がイースター島に出かける前に、ヘイエルダールに手紙を送ったときのことを回想していた。自分の英語に自信がなかったので知り合いに翻訳してもらって、書き写して送ろうと思ったら、達筆すぎて読めずそのまま投函した。ヘイエルダールから返事が来たのはいいけど、やはり読めなかったと書かれていたらしい。ただ、同時に送った写真や図解にはある程度理解できたということが書かれていたという。
この業績が、日本語版のウィキペディアの「モアイ」の項にも名前を挙げて記されていないのは、この人の名前にも原因がありそうな気がする。確かに、チェコには男性の名前を名字として使う例はある。ただ、多くは複数二格の「ヤヌー」「マルティヌー」の形を取ることが多いし、名字と同じ名前をつけることはほぼない。というか、この人しか知らない。チェコの名字と名前について知らない人が、「パベル・パベル」という名前を見て困惑したとしても仕方がない。親子の名前が、場合によっては孫まで3世代まったく名前が同じなんていう場合もあるけど、その程度でも日本の知り合いからは問い合わせのメールが来ることがある。
とまれ、パベル氏はビロード革命後は生まれ故郷のストラコニツェで地方政治家として活躍しているようである。業績を紹介するようなHPでもあれば見てみたいのだけど、現時点では確認できていない。
2021年3月6日24時30分。
2021年01月21日
ワクチン接種を巡っても混乱(正月十八日)
ハンドボールの世界選手権のカーボベルデは結局プレーできる選手を集められないということで出場辞退ということになった。せっかくエジプトまで出かけたのに1試合、初戦でハンガリーに負けただけで終わってしまった。当初の予定では最終戦のウルグアイに勝って、2次グループに進出というところだったのだろうけど。これ以上没収試合が増えないことを願うのみである。
さて、本題である。ファイザー社のワクチンがEUでも認可されて、加盟各国への搬送が始まったのが昨年の年末のこと。それがチェコに届いてワクチン接種が始まったのは、クリスマス開けの週末のことだった。当然、医療関係者の中でも特に感染者の処置に関っている人から優先的に接種されることになったのだが、慌てすぎているのではないかという印象を拭えなかった。
どうも、国内での各病院への搬送も製造業者のファイザーに任せていたようで、案の定、すぐにあちこちの現場から、予定していたワクチンが届かないとか、来ないはずのワクチンが届いて接種する人を集めるのが大変だったとか悲鳴が上がり始めた。政府だけの責任ではなく、ファイザー社の供給体制が不安定だったのも原因なのだけど、政府のやり方が無計画、無責任だったことは否定できない。
その後、チェコに供給されたワクチンの数と、実際に接種された数に大きな差があることが判明して、政府が当初主張していたような届いた分はすぐに接種にまわしていて順調に進んでいるというのがまやかしでしかないことが明らかになった。計画的に、毎日一定数の接種を行うために、一度どこかに集めてからチェコ各地に配送するシステムになっていれば、この差はいくら大きくても問題はないと思うのだが、そんなことはしていなかったからなあ。
二つ目の認可されたモデルナ社のワクチンも、一回目に納入された分は、数の関係でオストラバのあるモラビアシレジア地方だけで使用することになったのはいいにしても、納入の予定がころころ変わっていたのには現場の人たちは大変だろうなと同情を禁じえなかった。実際に病院を運営する地方から上がってくる不満の大半は、情報が、正確であれ不正確であれ届かないことで、これは春の最初の流行時から変わっていない。
政府の予定では、少なくともこちらが理解した範囲では、まず、感染が広まったら困る医療関係者、長期入院者、老人ホーム関係者、入居者のワクチン接種が終わってから、少しずつ対象を広げていくという話だった。それが全国的なコーディネートが存在しないので、医療関係者や老人ホームの接種が終わらないうちに、厚生省などの役人、地方の役人などまで摂取を受け始め、今月の半ばからは、80歳以上のお年寄りを対象にワクチン接種の予約が始まることになった。
役人のワクチン接種に関しては、その家族までもがなぜか優先的に接種を受けたということで、1980年代の、知り合いの知り合いをたどって便宜を図ってもらう必要のあった時代に逆戻りじゃないかと強く批判され、責任者が辞任することになった。地方の役人はパルドビツェだったか、フラデツ・クラーロベーだったかの地方政府の高官が、なぜか優先的に接種されたときに、奥さんまで連れてきて接種させたらしい。好き勝手なことをやるのはANOの政治家だけではないのである。
15日の金曜日に始まった高齢者の予約のネット上での受付は、あれこれ批判を浴びながらも、例えば80歳以上の人がネットを使いこなして予約なんでできるのかとか、予約の手続きが煩雑すぎて手間がかかりすぎるとか言われていたのだが、何とか機能している。理解不能なのは、病院関係者などへの接種が完全に終わっていないのに、一般の80歳以上の高齢者への接種を始めたことで、当初の計画とは大きく変わっている。
その結果、12月に一回目の接種を受けた人たちはそろそろ二回目の接種が必要なはずだが、ワクチンの数が足りなくなる恐れが出てきて、一週間延ばそうとか言い出している。一番の原因はファイザー社が生産量を増やすために生産体制の改変を実施し、その間生産量を減らすと言い出したことだけれども、行き当たりばったりではなく計画的に進めていればこんなアホなことにはならなかったはずである。一部の地方からはすべてのワクチンの接種が終わったのに新しいのが届かないなんて悲鳴も上がっているしさ。
全国的な予約システムも機能していないとは言わないけれども、予約した時間に出かけたのに接種は受けられなかったなんてことが何件も起こったらしい。接種を待つ間のお年寄りの様子がニュースで流れたのだが、以前と変わらず普通に隣り合って座っていた。検査の際には2メートルの間隔をあけろという政府の推奨がある程度守られているのに、いいのか、これでと思った人は多いはずだ。ワクチン接種の際に感染なんて洒落にならないことが起こっても不思議はない。
こういう混乱振りを見ていると、二回摂取を受けなければならないワクチンが、現時点で二種類使用されているわけだが、一回目と二回目で別のワクチンの接種を受けるなんて事故が発生してもおかしくないような気もする。幸いなことに今のところ二つ目のワクチンはモラビアシレジア地方でしか使用されていないし、モラビアシレジア地方にはファイザー社のワクチンは届いていないはずだから起こりようはないのだけど、今後の展開しだいではありえないとはいえないのである。
チェコという国は、政治家や官僚のだめさを、現場の有能な人たちの工夫で何とか支えて持っている国である。ただ、現在のように現場が疲弊していると、現場の人たちが間違いを犯しても責められない。責められるべきは政府であり官僚たちである。批判ばかりしている野党が政権をとっていたとしても大差はなかっただろうとは思うけど。
2021年1月19日23時。
タグ:コロナウイルス
2021年01月10日
足らざるは病床のみにあらず(正月七日)
クリスマス商戦のための規制緩和のせいで、検査数を増やしても、規制を最高レベルまで再強化しても、ワクチンの接種が始まっても感染状況の悪化が止まらず、人口約一千万人の国で連日1万5千人内外の新規陽性者が確認されている。PCR検査における陽性の割合は、40パーセントを越える日が多く、アンチゲン検査で陽性になった人が確認のために受けた影響もあることを考えても高すぎる数字である。感染者の総数は80万人に近づき、治療中の人だけでも13万人を越え、入院している人の数も7000人を越えた。亡くなった人の数も急速に増え、すでに1万3千人に近づきつつある。
こんな状況なので、病院側が限界まで配置転換をして、武漢風邪患者受け入れ用の病床を増やしたが、満杯になりつつあり、軍が準備している野戦入院病院の稼動も近いと言われている。それでどの病院にどれだけ空き病床があるかの情報を集約して、入院が必要な患者が出た場合に、どの病院に運ぶかを指示する管制システムのようなものも導入されているらしい。
ここまでが前提。年末だったか年始だったか正確には覚えていないのだが、オストラバから衝撃的なニュースが飛び込んできた。モラビアシレジア地方では、医療システム以上に火葬のシステムが破綻しつつあり、地方内の火葬場で順番待ちの遺体の数が増えすぎて、遺体を安置する場所が足りなくなりつつあるというのである。
考えてみれば、患者の数が増えれば医療機関の負担が増えるのだから、死亡者の数が増えれば葬儀関係の負担が増えるのは当然である。医療機関もそうだが、普段はある程度の余力を持って運用されていて多少の数の増加には対応できても、今回の激増ともいえる事態には対応できないのだろう。今年の9月から11月の死亡者の総数は、ここ10年、20年で最高を示した月と比べても、倍以上の数を示しているのである。火葬場の処理能力がパンクを起こしても不思議はない。
とりあえず、ハマーチェク内相が数十体の遺体を南モラビアの火葬場に移送して処理させることにして、モラビアシレジア地方の火葬場から遺体の収められた棺があふれ出す事態だけは防がれたが、処理能力の限界に近づきつつあるのはモラビアシレジア地方だけではなく、チェコ全体で火葬場が遺体であふれそうになっているらしい。それで、ハマーチェク氏は入院用の病床と同様に、どこの火葬場にまだ余力があるかをまとめて、遺体搬送のための管制システムが必要だと語っていた。
一番の問題はニュースで取り上げられるような形で、モラビアシレジア地方の知事が訴えるまで何の対処もされていなかったことで、発表前に報告を上げていなかったとは思えないことを考えると、ハマーチェク氏も含めて政府の怠慢を責められてもしかたあるまい。火葬場の状況がどうなろうと、ニュースで注目を集めるまでは、選挙での得票にはつながらないから後回しにされたわけである。
もう一つ気になるのは、葬儀会社の人が、問題の原因は火葬場の処理能力にあるのではなく、火葬に際してさまざまな無駄な義務が課されていることにあると批判していたことだ。その人の話によると、現場を知らない官僚どもが頭の中だけでルールを作るからこんなことになるのだというのだけど、具体的にどんな決まりが火葬場の状況を逼迫させているのかはわからなかった。遺体を運ぶ際には必ず二台の車で動かなければならないことになっているというのは聞き取れたのだけど、それが火葬待ちの遺体が増えているのとどう関係があるのかわからなかった。
考えられるとすれば、火葬場本来の能力を無視して一日に火葬できる数を制限していることだろうか。ただ、それなら管制システムなど導入しなくても、非常事態宣言下の政府の権限で制限を外すぐらいのことはできそうである。
日本だと火葬の後に遺族が骨上げを行なって骨壷に収める儀式があるから、他の火葬場に移されるのに反対するだろうけど、チェコではそこまでこだわらないのだろうか。移送の対象になる遺体は、遺族のいない人のものが優先されるのかもしれない。とまれ医療だけでなく、葬儀のシステムまで破綻寸前と言えば、チェコの状況がいかに危機的かわかってもらえるだろう。
2021年1月8日23時
タグ:コロナウイルス
2020年12月22日
検査を巡る混乱(十二月十九日)
十二月に入って、学校の先生たちが優先的に受けられるようになっていたアンチゲンと呼ばれる簡易型の感染検査だが、本来の昨日の金曜日からの予定を前倒しして、水曜日から一般の人にも解放された。政府の説明では、教育関係者以外の希望が多く、予約システムがいっぱいになっているからだということになっているが、教室に生徒のいない学校の先生たちの多くが、学校を抜け出してまで検査を受ける必要性を認めず、検査数が増えなかったこともその原因ではないかと見ている。もちろん学校全体で検査を受けたなんてところもあるようだけどさ。
その一般に開放された検査は、事前に受付を開始した予約システムからして混乱していた。厚生省の発表では、全国統一の予約システムを構築して、居住地、検査を受ける場所に関らず、同じサイトから予約できるようにするということだったのだが、その発表がでた時点で、いくつかの検査機関では、独自の予約システムが稼動しており、予約の受付を開始していた。恐らくは先生たちを検査するに当たって導入したシステムを継続して使用したのだろうと思うが、この辺にも政府、厚生省側の準備不足が如実に現れていた。
そして、実際に検査が始まった水曜日以降、それ以前の先生たちを対象にした検査のときには、人数が少なかったおかげか、予約システムが見事に機能して行列などできてなかったのだが、検査会場の前には長蛇の列ができることになった。原因としては、予約した時間に来ない人が多いことがあげられていたが、行列の長さを見るとそれだけとは思えない。一回の検査に想定以上に時間がかかっているのか、予定を変えて予約なしの人の検査も受け入れているのか。
検査が終わった人たちは、こんなに時間がかかるとは思わなかったと口を揃えていたが、暖冬とはいえ、寒空の下行列を作って検査を待つのが健康にいいとは思えない。それに外出といえば職場と自宅を往復するだけで、他人とはほぼ会わない生活をしている人間からすると、感染を恐れるわけではないけれども、検査を受けにいって行列するほうが感染の恐れが高そうだ。受ける人たちは安心してクリスマスに家族と会うためなんて言っているけれども、今日の陰性が来週の陰性を担保するものではないのだけどねえ。
逆に陽性の結果が、必ずしも本当に陽性ではないことを示したのが、サッカーのスラビア・プラハを巡る混乱だった。スラビアは、水曜日のズリーンでの試合前に行われた定例の検査で、一度に九人もの選手が陽性だと判定されたことで、プラハの保健所から活動停止を命じられ、ズリーンとの試合は延期されることになった。
ヨーロッパリーグの試合もあって、毎週最低二回は検査を行ってきたスラビアで一度にこれだけの感染者が出るのは納得行かないとオーナーのトブルディーク氏は主張していたが、活動停止自体は受け入れた。その後、陽性と判定された選手のうちの二人が、家族全員で別の検査機関で検査を受けたところ選手本人も含めて全員陰性だという判定が出た。
それで、スラビアでは改めてAチームの選手、スタッフ全員の再検査を行うことを決め、先に陽性だと判定した検査機関とは別の検査機関で、しかも念には念を入れて二つの機関で検査を受けたらしい。その結果は、どちらの機関でも、陽性の判定を受けていた選手も含めて全員が陰性の判定で、プラハの保健所も活動停止の命令を撤回した。明日の日曜日のボヘミアンズとのプラハ小ダービーは予定通り開催されることになった。
それにしても、最初の陽性判定は何だったのだろう。単なる誤判定だったのか、機械が狂っていたのか。とまれ、検査でこれだけの混乱を巻き起こしている現状を考えると、早ければ来年早々にも始まるとされるワクチンの接種も大変なことになりそうだなあ。政府、厚生省の準備不足が医療現場に負担を強いることになるのは間違いない。外国人が受けられるのかどうかは知らんけど、現場に負担をかけるのも申し訳ないから、受けられるとしても遠慮しておこう。
2020年12月20日24時30分。
2020年12月20日
「スラブ叙事詩」裁判(十二月十七日)
チェコを代表するアールヌーボーの画家アルフォンス・ムハの大作「スラブ叙事詩」を巡る裁判については、これまでに何度か書いてきた。現時点ではプラハ市への寄贈が有効だという判決が効力を有しておりプラハ市の所蔵物となっている。残念ながらというよりは、プラハ市の怠慢によって展示するべき場所がないため、誰も見ることができない状態になっている。博物館、美術館の類は現在の規制によって例外を除いて閉鎖されているから、仮に会場があったとしても見にいけないのは不幸中の幸いというべきか。
とまれ、現在の「スラブ叙事詩」が、ムハとの約束を反故にしたプラハ市の手にあるのが許せないようなのが、孫のジョン・ムハ氏で、プラハ市がモラフスキー・クルムロフから裁判で強奪してからも、プラハ市を相手に法廷闘争を繰り返している。状況は錯綜を極めていて、同じ裁判が控訴や上告、差し戻しなどを経て、延々と続いているのか、裁判が結審するたびに新たな裁判を起こしているのかはよくわからないが、ジョン氏の執念には頭が下がる。
その何度目かも、どのレベルでの裁判なのかも判然としないが、武漢風邪流行による渡航の規制のせいで本人がチェコに来られない中、行われた裁判で、これまでの判決を覆してムハからプラハへの寄贈は無効で、「スラブ叙事詩」はムハの遺族に所有権があるという判決が出たらしい。ただし、これで、実際に「スラブ叙事詩」がジョン氏の手に戻り、ジョン氏の主張するモラフスキー・クルムロフでの展示につながるかというと、話はそう簡単ではない。
問題の一つは、これまでプラハ市側の主張である、ムハ本人からではなく、ムハの経済的支援者で「スラブ叙事詩」の制作も支えたアメリカ人の実業家から寄贈を受けたのだという主張について、この裁判で判断されたのかどうかわからない点である。そもそも、ムハがプラハに寄贈するとした約束を根拠にしたプラハ市の所有権は、以前の裁判で否定されているのである。
それで、プラハ市側が持ち出してきたのが、約束を反故にしたプラハ市が受け取れなかったことで宙に浮いた「スラブ叙事詩」の所有権は、経済的支援者のもとに移ったはずであり、プラハ市はその支援者から寄贈を受けたのだという主張だった。それが裁判で認められた結果、「スラブ叙事詩」は、モラフスキー・クルムロフからプラハに移されることになった。このプラハ市の主張が通った裁判と今回の裁判の判決がどのように関係するのかは、ニュースを聞いてもよくわからなかった。
二つ目の問題は、仮に今回の判決によって、プラハ市の所有権が完全に否定され、ムハの遺族に所有権が認められたとしても、遺族に当たるのがジョン氏だけではないというところにある。ムハの相続権を持つ人物として、もう一人孫娘にあたる人がいるらしい。遺産相続で遺族がもめるというのはよくある話だが、ムハの遺族がもめているという話は聞いたことがない。
ただ「スラブ叙事詩」に関しては、もめる可能性があるのだ。ジョン氏が専用の展示施設を作っていないプラハに「スラブ叙事詩」を展示することに反対し、「スラブ叙事詩」を救ったモラフスキー・クルムロフでの展示を主張するのに対して、孫娘のほうは、専用の展示施設はなくても、プラハで展示するべきだと考えているらしいのだ。
プラハではようやく専用の展示施設の建設の計画が具体化しつつあり、遅すぎるとしかいえないけれども、それが完成するまではモラフスキー・クルムロフで展示するということで関係者の間で話し合いがついており、クルムロフでは城館の改修工事が進んでいる。とりあえずは、裁判や遺族間の話し方がどうなるにしろ、最悪の事態は避けられそうだ。願わくは、プラハの建設計画が遅延を続けて「スラブ叙事詩」が一年でも長くモラビアに残らんことを。
考えてみれば、プラハに専用展示施設が完成していれば、ジョン氏もプラハでの展示にかたくなに反対することはなかっただろうから、先に建設計画を立ててから権利の請求をすればよかったのに、強欲プラハが何の負担もなく、巻き上げようとしたのがすべての発端なのである。
2020年12月18日24時。
2020年12月11日
犬のある生活(十二月八日)
先週の月曜日からだと思っていた、学校での授業の拡大は、今週からだったかもしれない。昨日のニュースで学校の様子が取り上げられていた。先週も似たようなことをいっていたと思うのだけど、一番の問題は、規制の緩和にしろ強化にしろ、情報が錯綜しているのがいけない。ネタもとはニュースなのでニュースの報道が悪いといいたいけれども、それ以前に政府の発表自体が混乱しているようで、しばしば批判する人が登場する。
これを以てバビシュ政権の情報の伝達のあり方を批判するのは正しいが、だからバビシュ政権はという方向に行くのは間違っている。チェコの行政の情報伝達のあり方がめちゃくちゃなのは今に始まったことではなく、必要のない情報はいくらでも入ってくるのに、必要な情報がそれを必要とする人のところには届かない、もしくは届くのが最後になるというのはチェコの伝統のようなものである。
もう十年以上も前の話だが、職場から「ロドネー・チースロ」という、チェコ人には生まれたときに生年月日を元に与えられる個人番号のようなものをとれと言われたことがある。同時に、どの役所に問い合わせればいいかも教えられたのだが、その役所に問い合わせても、その役所に言われた別の役所に問い合わせても、外国人がどのように申請すればもらえるのか全く情報が手に入らない。
幸いいつまでにという期限はつけられていなかったので、一旦諦めて放置していた。そして、毎年恒例のビザの延長の手続きに出かけた外国人警察で、こういうことで困っているんだけどと、駄目もとで聞いてみたら答が帰ってきた。ビザの延長の申請をした時点で「ロドネー・チースロ」の申請もしたことになっているから、特に何もする必要はないと教えてくれたのである。
前年の延長の手続きの際に申請したことになっていたのか、この年の申請で申請扱いになったのかは不明だが、それから程なくして「ロドネー・チースロ」を取りに来いという通知が外国人警察から届いた。その通知が二回来て、一回目の通知で受け取りに行った後の二回目は間違いだったという落ちはつくのだが、オロモウツに住む外国人にとって一番頼りになる役所は、やっぱり外国人警察だったのである。
そんな情報不伝達の状況は現在もあまり変わっていない。それでも、今回の政府の対応には、春から何度も同じようなことをして来ているのに、改善の後が見られないというのにはいい加減にしろといいたくなる。最悪なのは鳴り物入りで導入されてうまく活用されているかに見えた犬システムが、いつの間にか有名無実のものになりつつあることである。
危険度カテゴリー5から4へ切り替えて規制緩和に踏み切ったときの対応は悪くなかったのだけど、その後は……。金曜日の会議で規制について決めて翌月曜日から適用すると言っていたはずなのだが、月曜日からの変更は学校関係のものだけになっている。それも任意なので学校によってはまだ規制緩和に対応していないところもある。
とまれ、一度はチェコ全体の数値がレベル3に落ちて安定したことで、生活必需品以外の販売店の営業の再開など大幅な緩和が行われたのだが(これも月曜からではなく木曜からだった)、その後数値は再び悪化を初め、チェコ全体ではレベル4、地方によってはレベル5のところもあるという状態になっている。この状態が一週間続いたら、規制の強化が行われるものだと思っていたのだが、そんなことにはならないようである。
犬システムの危険度評価の内容自体を見直す動きもあるようだし、同時に犬システムが規制を決定するわけではないという声も聞こえるようになった。これでは夏の信号システムと大差ない。規制の強化をしないならしないで、本来なら強化すべきだけど、商業のことを考えてクリスマスまでは規制の強化はしないとか言えばいいのに、聞いているほうがうんざりするような言い訳ばかりである。
さらに昨日の閣議で、水曜日から犬システムには規定されていないレベルでの規制強化が行われることになった。レストランの営業時間が短縮され、屋外でのアルコール飲料の消費が再び禁止された。またクリスマスマーケットでは料理と瓶入りも含めてお酒の販売も禁止された。コップ入りはともかく、瓶入りのお酒の販売を禁止する理由は不明である。
結局、どんなに優れたシステムであっても運用する人次第では意味のないものになってしまうという事なのだろう。犬システムが優れているのかどうかは知らないけど、結果としてはあってもなくても大差のないものになりつつある。新しい厚生大臣も、反バビシュの署名をしたことがあるというわりには、すぐに同じ穴のムジナになっちゃったしなあ。
2020年12月9日23時。
2020年12月05日
自主的規制緩和?(十二月二日)
今週の月曜日から、規制緩和の一環として、基礎学校で授業が行われる学年が増えた。これまで1年生と2年生の授業だけが許可されていたのだが、5年生までと、卒業と高校受験を控える最終学年の9年生の授業が再開された。他の学年も、一部授業が再開されたのだが、二つのグループに分けて、一週間ごとに学校での授業とオンライン授業を交互に行うことになっている。高校でも、確か卒業試験と大学受験の準備が必要な最終学年の授業が再開され、他の学年が一週間ごとにオンラインと学校での授業を交互に行う点では基礎学校と同じである。
月曜日からの変更点はあくまで学校での授業が増えるということだけのはずなのだが、街を歩くと明らかに人の数が増えていた。ホルニー広場のクリスマスマーケットの準備も進んでいるので、道行く人の数が増えていること自体は、驚きでもなかったのだが、驚いたのは、ジョギングやサイクリングなどスポーツをしているわけでもないのに、マスクをしていない人が多いことだった。
学校以外の規制緩和は明日の木曜日から適用される予定だが、マスクの着用に関しては変更はないはずなのだが、人もそれほど多くないからということで、自主的にマスクの規制を緩和したというところだろうか。これまでもマスクを外して歩いている人がいなかったわけではないが、大抵はマスクは着用しているけれども口と鼻からは外していて、人のいるところでは、ちゃんと口と鼻を隠すというやり方をしていた。それが今週に入ると、マスクを持ってもいないような人が多くなっているのである。
どこまで効果があるのかもわからないマスクをしていると眼鏡が曇るし、息がしづらいし、もううんざりだという気持ちはよくわかる。だから、自分も日本にいたらマスクなしで町中を闊歩しているかもしれないとも思う。ただなあ、外国に住まわせてもらっている身としては、政府の出した規制を無視はしにくい。
ちなみにマスクは、うちののお手製の布のマスクを使っているのだが、先日市販のFFP2というカテゴリーのものを使ってみた。かけ心地自体は悪くなかったのだが、眼鏡が曇るのは布のものと大差なかったし、しばらく歩いていると内側が湿り始め、やがて雨が降っているような何とも不快な状態になってしまった。水蒸気がマスクの内側にこもって、外気に冷やされて結露し、小さな滴となって落ちてきたのだろう。せっかく高性能のものがあるのだけど、どうせ人とも会わないし、こんな不快になるのなら、使う必要はないか。
さて、明日からレストランなどの飲食店は、定員の半分、博物館は4分の1を上限に客を入れることが許可される。生活必需品以外を販売するお店も営業再開が許可され、売り場面積15平方メートル当たり一人が上限になっている。クリスマスプレゼントを求める人で行列ができるのは目に見えているから、買い物に出るのはクリスマス開けになるだろうけど、普通の生活が少しは戻ってくるようで嬉しい。
戻ってくるといえば、スポーツの試合に観客を入れることも許可されるという話があって、木曜日にヨーロッパリーグの試合を行うスラビアの場合には、2万人を超える収容人数を誇るエデンのスタジアムで600人にファンが声援を送る予定だという。この数字がどのようにして出てきたのかはわからないけれども、もう少し多くてもいいような気がする。十分の一で2000人とかさ。規制緩和で一度に集まれる人の数が増やされるはずだけど、それが600人になるのかもしれない。
深夜の外出禁止が解除されるのは悪いとは思わないが、外での、つまり道や広場を歩きながらの飲酒が解禁されるのは、あまり嬉しくない。せっかく飲み屋の営業が再開されるんだから、外じゃなくて中で飲めと言いたくなる。つぶれる飲み屋を減らすためにも、屋台でプンチなんてあまり美味しくもないお酒を飲むぐらいなら、飲み屋でビールを飲んだほうがましだろ。
その飲食店なんかでも、フライングぎみに営業を再開しているところがあるようにも見えたのだけど、あれはこちらの勘違いだったのだろうか。自主的に規制を強化する自粛を強要する人たちがいるのだから、自主気的に規制を緩和する人たちがいても不思議はない。
2020年12月3日14時。