Dルームは照明を落として音楽に集中出来る雰囲気を出していたが角部屋だけに足を踏み入れにくくしている気も。(苦笑)
整理券配布終了の張り紙を見てバンドの生演奏があるらしいと気付いたが一瞬名前を見てもピンと来なかったので素通りしてしまった。これが失敗のもとだった。
10/07(日)14:45-15:55 7. ヒリーハンハン 出張アナログ塾
13:30から総合音楽プロデューサー和久井光司氏と漫画家・浦沢直樹氏のユニット「ヒリーハンハン」のアコースティックライブが行われていたらしいのだが気にせず逸品館のデモ等を聴いていた。それが終わりDルームに足を踏み入れたらトークショウを行っていた。見覚えのある顔にそのままアナログ塾を途中から出席することにした。
和久井光司氏と浦沢直樹氏が出会い友人となった切っ掛けを話していた。浦沢氏はロキシー・ミュージックの「Avalon」をLPで良く聴いていたがCDが出たので音が良いだろうと買い替えて聴いたところ感じる物が無かった。聴き過ぎたのかな、と思っていたらアバロンはLPが一番!という雑誌の記事を読んで慌てて買い直した。聴いたら昔感じた熱さが伝わって来たと言う。
和久井氏は、LPは国や発売時期によって音は違ったもの。最近CDでリマスター盤発売という話を聞くが音の違いで買い集めていたらLPはプレスごとに買わないといけなくなってしまうと笑った。
2人は近所に住んでいて顔を出す中古レコード店も同じなので「あれ、この店にはカーリーサイモンのLPが全部揃っていたのに?」と思うと浦沢氏が全部買っていたということがあったと言う。この前は松田聖子のLPを全部買いました、と浦沢氏が告白した。店員と顔馴染みなのでお互い何を買ったかばれちゃうんですよねーと二人は笑った。
和久井氏が『ビートルズ原論』を河出文庫から出すことになりカバーイラストを浦沢氏に描き下ろしてもらったところ編集の人が「本当に描いてもらえたんですか!?」と驚いたので「お前が描いてもらえと言ったのに何驚いているんだよ!」とその時を思い出して笑った。浦沢氏は文庫を手にしてイラストのメンバーの服装はどのアルバムジャケットから引用したものなのかと言った裏話を披露した。
このトークの間スタッフが2人の持参したLP/EPを掛ける準備をしていたがプレーヤーがショートしていまい壊れたので慌てて別のモデルを準備しており手間取っていた。1回目のトラブルで話を繋いでいた和久井氏がシステム総額を尋ねたところ300万円以上とのことだった。
やっと準備が出来てまず「ザ・ビートルズ・モノ・ボックス」CDから「Day Tripper」を掛ける。ところが左チャンネルのスピーカーから音が出ていないことが判明。アナログでは問題ないのでこのまま続行。和久井氏が「モノラルはスピーカー1本で聴くのが原則なんです。」と言えば浦沢氏は「そう1本で奥行きを感じるものなんです。」と2回目のトラブルをちゃっかりネタにして笑いを取っていた。
続いてアナログのモノラル「デイ・トリッパー」を聴いて、和久井氏が「アナログ盤には不良成分がたっぷり含まれていますねー。」と振れば浦沢氏は「これを聴いてイギリスのミュージシャンは皆不良っぽい音楽になってしまったんですね。」と同意した。
和久井氏は「ポール・マッカートニーがハイレゾ音源を配信していますが、聴くとちょっと落ち着かないんですよ。ダイナミックレンジが広過ぎて音がまとまらず、昔から聴いているコンプレッサー処理の音の塊がガツンと来ない。何か違うなー。」と語る。
和久井氏は、アナログテープは録音後30分過ぎれば劣化が始まるので有名スタジオには飛脚のような選任の運び人がいたという話をした。だから孫テープというだけでなく鮮度も悪いので日本盤のアナログディスクは音が悪かったと言う。ところがワーナーパイオニアのP8000番台は日本盤でも音が良い。これは日本のステレオに合ったマスタリングをしているからだと語った。
ニールヤングの「孤独の旅路」の米国盤と日本盤を掛けて日本盤の方が音の広がりが出て良い音だと言いつつ和久井氏は自宅で聴く米国盤はいまいちなんだけどこの高価なシステムだと結構聴けますねーと言う。
「音の違いは歌謡曲でもあります。」と言い和久井氏はジュリーの「危険なふたり」をLP次にEPで再生した。アナログだと45回転の方が音溝を多く刻めますからEPの方が音圧は高く音がいい。「売ってやるぞ!」「歌謡大賞取ってやる!」という製作者の熱意が感じられますと感想を述べれば観客大爆笑。
もっとも最初にLPを掛けた時に今までモノラルカートリッジを使っていたというミスが発覚して慌てて取り換えるという3回目のトラブルが発生していた。和久井氏は「さっき音の広がりが・・何て言っちゃったよ。」と赤面。浦沢氏も「ギターの音の分離が・・なんて言っていました。」と困り、同じく気付いていなかった観客も大笑い。
荒井由実の「ひこうき雲」はアルファが原盤を制作して東芝EMIが販売していたのでジャケットデザインに大きくアルファのクレジットを入れたら東芝が怒り回収騒ぎになりました。この初回盤は20-30万円で売れます。発売時は見開きジャケットだったものがこの後の再発売ではシングルジャケットに変わりました、と和久井氏が説明する。
ジャケットの帯には「魔女かスーパーレディか」と書いてありますが、「魔女でしたねー」と和久井氏が言うものだから笑いが起きた。「ひこうき雲」を掛け「ユーミンは2枚目で終わり。この曲なんか詩の世界が演奏に出ています。こう音が昇っていく様です。3枚目以降はただメロディを奏でるだけになってしまっています。」と厳しいことを言う。
浦沢氏はボブ・ディランの「ストリート・リーガル」を2枚続けて掛けた。発売時は音が悪く何か変だと悪評の1枚でした。リマスター盤が出たので買って聴いてみたら確かに聴きやすく変な感じはしなくなった。でもボブ・ディランのギターの音が聞こえなくなっただけじゃない、何かが無くなっている、そんなバージョンです、と熱く語った。
溝がグレーのレコードは音が良い、○○さん(名前失念)なんか聴く前に盤を見て「これは凄い!」なんて言うんですと二人は大笑い。
和久井氏は200〜300円の安い中古アナログレコードを買って聴いていればこれほどお金の掛からない良い趣味はありません。是非聴いてみて下さいと勧める。
浦沢氏は「20世紀少年」映画化の時にヒロインオーディションに出席したところ、何十人という若くて美しい女性たちから微笑まれて「私を選んで欲しい」と言う色香に当てられたら頭がクラクラして変になりそうだった。タクシーで帰る途中で中古レコード店「月光堂」に寄ってレコードをあさっているうちに正気に戻った、というエピソードを語りアナログの魅力を訴えて終了した。
とにかくアナログ好きが伝わってくる楽しいトークであっという間の70分間だった。家で無性にアナログレコードが聴きたくなってしまうという困った塾だ。それにしても沢田研二の声の色っぽいこと。まずはCDで聴いてみたいものだ。
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