24/11/14(木)のInter BEE 2024セッションで「ゴジラ-1.0」の録音・音響効果の苦労話を聞いた
24/11/14(木)は「埼玉県民の日」で県内観光を考えていたがInterBEEのセッションを聴講できるのはこの機会だけなので千葉県へ向かうことにした。
アラームより早く目が覚め電車の乗り継ぎも巧くいって9:50には会場に着き10時開幕を待った。前日は歩数14,832、距離10.61km歩いても左足首の痛みが退いたのは有り難い。
10:30〜11:30 H3 特別企画オープンステージ『MPTE AWARDS 大賞受賞“「ゴジラ-1.0」録音・音響効果技術”を語りつくす!』
パネリスト:合同会社Famiu 録音・SoundMixer:竹内 久史、合同会社Playful・Sound 音響効果・FoleyArtist:井上 奈津子
モデレーター:三友株式会社 営業事業部 サウンドスーパーバイザー:村越 宏之
竹内氏はゴジラ上陸前の海洋シーンの録音が一番苦労したと語った。2週間昼間の海上撮影が続いたが、録音スタッフは舞台となる船には乗れず別の船からワイヤレス録音、舞台船内固定マイク設置、役者にワイヤレスマイクと録音機装着と3通りの同時録音を行い録り逃しが無いよう気を使った、と語った。
井上氏は山崎貴監督と話し合い初代ゴジラの鳴き声を基に音を補完することになったが、動物の声を重ねると恐竜ぽく聞こえてしまう。コントラバスの弦を色々な部材で擦ったりダクソフォンを作ったりして声を作り監督に提案したがいずれも却下された。それでも理解が深まり良い勉強になった、と言う。
7.1chサラウンドを予定し編集を始めたが途中でアトモスと決まった。当初からアトモスをやりたいと話していたのでフェーダーの状態を記録していた。音楽もアトモスになっても良い様に上部音響を録音していたので東宝スタジオから東映スタジオへ移動しても問題なく制作出来た。4月に7.1ch、7月にアトモスと2回もダビングが行える有り難い機会だった。
ゴジラの鳴き声の響きをプラグインで付けると綺麗すぎるのでZOZOマリンスタジアムの球場機材を使い大音量で流して、スタジアム内、球場内建物、球場外と場所や位置を変え9台の機材で録音した。円形すり鉢形状スタジアムは響きが良くゴジラが実在するような音が録れた。
IMAX用にダビングも行ったがIMAX劇場でしか確認出来ない。初めて試写したときには予想していたのとは異なる音響体験になった。低音域の振り分け帯域の決め方やオブジェクトベースとチャンネルベースの違いもあり良い経験となった。今後も機会があれば挑戦してみたいと言っていた。
ゴジラ上陸前の海洋シーンのサラウンド構築は思った通りの迫力が出ず試行錯誤しながら作っていった。アトモス、7.1、5.1chとそれぞれの良さがある、ということだ。
再度「ゴジラ-1.0」を観直し、それぞれのサラウンドの違いを経験したくなるセッションだった。
13:30〜14:30 H3 特別企画オープンステージ『撮影現場のアプリ利用 2024 〜「ゴジラ-1.0」で使用されたAR Finder、NHK「100カメ」アプリ開発について』
出演:合同会社9パーセント代表 日本映画撮影監督協会(JSC)シネマトグラファー:倉田良太、日本映画撮影監督協会(JSC) ディレクター/シネマトグラファー:橋 遼
AR FinderはNHK「恐竜超世界」ロケ時に恐竜の大きさを想像しながら収録する難しさを解消したいと思い開発したiPhoneアプリだ。これがゴジラにも使われる様になり機能強化を進めた。画面上にゴジラのCGを写し焦点距離ごとの画角を確認しながら撮影シミュレートすることが出来る。
こう話しながら会場でアプリの使い方を実演してくれた。CGキャラの大きさや撮影位置からの距離も表示されCG合成もスムーズに行えそうだ。
現在ARコンソールというアプリを開発中でスマホは現在位置測定のセンサーとして使い実際使用するカメラの映像とCGをパソコンで合成して表示するシステムを開発中とのことだ。
NHK「100カメ」ではiPhoneとGo Pro計100台を使い収録しているが100台が問題なく稼働しているか簡単に確認出来る様にアプリを作成した。カメラ番号、バッテリー容量、時刻を表示しつつ順番に静止画を転送させ稼働状況を確認するそうだ。
本当にプロの世界でもiPhoneで十分番組が制作出来るのだと知ることの出来たセッションだった。