僕が警備員を辞めた理由

求人は市の緊急雇用対策事業で、かつて警備員としてご厄介
になった市役所からの募集です。今回は委託業者ではなく職員。

10年前の緊急雇用対策の内容と似ていますが、市の駐輪場を
巡回し違法駐車や不法投棄等への啓発・指導を行う業務です。

面接では前回の緊急雇用対策時の経験や、警備員として市役所に
貢献した実績を、臨時職員として有為であるとアピールしました。

そして訓練校も修了となり、半数近くが抜けていました。10月始め
２級ボイラー技士の試験も終わり（合格）、面接の結果待ちです。

10月上旬、市役所から臨時職員合格の電話がありました。
良かった。経験値の勝利か。数日後から登庁し勤務開始。

訓練中に俗にいうビルメン４点セットの３つまで揃えました
が、就職したのは市役所の臨時職員。一応任期は年度末まで。

希望すれば１回のみ更新することができ、最大１年勤務が可能。
市のアルバイト時給に準じ（社会保険あり）、日給月給制でした。

僕は委託業者ではなく、臨時職員（いわゆるアルバイト）であっても
体制側の人間として、市役所に勤務できる事に意義を感じていました。

市の臨時職員として働きだした職場は、都市計画部の中に
あり、市役所本館から道路を隔て斜め前ビルの１フロア。

一年ほど前に道路工事の不祥事で市議会から叩かれ、課長
交代。新課長は事あるごとに信頼回復を連呼していました。

今回の緊急雇用対策、市の駐輪場マナーアップ事業には影響は
なさそうです。名札をもらい、臨時職員としての業務開始です。

業務は平日９時〜17時15分、一日の大半が外回りルーチンワーク。
警備員時代より給与減でしたが、精神的・時間的に余裕がありました。

警備業者時代入札に負け、６年間お世話になった市役所を撤退
してから３年、今度は臨時職員として市役所に戻ってきました。

委託業者でなく体制側で仕事をしたい、との希望は達成しました。
職場からは本館玄関前に立哨している警備員の姿が見えます。

もう一つ、職員間での交流（飲み会が多い）もテーマでした。酒
の席で業者時代には話せなかったこと、コミュニケーションです。

加えて過去の清算もありました。以前僕が勤めた警備業者との
係わりで、現場や問題人物の顛末がある程度明らかになりました。

外回り中にバイクに乗り、配達中のC社時代の元同僚と再会。
彼もC社を辞めて野菜屋で働いていると語りました。

僕をC社退職に追い込んだ、自己愛的人格障害の出戻り隊員
の事を聞きました。僕が退職後、内勤に異動させられ給与激減。

元の職場に戻してくれと嘆願も却下され、今度はケガ人の穴埋め
で元の職場に応援要請。この屈辱に耐えられなかったようです。

「会社の都合のいい時にだけ応援とは」辞表提出で万事休す。
悲惨な最期であったと元同僚は語っていました。

季節は進み、忘年会シーズンとなりました。役所らしく11月に
、道路開通打ち上げ＆臨時職員のお別れ飲み会がありましたが。

忘年会は中華料理店で一次会の後、カラオケ二次会に突入です。
そこで同僚が歌った「粉雪」には感慨深いものがありました。

B社C社で潰され、一敗地に塗れ転身を期して職業訓練へ。資格
は取るも設備管理の仕事はなく、かつての古巣市役所に拾われる。

この一年の奮闘を労うかのように、ささくれた僕の心に粉雪が降り
白く覆うのは、警備時代の殺伐とした人間関係を忘れる為なのか。

緊急雇用対策も更新し残り半年となりました。それからしばらく
すると、インターネットの某掲示板にB社現場の書き込み発見。

職場の実態がありやかに書き込まれ、所長や隊長の素行そして
隊長と仲のいい巡回中コソ泥を働く隊員もイニシャル公開。

以前クビになった隊員が会社に送った告発状と同様の内容でしょう。
某保険会社で検索するとスレッドがずらり。まさに絨毯爆撃。

気づいた保険会社総務責任者が隊長に真相を聞きに来たそうです。
隊長は例の隊員を辞めさせる事で収束を図るも、遅すぎました。

ついに保険会社ビルのオーナーは、毎年11月にある定期入札を
前倒しで実施。B社は負け途中契約解除に等しい結果でした。

隊長含め全員解雇（次業者に移籍も不可）、所長も別会社へ。
掲示板に書き込んだ元隊員は溜飲が下がったことでしょう。

僕がB社を去って班長職も廃止され、手当なしの時間帯責任者を
設置も仕事をしない隊員は相変わらずと聞きました。

責任を持って班長職を遂行する人間が潰され、文句だけは百人前で
仕事をしない平隊員が地元では破格の給料で最後まで生き残りました。


ここで所感。


最後まで残った隊員は会社都合の退職なので、失業保険もすぐ出て
国保も減免。僕が国保料を汲々として払っていたのは何だったのか。

この理不尽さについて、やるせない想いはしばらく続きました。しかし
運は等価交換というか、人間は実力通りになると数年後気づくのでした。

緊急雇用対策も終わりに近づき、残暑の中外勤中に
携帯に電話がかかってきました。A社の元上司でした。

「君を時々見るけど、どうしてる？」とのお尋ね。
街中の駐輪場はA社の警備する施設の近くでした。

市の非正規職員をしています、と答えると元上司は
了解したようでした。探りを入れたかったのでしょう。

警備業界から離れるために、次の仕事を探さなくては。
仕事帰りにハローワークに通うも、現実は厳しいものでした。

九月末、約一年になる緊急雇用対策が終わりました。
次の仕事はまだ見つかりません。どうしたものか。

ハローワークで見る設備管理の求人はブラック臭がします。
同じ求人が短いサイクルで何度も出ている、使い捨て？

そしてB社のような姑息な人事が渦巻いている可能性も。
だからと言って給料は警備と大して変わらないか・・・

同じビルメン業界ですから、設備で入っても警備に回される
かも・・・いろんなことを考え、結論は出ませんでした。


※来月から「エピローグ〜さらば警備業界編」が始まります！結末や如何に？