「朝、起きて、スマートフォンの画面を開いてみたら、サングラスの購入画面が出ていた。『お買い上げありがとうございます』という購入確認メールも来ていた」
ある女性の体験談だ。本人はサングラスを買ったことなど、全く身に覚えがない。そして、数カ月後、この女性は、2枚トップスを買ったことを示す領収書も受け取っていた。そんなものを買った覚えはないのに。
これは詐欺でも何でもない。なんと寝ている間の本人の行動によるものなのだ。
□睡眠中のショッピング 睡眠随伴症という睡眠障害
このように眠っている間にパソコンなどを起動させて、買い物をしたりメッセージを送ったりする症状のある人が、最近、増えている。「睡眠時随伴症」という睡眠障害だ。
睡眠中に、本人の記憶に残らないさまざまな行動を無意識のうちに起こしてしまう。買い物だけではなくて、睡眠中に物を食べたり、セックスを始めたりする人までいる。パソコンを立ち上げるのに、ユーザー名とパスワードを入れるという複雑なことまでやってのける人もいる。
□睡眠中にショッピング… ストレスが原因?
これは、寝付いてから3〜4時間で始まることが多い。その日の夜の最初のノンレム睡眠の時に起こりやすいと言えるようだ。アメリカを中心に活動している神経学者で睡眠の専門家でもあるフォジア・シディクイ博士によると、多くは「ストレス」と「疲労」が原因だという。
ストレスがたまると買い物でストレス発散する人は多いが、寝ている間も同じことをするのかと驚く。
□自分に、周りの人に、もし睡眠随伴症の症状があったら
睡眠時随伴症は、危険を伴う場合がある。買い物をするだけならまだいいが、ベッドの周りにある物を投げつけたり、ベッドからジャンプして落ちたり。隣で寝ている夫や妻の首を絞めたり、殴ったり。
危険なものを寝室に置かないことや、パートナーと一緒に寝ている場合は、しばらく別々で寝てみるなどの対策が必要だ。
また、睡眠時随伴症の治療には、投薬という方法もある。しかし、投薬治療を受けなくても、家族や自分が予防的に対処することもできる。腹式呼吸のようなリラックスできる方法を身に付けておくことや、寝室は静かな環境にしておくこと。また、熱いお風呂に入ったり、熱いシャワーを浴びたりすることが予防に大切なことだと、シディクイ博士は話す。
睡眠中のショッピングという睡眠時随伴症は、本人は全く知らないうちに起こっていることだ。見つけられるのは、家族と見覚えのない領収書しかない。