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2014年12月08日

真夜中の五分前side-A

さてさて、本日ご紹介するのは
こちら。

本多孝好著『真夜中の五分前side-A
真夜中の5分前A.png


平凡な両親の間に生まれた一人っ子。
ちょっとだけ努力して見の丈より少しマシな大学に入り、
そのおかげで、大して努力しないで身の丈に合った今の会社に
入れた……
そう話す、「僕」

世界に冷めている、そんな印象を受ける
少し、変わった、小説内の言葉を借りれば、
少し、ずれた存在。

ちなみに、言葉遣いが洒落ていて、
結構、「僕」と誰かとの対話は、読んでいて楽しいです
僕の語り口調で物語は進むので、
全体的に、文体がなかなかお洒落というか、
良い雰囲気。これだけでも十分ごちそうさま。と
思えるほど笑

「僕」は6年前に、交通事故で亡くなった恋人がいます
その水穂という女性は、お得じゃない?と言いながら
時計をわざと5分、遅らせていました

「僕」が、そんなずれた存在になったのは
おそらく前述の事件のせいなのですが、
「僕」は水穂さんを、亡くしたから、失ったから、
だから「ひどい状態」に陥った訳ではなく

あまりに自分を客観視出来てしまう
「僕」故の混乱が、ありました。
そして、その混乱は、なお「僕」に暗い影を落としている
何となく、その陰が作品全体に漂っているんですね

そんな折、一卵性双生児のかすみと出会う。
かすみと少しずつ打ち解けながら、
「僕」はかすみの秘密に気付いてしまう。
かすみが、長い長い嘘に疲れていることに……

そして、そんなかすみを、僕はひどいが有効な慰め方で
慰めていきながら、かすみとゆるゆると、礼儀正しく
表面上付き合い、そうしながら、僕は僕で苦悶している

かすみのどうしようもない苦しさ
僕のどうしようもない喪失感

かすみは、僕のことなんて見ていないし
僕はあくまでかすみと深い付き合いになろうとはしない

二人は最終的にどういうところへ落ち着くのかが
最後まで分からない

恋愛小説、なのかもしれませんが、
その色がかなり薄いですね
それよりも、この僕やかすみの葛藤というか
心情変化の方がとても、重い

何度も何度もある張りつめた緊張感
そんなものを何とか乗り越えているうちに
気づけばクライマックスがきてしまう

思わず息をつめる。
ここの、僕の言葉と、かすみとのやりとりは本当に
息をつめてしまいます。

最後はぞくり、鳥肌。

そんな、物語です




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