2008年10月06日
バイオスフィア2
「ミニ地球」は実験室 アリゾナ大 閉鎖空間 環境調査に活用
米南西部、アリゾナ州第2の都市トゥーソンから、車で北へ約45分。赤茶けた岩の目立つ砂漠地帯のオラクルに、「バイオスフィア2(*)」は横たわっていた。温室と気圧調整ドーム。居住棟などを連結した面積約1.3ヘクタールの巨大空間だ。完成から17年たったが、ガラス張りの温室は強い日差しを受けて、今もまぶしい輝きを放つ。
バイオスフィア2は1990年代、外部から遮断した閉鎖空間で自給自足の生活を目指す実験を行なった巨大施設だ。閉鎖環境実験の代名詞ともなった有名な施設はその後、資金難も伝えられていたが、訪ねてみると、アリゾナ大学で新たな活用に踏み出していた。
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有名な実験は、91年9月から2年間、8人の科学者が滞在して行なわれた。バイオスフィア2の中に閉じこもって農耕や畜産、養殖などを行い、外部から酸素や食料など一切の供給を受けずに自活する――。そんな「ミニ地球」が実現可能かどうかを探る計画だったが、酸素不足など思わぬトラブルが続発し、当初の目的はすぐに断念した。
その後、2003年までコロンビア大学が研究と教育に利用したが、閉鎖空間を一定の環境に保つための維持費は高く、昨年には宅地として再開発される計画が浮上した。結局は、資産家から3000万ドル(約31億円)の寄付を得てアリゾナ大が昨年7月、運営を引き継いだ。「閉鎖環境」をいう建設以来の看板に代わり、新たに掲げる看板は「地球環境の実験室」だ。
生物が地球環境の変化にどう反応するかを調べるためには、通常、小さな実験室で温度や湿度などの条件を変えて観察する。しかし、本当に知りたい現実の自然は実験室よりはるかに規模が大きく、実験室では再現できない様々な要因が複雑に絡み合う。もちろん、思い通りの実験条件など設定できない。「その二つの間を埋めるのが、ここでの実験です。実際の生態系に近い規模で、温度や湿度といった環境を制御して実験ができるんです」。広報チームを率いるマット・アダムソンさんが説明する。
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かつての閉鎖環境実験で食糧を得るために使われていた農耕用温室は、新たな実験に向けて改造されている。全体を傾斜地にして、裸地、草地、低木林の3区画に分け、ここに降った雨が地表面や地中を動く様子は、植生によってどう変わるのかを調べる試みだ。施設の規模をフルに生かしたこの実験は、来年から始まる。
熱帯雨林の大温室では、地球の温暖化や乾燥化によって南米アマゾンの生態系にどのような影響が及ぶのかを実験している。アダムソンさんは「時間と費用をかけてアマゾンへ行く苦労をしなくても、ここで研究できる意義は大きい」と語る。
一方、こうした研究現場を有料で公開し、市民が生の科学に触れる機会を増やすことも、アリゾナ大は運営の重要な柱に据えている。実験中の研究者は、その仕事の内容や意義を見学者に熱心に説明してくれる。
見学者の目を引きつけるのは、やはり、生物を含む地球の環境を再現した数々の巨大設備だ。小川が流れる熱帯雨林。サボテンが広がる砂漠。魚たちがすむ海。砂浜に立つと、温室内のどこかで行なっている作業の音が砕ける波の響きにも聞こえてきて、ここが室内であることを忘れてしまう。
「日本からもたくさん、見学に来てくれないかな」とアダムソンさん。アリゾナ大に運営が移って最初の1年が5万〜6万人だった見学者を、年間10万〜14万人に倍増しようと意気込んでいる。
(*)バイオスフィア2
密閉した空間で物質を循環させ、外部からエネルギー以外の供給を受けず、完全な自給自足で生活することを目指した施設。地球そのものに次ぐ第2の生物圏(バイオスフィア)という意味で名付けられた。内部の容積は約20万立方メートル。スペース・バイオスフィアズ・ベンチャー社が始めた1991〜93年の居住実験では、建物のコンクリートが二酸化炭素を吸ってしまうなど、予期せぬトラブルが相次いだ。宇宙と物質のやりとりをほとんどせず、自立的に営まれる地球の生態系が、いかに複雑で模倣しがたいのかを示す結果となった。
密閉した空間で物質を循環させ、外部からエネルギー以外の供給を受けず、完全な自給自足で生活することを目指した施設。地球そのものに次ぐ第2の生物圏(バイオスフィア)という意味で名付けられた。内部の容積は約20万立方メートル。スペース・バイオスフィアズ・ベンチャー社が始めた1991〜93年の居住実験では、建物のコンクリートが二酸化炭素を吸ってしまうなど、予期せぬトラブルが相次いだ。宇宙と物質のやりとりをほとんどせず、自立的に営まれる地球の生態系が、いかに複雑で模倣しがたいのかを示す結果となった。
以上、2008年10月6日読売新聞より引用。
アメリカは広いけれど、こんな実験をする場所もあるのかと驚いてしまう。資産家が3000万ドルをポンと寄付してしまうところもすごい。。。バイオスフィアについても初めて知った。何となくSFの世界だ。ガンダムのコロニーみたい。
この空間の中でいろいろとミニ地球を再現して実験しているのもすごい、が、やはり地球の自然環境を人工で再現しようというのは、コロニーを作ることができないのと同様で無理が出てくるもののようだ。現実との規模の差があるにせよ、閉鎖空間で太陽光(紫外線)を取り入れられないことは地球を再現するのには難しい話しだ。
紫外線がなかったら、地球の生き物はここまで進化しなかったということが如実に分かる。偶然が偶然を呼んでできたのかもしれない地球はすごい。
熱帯雨林の温室実験は現場に行かずともできるなんて、予防接種だとか色々なこともなく、現場の自然も荒らすこともなく、で良いことづくめに思ってしまう。
熱帯雨林も砂漠のサボテンも本物を見たことがないので一度見に行きたい。研究者の説明も聴いてみたい。
でもアリゾナは遠い。。。