昭和一八年・夏、一九歳の女性「綿子」は、岡山に嫁ぐ
時はうつろい令和二年・秋、「最早戦後ではない」という言葉すらも風化した時代。
私の心は確かに昭和十八年を懸命に生きる、十九歳の女性になっていた
そのくらい、「鼓草」と綿子には感情移入していた
ここまで乙女ゲーの主人公や物語に感情移入したのは、初めてだろう
私はこの時代ふたりの男を愛し、ふたりの男に抱かれていた
昭和十八年、まさに激動の時代である。
「鼓草」はそんな激動の時代を必死に生きる女性や、人々の物語だ
フリーゲームとしても乙女ゲームとしても、あらゆる作品群と一線を画す内容だ
正直なところ私は、このようなフリーゲームを他に知らない
探せばあるかもしれないが、戦争にまつわる夫婦ものということで、むしろ「この世界の片隅に」や「私は貝になりたい」など、他媒体の名作を先に連想したほどだ
それほど、フリゲというエンタメでは類を見ない
攻略対象となるのは、
主人公の夫と、その弟
恋愛ものとしては、感情の機微の描写がうまい
夫の弟が、姉(主人公)を好きになっていく過程が、ただならぬ恋をしていることが、よくわかるだが、大切なものはきっと失われてしまう
大切なものが失われ、そして悲しみを共有するふたりには、新しい絆が芽生える
そして「鼓草」は、あなたに究極の選択を迫る。
それも何度も
「究極の選択」という言葉がこれほど似合うフリーゲームも、ほかにないだろうあなたの選択の理由は、愛情か同情か、それとも他の何かか…
プレイヤーによって、まるで解釈の違うものとなるだろう
鼓草(蒲公英)のタイトル回収を行うエンディングでは、文章やシーンのあまりの美しさに、思わず息を呑んでしまった
ゲームとしての完成度も、もちろん大変すばらしい。どこを取っても高次元だ
絵は派手過ぎず、戦中戦後の慎ましさを感じさせる。
主人公は今は絶滅した大和撫子で、夫は昭和の頼れる男。弟からはどの時代にも普遍的に存在する、少年らしさを感じた。
衣装も、情勢により事細かに変わる。
シリアスなストーリーは、戦争の悲惨さをもうやめてくれ…というほどに描写する
シビアなのに時折ウィットに富んだ文章が入り、センスが良い
音楽は自己主張がない旋律なのに、とてもきれいでマッチしている
何より人間の書き方が上手い。
誰もがあまりに人間臭く、ただの善人でもなければ、悪人でもない
「鼓草」に感情が単純な人間はひとりもいないそしてこの時代背景にしてはいい人が多く、主人公の味方をしてくれる。
それゆえどうか助かってほしい…幸せになってもらいたい…という気にさせられる
中でも、やはり「夫」に対する気持ちは大きい。出征後は、生きて帰ってほしいという緊迫感や不思議な気持ちが、常にあった
スタッフロールによると、製作者は随分と勉強した上で本作を作ったようだ。
これほど参考文献が多いフリーゲームは見たことがない
時代考証も担当スタッフをつけている
違和感は少しあったが、本作は歴史小説ではないので、気にするほどでもないかと思う
評価S+
100点
素晴らしい名作でした。
フリーゲーム史に残る名作でしょうスコアも、久しぶりに100点満点をつけます。
数年ぶりでしょうか?
いつ以来かな…?
とにかく久しぶり!……
最後に100点つけたゲームは、なんでしょうか?
管理人なのに覚えてねーのかよ
【ここ最近のフリーゲームと私】▼
「ティラノゲームフェス2020の、入賞作品を予想する」に「ティアマトの星影」「一恋」「コインランドリー」を追加。
この3本も入選すると予想。
私のおすすめでもありますよ。
そんな
「ティラノゲームフェス2020の、入賞作品を予想する」を何の気なしに見返していたら、何か違和感があった
非常に早い段階でそれを感じたが、具体的には冒頭にでかでかと書いた
「さて今年もやりますか!ティラノゲームフェスの入賞作品予想!!」に引っかかった
……「今年も」……?
……
「やりますか」……?
……
アレッ!?そんな事やってたっけっ!?
調べてみると……
去年も一昨年もやっていなかった
せいぜい有力作品を数点挙げただけである
若年性認知症はじまったな
受賞作予想と聞くと、賢明なフリーゲームファンならばふりーむ!ゲームコンテストの企画を思い出すだろう
あのとき受賞作予想を的中させた人は、いたのだろうか?
ふりーむ!は今回のティラノゲームフェス2020のように部門ごとの発表だったので(しかもオールジャンル)、言い当てたなら、凄い推察力だ。
以前「籠の街」「奈落の華」「ママにあいたい」は金賞の確信があったと書いた
「END ROLL」「メンヘラフレシア」も数分プレイしただけで、
「こりゃ金賞だ」と確信したが、あの年なら私は的中の自信がある(というか実際に的中させている)
フリーゲームには稀に、このような明らかに異彩を放つ、
出来が違う作品が出てくる
…ここ最近でそんな
「別格」の作品といえば…
▼そう「怨溺」だ評価が大体出揃ったが、睨んだ通り、やはりきわめて高評価だった
ここ数年のホラーアクションでも、間違いなくぎらっと光る存在だ
フリーゲームにいわゆる「AAAタイトル」があるなら、間違いなく「怨溺」がそうだ感想を読んでいると、面白いことに気づく。
「面白かった」「怖かった」…
そのような一般的な感想とは異なり、
「演出」という言葉がよく使われている
もちろん、
「演出がよかった」という評価だ。これはフリゲの感想ではあまり見ない文言だ
そう「怨溺」は映像、音ともに「演出」が優れたゲームだった
私は動画を作ったことはあるが、演出はほとんど勉強したことがないので、演出法を明確に論評することができない。感想を書いた彼らもそうであろう
だが例えば漫画では主人公の登場シーンはいきなり顔を
バン!!と出すよりも、まずは足を
ザッ!!と映してから次のコマに進むほうがインパクトがある、ということは直感的にわかる(背中や他の部位であることも多い)。
鳥山明も久保帯人もこの手法を使っている
映画でも同様に、まずは足を映し、徐々にカメラを上げるほうが効果的な「演出」だ
「怨溺」にはそのようなエッセンスを感じていた
それが「演出がいいゲーム」という評価を自然と呼んだのだろう
次に、
「主人公とヒロインが出会ったばかりなのにお互いの好感度が高すぎる」、
「特に主人公がヒロインに人生をかけるほど入れ込むのはおかしい」という感想が結構あったが………
これは絶対に言われると予想していた。スタッフも想定内ではないか
当たり前だ。ストーリーに重要なのは結論よりも「動機」「理由付け」だからだ
どんなご大層なエンディングだろうと、経緯が不明瞭ではプレイヤーは困惑するばかりだ
少年がさっき会ったばかりの少女のために、家族や友人がいる都市を1つ滅ぼすのは普通ありえない
彼は結果的に親兄弟、友人を殺している
しかしそれでも、さっき会ったばかりの少女を優先したなぜか?
私はプレイ中、その理由、答えに思い当っていた
だがそれは私だけの考察、解釈かもしれないし作者の中にあるかも不明なので、それぞれのプレイヤーが答えを見つけるのがいいと思う
「怨溺」自体がそのような終わり方のゲームなのだし
▼「KOKUTOU - 鐘塔の幽霊 -」がシリーズで一番の良作だったので、初代「KOKUTOU - 消えた初恋の謎 -」から再プレイした
すると意外と
今とキャラクター(の性格)が違うことに気が付いた
私の印象では初代黒十さんは良心的な大人で柚葉は
電波だったが、黒十さんもイースターエッグに
「いい!!これはいい!!」と大声で独り言を言ってたり、なかなかの変人である
30過ぎの男が骨董品片手に
「いい!!これはいい!!!」とか叫んでたら……
やはりかなりやばい奴である(イースターエッグをいきなりDISる柚葉は、言うまでもなくヤバイ)
シリーズを重ねるうちに、ふたりとも徐々に真人間になっていったんやな…
でも、黒十さんを「大人の男」「異性」として扱ってるのは柚葉だけなんだよな〜……(一応敬語だし)
「KOKUTOU - 鐘塔の幽霊 -」の女子高生たちがまるで友達に接するような態度だったのは、黒十さんのキャラや、見た目が大学生くらいだからというのも理由としてありそう
▼ブログ村に登録してから、100日が経過。残念ながら、これといった恩恵はなかった
9月はほぼ更新していないので除外するが、8月ピークはこのあたり
そうブログ村に登録する前と、特に変わっていない
伸びる記事の傾向もノベルとホラーばかりなので、そこも変化がない
そもそも論として、
ブログ村のブランド力、影響力そのものが低下しているのでは?と思い至った
もうとっくにブログって時代じゃないので、Googleもブログ村を軽視してそうだし…
すべての費用をまかないきれない状況が続いており赤字運営でございますと記載があるしね…
今度はブログ村が心配になってきた…
▼1ヵ月以上フリゲレビューをお休みした甲斐もありシナリオ脱稿したので(直しは入れるでしょうが)、ぼちぼち再開しますかね
同人シナリオライターから、また「フリーゲームレビュアー」へと戻ります
この1ヵ月で40作はプレイしましたし、私のフリゲIQもアンテナも感覚も、全く錆びついてませんよ!