グーグルはここ最近ロボット開発を行っているベンチャー企業を8社も買収している。ロボットは社会に大きなインパクトを与える技術と見ており、そのロボット用OSを開発する為ではないかと考えられている。
一方孫氏はモバイルの次の主力事業はロボットと信じフランスのアルデバラン社を200億円で買収した。小型ロボットNAOの開発技術が欲しかったからだ。198,000円で発売予定のpepperがスタジオに登場して、孫氏は「人類は今まで操作する道具を作って来た。今回自ら成長し進化するロボットを生み出した」と語った。
石黒氏は日本のロボット開発の第一人者として日本科学未来館のオトナロイド、桂米朝ロボットを開発し、ヴィストンを創業して小型ロボットを10万台売り黒字経営を行っている。彼の開発したロボット3体がスタジオに持ち込まれた。
小池栄子さんが操作室に入り特殊なヘッドホンを被るとスタジオのジェミノイドから声が出て首の動きをトレースする仕組みになっている。この状態でロボットの鼻を抓まれれば息苦しく感じ、肩を撫でられれば触られている感じがして、異性に肩を抱かれれば驚くという反応を見せた。石黒氏の説明では「脳と体はそれほど密接に繋がっておらず自分の意識通りに動くボディがあれば乗り移った様な感覚が味わえる」と言う。
赤ん坊の様な大きさのテレノイドも同様の操作方法で乗り移りを体験できる。村上氏は孫氏に抱かれてイケナイ関係を味わったり、小池さんに抱っこされたり頭を撫でられたりと楽しい経験をした。このテレノイドは中期以上の認知症患者が住む老人ホームに導入され、患者とのコミュニケーションに役立っている。
ペッパーに芸を仕込む吉本芸人の会議内容を追い、動きをトレースしてプログラムしたり、経験が無くてもプログラムを組んだりすることが出来るのが大きな特徴と説明があった。この開発環境をオープンプラットホーム化してアプリケーションを揃えて行きたいと孫氏は言う。村上氏は人型ロボットが一大産業になるか懐疑的だがフロンティアであることは確かだと締め括った。
ペッパーが小池さんに「発熱の原因は貴方です」というロボットジョークに騙されたり、ジェミノイドの髪の毛は植毛との説明に孫氏が「私も植毛しました」とジョークを言ったりと結構笑えるトークも多く楽しい84分だった。
一番興味深かったのは”乗り移り体験”で、声と首の動きをトレースするだけで人間の脳はロボットを自分の体と勘違いしてしまうことが衝撃的だった。『攻殻機動隊』の世界は意外と近い未来のようだ。
またゲームへの没入感を高めるためにヘッドマウントディスプレイの研究が進められているが、自分の動きを簡単に伝えられるインターフェースがあればよりリアルな体験が味わえそうだ。『ソードアート・オンライン』の様にベッドに横になってプレイするのは時代遅れになるかもしれない。(笑)
孫氏が「30年以内にロボットは一家に一台の時代が来る」と語り「お子さんの兄弟として家族の一員にして欲しい」と言うのを聞いて、ロボットとのコミュニケーションで育った子供が生身の人間相手に友達が作れるのか心配になってしまった。もっとも全員ペッパーで育っていれば上手く会話が噛み合いそうだ。(苦笑)
ロボットで労働者人口不足を補えば日本の産業は発展出来ると孫氏は言うが、今でも先進国では労働力のミスマッチが問題になっているのにこれ以上ロボットに進出されたら「仕事を奪われた!」と人間とロボットの対立が起こりそうだ。それはまるで『鉄腕アトム』の世界の様で興味深いのだが…。(苦笑)
アンドロイド(人間酷似型ロボット)というのは技術的にも、哲学的にも、産業的にも色々話題を提供してくれて面白い分野だと再認識した番組だった。
【関連リンク】
『ロボットワールド』
http://www.miraikan.jst.go.jp/exhibition/future/robot/android.html
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