2019年10月06日
2019年の自然科学系ノーベル賞。化学賞受賞で2年連続。
2019年の自然科学系ノーベル賞の結果は、
1.医学生理学賞
10月7日スエーデンのカロリンスカ医科大が3人の受賞者を発表した。
業績名:「細胞が低酸素を検知し応答する仕組みの発見」
これにより貧血や心血菅疾患、ガンなどの多くの病気に関わり治療法の開発にもつながった。
受賞者:米のウィリアム・ケーリン氏(61)、英のピーター・ラドクリフ氏(65)、
米のグレッグ・セメンザ氏(63)。
解 説:人間などの動物は低酸素になると「エリスロポエチン」というホルモンが増えて背血球が多く
作られ酸素を確保する。
3氏の発見でエリスロポエチンが作られ難くなり重い貧血を引き起こす慢性腎臓病の患者向けに
赤血球を増やして血液が酸素を運ぶ能力を高める薬が国内で9月に承認された。
2.物理学賞
8日、スエーデン王立科学アカデミーは3人の受賞者を発表した。
受賞者:ジェームズ・ピーブルス氏(84歳、米)、ミシェル・マイヨール氏(77歳、スイス)、
ディディエ・ケロー氏(53歳、スイス)
業績内容:ピーブルス氏は宇宙が誕生した直後の光の名残から宇宙の成り立ちを理論的に読み解いた。
それにより、星や私たちといった目に見える物質は宇宙の5%程に過ぎず、残りは殆ど
ークマタ―やダークエネルギーだという新たな知見に繋がった。
マイヨールさんとケローさんは1995年太陽系以外で初めてとなる惑星を、約50光年
離れたペガス ス座の方向に見つけた。この惑星は木星の様な巨大な惑星で、恒星の周りを
回っておりこれまでの常識を 覆した。
その後、これまで4000を超える系外惑星が発見された。
この中には生命が有りそうな惑星も見つかっている。
同アカデミーは3氏の発見を「私たちの世界観を永遠に変えた」と称えた。
3.化学賞
9日、スエーデン王立科学アカデミーは3人の受賞者を発表した。
受賞理由:リチウムイオン電池の開発
受賞者:旭化成の吉野彰名誉フェロー(71)、米テキサス大のジョン・グッドイナフ教授(97)、
米ニューヨーク州立大ビンガムトン校のスターリン・ウィッティンガム卓抜教授(77)
3氏はスマホやEVに搭載するリチウムイオン電池の開発で主導的な役割を
果たし、人々の生活を大きく変えITを始め産業の発展に貢献した業績が評価された。
リチウムイオン電池の開発の歴史は、
先ず1970年代、ウィッティンガム氏は最初にリチウムを電極に使う二次電池を初めて作り突破口を開きリチウムイオンが正極に出入りする原理を解明した。しかし発火や爆発がありそのままでは使えなかった。
次にグッドイナフ氏がその原理を応用して正極の材料を開発した。リチウムを酸化化合物にすると電圧を高く出来る事が判り、コバルト酸リチウムを見いだし、1980年論文発表した。しかし爆発の危険性は残ったままだった。
その後吉野彰氏が正極の対になる負極として炭素材料を採用することを考案。また正極と負極の接触によるショートを防ぐためのセパレータ―等を含め電池の基本構造を確立し、1985年に基本特許を出願し現在のリチウムイオン電池の原型になった。
そしてその後各種改良が加えられて現在の液体電解質型リチウムイオン電池になった。
(ただ現在はやはり電解質を含む有機液体の可燃性が問題となり、不燃性の全個体電池が開発されつつある)
尚補足として、
有力候補の一人とされていた東芝の水島公一エグゼクティブフェローは、東大助手だった70年代後半、英オックスフォード大学教授のグッドイナフ氏と共に研究に取り組みコバルト酸リチウムが正極になると言う事を発見しその論文の筆頭著者。ノーベル賞の人数制限(3人)の為に外されたという事でしょう。
ただ新聞は、大勢の人の貢献の上のピークの3人だと言う事を忘れないで欲しいと結んでいます。
商用化とその後の量産体制
リチウムイオン電池の商品化は1991年にソニーが世界に先駆け商品化し、三洋電機やパナソニックが参入したが、その後韓国メーカーが大型投資を繰り返し、近年中国メーカーも参入し、日本メーカーは後塵を拝するようになった。
リチウムイオン電池の改良と全固体電池の台頭
現在あらゆる電子機器のバッテリーとして使われているリチウムイオン電池だが、火災の危険性がなく、
更に充填速度、エネルギー密度、耐久性等でより高性能を目指した電池が開発されている。
その一つに最近最も注目されている全固体電池がある。
備考
・今回のノーベル賞受賞で、日本人の受賞者は27人(米国籍を含む)、化学賞は8人となった。
・今年は、2次電池が生まれて160年目の年。(フランスのブランテが1859年初めて発明)
本記事は、各社新聞、科学記事サイトを参照としてまとめた。
追記
水島公一氏は東京大学からその功績に対し総長特別表彰を授与された。
・東京大学総長特別表彰の決定
・ヤフーニュース
<参考サイト>
ノーベル化学賞・吉野彰さんが乗り越えた「ダーウィンの海」とは? リチウムイオン電池が全く売れず苦悩した3年間
=================================================
以下10月始め事前予想として書いた記事を付記
昨年は10月1日から順に発表されたが、今年2019年はいよいよ明日7日からの発表が始まる。
予定は
10月7日はノーベル医学生理学賞、8日は物理学賞、9日は化学賞が発表される。
1.医学生理学賞
昨年は免疫研究で大きな功績を挙げた本庶佑京大特別教授が受賞。
がん治療薬の「オプジーボ」など免疫に働きかける新たながん治療に道を開いた事が評価された。
1)今年の候補
@功績の対象としては、生物の設計図であるゲノムを狙い通りに書きかえられる様にしたゲノム編集技術
「CRISPR/Cas9」が最有力候補。日本人も貢献したとされ可能性は0ではないがやはり
ノーベル賞の登竜門とされるガードナー賞を受賞した米仏の研究者3人が有力視されている。
日本人の有力な候補としては次の2人を挙げておこう。
A細胞の内のたんぱく質の品質管理を解明した京大の森和俊教授。
やはりノーベル賞の登竜門とされるラスカー賞を受賞している。
近年の糖尿病やアルツハイマー病に等に係る事が判り薬の開発が盛んになっている。
B血中コレステロール値を下げる「スタチン」を発見した東京農工大の遠藤章特別栄誉教授が有力。
Cエイズの発症を抑える薬を開発した満屋裕明国立国際医療研究センター研究所長。
2.物理学賞
昨年は重力波の発見で米国の3人が受賞。
1)今年の予想
日本人の候補者は数人いるが、世の中へのインパクトの大きさからいえば
@強力なネオジム磁石の開発者佐川真人氏(大同特殊鋼顧問)
ネオジム磁石30年以上トップに君臨し、モーター、記憶媒体性能向上や省エネルギーに多大な
貢献をしている。
A380億年に1秒しかずれないとされる「光格子時計」を発明した東大の香取秀俊教授。
時間の定義への応用もさることながら、アインシュタインの相対性理論の検証に役立つとされる。
例えば、高いところと低いところでは時間の進み方が違うことの検証。
(昨年東京スカイツリーの展望台に設置された。)
B鉄を含む超電導物質の発見、その他アンモニア合成触媒の開発、透明な酸化物半導体の発明の東工大
の細野秀雄栄誉教授。
C多くのマルチフェロクロイック物質の発見した理化学研究所の十倉好紀創造物性科学研究センター長
DCNT発見の飯島澄男氏他と大量合成法の開発の信州大遠藤守信特別特任教授
フラーレンとグラフェンが受賞したため、CNTはもう駄目と言われていたが、最近単層CNTの応用
が盛んに研究されている。そもそもグラフェンは単層CNTを切開したものであり、世界に貢献出来る
ような画期的な商品が出来れば可能性はあるのではないかと思う。
量子科学分野はもう少し先だろう。
3.化学賞
1)今年の予想
@リチウムイオン電池の開発の3氏
これは米テキサス大のグッドイナフ教授が基礎研究を始め、同所で正極活物質としてのコバルト酸
リチウを発見した水島公一氏とこれを使ってリチウムイオン電池を完成した吉野彰旭化成フェロー。
A科学反応を使わずに金属イオンと有機化合物を混ぜるだけで巨大な立体構造を汲みあげる
「自己組織化」と言う研究をさせた東京大学藤田誠教授
B人類を救う技術として最近研究開発が盛んになった人工光合成の研究の発端となったホンダ・フジシマ
効果発見の藤島昭栄氏。光のエネルギーで水を酸素と水素に分解する「光触媒反応」を発見。
抗菌や汚れ防止に使われている。
明日7日から連続3日間で全て判明。期待できるかな。
1.医学生理学賞
10月7日スエーデンのカロリンスカ医科大が3人の受賞者を発表した。
業績名:「細胞が低酸素を検知し応答する仕組みの発見」
これにより貧血や心血菅疾患、ガンなどの多くの病気に関わり治療法の開発にもつながった。
受賞者:米のウィリアム・ケーリン氏(61)、英のピーター・ラドクリフ氏(65)、
米のグレッグ・セメンザ氏(63)。
解 説:人間などの動物は低酸素になると「エリスロポエチン」というホルモンが増えて背血球が多く
作られ酸素を確保する。
3氏の発見でエリスロポエチンが作られ難くなり重い貧血を引き起こす慢性腎臓病の患者向けに
赤血球を増やして血液が酸素を運ぶ能力を高める薬が国内で9月に承認された。
2.物理学賞
8日、スエーデン王立科学アカデミーは3人の受賞者を発表した。
受賞者:ジェームズ・ピーブルス氏(84歳、米)、ミシェル・マイヨール氏(77歳、スイス)、
ディディエ・ケロー氏(53歳、スイス)
業績内容:ピーブルス氏は宇宙が誕生した直後の光の名残から宇宙の成り立ちを理論的に読み解いた。
それにより、星や私たちといった目に見える物質は宇宙の5%程に過ぎず、残りは殆ど
ークマタ―やダークエネルギーだという新たな知見に繋がった。
マイヨールさんとケローさんは1995年太陽系以外で初めてとなる惑星を、約50光年
離れたペガス ス座の方向に見つけた。この惑星は木星の様な巨大な惑星で、恒星の周りを
回っておりこれまでの常識を 覆した。
その後、これまで4000を超える系外惑星が発見された。
この中には生命が有りそうな惑星も見つかっている。
同アカデミーは3氏の発見を「私たちの世界観を永遠に変えた」と称えた。
3.化学賞
9日、スエーデン王立科学アカデミーは3人の受賞者を発表した。
受賞理由:リチウムイオン電池の開発
受賞者:旭化成の吉野彰名誉フェロー(71)、米テキサス大のジョン・グッドイナフ教授(97)、
米ニューヨーク州立大ビンガムトン校のスターリン・ウィッティンガム卓抜教授(77)
3氏はスマホやEVに搭載するリチウムイオン電池の開発で主導的な役割を
果たし、人々の生活を大きく変えITを始め産業の発展に貢献した業績が評価された。
リチウムイオン電池の開発の歴史は、
先ず1970年代、ウィッティンガム氏は最初にリチウムを電極に使う二次電池を初めて作り突破口を開きリチウムイオンが正極に出入りする原理を解明した。しかし発火や爆発がありそのままでは使えなかった。
次にグッドイナフ氏がその原理を応用して正極の材料を開発した。リチウムを酸化化合物にすると電圧を高く出来る事が判り、コバルト酸リチウムを見いだし、1980年論文発表した。しかし爆発の危険性は残ったままだった。
その後吉野彰氏が正極の対になる負極として炭素材料を採用することを考案。また正極と負極の接触によるショートを防ぐためのセパレータ―等を含め電池の基本構造を確立し、1985年に基本特許を出願し現在のリチウムイオン電池の原型になった。
そしてその後各種改良が加えられて現在の液体電解質型リチウムイオン電池になった。
(ただ現在はやはり電解質を含む有機液体の可燃性が問題となり、不燃性の全個体電池が開発されつつある)
尚補足として、
有力候補の一人とされていた東芝の水島公一エグゼクティブフェローは、東大助手だった70年代後半、英オックスフォード大学教授のグッドイナフ氏と共に研究に取り組みコバルト酸リチウムが正極になると言う事を発見しその論文の筆頭著者。ノーベル賞の人数制限(3人)の為に外されたという事でしょう。
ただ新聞は、大勢の人の貢献の上のピークの3人だと言う事を忘れないで欲しいと結んでいます。
商用化とその後の量産体制
リチウムイオン電池の商品化は1991年にソニーが世界に先駆け商品化し、三洋電機やパナソニックが参入したが、その後韓国メーカーが大型投資を繰り返し、近年中国メーカーも参入し、日本メーカーは後塵を拝するようになった。
リチウムイオン電池の改良と全固体電池の台頭
現在あらゆる電子機器のバッテリーとして使われているリチウムイオン電池だが、火災の危険性がなく、
更に充填速度、エネルギー密度、耐久性等でより高性能を目指した電池が開発されている。
その一つに最近最も注目されている全固体電池がある。
備考
・今回のノーベル賞受賞で、日本人の受賞者は27人(米国籍を含む)、化学賞は8人となった。
・今年は、2次電池が生まれて160年目の年。(フランスのブランテが1859年初めて発明)
本記事は、各社新聞、科学記事サイトを参照としてまとめた。
追記
水島公一氏は東京大学からその功績に対し総長特別表彰を授与された。
・東京大学総長特別表彰の決定
・ヤフーニュース
<参考サイト>
ノーベル化学賞・吉野彰さんが乗り越えた「ダーウィンの海」とは? リチウムイオン電池が全く売れず苦悩した3年間
=================================================
以下10月始め事前予想として書いた記事を付記
昨年は10月1日から順に発表されたが、今年2019年はいよいよ明日7日からの発表が始まる。
予定は
10月7日はノーベル医学生理学賞、8日は物理学賞、9日は化学賞が発表される。
1.医学生理学賞
昨年は免疫研究で大きな功績を挙げた本庶佑京大特別教授が受賞。
がん治療薬の「オプジーボ」など免疫に働きかける新たながん治療に道を開いた事が評価された。
1)今年の候補
@功績の対象としては、生物の設計図であるゲノムを狙い通りに書きかえられる様にしたゲノム編集技術
「CRISPR/Cas9」が最有力候補。日本人も貢献したとされ可能性は0ではないがやはり
ノーベル賞の登竜門とされるガードナー賞を受賞した米仏の研究者3人が有力視されている。
日本人の有力な候補としては次の2人を挙げておこう。
A細胞の内のたんぱく質の品質管理を解明した京大の森和俊教授。
やはりノーベル賞の登竜門とされるラスカー賞を受賞している。
近年の糖尿病やアルツハイマー病に等に係る事が判り薬の開発が盛んになっている。
B血中コレステロール値を下げる「スタチン」を発見した東京農工大の遠藤章特別栄誉教授が有力。
Cエイズの発症を抑える薬を開発した満屋裕明国立国際医療研究センター研究所長。
2.物理学賞
昨年は重力波の発見で米国の3人が受賞。
1)今年の予想
日本人の候補者は数人いるが、世の中へのインパクトの大きさからいえば
@強力なネオジム磁石の開発者佐川真人氏(大同特殊鋼顧問)
ネオジム磁石30年以上トップに君臨し、モーター、記憶媒体性能向上や省エネルギーに多大な
貢献をしている。
A380億年に1秒しかずれないとされる「光格子時計」を発明した東大の香取秀俊教授。
時間の定義への応用もさることながら、アインシュタインの相対性理論の検証に役立つとされる。
例えば、高いところと低いところでは時間の進み方が違うことの検証。
(昨年東京スカイツリーの展望台に設置された。)
B鉄を含む超電導物質の発見、その他アンモニア合成触媒の開発、透明な酸化物半導体の発明の東工大
の細野秀雄栄誉教授。
C多くのマルチフェロクロイック物質の発見した理化学研究所の十倉好紀創造物性科学研究センター長
DCNT発見の飯島澄男氏他と大量合成法の開発の信州大遠藤守信特別特任教授
フラーレンとグラフェンが受賞したため、CNTはもう駄目と言われていたが、最近単層CNTの応用
が盛んに研究されている。そもそもグラフェンは単層CNTを切開したものであり、世界に貢献出来る
ような画期的な商品が出来れば可能性はあるのではないかと思う。
量子科学分野はもう少し先だろう。
3.化学賞
1)今年の予想
@リチウムイオン電池の開発の3氏
これは米テキサス大のグッドイナフ教授が基礎研究を始め、同所で正極活物質としてのコバルト酸
リチウを発見した水島公一氏とこれを使ってリチウムイオン電池を完成した吉野彰旭化成フェロー。
A科学反応を使わずに金属イオンと有機化合物を混ぜるだけで巨大な立体構造を汲みあげる
「自己組織化」と言う研究をさせた東京大学藤田誠教授
B人類を救う技術として最近研究開発が盛んになった人工光合成の研究の発端となったホンダ・フジシマ
効果発見の藤島昭栄氏。光のエネルギーで水を酸素と水素に分解する「光触媒反応」を発見。
抗菌や汚れ防止に使われている。
明日7日から連続3日間で全て判明。期待できるかな。
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