2016年09月14日
新発見。睡眠時無呼吸症候群ががん細胞の増殖を許していた
眠っている間、何回も呼吸が止まる睡眠時無呼吸症候群は不眠を引き起こすだけではない。繰り返される呼吸困難による低酸素状態が、がん細胞の増殖を促す可能性が示された。
□恐ろし過ぎる 睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、睡眠中に繰り返し呼吸が止まる病態である。
長い場合は1分以上も呼吸が止まり、苦しくて目が覚めたり、眠りが浅くなったりする。SASで直接命を落とすことはないとされているが、SASは不眠を引き起こし、不眠は生活習慣病や、運転中の重大事故などの引き金ともなる。
たくさん眠ったつもりでも朝起きてスッキリしない、日中に眠気を感じるなどの症状がある人は、ひょっとしたらSASかもしれない。イビキが大きい人は要注意であるが、SASは自分では気が付きにくいため、まずは、家族などに自分が眠っている間の様子を尋ねてみるのがよいだろう。
□SASとがんの密接な関係
無呼吸は不眠を引き起こすが、その不眠は免疫力を低下させ、がんのリスクを高めることが知られている。
風邪を引いたとき、一晩眠ったら朝にはすっかり元気になっていた。そんな経験をしたことがある人も多いだろう。眠っている間、私たちの体の中では、傷ついた細胞や遺伝子の修復・増殖が活発に行われている。風邪の原因菌と闘う免疫細胞も、睡眠中に活発にはたらいている。睡眠によって、私たちは風邪や疲労から「回復」するのである。
しかし、不眠が長引くと睡眠の「再生工場」としてのはたらきが阻害されてしまうため、免疫力も低下する。すると、健康な人でも毎日生まれていると言われるがん細胞を殺すはたらきも弱り、がんになりやすくなるのだ。
無呼吸が不眠を介してがんを引き起こす要因となっているのである。
□低酸素 がん悪化の要因か?
さらに、がんと無呼吸がより直接的に関係しているという報告が、スペイン・バルセロナの病院から上がってきている。
それによると、SASで起こる低酸素状態ががんを悪化させるという。研究グループは腎臓がんのマウス24匹を実験に使用し、そのうち12匹のマウスについては定期的に酸素濃度を変化させることで、SASで起こる低酸素状態を再現し、飼育した。
その結果、低酸素状態で飼育されたマウスでは、がん細胞に入り込む血管の増殖が確認されたのだ。これにより、がん細胞がより多くの栄養の供給を受けることができることに加え、血管ががん転移の「道」にもなることも考えられ、がんをより悪化させる可能性がある。
SASは私たちの健康に重大な影響を与えるにもかかわらず、自分では気付きにくい症状だ。朝起きた時の寝不足感、日中の眠気、家族などからイビキの大きさを指摘された経験がある人は、睡眠外来がある病院で受診するなど、早めに対処することをお勧めする。