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2022年01月12日

不死川実弥(鬼滅の刃)



不死川実弥とは鬼滅の刃に登場する、キャラクターの一人である。名前を初見で読めた人は恐らくいないものだと思われる。
瞳孔がかっ開いた非常に印象的な目と、傷だらけの体が特徴的。
風柱。
作者曰く、泣いた赤鬼における青鬼を地でいっているのだとか。弟に対して危険極まりない鬼殺隊を止めて欲しいからという理由で再起不能にすべく物理的な行動に出るなど、父親と似たDV気質があるように散見される。


【内容】



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初登場は柱合会議で、禰津子の入っている箱を持って来た状態で登場している。鬼であるのに殺処分が為されていない禰津子の処遇について、中立である立場は甘露寺蜜璃だけであったが、さすがに強行過ぎる態度に胡蝶しのぶが「勝手な真似をしないでほしい」と苦言を呈している。

その後の行動では、お館様に鬼の本性を暴くべく、箱を刀でめった刺しにして餌である血液を垂れ流すも、彼女は一切人を食わずにはいられない鬼としての本能的な性質を脅威の精神力で拒否している。

実は実弥の血液は「稀血の中の稀血」と呼ばれるほど非常に強力なもので、そのデバフ効果は鬼として強ければ強いほど抜群の効果を発揮する。無残の配下で一番強かった上弦の壱である、あの黒死牟でさえも思わず千鳥足になるもので、深い酩酊感をもたらす。

禰津子が自力で実弥の血液を、涎を垂らしながら拒否したことにより、お館様から「(不死川の猛烈な稀血を目の前に食人衝動に呑まれることはなかったから)安心」との太鼓判を押されることになる。

柱合会議前におけるその日の実弥は散々なもので、自身の稀血を使って鬼の本性を暴くどころか逆に禰津子の安全性を保障されるだけではなく、炭治朗に「悪い鬼と良い鬼の区別がつかないなら鬼殺隊なんて辞めてしまえ!」と罵倒されている。

上記の炭治朗の言葉は、かつて幼少期――父親の酒などの悪癖により絡み酒による暴行の返り討ちにされ死亡しており、不死川家は子沢山の女手一つの状態となってしまったが父親が母親に暴行を加えることが度々あったため、父親の死亡後、これから貧しいながらもこれから幸せな家庭になると思った直後に、母親が鬼と化して家族を手に掛けた。

生き残ったのは実母を殺害した実弥と玄弥の二人だけであり、しかも弟の方からは状況が飲み込めなかった状態であり致し方ないことであるが、結果的に母親を惨殺したと勘違いして「人殺し」との罵倒を受けている。
その後、玄弥は鬼という存在を知り兄に対する勘違いが解け、「人殺し」と罵った事実を何とか謝罪したいと思っているが、鬼殺隊に入った彼を弟とは認めず、付け離す態度でいた。


実弥が母親を殺した直後、自身が稀血としての性質(鬼の動きが鈍くなる)ことを知った彼は、しばらくの間、様々な凶器を手に鬼を長時間縛り上げ、日光に照らし殺すという方法を取っていたのだが、そんな無茶な戦いをする中、鬼殺隊の一人である「粂野匡史」と出会い、風の呼吸を身につけ下弦の壱と戦うもまるで兄弟のように親睦を深めていた粂野が死亡し、その後、下弦の鬼を倒した功績から風柱に就任する。


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2022年01月11日

姉さんそれはタラちゃんじゃないよ H

サザエ「あら」
サザエ「やっぱりカツオ、帰って来ていたのね」

僕は一瞬見つかったのかと思った。
だけどそれは単なるはやとちりで、姉さんが見つめていたのは僕の机の上だった。

サザエ「さっきは中身が散らばっていたのに……きれいにしまわれてる」

いつ見たのだろう。僕が一度目に帰宅してから次に戻ってくるまでの間に違いないだろうが、その時にはワカメはどうしていたのだろうか。すでに姉さんに肉を殺がれた後だったのだろうか。
それを考えると胸が裂けそうな思いで苦しかったが、妹の悲惨な最期を哀れむ余裕など今の僕にはないのだ。

サザエ「まだ家のどこかにいるのかしら、ちょっと探してくるからここにいてねタラちゃん」

べしゃりと音を立ててワカメだったものの上に、肉の詰まった縫いぐるみが置かれた。
もしも姉さんに見付かってしまえばあれらの仲間入りだ。
それは絶対に避けなければいけない。
ワカメを切った時に刃毀れしたのであろう包丁は、傾き掛けた太陽の光で凸凹とした刃先を浮かび上がらせている。
それを手にした姉さんがくるりと後ろを振り向きこの部屋からでていくそぶりをした瞬間、僕は安堵のため息を漏らした。
それが、いけなかった。
息と共に体の力が抜け、床の一点に体重が集中してしまう。
ミシリ、となる床の音は静かすぎるこの部屋に響き渡るには十分過ぎる程だった。
ぴたりと動きを止めた姉さん。
僕は押し入れから飛び出して姉さんに体当たりでもしてみようかと考える。
だけどそれを実行するにはこの体の震えを止めなければ、立ち上がることもできないだろう。
僕は襖の穴から外を覗くことを止めた。振り返った姉さんの顔を見たくなかったからだ。
これが走馬灯というものなのか、様々な光景が頭に浮かんで消える。
こんなときだからなのか、みんなの笑顔や楽しかった思い出ばかりが出てくる。
そういえば母さんは町内の婦人会で今日は遅いって言っていたな、とか。
仲島たちは僕が行かなくても野球をしているんだろうな、とか。
今の僕には遠い世界の話のような言葉が浮かび、目の前の暗闇が裂けた。

サザエ「タラちゃん、今できるからね」

その声が聞こえた後、赤黒く染まった刃先が僕を


おわる

しっぽ 2


正夫が山小屋の中に入ったときは、既に午前8時を過ぎていました。
急に安堵感、疲労感、空腹感が正夫を襲い、正夫は床に大の字になって寝転がりました。
そして、さきほど遭遇したバケモノの事を考えていました。

「やっぱり、あれは山の神さんだったんじゃろか」

そう思うと体の震えが止まらなくなり、正夫な着付けに山小屋に保存してある焼酎を飲み始めました。
保存食用のイノシシの燻製もありましたが、あまり喉を通りませんでした。タケルに分けてやると、喜んで食いつきます。

「今日は眠れねぇな」

そう思った正夫は、猟銃を脇に置き、寝ずの番をする事を決心しました。

「ガリガリガリガリ」

何かを引っ掻くような音で、正夫は目が覚めました。
疲労感も酒も入っていたので、いつの間にか寝てしまっていた様です。
時計を見ると、午前1時過ぎでした。

「ガリガリガリガリ」

その音は、山小屋の屋根から聞こえてきます。
タケルも目が覚めた様で、低く唸り声をあげています。
正夫も無意識の内に猟銃を手にとっていました。

「まさか、あいつが来たんじゃなかろうか…」

そう思った正夫ですが、山小屋の外に出て確かめる勇気も無く、猟銃を握りしめて、ただ山小屋の天井を見つめていました。
それから10分ほど、天井を爪で引っ掻くような音が聞こえていましたが、やがてそれもやみました。
正夫にとっては、永遠に続く悪夢の様な時間でした。
音が止んでも、正夫は天井をじっと睨んだままでしたが、やがて「ボソボソ」と人間の呟く声のような音が聞こえてきたのです。

「…ぽっ…っ…ぽ」

正夫は恐怖に震えながらも耳を澄まして聞いていると、急にタケルが凄い勢いで吠え始めました。
そして、何かが山小屋の屋根の上を走る様な音が聞こえ、何か重い物が地面に落ちる音がしました。
タケルは、今度は山小屋の入り口ぬ向かって吠え続けています。

「ガリガリガリガリ」

さっき屋根の上にいた何かが、山小屋の入り口の扉を引っ掻いている様です。
タケルは尻尾を丸め、後退しながらも果敢に吠え続けています。

「だっ、誰だ!!」

思わず正夫は叫びました。猟銃を扉に向かって構えています。
すると、引っ掻くような音は止み、今度はその扉のすぐ向こう側から、ハッキリと人間の子供の様な声が聞こえてきました。

「しっぽしっぽ」

あいつだ。正夫は恐怖に震えました。ガチガチ鳴る奥歯を噛み締め、

「何の用だ!!」

と叫びました。タケルはまだ吠え続けています。

「そっぽしっぽ わたしのしっぽをかえしておくれ」

「それ」はハッキリと、人間の言葉でそう言ったのです。
正夫は、堪らず扉に向かって、散弾銃を1発撃ちました。

「きょっ」

と奇妙な叫び声が扉の向こうから聞こえ、正夫は続けさまに2発、3発と撃ちました。
散弾銃に開けられた扉の穴から、真っ赤に血走った目が見えました。

「しっぽしっぽ わたしのしっぽをかえしておくれ」

人間の幼児そっくりの声で、「それ」は言いました。

「尻尾なんて知らん!!帰れ!!」

正夫は続けざまに引き金を引こうとしましたが、体が動きません。

「しっぽしっぽ わたしのしっぽをかえしておくれ」

「それ」は壊れたテープレコーダーの様にただそrだけをくり返します。

「し、知らん!あっちにいってくれ!!」
「しっぽしっぽ わたしのしっぽをかえしておくれ」

再びガリガリと扉を引っ掻きながら、「それ」は扉の穴から怒り狂った赤い目で正夫を見ながらくり返し言います。
タケルも吠えるのを止めて尻尾を丸めて縮こまっています。

「俺じゃない!!お前のしっぽなんて知らねぇ!!あっちにいけ!!」

正夫は固まったままの体で絶叫しました。
すると「それ」は、「いいや、おまえがきったんだ!!!」と叫び、扉を破って中に入ってきたのです。
正夫の記憶は、それから途切れ途切れになっていました。
扉を破って現れた、幼児の顔。怒りを剥き出しにした血走った目。
鋭い前足の爪。自分の顔に受けた焼けるような痛み。
「それ」に飛びかかるタケル。
無我夢中で散弾銃を撃つ自分。正夫が気がついた時は、村の病院のベッドの上でした。
3日間昏睡状態だったそうです。
正夫の怪我は左頬に獣に引き裂かれた様な裂傷、右足の骨折、体のあちこちに見られる擦り傷などの、かなりの重傷でした。
正夫は、村人には「熊に襲われた」とだけ言いました。
しかし、何となく正夫に何が起こったかを感づいた様で、次第に正夫は村八分の様な扱いをうけていったのです。
やがて、正夫は東京に引っ越し、そこで結婚し、俺の祖父が生まれました。
ちなみに、この話は正夫が肺ガンで亡くなる3日前に、俺の祖父に話して聞かせたそうです。
地名は、和歌山県のとある森深い山中での出来事だとだけ言っておきます。
ちなみに、愛犬のタケルですが、まるで正夫を守るかの様に、正夫の上に覆い被さって死んでいたそうです。
肉や骨などはほぼ完ぺきな状態で残っていたそうですが、何故か内臓だけが1つも残らず綺麗に無くなっていたそうです。

2022年01月10日

蟲毒 2



「その札そのものには、悪いものはないんですって。まぁ、ああいう神聖なものをパウチするってのは常識的にだめだけど。で、この札は人からもらったものですね?って聞かれて、札をくれた人がすさまじい強烈なネガティブなものを持ってるって言うのよ、その住職さん。本人の意思云々じゃなくて、彼女が持つ何かがすごい悪いって。他にもらった人がいますねって聞かれて、すぐにお寺か神社でお清めしてもらって処分するようにしないと、とんでもないことになるって言われたの!!泉ちゃん、いい?その住職、お祓いもできる人なのに、自分では処分できないかた、上のお寺に持っていくって言ったのよ」

私は正直に、すでに自分がもらったものは、大師様で処分したと伝えました。
残るはM。
そういうのをさっぱり信じないMは、案の定手帳にいれて持って歩いていました。
私とYの話に、「わかったー」と明るく答えた彼女。
これで一応終わりと、私たち誰もが思っていました。
6月。
Mのお母さまが、突然入院しました。
良性の脳腫瘍といわれ、すぐさま手術。
無事終わって医師からOKが出田その直後、またしても腫瘍が見つかり、また手術。
7月、看病に疲れた彼女のお父さんが、突然ガン末期を告知。
その話を聞いた私、

「M、もしかしてあのカード、まだ持ってるんじゃないでしょうね?」
「…持ってる。手帳に入れたままになってる…」

そう答えたM、神社やお寺に行く時間がないというので、事情を書いた手紙にお金をつけて、もっていくだけもっていけと私とYで言い、Mはすぐさまそのとおりにしました。
一か月後、開腹検査をした彼女のお父さんの胃は、ガンがあった形跡だけがケロイド状に残ってるだけで、ガンは発見されず。あとかたもなく消えました。
その年の夏、Fと彼女は結婚しました。
私のところに招待状が来ましたが、私は彼らとのつきあいを完全に絶ちました。
そして半年後、Yが台湾に遊びに行き、Fの両親の家に招かれたそう
笑顔で迎えてくれたFのお母さまから、Fと彼女の結婚について結局最後には自分も折れたが、父親だけは頑として反対していたこと、それでも結婚式をするとなったそのひと月前、突然父親が心臓発作をおこし亡くなったことを聞いたそうです。
その後、みんなが口をつぐんだ彼女の存在。
それはいったいなんだったんだろうと思っていた私に、ある人が話してくれたこと。

「中国には蟲毒と呼ばれる一族がいて、蟲や動物を使ってまじないや呪いをほどこす人たちが実際いる。たぶん彼女は、その一族なんじゃないかな。実際高い能力を持つのは女性に多く、その人たちは蟲や動物を使わなくても、その思念だけで呪いをかけたりすることができるって話も聞くよ。話を聞いていると、その相手の男性、まさに魅入られたって感じがするしね。関わりをすべて絶ったのは、正解だったと思うよ。まさに命に係わることになってたと思う。でも、多分彼の一族は、彼女のそういうのに取り込まれていくだろうなぁ。お兄さんとか、無事だといいね。子供できないって言ってたみたいだけど、蟲を使うその種の人は、一子だけもうけてその力を伝えるって話もあるから、たぶん子供生まれるよ。その一子ってのは、女だろうね。蟲つかいは、基本的に女性の一族だから」

それから二年後。
仕事関係で本当に偶然話す機会のあったFから聞いた言葉。

「泉、僕、父親になったんだ。そうなんだ、彼女子供が出来ない体だって言ってたけど、赤ん坊が生まれたんだよ。僕、父親になったんだ。娘ができたんだよ」


蟲毒とは…………

〇作り方〇
ムカデ、蜘蛛、サソリ、蝦蟇、ヤモリなどの小動物を、1つの甕に入れる。数は多ければ多いほどよい。密封させ放置すると、それぞれが共食いを始める。最後に生き残った1匹が、蟲毒となる。

〇性質〇
家に富を運んでくれる。
定期的に生贄を捧げないと、かわりに食われる。
剣や火では殺せない。
遠くに捨てても戻ってくる。
捨てるには、蟲毒がくれただけの財と同じ価値の財と共に、捨てなければならない。

〇使い方〇
性質を利用して、呪うべき相手のところへ、少しの金品と共に蟲毒を送りつける。
そうすると蟲毒は相手のものとなり、養えぬままに、食われてしまう。
また、蟲毒を食べることにより、蟲毒のパワーを手に入れることができる。
(甕の中のヒエラルキーの頂点にたつことになるため)

姉さんそれはタラちゃんじゃないよ G

サザエ「ちょうどいいところに帰って来てくれたと思ったのに、勘違いだったみたいね」

何がちょうどいいのかわからないけど、姉さんの手に握られた包丁をみるかぎり僕にとってはちょうど良くないことに違いない。
おまけに反対側の手にはあのタラちゃんの縫いぐるみが抱かれていた。

サザエ「ごめんね、タラちゃんもう少し我慢してね」

姉さんはまた縫いぐるみに話し掛け、本当の我が子にするように笑いかけた。不思議なのは昨日綿を抜かれてぺしゃんこになっていたはずのそれが、いまは妙に膨らんで見えたことだ。

サザエ「昨日のタラちゃんはタラちゃんじゃなかったのよ」
サザエ「だって母さんもそう言っていたしね」
サザエ「だって中身があんなに軽くてふわふわしていたもの」
サザエ「もう一度ママの体に戻そうと思っていたけど」
サザエ「もっと簡単に出来るって気がついたのよ」
サザエ「タラちゃんの体を取り戻せばいいんじゃない」

姉さんのぶつぶつと呟く声が耳に届く。
言っている内容はめちゃくちゃなのだが、今の姉さんに見つかることは非常に危険だということは分かった。
無残なワカメの姿を見ても、可哀相だとか酷いだとかの感情が浮かぶのではなく、ただ恐怖だけが僕を捕えている。

サザエ「きっとワカメがタラちゃんをこんな目に合わせたのよ、体を奪い取って綿と詰め替えていたのよ」

だからワカメから取り返したのだろう。
ワカメの体から肉を削り取り、縫いぐるみに詰めていたようだ。
縫いぐるみから滴る血も全部ワカメのものだったのだ。

サザエ「でもワカメからばっかりじゃ可哀相よね、カツオだって悪いんだもの」

僕の名前があの声で呼ばれたとき、思わず体が強張った。
どこかで音を立ててしまっていないか、早まった心拍と同じリズムで手の傷がドクドクと脈打った。

サザエ「タラちゃんが酷い目に合わされているってのに黙って見てるだけなんて」
サザエ「ワカメはこれで許してあげる、体が軽くなりすぎちゃったでしょう」
サザエ「台所にお肉を用意しておいたから足りない部分に足すといいわよ」

姉さんは動かないワカメを揺さぶりながらそんなことを言っていた。
ワカメはきっともう死んでいるはずだ、あの状態ならば生きている方が悲惨なようなのだ。
口の端を僅かに歪めて笑う姉さんだけが楽しそうに見える。
姉さんは虚ろな視線をフラフラと漂わせて、ある一点で止めた。


姉さんそれはタラちゃんじゃないよ Hへ

2022年01月07日

姉さんそれはタラちゃんじゃないよ F

ズル……ズル……と何かを引きずるような音。
そして言葉までは聞き取れないが、何かをぶつぶつと呟くような声。

カツオ「姉さん……?」

僕はなぜかその音の正体を確かめることが出来なかった。
襖を開け、廊下に出てしまうのは簡単なのに、どうしても足が進んでくれない。

カツオ「こっちに来てる……?」

その場に動けないでいるうちに、姉さんの声は確実に近づいているのがわかる。
昨日姉さんの部屋の前で感じた、警告音のような嫌な感覚が全身に広がる。
姉さんはいったい何をしているのか確かめたい。
この場から逃げ出してしまいたい。
確かめなくては。
逃げなくては。
二つの感情が僕の頭の中で渦巻いて結論が出ない。
逃げようと思えば窓からでも逃げられるのだし、確かめるのには廊下に出てしまえばいいのだ。
だけど僕はそのどちらも選ばず、部屋の中に留まることにした。
押し入れの中に身を隠し、浮きを潜める。
姉さんがこの部屋に入るとは限らないが、もしもの場合にいきなり鉢合わせてしまう事態を避けるためだ。
押し入れに入ってしまうと謎の音も姉さんの声も聞こえない。
押し入れの襖の模様に紛れるように空けた小さな穴から外を伺う。
そこにはただの一条が広がっていた。
なんの変哲もない僕とワカメの部屋だ。
ただ布団に圧迫されるように押し入れに隠れている僕が息苦しい思いをしているだけだ。
しばらくそうしていたが、姉さんは入って来るわけでもワカメが入って来るわけでもなく、時間だけが過ぎた。
先程僕が感じた危機感のようなものなんて、とうの昔に薄れて消え去って。なんだか隠れているのがばかばかしく思えてきた。
もうやめよう、気のせいだったのだ。
だって今朝の姉さんはあんなに明るくて、笑顔だった。
口うるさくてお節介な僕の姉さん。ただそれだけなのに、僕はなんで隠れてはいなければならないのか。

カツオ「……出よう」

そう思い押し入れを開けようと手を掛けた瞬間、廊下と僕の部屋を繋ぐ襖が開かれた。
べちゃり。そんな音を立てて、何かが投げ込まれる。
それがいったいなんなのか僕にはなかなかわからなかった。

サザエ「あれー? カツオは帰って来たんじゃなかったのかしら?」

真っ赤で、同じ色の液体を滴らせるそれはワカメの服を着ていた。

サザエ「おかしいわねー、一回出てってまた戻ってきたと思ったのに……」

言葉だけ聞けばいつもの姉さんとなんら変わりはないように思えるが、感情の篭らない声と虚ろな瞳はまるで昨日の姉さんのようだった。
姉さんの服や顔に飛び散った赤い液体と、ワカメの服を着た物を染め上げるその色が、誰かの血の色なのだと気づくのにしばらくの時間がかかった。
誰か、なんて信じたくはないし信じられないようなことではないけれど、そこに転がっている赤い塊はワカメで、流れている血は彼女の物なのだ。
服から出ている部分は原型を留めない程にぐちゃぐちゃと何かに切り刻まれたかのような状態なのに、真っ赤に染まった服をそれでも着こなしているのはどこかシュールな光景だった。
突然のことで麻痺した恐怖心が僕に悲鳴を上げさせようとしている。
それを口に手を押し込み堪えた。
くしくもそれは昨日姉さんに噛まれた方の手で、傷口に僅かに走る痛みが僕の思考をなんとかつなぎ止めていた。


姉さんそれはタラちゃんじゃないよ Gへ

2022年01月06日

姉さんそれはタラちゃんじゃないよ E

次の日、何もかも元通りになったかのようだった。
母さんと姉さんはいつも通り二人並んで朝食の支度をしていたし、笑い声も響いていた。
ただ、そこにはもう縫いぐるみはなかった。
ワカメは昨日の出来事がショックだったのか口数が少なかったが、明るく笑う姉さんを眺める視線に暗いものはなく、学校に行く時間にはいつもの彼女に戻っていた。
縫いぐるみをタラちゃんと呼んでいた姉さんは以前と変わらないようでいて、やはりどこか異様だった。
だけど今朝の姉さんは昨日までの姉さんとは雰囲気が違っている。
きっと姉さんもタラちゃんを失ったショックから立ち直り、現実を受け入れられるようになったのだ。僕はそう思っていた。

カツオ「ただいまー」

学校は何事もなく終わり、僕は家に帰って来た。
台所では姉さんが昨日のハンバーグで使った残りであろうひき肉をこねていた。
母さんは買い物にでもいったのか、ワカメはまだ帰っていないのか、二人とも姿が見えなかった。
僕は別段気にも止めずに、駆け足で部屋へと向かう。
仲島たちが野球をするためにいつもの公園で待っているのだ。
昨日の姉さんに噛まれた傷口も、巻かれた包帯こそ痛々しいが、痛みはすっかり引いていた。
僕は早く出掛けたいために、はやる気持ちを抑え切れずに机の上にランドセルを放り投げた。
衝撃でランドセルの中身が散らばるが、気にしてはいられない。

カツオ「いってきまーす!」

靴を履く時間ももどかしく、僕は公園へと走り出した。
だけどしばらく走った後、バットとグローブを忘れて来たことに気がつき、僕は元来た道を引き返すことになった。

カツオ「お、ワカメも返ってきたのか」

入れ違いになったのだろう、僕が玄関に戻るとワカメの靴が揃えて置かれていた。

カツオ「……姉さんじゃどうしたんだろう」

さっきは台所にいたはずの姉さんがいない。
だけど早く野球に行きたい僕は特に気にも止めずに自分の部屋へと急いだ。

カツオ「あれ」

てっきり部屋にはワカメがいるものだと思っていた僕は、だれもいないことに拍子抜けしてしまった。
姉さんの部屋にでもいったのか。

カツオ「姉さんの……部屋」

僕は昨日の出来事を思い出し、少しだけ顔をしかめた。
何故だか胸騒ぎがする。
だけど机の上にぶちまかれらたようなかばんの中身に目をやると、そちらに気を取られて勘違いのような不安なんて吹き飛んでしまった。

カツオ「これは……」
カツオ「まずいまずい、テストの答案がまる見えだ」

今日返された限りなくゼロに近い数字がかかれた紙切れを僕は慌てて拾い上げる。
こんなものが姉さんに見られたら大目玉だ。
その答案用紙も含め、散らばった荷物をそのままかばんに詰め直し、僕は目的のバットとクローブに手を伸ばす。
その時、廊下の方から物音が聞こえた。


姉さんそれはタラちゃんじゃないよ Fへ

2022年01月05日

姉さんそれはタラちゃんじゃないよ D

サザエ「……」

僕は状況を理解するのに少し時間がかかった。
その間にも姉さんは何度か手を動かし、口いっぱいに綿を詰め込む。

サザエ「うっうううぐっ」
カツオ「姉さん!」

姉さんの苦しそうな声に僕はようやく動くことが出来た。

カツオ「何やってるんだよ……!」

僕は姉さんの口に手を突っ込むと、中の物を描き出そうとした。

カツオ「なんでこんな……窒息しちゃうよ!!」

姉さんは綿を継ぐ次に呑みこんでいたようで、僕はそれを吐かせなくては。と片手の手で背中を叩き、もう片方の手の指を喉の奥へと押し込んだ。

サザエ「うあえっえおぉ」
カツオ「痛いっ!!」

姉さんは苦しかったのか、僕の指の付け根を強く噛んだ。
僕は痛さに指を引いたけど、噛み付く力が強すぎて抜けない。

サザエ「ふうぅうう、ふうぅううぅ」

姉さんは荒い呼吸を繰り返している。
僕は空いている方の手でその背中をさすった。
噛み付かれた手は姉さんの口の中で血を流しているようで、指を伝い赤いものが見える。

フネ「サザエッ!? な、な、なんだいこれは……」

ワカメが呼んだのだろう、母さんが部屋に入ってきた。
一瞬動揺したようだが、気丈な彼女はすぐに状況を把握し、僕らの側に座る。

フネ「サザエ、サザエわかるかい? ほら、カツオの手を離しておやり」
サザエ「うぅ、う……」

母さんの言葉が届いたのか、一瞬顎の力が弱まった。
その隙に僕は手を抜いた。
かみ砕かれて無かったのは幸いだけど、指の根元には引き裂かれたような傷がついていた。
鋭利は刃物でつけられた傷よりも、そうでない物で切られた方が酷い怪我になるという・
この傷はしばらく残りそうだ。

フネ「ほらゆっくり口の中のものを出しなさい、苦しいでしょう」
サザエ「うあぉお」

姉さんは母さんに背中をさすられながら、口の中の綿を吐き出していく。
僕の血で染まった綿は、まるで真っ赤な髪の毛のようにみえた。

サザエ「あぁあっ……たらちゃ……が」
フネ「サザエ、これはタラちゃんじゃないんだよ……」
サザエ「ううぅうああぁあ」

姉さんは母さんの膝に顔を埋めるようにして泣いていた。


姉さんそれはタラちゃんじゃないよ Eへ

2022年01月04日

姉さんそれはタラちゃんじゃないよ C

サザエ「……大丈夫よ。タラちゃん……大丈夫だからね」

どうやら姉さんがタラちゃんを気遣う言葉をかけているようだった。
どこか抑揚を無くしたようなその声に、僕は少しだけ違和感を覚える。

サザエ「大丈夫だからね、すぐに良くなるわよ、すぐに……」

僕の頭の中には、姉さんがタラちゃんに添い寝をしてあげている微笑ましい光景が浮かぶ、ほんの二年前には当たり前だったその光景。

サザエ「ほらね、こうやって悪い所を……」

頭が痛いと言っていたから、撫でてあげているのだろうか。
たとえ全て姉さんの頭の中で作られた話であっても、当たり前な親子の会話が部屋の中で交わされている。
だけど次の瞬間、頭に浮かんだ微笑ましい親子の図は音もなく崩れさった。

サザエ「痛いところ全部……とってあげるからね」

プチプチと何かを引きちぎるような音が聞こえてきた。
とってあげる、とはいったいなんのことだろう。
縫いぐるみを我が子と思い込んでいるはずの姉さんが、いったいなにをしているのか。
僕の頭の中で警報がなる。早くこの場を離れろ、と。
さもなくば見てはいけないものを見てしまうぞ、と。だけど僕はその場から動けなかった。

サザエ「ほら……これが悪いのよ」
サザエ「悪い物を詰められて……痛かったでしょう?」
サザエ「可愛いタラちゃんに針を刺して……こんなことを……」
サザエ「可哀相に……可哀相に……うっうぅ……」

見られていたのだ。
ワカメが縫いぐるみを直していたところも全部。
僕の背中が、凍り付いてしまったかのような嫌な感覚が広がった。

サザエ「うっううぅう……」

部屋の中からは姉さんの嗚咽の混じった声が聞こえてくる。
僕は相変わらず一歩も動かないままに、部屋の襖を凝視していた。
その時、不意に肩を叩かれ僕はヒッと情けない、声にもならないような短い悲鳴を漏らした。

ワカメ「お兄ちゃん? 何やってるのよ、こんなところで」
カツオ「ワ、ワ、ワカメ……」

いつもの調子で話し掛けてくるワカメに、僕は震える声でようやく答えた。
頭の中では姉さんに気づかれてしまったのではないかということでいっぱいで、一秒でも早くこの場から立ち去りたかった。

ワカメ「母さんにこれを姉さんの部屋にって頼まれたのよ」

ワカメの手の中には水とお粥の乗った盆があった。母さんが、姉さんに縫いぐるみに食べさせるように、と作ったものだろう。

ワカメ「そこ、開けてお兄ちゃん」
カツオ「……」

僕は瞬時に返事を返すことが出来なかった。
ワカメはまだ知らない、姉さんがさっき僕らの部屋を覗いていたということを。
この部屋の中で起きているであろう事を。
開けてはいけない、そんな予感が頭に渦巻く。
だけどいつの間にか止まっていた姉さんの嗚咽に、先程の声の現実感が薄らいでいた。
中にいるのは僕の姉さんだ。それは紛れもない真実。
姉さんの部屋の襖を開けることにどんな危険があるものか。
僕は、静かに襖を横に引いた。

ワカメ「姉さーん! こ、……」

一歩先に部屋へ踏み出したワカメ、その足が止まった。

カツオ「ワカメ?」

僕は固まってしまった妹を押しのけるように姉さんの部屋を覗きこむ。

カツオ「姉さん……?」

ワカメ「いやあぁあああ!」

ワカメが悲鳴を上げると手に持っていた盆をひっくり返しながら、その場から走り去った。
僕は何も反応することができずに、姉さんの事をただ眺めていた。
部屋中に散乱する白い綿。
縫いぐるみにぎゅうぎゅうに詰められていたそれを全て引きずり出したようだ。
抜け殻のようになった布を抱きしめていた姉さんが虚ろな目でこちらを眺めていた。

サザエ「……」

なにやら懸命に口を動かす姉さんに、初めは何かを話しているのかと思ったけれど、違ったようだ。
中身の抜けた縫いぐるみを持ったのとは逆の手を口元に運ぶ。その手には綿が一掴み握られていた。
姉さんはそれを食べていたのだ。


姉さんそれはタラちゃんじゃないよ Dへ

2022年01月03日

姉さんそれはタラちゃんじゃないよ B

カツオ「それ、まだ大丈夫そうかい?」

ワカメは頭部に渡を詰め足しながら曖昧に頷いた。

ワカメ「うーん、そろそろ危ないかもしれないわね」

薄汚れた縫いぐるみがワカメの手の中でグラグラと揺れている。
綿を詰め終わり、開いた部分を針と糸で縫い合わせるワカメの手元を僕はぼーっと眺めていた。
何度もやっている作業のため、スムーズに動く針の動きに見とれていると不意に首筋に視線を感じたような気がした。

カツオ「……誰?」

僕は勢いよく振り向く。
瞬間、ぴしゃりと襖が閉められた。
それを聞いて後を追い掛ける勇気は僕には無かった。

ワカメ「どうしたの……?」
カツオ「あ、ああ……誰かが覗いてたみたいだったからさ」
ワカメ「もしかして……!?」
カツオ「大丈夫だって……それは、ない……よ」

そんな根拠はどこにもないのだけれど僕は掠れる声で呟いた。

カツオ「姉さんの訳……ないじゃないか、はは」


やがて母さんの声に呼ばれ、僕とワカメは夕食の席に着いた。

カツオ「さ、さあタラちゃん、姉さんの所に行きなよ」

僕は姉さんの隣に縫いぐるみを置く。
先程のあれは本当に姉さんでは無かったのだろうか。
もし部屋を覗いていたとしたらワカメが縫いぐるみを修理していたのを見ていたかもしれない。
姉さんにとってこの縫いぐるみはタラちゃんなのだ。その体を開き、針を刺す場面などどのように映るだろう。

サザエ「さあタラちゃんいらっしゃい、おいしそうなハンバーグでしょう」

僕は笑顔で縫いぐるみを抱き抱える姉さんに、心の中で安堵のため息をついた。

サザエ「はい、タラちゃんあーんして」
サザエ「おいしい? そう、うふふ」
サザエ「あらー駄目じゃないこんなにこぼしちゃって……」
サザエ「タラちゃんもそろそろ一人で食べられるようにならなきゃ駄目よ」

食卓では姉さんの楽しそうな声が響く。
縫いぐるみは口に押し付けられた食べ物をただボロボロと床に落とすばかり。
最近ではすっかり見慣れた我が家の食事風景だ。

サザエ「あら?どうしたのタラちゃん」
サザエ「もう食べないの?」
サザエ「食欲がないってどうしたのよ」
サザエ「頭が痛いの? うーん、風邪かしら」
サザエ「少し部屋で横になりましょうか、そうね、それがいいわ」
サザエ「母さん、私タラちゃんを休ませて来るわね」

姉さんから心配そうな言葉が続く。どうやら縫いぐるみの具合がよくないらしいのだ。

フネ「あ、ああ……そうかい」

姉さんは縫いぐるみを大事そうに抱き抱えると、寝室へと向かった。
僕らが食事を終えても姉さんは戻らなかった。
皆特に気にもせずに、母さんとワカメは食器の片付け、父さんとマスオ兄さんは晩酌を始めていた。
することがなくなった僕は、部屋に戻って漫画でも読もうかと廊下へ歩き出した。
姉さん達の寝室の前を通過する時、妙な音が聞こえてきた。
思わず立ち止まり耳を澄ませてみると、その音はどうやら人の囁き声のようだった。
止めておけばいいものの、僕は思わずその場に立ち止まり、耳を澄ました。

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