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2022年01月10日

蟲毒 2



「その札そのものには、悪いものはないんですって。まぁ、ああいう神聖なものをパウチするってのは常識的にだめだけど。で、この札は人からもらったものですね?って聞かれて、札をくれた人がすさまじい強烈なネガティブなものを持ってるって言うのよ、その住職さん。本人の意思云々じゃなくて、彼女が持つ何かがすごい悪いって。他にもらった人がいますねって聞かれて、すぐにお寺か神社でお清めしてもらって処分するようにしないと、とんでもないことになるって言われたの!!泉ちゃん、いい?その住職、お祓いもできる人なのに、自分では処分できないかた、上のお寺に持っていくって言ったのよ」

私は正直に、すでに自分がもらったものは、大師様で処分したと伝えました。
残るはM。
そういうのをさっぱり信じないMは、案の定手帳にいれて持って歩いていました。
私とYの話に、「わかったー」と明るく答えた彼女。
これで一応終わりと、私たち誰もが思っていました。
6月。
Mのお母さまが、突然入院しました。
良性の脳腫瘍といわれ、すぐさま手術。
無事終わって医師からOKが出田その直後、またしても腫瘍が見つかり、また手術。
7月、看病に疲れた彼女のお父さんが、突然ガン末期を告知。
その話を聞いた私、

「M、もしかしてあのカード、まだ持ってるんじゃないでしょうね?」
「…持ってる。手帳に入れたままになってる…」

そう答えたM、神社やお寺に行く時間がないというので、事情を書いた手紙にお金をつけて、もっていくだけもっていけと私とYで言い、Mはすぐさまそのとおりにしました。
一か月後、開腹検査をした彼女のお父さんの胃は、ガンがあった形跡だけがケロイド状に残ってるだけで、ガンは発見されず。あとかたもなく消えました。
その年の夏、Fと彼女は結婚しました。
私のところに招待状が来ましたが、私は彼らとのつきあいを完全に絶ちました。
そして半年後、Yが台湾に遊びに行き、Fの両親の家に招かれたそう
笑顔で迎えてくれたFのお母さまから、Fと彼女の結婚について結局最後には自分も折れたが、父親だけは頑として反対していたこと、それでも結婚式をするとなったそのひと月前、突然父親が心臓発作をおこし亡くなったことを聞いたそうです。
その後、みんなが口をつぐんだ彼女の存在。
それはいったいなんだったんだろうと思っていた私に、ある人が話してくれたこと。

「中国には蟲毒と呼ばれる一族がいて、蟲や動物を使ってまじないや呪いをほどこす人たちが実際いる。たぶん彼女は、その一族なんじゃないかな。実際高い能力を持つのは女性に多く、その人たちは蟲や動物を使わなくても、その思念だけで呪いをかけたりすることができるって話も聞くよ。話を聞いていると、その相手の男性、まさに魅入られたって感じがするしね。関わりをすべて絶ったのは、正解だったと思うよ。まさに命に係わることになってたと思う。でも、多分彼の一族は、彼女のそういうのに取り込まれていくだろうなぁ。お兄さんとか、無事だといいね。子供できないって言ってたみたいだけど、蟲を使うその種の人は、一子だけもうけてその力を伝えるって話もあるから、たぶん子供生まれるよ。その一子ってのは、女だろうね。蟲つかいは、基本的に女性の一族だから」

それから二年後。
仕事関係で本当に偶然話す機会のあったFから聞いた言葉。

「泉、僕、父親になったんだ。そうなんだ、彼女子供が出来ない体だって言ってたけど、赤ん坊が生まれたんだよ。僕、父親になったんだ。娘ができたんだよ」


蟲毒とは…………

〇作り方〇
ムカデ、蜘蛛、サソリ、蝦蟇、ヤモリなどの小動物を、1つの甕に入れる。数は多ければ多いほどよい。密封させ放置すると、それぞれが共食いを始める。最後に生き残った1匹が、蟲毒となる。

〇性質〇
家に富を運んでくれる。
定期的に生贄を捧げないと、かわりに食われる。
剣や火では殺せない。
遠くに捨てても戻ってくる。
捨てるには、蟲毒がくれただけの財と同じ価値の財と共に、捨てなければならない。

〇使い方〇
性質を利用して、呪うべき相手のところへ、少しの金品と共に蟲毒を送りつける。
そうすると蟲毒は相手のものとなり、養えぬままに、食われてしまう。
また、蟲毒を食べることにより、蟲毒のパワーを手に入れることができる。
(甕の中のヒエラルキーの頂点にたつことになるため)
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