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2023年01月31日

ひょうせ・渦人形 3



おじさんは続けて、ただ今回は何かおかしいのだという、
普通祠をつくって奉ればそれで終わるはずなのだが、今回はどういうわけだが逃げられてしまってE介がまた被害に遭い、しかも俺のところにまで現れている。
それに、そもそも現れるだけでも珍しい「ひょうせ」が自分達の村とその周辺以外に現れるというのも全く前例がないうえに、「ひょうせ」が前回子供を襲ったのは20年ほど前で「早すぎる」のだそうな。
ただ、おかしいおかしいといっても現実に起きてしまっているのだから仕方が無い。
俺達は学校から村から来たお坊さんに簡易的な祈祷をしてもらい、お札を貰って君たちはこれで大丈夫だろう、と言われ帰された。
ちなみにE介に関しては、暫くお寺で預って様子を見て、その間にもう一度祠を建てて「ひょうせ」を奉ってみるとの事だった。
学校から返された俺達は、各々迎えに来ていた親に連れられて帰る予定だったのだが、話し合ってひとまず学校から一番近い俺の家に全員で泊まることにした。
安全とおわれてもやはり不安だし、全員でいたほうが少しは心細く無いと思ったからだ・
その夜、俺達が部屋でゲームしていると

コン…コン…コン…コン…。

と窓を規則的に叩く音がした。


さっき説明した通り、俺の部屋は車庫の上にあり壁もほぼ垂直なので、よじ登って窓を叩くなどまずできない。
しかも、その窓は昨晩例の子供が覗き込んでいた窓だ…。
状況が状況なだけに全員が顔をこわばらせていると、B太が強がって

「なんだよ、流石に誰かの悪戯か風のせいだろ?」

とカーテンを開けようとした。
俺は大慌てでB太に事情を話しカーテンをあけるのを踏みとどまらせた。
窓を叩く音はまだ続いている。
D幸が「やっぱ正体確認したほうがよくね?解らないままのほうが余計こえーよ…」と言ってきた。
たしかに何かその通りな気がした。なんだか解らないものが一晩中窓を叩いている状況なんてとても耐えられそうに無い。
俺達は階段のところまで移動し、カーテンを少し開けて隙間から俺の部屋を見て見た。
いた…。
昨日のあれが、やはり昨日と同じように首らしき棒を伸ばし、窓から俺の部屋を覗き込んでいる。そして、時々

コン…コン…

と頭を窓にぶつけている。

「ホホホ…ホホホ…ホホホ…」

という例の抑揚の無い笑い声のようなものも聞こえてきた。
音の正体はこれだった。
異様な光景だった。そして、昨日は気付かなかったが、あれは子供と言うより和服を着た人形のようだった。
頭が窓にぶつかる音も、人間の頭と言うより中身が空洞の人形のような音だ。
C広が

「ひょうせって今日もう一度封じ込めたんじゃねーのかよ…」

と呟いた。

その時、俺の親父が騒ぎに気付いて

「お前ら何やってるんだ?」

と階段を上がってきた。
その時、その声にびっくりしたA也が思わず腕を窓にぶつけて

ドン!

と大きな音を立ててしまった。
“それ”の棒の先にある頭だけがカウンッという感じでこっちを向いた。
俺達は顔をはっきりと見た。
“それ”はおかっぱ頭で笑顔の人形だった。ただし、ただの人形ではない。
顔は人形特有の真っ白な肌なのだが、笑顔のはずの目は中身が真っ黒で目玉らしきものが見えない。口も同じで、唇らしきものがなくそこにもやはりぽっかりと真っ黒な三日月状の穴のようなものがある。
それでも、目や口の曲線で「にっこり」と言う感じの笑顔なのが解るのが余計に不気味だった。
親父が

「だからお前ら何やってるんだ?」

と窓のところに来てカーテンを全開にすると、それはサッ!と屋根の陰に隠れて見えなくなった。
が、親父にも一瞬「何かがそこにいた」のは解ったらしい。
親父は大慌てで1階に降りると、携帯でどこかに電話をし始めた。
どうやら昼間祈祷をしてくれたおぼうさんやおじさん達の連絡先を聞いていたらしく、そこと顧問の先生のところに電話をしているらしい。
その後、影に隠れたきり“それ”は二度と姿を現さなかった。
朝になり、昨日のおじさんたちや顧問の先生などが俺の家に来た。
とりあえず異常事態ということで、全員を合宿所近くにあるお寺まで連れて行くという。
みんなの親たちも俺の家に来たのだが、おじさんが「被害が更に拡大するといけないから親御さんは来ないほうがいい」と言うことで、行くのは俺達だけになった。
俺達は着の身着のまま車に乗せられ出発した。
昼前にお寺に到着した。
お寺に入ると、ジャージ姿でゲッソリとした感じのE介が俺達を出迎えた。
E介によると、あれから色々あったがなんとか今のところは助かっているらしい。
本堂に入ると、お坊さんと昨日のおじさんが昨晩の出来事を詳しく教えてほしいと言ってきた。
俺達が順番に状況を話していると、人形の姿の説明のところでおじさんが

「ちょっと待った、人形?首が長い?何の話をしているんだ?」

と驚いた顔で言ってきた。
そして、俺達が昨日みた人形の姿を改めて説明すると、お坊さんと

「いや、これはひょうせじゃないぞ、どうなってるんだ?」
「おかしいとおもったんだ、色々辻褄が合わない」

と、2人で7話し合い始めた。


そして、暫く話し合った後俺達に状況を説明してくれた。
結論から言えばひょうせは憑りつかれていたというのは全くの勘違いで、どうも俺達に付き纏っているものの正体は全く月の何からしい。
俺は

「今更それはねーだろ…」

と思った。
おじさんが続けた。
最初状況を聞いたとき

・子供のような姿
・笑い声
・生徒がおかしくなって笑いながら泣いている
・村の近く

と言う状況から「ひょうせ」だと思ったらしいが、どうも今詳しく話を聞いてみると、ひょうせのしわざと症状は似ているが、姿形がまるで伝承や過去の目撃証言と違うらしい。
そもそもひょうせというのは、子供くらいの姿を下毛むくじゃらの猿のような姿で、服も来ていないしおかっぱ頭でもないし、当然首ものびたりもしないようだ。
笑い声も俺達の効いた抑揚の無い機械的なものではなく、笑い声といっても猿の鳴き声に近いとのことだった。


俺達は途方にくれてしまった。
ぶっちゃけこの寺に来れば全部解決すると思い込んでいたのに、今更「なんだかわからない」ではどうしたらいいのか…。
室内が重苦しい雰囲気になり、皆しばらく沈黙していると、お坊さんがこう言ってきた。

「とりあえず何か良くないものがいるのは間違いない。少し離れたところにこういう事に詳しい住職がいるので、その人を応援に呼んでくる。暫く皆座敷でまっていてほしい」

そういうと、車に乗りどこかへ行ってしまった。
俺達は座敷に通され呆然としていた。
おじさんはしきりにどこかへ電話をし、かなりもめているように見えた。


ひょうせ・渦人形 4へ

2023年01月30日

ひょうせ・渦人形 2



そして、俺達はE介の手足と肩をもち外へ運び出そうと1階までE介を運んだ。
が、そこで問題がおきた。
ドアを開けようとしたB太が声を震わせながら大声で

「ドア開かねーよ!」

と言ってきた。
俺達はE介を廊下に降ろし、みんなでドアを開けようとしたのだが、さっきは簡単に開いたのに今はびくともせず、6人の中で一番体格の良いA也がドアにタックルしてみたのだがそれでもまるで開く気配が無い。
俺達は軽くパニックになり顔を見合わせていると、2階から微かに

「ホホホ…ホホホ…ホホホ…」

と、まるで抑揚の無い機械的な声というか音が聞こえてきた。
E介はまだ床に寝ころがされたまま笑っている。
とにかく外に出ないといけない。そう考えた俺は、1階のリビングがガラスのサッシのみで割れば出れそうな事を思い出し、4人にそれを伝えるとリビングへと向かう事にした。
その時、ふと俺は階段の上を見て絶句した。
階段の踊り場の少し上のところから子供の顔がのぞきこんでいる。
月明かりが逆光になっていて表情とかは何も解らないが、顔のサイズや髪型からさっきの子供とわかった。
相変わらず

「ホホホ…ホホホ…ホホホ…」

という声も聞こえてくる。どうやら声の主はこの子供らしい。
しかし何かがおかしい、違和感がある。
俺はすぐに違和感の正体に気が付いた。
子供は階段の手すりからかなり身を乗り出しているはずなのだが、なぜか頭しか見えない。
あれだけ乗り出せば肩辺りは見えても良いはずなのだが…。
俺がそんな事を考えながら階段の上を凝視していると、C広が

「おい何してんだ、早く出ようぜ、ここやべーよ!」

と俺の腕を掴んでリビングへ引っ張った。
俺には一瞬の事に見えたが、どうも残りの4人がE介をリビングへ運び込み窓ガラスを割り、打ち付けてある板を壊すまでずっと俺は上の子供を凝視していたらしい。
俺は何がなんだか解らず、とりあえず逃げなければいけないと皆でE介を担いで外へとでた。
外へ出ても相変わらず

「ホホホ…ホホホ…ホホホ…」

という声は家の中から聞こえてくる。
俺達はE介を担ぎ、D幸が合宿所へ先生たちを呼びに行った。


その後、E介は救急車で運ばれた。
俺達は先生方に散々説教をされ、こんな事件があったので合宿はその日で中止となった。
帰宅準備をしていた昼頃、十台くらいの数の車が合宿所にやってきた。中から20人ほどのおじさんやおじいさん、あと地元の消防団らしき人が降りて顧問の先生たちと何か話しをすると、合宿所の裏に回り例の家の周りにロープのようなものを貼り柵?のようなものを作り始めた。
俺達は何事なのかと聞いてみたが、顧問の先生たちは何も教えてくれず、そのままバスで地元へと戻った。
E介は2日ほど入院していたが、その後どこか別の場所へ運ばれ、4日後には何事もなかったかのように帰ってきた。
後から事情を聞いてみると、E介には家に入ったところから昨日までの記憶が何もなかったらしい。
E介が帰って来た日の夜、俺が自分の部屋で寝転がってメールをしていると、一瞬

「ホホホ…ホホホ…ホホホ…」

というあの声が聞こえた気がした。
びっくりして起き上がりカーテンを開けて外を見たりしたが、いつもの景色で何も無い。俺は「気のせいかな?」と起き上がったついでに1階に飲み物を取りに行くことにした。
俺の家はL字型になっていて、自室は車庫の上に乗っかるような形になっている。
冷蔵庫からペットボトルのお茶を取り出し2階へ上がると、丁度階段を上がったところの窓のカーテンの隙間から僅かに自室の屋根の部分が少し見えた。すると屋根の上に何かがいる…。
この前あんな事があったばかりなだけに、ビビりまくった俺が窓からカーテンを少し開けて外の様子をのぞくと、屋根の上に和服を着た子供が両手を膝の上にそろえて正座しているのが見えた。
それだけでもかなり異様な光景なのだがそれだけではなかった。
子供は体を少し前かがみにして下を覗きこむような姿勢なのだが、首のあるはずの部分から細長い真っ直ぐの棒のようなものが1mほどのびていて、その先にある頭が俺の部屋の窓を覗き込んでいた。

即席aaで解り難いけどこんな感じだった。

       ――
      ╱\体\
      ╱
頭〇 │窓


「ホホホ…ホホホ…ホホホ…」

という声も窓越しにわずかに聞こえてくる。
俺はあまりの出来事に声も出せず、そのまま後ずさりすると1階へ下りた。
寝てる親を起こそうと思ったが、これで起こしてあれがもういなかったらそれこそ恥ずかしい…。
その時なぜかそう思った俺は、そのまま1階のリビングで徹夜した。
たしか朝4時過ぎまで「ホホホ…」という声は聞こえていたと思う。
翌朝、恐る恐る部屋に戻ってみたがあれはいなくなっており、室内にも特に変わった部分は無かった。
その日野昼頃、自宅の電話に顧問の先生から電話があった。
この前の件で話があるからすぐに来いという。
昨晩のこともあった俺は、嫌な予感がして大急ぎで学校へと向かう事にした。
学校に到着すると、生徒会など使っている会議室に呼ばれた。
会議室に入ると、A也、B太、それにC広とD幸までいる。更にうちの学校とC広たちの学校の顧問の先生たち、それと見た事の無いおじさんたちも数人いた。
まず顧問の先生のうち1人が話し始めた。
要約すると、E介にはまた同じ症状が出たらしく、とある場所に運ばれたらしい。そして、俺達に「昨夜おかしな事はなかったか?」と聞いてきた。
俺はすぐさま「昨日のあれ」を思い出し。

「あのー、深夜になんか変なのが俺の部屋を覗き込んでいるのが見えて…」

と事情を話した。
A也、B太、C広、D幸には特に異常はなかったらしい。
するとC広が

「そういやお前(俺)さ、あの家の中で階段の上眺めながらボーっとしてたよな?
あれ関係あるんじゃないか?」

と言い出した。


そうえいば…。
俺はあのときの事を思い出し、皆に「あの時さ、変な笑い声みたいなのと、なんか子供の姿見たよな?」と聞いてみた。
しかしみんなは、声はずっと聞こえていたけど子供の姿は最初のドアのところで見ただけで、家の中では見ていないという。
俺達がそんなやり取りをしていると、さっきまで黙っていたおじさんが事件の詳細を話し始めた。
非常に長い話だったので要約すると、俺達がであったのは、「ひょうせ」と呼ばれるものらしい。
これはあの土地特有の妖怪のようなもので、滅多に姿を見せないが、稀に妊婦や不妊の家の屋根に現れて笑い声を上げるらしい。そうすると妊婦は安堵し不妊の夫婦には子供が生まれるという、非常に縁起の良いものだそうな。
ただし、理由は全く解らないが、数十年に一度なぜか子供を襲い憑り殺してしまうという厄介な存在でもあった。
ちなみのあの家は全くいわくも何もなく、ただ「ひょうせ」が偶然現れただけの場所なのだが、「ひょうせ」が子供を憑り殺そうとした場合、それに対する対抗策があり、「ひょうせ」が最初に現れた場所に結界を作り封じ込め、簡易的な祠をつくって奉ることで殺されるのを防ぐ事ができるらしい。
合宿所から帰る時、俺達が見たのはその封じ込め作業だったわけだ。


ひょうせ・渦人形 3へ

2023年01月27日

ひょうせ・渦人形



高校の頃の話。
高校2年の夏休み、俺は部活の合宿で某県の山奥にある合宿所に行く事になった。
現地はかなり良い場所で、周囲には500m〜700mほど離れた場所に観光地のホテルやコンビニなどがあるだけで他には何も無いけれど、なんか俺達は凄くわくわくしてはしゃいでいたのを覚えている。
その日の夜の事。
暇をもてあました俺達は、顧問の先生の許可を貰いコンビニまで買出しに行く事にした。
わいわい騒ぎながら10人ほどで外にでて歩き始めると、昼間はそちらのほうに行かなかったので気付かなかったが、合宿所の裏手に家らしき建物があるのが解った。
その建物には明かりがついていなかった。
多分空き家か民家っぽいけど別荘か何かなんだろうと思われた。
友人が調子の乗って「あとで探検いかね?」と言い出したが、あまり遅くなると顧問の先生にドヤされるし、ひとまず買い出しが終ってから合宿所内で今後のことは考えようという話になった。


コンビニで買出しをし合宿所に戻る途中、後輩の1人が変なことを言い出した。
例の建物の玄関が少し開いていて、そこから子供がこちらを覗き込んでいたという。
俺達は「そんなベタな手にひっかからねーよ!」と恋灰をおちょくったが、郊外が真顔で「マジで見たんだって!」というので、ちょっと気味が悪くなってしまい家が見えるところまで確認に戻ったが、ドアは閉じていて人の気配も無く特に異常は無かった。
俺達は後輩をおちょくりながら合宿所へと戻った。
合宿所へ戻り2階の廊下から外を眺めると、例の家の1階部分の木の間から僅かに見えた。
俺が友人と「あそこに見えるのでそうだよな?」なんて話をしていると、家のドアが僅かに開き、暗くて良く解らないが子供らしい人影が頭だけをドアから出してこちらを覗きこんでいる。

「…え?」

俺と友人は同時にその光景を目撃して沈黙した。
その後最初に口を開いたのは友人だった。


「おい…あれって…」

友人はかなり動揺しながらそういった。
俺も恐怖というよりあまりにも唐突な事で思考が停止してしまっていて。

「子供…こっち見てるよな?」

としか返せない。
その時、後ろの部屋から笑い声が聞こえてきた。
俺と友人はその声にびっくりし、ハッ!と我に返った。
そして俺は「これやばくね?ばっちり見てるよな?」というと、友人が「俺ちょっと携帯持ってきて写真撮る」と自分の部屋へ走って行った。
すると、騒ぎを聞きつけてなんだなんだと合宿所にいる生徒(他校の生徒もいたので総勢60人ぐらいが合宿所にいたのだが、そのうちの半分くらい30人ほど)が2階の廊下に集まりだした。
子供らしき人影はまだドアから顔のみを覗かせてこちらを見上げているように見える。
廊下は大騒ぎとなり、とうとう顧問の先生たちも何の騒ぎだとやってきた。
第一発見者の俺と友人が事情を話していると、窓から外を見ている生徒の何人かが「あ!」と声をあげ、かろうじて聞き取れる音で

バタン…

とドアの閉じる音がした。
顧問の先生たちが外を見る頃にはドアは閉じられ人影もなくなっており、何事も無い林と明かりもついていない家らしき建物が見えるだけだった。
当然先生たちは信じてくれなかったが、ノリの良い若い先生2人が一応確認しに行ってくれることになり合宿所の裏手へと回った。
俺達が窓から様子を見ていると、懐中電灯を持った2人が現れ、家の玄関のところで何かやっている。
どうやらドアが開くか調べているようだがあかないようだった。
その後「誰かいますか〜?」と声をかけたりしていたのだが、反応がないらしく5分ほどで戻ってきた。


その夜、なんか中途半端でモヤモヤして寝れない俺達がこれから確認に行くか、それとも昼間行くか話し合っていると、部屋の窓が

ドンドン!

と叩かれた。
窓の外に人影も見える。
俺達はさっきのこともありビビりまくっていると、外から「おーい、あけてくれ!」と声が聞こえてきた。
カーテンをあけると、そこには昼間仲良くなった他校の生徒5人がいた。
やつらはどうも窓の外にある20pくらいの幅のでっぱりをつたって俺達の部屋までやってきたらしい。
5人を部屋の中にいれると、どうもやつらも俺達と同じ話をしていたらしく、これから例の家に行く事にしたので俺達を誘いに来たらしい。
俺達もそれで決心が付いたので、これから肝試し?に行く事になった。
面子は、うちの学校からは、俺、A也、B太。
他校からは、C広、D幸、E介。
ほかのやつは何だかんだと理由をつけて結局来なかった。


俺達は5人が通ってきた窓の出っ張りをつたい外にでると、先生に見付からないように一旦道路に出て、そこから大回りに問題の家へと向かった。
一応、家の周りは合宿所の2階廊下から丸見えなので、残ったやつ何人かが異常があれば廊下から懐中電灯で合図してくれるという計画になっていた。
家の前につくと流石に不気味だった。
遠目には解らなかったのだが、壁には苔が生えているしあちこちに蔦も絡まっている。
しかも外から見える窓は全て板が打ち付けられていてだいぶ長い事放置された場所のようだ。
最初C広とA也とB太が家の周りを確認しに行ったのだが、俺が開かない事は解っていたが何気にドアノブを回すとすんなりとドアが開いてしまった。
急いで3人を呼び戻し、俺達は中へ入る事にした。
中に入ると夏場という事もあり室内の湿気が凄くかび臭い。
家の中を探索してみると、埃っぽくカビ臭くはあるのだが、室内は荒らされた様子も無く、家具も何も無いのでやたら広く感じた。
1階を探索していると、E介が「2階から笑い声がしね?」と言い出した。
俺達は耳を澄ましてみたが、笑い声は聞こえない。
E介に気のせいじゃないか?といったのだが、E介は気になるらしく見に行きたいと言い出した。
しかし、まだ1階の探索も終わっていないので、仕方なく3人ずつのグループに分けて、片方はそのまま1階を、もう片方は2階を探索する事にした。
グループわけは簡単で、同じ学校の俺とA也とB太がそのまま1階を、別の学校のC広とD幸とE介が2階を散策することにして、何かあったら階段のところでおちあう事にて別れた。
暫く探索していると、2階から突然

「アハハハハハハハハハハ!」

と場違いに明るい笑い声が聞こえてきた。
そしてすぎにい「おいE介?どうした?おい!」とC広とD幸の狼狽した声が聞こえてきた。
俺達が大慌てで2階に上がると、一番奥の部屋に3人はいた。
笑い声の主はE介で、窓の方を向いてまだ

「アハハハハハハハハハハ!」

と大声で笑っている。
そしてその横にC広とD幸がいて、真っ青な顔でE介を揺さぶったり頬を引っ叩いたりしていた。
俺達もただ事では無いと3人のところに行って前に回り込んでE介の顔を見たとき、俺は今自分たちが置かれている状況の深刻さに初めて気が付いた。
E介はほんとうにおかしそうに笑い声を上げているのだが、顔は無表情でしかも目から大粒の涙を流している。それに何か臭いと思ったらどうやら失禁しているらしい。
E介はまるで俺達の事が見えていないかのように泣きながら笑い続けている。
俺達が狼狽してE介に呼びかけていると、その場で一番冷静だったB太が

「とりあえずE介このままにしておけないし、合宿所まで運ぼう」

と言ってきた。


ひょうせ・渦人形 2へ

2023年01月26日

エスカレーターに乗っている母娘 2



住所を頼りに実家を訪問した。どうも様子がおかしいなと、彼女の実家の前で思ったことを覚えている。
と言うのも、なんて説明したらいいか分からんが、なんか色がくすんでた気がした。
インターホンを鳴らすと、彼女の母親が出てきた。
俺を一目見ると、「あなた、〇〇さん!」と、ほぼ叫んでた。
いきなり叫ばれたのでびびったが、やっぱりその時も変だと思った。
家に入れてもらい居間に通され、彼女の容態を聞こうと思ったとき、愕然とした。
仏壇に彼女の大きな写真が、そして線香が焚かれていた。
俺はマジで混乱して、どういうことか把握できなかったから、「どうしたんですか!」と叫んだ。
叫んですぐさま思ったのは、自殺したんだろう。
案の定、入院先から逃げ出し街まで出て、とある雑貨ビルから飛び降りたらしい。
その時のことは、正直俺も記憶が今でもあやふやだ。
ショックだったし、なにより、やり直すつもりでそれなりの覚悟をしてたからだ。
理由を彼女の母親に訊ねるも、病院に入院していたこともあり、精神的なものだとしか聞かされなかった。
結局、日も限られていて、墓参りをした次の日には東京に戻り、その一週間後にはまた自分の留学先に戻った。
留学先の自分の屋根裏のアパートに戻ると、手紙が届いていた。
なんと彼女からだった。正直、生まれて一番びびったかもしれない。
封筒を開けると、酷いものだった。錯乱していた。
辛うじて内容はつかめたが、本当に荒れた字だった。

わたしはしぬ。あれからずっとおいまわされている
げんじつにもゆめにもずっと、あのおとと、あのふたりがついてくる。

読める範囲で理解できた言葉はそれだけだった。
ただ、デッサンが同封されており、なんてことは無い、俺のアパートの丸窓だった。
俺はあまり泣かないほうだが、この時ばかりは泣いた。
15年ほど前にオヤジが死んだときも泣いたが、それ以上に泣いた。
それを機に、急遽帰国して今に至るわけだが。
帰国する前、他国に留学した画学生の国に遊びに行った。
相変わらずひょうひょうとしていたが、起こったことをすべて話すと、「黙っていたことがある」といって語り始めた。
なんでも、彼女が俺の家に初めて来て以来、ずっと変な親子に付きまとわれていたと言うこと。
なんとなくは予想していたが、当時は本当にそんなことがあるとは思いもしなかった。
思えば、付き合った半年、後にも先にも彼女はその一度しか家に泊まっていなかった。
俺にそれを黙っていたのは彼女の思いやりらしく、その画学生の友人も約束を守り続けていたらしい。
そしてそれを聞かされたあと、俺は留学を取りやめ、完全帰国することを打ち明けた。
すると、「実はもう一つ黙っていたことがある」といい、「俺も見たんだ、実は」そう続けた。

「彼女の言っていた母親と子供を見た」

そうも言った。
いきなり言われたもんだから、信じられなかったが、

「俺もそれ以来ずっと付きまとわれている。それから、あのエスカレーターのブーンとか言う変な音も」

そう言うと、いきなり怖い顔をして俺にこう言った。

「日本に帰るまで、どんなことがあってもあのエスカレーターに近寄るな」

帰国のための荷物を手っ取り早くまとめ、飛行機のチケットを手配し、逃げるようにして日本に帰ってくるわけだが、帰る前に、彼女との思い出の場所やらなんやらを一通り巡った。
その国での最後の夜に、ちょうど2時過ぎ頃、彼女が丸窓を覗いた頃、エスカレーターがブーンと鳴り始めた。
友人の忠告も無視して俺は覗いた。
しかもずっと、そのエスカレーターが停まるまで見続けた。
なにもない。なにもいない。

この話は、ここで終わる。
俺は幸いその親子に付き纏われずに日本に戻り、普通に仕事をして暮らしている。
ただ、この話には、一つだけ今でも俺を悩ませている事がある。
それは、実家に着くと俺宛に届いた画学生の友人からの一通の手紙である。
そこには、今から自殺すると言うこと、探さなくて構わないということ、そして…俺が彼女と付き合っている間に、彼女をレイプしたらしい。
そして、それ以来、段々と彼女がおかしくなったと言うことが書かれていた。
それを読んだとき、俺は彼女が俺宛に遺した手紙を引っ張り出した。
最後のどうしても読めなかった一文を、やっとその時読むことが出来た。

『ごめんなさい、本当にごめんなさい』

2023年01月25日

エスカレーターに乗っている母娘



とある、ヨーロッパの国に留学してた時の話を。
まぁ言葉もままなら無い頃、よく日本人の友達を呼んで飲んでいたんだが。
俺の家は屋根裏で、大きな丸窓から地下鉄の出口が見える。
エスカレーターだけでモロに出口専門なのだが、怖いのは、たまに夜中過ぎに意味もなく動き始めること。
夜中なもんだから車どおりもなく、音が良く響いて「ブーン」ってなるんだが、これが怖い。
たまに丸窓から覗いて確かめるんだが、これが誰もいない。
まぁそんなことがたまに起こる程度だった。
ところがある週末、いつものように友達を呼んで飲もうと思い、一番仲の良い画学生に連絡をした。
今ちょうど別の友達と飲んでたらしく、家に来るとのこと。
一時間ほどして、そいつが来たわけだが、連れはなんと可愛い女の子。
同じ学校で唯一の日本人で、俺は羨ましいと思ったのを良く覚えている。
で、その3人で飲み始め、芸術や最近のこの町もことを語ったりしてた。
(俺は美術史の学生だった)
12時を過ぎ終電が無くなり、治安もあまり良くない場所なので、いつものように「泊まっていけ」と言って、再び飲みだした。
丸窓の傍でタバコを吸っている俺の友達が、「エスカレーター動いているぜ」と。
時計を見たら2時過ぎ。
またかと思い、「たまにあんだよ」と説明した。
するとつれの女の子が興味をもったらしく、「どれどれ」とその丸窓を覗いていた。
「本当だ」と、なんだかはしゃいでいた。
俺は俺で酒を飲みながら、「独りでそれがあると怖い」だのと、あーでもない、こーでもないと話していた。
実はその娘が気に入りだしてたわけだが。
しばらく覗いている彼女が、ふと「誰かいるよ」と言って俺を呼んだ。

「まさかぁ」

酔っ払いかなんかだろうと、隣から覗くと誰もいない。

「いないじゃん」

そういって彼女を見ると、「いないねぇ」と。
俺の友達も「誰もいるわけ無い」と言って、タバコをふかしていた。
俺はトイレに行き、友達はタバコを吸い終わり、部屋で飲み始めた。
ところが、ずーっと覗いている彼女が、いきなり「あっ!」と小さく叫んだから、二人ともびっくりして「どうしたん?」と聞くと、

「二人出てきたよ。お母さんと子供かな」

んな馬鹿なと思い、覗いてみるがやっぱりいない。

「いねーじゃんか」「そういう冗談好きなのか?」「こえーから止めてくれ」

だの散々愚痴った揚句、俺は眠くなったのでそのまま寝てしまった。
翌朝(むしろ昼近くだった)起きると、俺の友達は眠りこけていたが、彼女がいない。
まぁ始発か朝方にでも帰ったのだろうと思い、気にはかけなかった。
が、別の意味で気にはなっていたので、その夜電話した。
電話して、昨日どうしたのか聞いてみると、『寝れなかったから朝方早めに帰った』とのこと。
やっぱそうかぃと思い、どうでもいいような事を一通り話し、なんとなく今度二人で遊ぼうと約束した。
電話を切ろうとした時、『エスカレーターさ』と話してきた。
なんであんなエスカレーターの話を引っ張るのか?その時は不思議で仕方なかったが、「今日も動くかもなぁ」と冗談交じりで話すと、『今度動いても、あまり覗かないほうがいいよ。見付かるよ』と、彼女が低い声で言った。
あまりに低い声で言うものだったから、その時は「マジで俺はびびりだから、そういうのは止めてくれ」と、ちょっと本気で頼んだことを覚えている。
で、それから3日後、二人で会うようになり、その日は彼女の家にお邪魔した。
俺は料理が出来るので(彼女は料理がまったく出来ない)、俺が夕食を用意して二人で乾杯をした。
それ以来、俺は彼女と付き合うようになった。
俺の画学生の友達は偉く無関心で、「あっそ、おめでと」ぐらいしか言わず、それからもよく家に来て飲んでたのを覚えている。
ところが、その交際も実はあまり続かなかった。
付き合い始めたのが、ちょうど1月か2月だったから、半年程度。
理由は、いきなり彼女が日本に帰国したからだ。
帰り間際には相当痩せこけていたのを覚えている。
その時は「やっぱり俺が居ても寂しかったのかなぁ」と、あぁでもないこうでもないと、俺を捨てて帰国した理由を考えていた。
帰国前の二週間ほどは、殆ど会ってもらえなかった。
おかげで別れもろくに言えず、今もちと引きずっている。
ただ余りに逃げるように帰ったので、俺は相当荒れた。
まぁその画学生の友達と、「女なんかどうでもいい」だの、「あんな身勝手な奴だと思わなかった」だの、愚痴りまくっていた。
友達は殆どうなずくだけで、あまり何も言わなかったのを覚えている。
それから半年して、ちょうど一昨年の今頃、それから別の国のアート学校にさらに留学した、その友人からメールが来た。

『彼女が入院した』

なんでも、怪我とかじゃなくて精神的なものらしい。
たしかに付き合ってた頃も結構不思議な子で、金縛りや、独り言は日常茶飯事で、年中うなされたり、ひどいと叫んだりしてたのは覚えていた。
ただそこまで酷いとは思っていなかったので、かなりショックを受けた。
その時は、日本に帰って様子だけでも見に行くべきかと思ったが、悲しいもので、学校の単位的にも金銭的にも、日本に帰ることは出来なかった。
それから半年して、夏休みに一時帰国することがあったので、そのついでに彼女の実家の広島まで行ってみた。
(俺は東京なので、交通費がかなりきつかった)


エスカレーターに乗っている母娘 2へ

2023年01月24日

ドルフィンリング 2



前スレでドルフィンリングの話を書いた者ですが、今日用事があって姉と電話したので、AさんとBさんについて、聞きづらかったけど聞いてみました。
姉はその話が嫌らしく渋っていましたが、聞き出せたのは、何故親が例の私がひとりでにBさんの所業を暴露した後、「Aさんに感謝しろ」と言ったのかという質問の回答だけでした。
姉曰く、

「A君は地元の方言とそっくりな方言だけど、地味に違った言い回しがあって特徴的だったから、それで親もわかったんじゃないか」

とのことです。
なんだか拍子抜けしてしまいましたが、確かに私もあの日の夜は寝るまでにその指輪を貰った事を親に話したので、なんとなく察してくれたんじゃないでしょうか。
そして、これはBさんのことと関係があるのかはわかりませんが、知らなかったけど、うちの家族(両親と姉と弟妹)たちは、私以外『わかる人・見える人・呼ぶ&呼ばれる人』らしいです。
そのことを聞いて、私は『あぁ、だから私は実家に住めなくなっちゃったのかな?』と納得して、「私はなんで違うのかな?」と聞いたところ、姉は、「Cも昔はそれなりに『わかる人』だったのに、私(姉)がぐれ始めたところから鈍化していった。私が拾ってきたり持って帰ってたモノを、感じちゃったのかは知らないけど、あんたはどんどんそういうのを閉じていって、しまいにはわからなくなったんじゃない?」と言っていました。
そういう感覚って、簡単に蓋みたいに閉じれるのかは疑問ですけど、実際私はちょいちょい死体を見つけたりはしますけど、特に何も変なことは起きていないので、そんなものなんだと思います。
指輪が熱くなるのは、たいていお盆の時期(Bさんの時期)ですし。

2023年01月23日

ドルフィンリング



ドルフィンリングと言うイルカの形をした指輪が流行った大昔の話。
当時私はリア消(低学年)で、10歳年の離れた姉がいるんだけど、姉はいわゆるDQNで夏休みになるとほぼ毎晩DQN仲間をうちに連れてきては、親と喧嘩をしていた。
でこの当時、子供嫌いのお兄さん(以下、A)、優しいお姉さん(以下B)と言う二人が、いつも家に遊びに来ていた。
Aさんは私が姉の部屋に近づくと凄い怒って、「ガキがくんじゃねーよ!」って怒鳴り散らすのね。
その度にBさんや他の人たちが、「小さい子にそんな事言うなよ〜」ってファローして、「Cちゃん(私)だって遊びたかったんだよね」とか言ってお菓子くれたり、部屋に入れてくれた。
正直私はAさんが嫌いだった。
だって人の家に来て泊まっていったりするのに優しくしてくれないし、私が姉の部屋に近づこうとすると、「チッ!」って舌打ちして威嚇するし、たまに外で会っても「ガンくれてんじゃねーぞ!」とか言ったりして、とにかく怖かったから。
逆にBさんのことは大好きだった。
BさんはAさんと違ってて、うちに来る度に花火やお菓子をくれたり、Aさんのファローもしてくれたり、外で会えば必ず声をかけてくれて、友達のいない私が寂しいだろうからって、一緒に遊んでくれたりもしたんだ。
Bさんの口癖は、「Cちゃんが私の妹ならいいのに」だった。


そんな荒れた夏休み(我が家の黒歴史)が終わりに差し掛かったある日、急にAさんがドルフィンリングをくれた。
姉の部屋にも行かず私の部屋に来て、「ほら」って投げてよこした・
ピンクのラッピングした箱に入ってた。
誕生日でもない普通の日なのにおかしいな?とは思ったけど、友達いなさ過ぎて頭がお花畑だった私は、やっとこのお兄さんとも仲良くできるんだ!って思った。
当時の流行り物だったし、初めてAさんがプレゼントしてくれた物で、当時の私の指には親指でもぶかぶかだったけどすごくうれしくて、貰った日は握りしめて寝たんだ。
そしたら真夜中に手が熱くなって、びっくりして目が覚めた。


Aさんから貰った指輪が焼けたように熱くなってた。
せっかく貰った指輪が壊れた〜!って、熱いわ寝ぼけるわでギャン泣きしたのを今でも覚えているんだけど、誰も様子を見に来てくれないのね。
真夜中だからしょうがないんだけど、横に寝ていたはずの母もいなくて、さすがにおかしいなと思った。
指輪はそのころには熱くなくなってて、その指輪を握りしめて明かりがついてたリビングに行ったら、両親が真っ青な顔して「お姉ちゃんが事故にあった」って言った。
この辺りはもうほとんど覚えてないんだけど、姉とそのDQN仲間たちが、バイクでどこぞの山に遊びに行って、その帰りに仲間全員、バイクの玉突き事故?にあったらしい。
姉の容態は電話じゃよくわからなかったけど、とにかく危ない状態だったらしい。
なのに両親、理文具にいてちっとも病院に行こうとしないの。


私はパニックになって、「おねーちゃんが死んじゃうかも知れない!病院に行こうよ!」って泣いて訴えたが、両親は頑として動かなかったのね。
で、私が自棄になって、「私だけでも行くから!」ってパジャマのまま玄関に向かったら、父が全身で阻止してきた。
私はAAのズサーみたいな感じでドアに突っ込んでいく父の異常さが怖くてまた泣いた。
母親は「Cちゃんお部屋にもどろ?ね?ね?」って一生懸命宥めてくれるんだけど、その母親の顔も、泣きそうっていうかおびえまくってた。
その両親の異常な雰囲気で、私も『あ、コリャなんか変だぞ?』って妙に冷静になって、よく見ると両親、ちゃんと外着に着替えてたんだ。
何でだろうと思った瞬間、ピンポンが鳴ってBさんの声が聞こえて、「Cちゃん迎えに来たよ。お姉ちゃんの所においでー!」みたいな事を言ってた。


私は「Bさんが迎えにきた!おねーちゃんところ行こう」って親に言ったんだけど、両親ガクブルして顔真っ青なの。
母親は私を全力で抱き締めて苦しかったし、父親は何かブツブツ言い出すし、かなり異常な状況だった。
あまりに異常すぎて、私は親が狂った!と思って、Bさんの名前を呼びまくった。
「Bさん怖いよ!おねーちゃんが死んじゃう!パパとママがおかしくなった!!Bさん!Bさん!!」って。
でも、相変わらずBさんは助けてくれるどころか、玄関の外で「Cちゃん、お姉ちゃんのところにおいで」しか言わないの。
しかも声は凄く冷静…っていうかむしろ楽しそうな感じ。


「Cちゃーん、お姉ちゃんの所おいでー」
「Bさん怖いよ!たすけて!」

どのくらいそのままギャーギャーしてたかわからないけど、急にまたAさんから貰った指輪が熱くなって、手をはなそうと思ったんだけど、手だけは金縛りにあったみたいにグーの形のまま動かない。
その内喉が苦しくなって声がうまく出せなくなってきて、しまいには、叫んでいるつもりが全く声が出なくなった。
母親が、口をパクパクさせてるのに声が出なくなった私を見てぎょっとしたけど、ぉ絵が出なくなったせいで更にパニックが加速して、暴れる私を抱き締めてる力は弛めてくれなかった。
その間Bさんは、楽しそうに私を呼んでいた。
その内かすれた声が出て来たなと思ったら、今度は勝手に言葉が溢れてきた。


「お前なんか私のお姉ちゃんじゃない!私のお姉ちゃんは〇〇(姉のフルネーム)だ!!私は知ってるんだぞ。私に友達がいなくなったのは、オマエ(Bさん)が私の友達をいじめて、『私に近寄るな』って言ったからだ!!お前が持ってきたお菓子や花火は、全部□□(近所の商店)で盗んだ物だ!気持ち悪い!!お前なんか大嫌いだ!お前は私のお姉ちゃんじゃない!帰れ!二度と家に来るな!私の家族は全員こっちにいる!私をそっちに連れて行こうとするな!!!」


実際はもっと田舎のヤンキー口調で方言も入ってたけど、大体こんなことを叫んだ。
と言うか、この叫んだ内容は私は全然知らなかった。
Bさんが私の友達を虐めてなくした事も、いつもくれるお菓子が盗品だった事も。
パニック状態だったのに更にパニックに陥って、そこから何も覚えていない。たぶん気を失ったんだと思う。
目が覚めたらもう朝で、泣きはらした母親とげっそりした父親がいた。
そして、

「病院から連絡があった。お姉ちゃんは足を折っただけだよ。お昼になったらお見舞いに行こう」

って言ってくれた。
そして、そのときは理解できなかったけど、
「A君にお礼を言いなさい。その指輪はいっしょうだいじにしなさい」って言われた。


ここまで書いたらもう察しがついてる人がいるけど、姉たちが起こした事故でBさんは亡くなっていました。
それも両親が病院から連絡を貰うより前…多分即死に近かったんだと思います。
それなのに両親が病院に行こうとしたら、玄関の向こう側にBさんが見えたらしい。
(玄関の一部がすりガラスになって外が見えるタイプだった)
姉と一緒に出かけたはずの彼女が無事でいるはずがない!と思った両親は家から出るに出られず、時々「Cちゃんを迎えに来ました。あけてください」と言う声が怖くて、リビングにたそうな。
そしてAさんも、事故当時は意識がなくて危うい状況でしたが意識を取り戻し、面会できるまでに回復を待ってお見舞いにいった時、Aさんはろれつの回らない状態ですが、泣きながらぽつぽつと話してくれた。


Bさんはなぜか私に執着して

「Cちゃんは妹のようだ」「妹にしたい」「C(私)は私の妹!他のことは仲良くさせたくない、一緒にいる!」

よなってた事や、万引きしたお菓子などを与えてた事など。
そして、Bさんになついていた私を遠ざける方法が解らなくて、むやみに怒鳴ったりして申し訳なかった。
流行のアクセサリーを持ってれば、女の子だから友達ができるんじゃないかと思って指輪を上げた…と話してくれました。
あれからもう15年以上経つけど、私は毎年夏はお盆が終るまで帰省できないんでいる。
Bさんが私を諦めて無いからだって姉や両親は言うけど、確かに夏場になると例の指輪が、(熱くなりようがない状況でも)焼けたように熱くなって変な事が起きる時があるんですが、それはまた別の話。


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2023年01月20日

拾った石 2



A「あ〜ぁ、こいつの嘘バレバレですよね〜」
僕「ちょ…嘘ちゃうって」

と昨日の状況を思い出そうとしたが、何故かどうしても思い出せない。
かろうじて覚えている「やっぱ今日オマエ誘っといてよかったわ。これに懲りずに付き合ってや」という事を言うと

A「俺そんなん言ってないし、夢ちゃうん?それ、夢やって。ああ夢、夢」
僕「いやそんな事無いって、でも全然思い出されへんねん。何でやろ」
A「オマエ一回病院行った方がいいんちゃう?記憶ないって何か怖いやん」
僕「ちょう待ってって。じゃあオマエの言う事がホンマとして」「
A「俺はオマエの携帯電話も知らんし、昨日オマエとも飲んでも無い。というか大阪におらんかった。証拠もある」

といって福岡市にあるホテルの領収書を見せてきた。日付は今日の午前チェックアウト。
どうなってんの?これ。俺頭おかしくなったんかな?と思っていたら、僕が整理のつかない頭で、うおー!思い出されへん!ともがいてる時、Aが突然言い出した。

A「ちょっと真剣に聞いてほしいねん」

Aはちょっと寂しそうに話した。


A「昨日な、〇〇(Aの弟)の命日やねんな?でやな、何かしらんけどお前らの夢を見た訳よ。で、懐かしくなったというか、まあ後で言うけどオマエに会わなあかんと思った。弟が死んでだん5年も前の事やからオマエは忘れているかも知れんけどな、昔はよう遊んだな悪さしてwあの日な俺、弟死ぬん何となく知っててん。これは後から言える事かも知れんねんけどな、何かな、俺昔から知ってる人とかの夢を何日か立て続けに見る事があるねん、何か最初は白黒やねんけど、途中からセピア色というか真っ赤に変わって行くねん。その後その人にあんまり良くない事が起きるような気がするねん。怪我とか、あと、死んだりとか…。で、弟の時も1週間くらい前からしういう夢見てて(弟の夢)、偶然かも知らんけど弟の時も真っ赤になってん。その後あいつ死んでもうあ」
僕「死ぬんがわかる?んなわけないやん!オマエもうちょっとマトモな嘘付けって!言っとくけど俺のは嘘ちゃうで!」
マ「いや、死期がわかる人っておるらしいで。俺の連れもそんな事言ってた奴おった。そいつのオカンもそういう人やった」
A「まあ、おれがそうかどうかは知らんけど、結果そうなってしまったんや」
僕「まあええわ、で?その死ぬんかわかる夢って」
A「そう、昨日見た夢や。いきなり3分の2くらい真っ赤やった。正直こんなん初めてやしどうして良いかもわからんし、とりあえずオマエに会いに来たっちゅうわけや。詳しく言えば何か草原みたいなとこにオマエと弟がいて、その草みたいなゆらゆらした地面が真っ赤やった。ちょうどこれくらいかなぁ」

と膝下位をさした。

A「だいたい赤い夢見る時は、白黒からジワーってゆっくり変わって行くんやけど、いきなり赤いのは見た事無いからびっくりしてん」
僕「俺どないかなるかも知れんってこと?この手かな?」
A「それはわからん、そうかも知れんし、違うもんかも知れん」
僕「死ぬかも知れんという事?」
A「わからんねん、そればっかりは」
僕「でもな、いきなりそんなん言われても、信じられるわけないやん!」7

そんなやり取りをしているとAが泣きそうな顔で言った。

A「その夢にな、俺もおってん」
僕「俺と弟ちゃうんか?そんなん最初に言わんかったやん」
A「言うたら死ぬんちゃうかと思って、言えんかった」
僕「そうか、俺は死んでもええと、オマエ最悪やな」
A「死ぬとは決まった訳はないって、ただの夢やし」
僕「そうやな、ただの夢でギャアギャア言うなよ2wシャレになたんでほんま」

実は僕はかなり怖かった。ただAの出来の悪い夢を笑うしかなかった。
でもそれは笑えない事だと思い始めた。
今朝見たジーパン!
頭の中がむちゃくちゃになって来た。昨日僕はAと会ったのか?会ってないとすれば一体誰に会ったのか?というかどこに行ってたのか?AではないAと?
携帯の番号も知らない、バーにも来ていない、Aの見た赤い夢、膝下が赤く染まる夢、今朝見たら膝から下がどす黒く濡れていたジーパン。
一気に押し寄せて来て頭が痛くなり、耳鳴りもする。あまり酔っては無かったと思う。
今はもう何も考えられない、無理だ、もう帰ると言うと、Aが送って行くと言い出した。
それを僕は断った。何となく嫌な気分になったから。


Aと僕はバーを出た。Aはまだ何か言いたそうにしていたが、構わずに自転車に乗った。
Aは最後に「気をつけて帰れよ」と言った。
僕は「オマエ、人の事言えへんねんで」と言った。笑うと思ったがAは真顔でうなずいた。
僕はあわてて目を逸らした。何か分らんけど嫌な感じだった。
自転車片手運転で家に帰宅。
到着するなり、誰かに後ろからドンと背中を押された。その直後携帯が鳴った。
後ろを振り返ると誰もいなかった。
電話はAだった。

僕「何?どうしたん?」
A「どうしてるかなと思って」

やたら元気な声にさっきのは、嘘だと直感した。
ふざけてるのかとAに何か言ってやろうと思った。

僕「何が、どうしてるって何?」
A「大丈夫か?昨日さあれだけ酔っ払ってたんやん2人共」
僕「う、うん…で?」
A「ちゃんと帰れたかなと思ってな」

何か違う、今度は違うのがわかった。何かさっき会ってたAじゃ無いのがわかった。
雰囲気か?空気みたいなものが違う気がして。

僕「オマエ何言ってんの?‥‥…オマエさ…A?」
A「……迎えにいこうか?」
僕「来んでええ、来んでええ!」
A「迎えにいこうか!?」
僕「来るな!来るな!‥‥」

途中で携帯でしゃべってたはずが、頭の中でぐるぐる声が回る感じになり(昼と同じ)多分気絶したんだと思う。
朝玄関の入ったところで寝ていた僕を起こした、母が一言。

「あんた、ええ都市しておねしょするってどういう事?」

黒のパンツが腰辺りから下がびっしょり濡れていた。においは無い。
携帯の着信履歴をみた。Aの名前はやっぱり、というか無かった。


その日の昼過ぎ仕事場のビルのゴミ捨て場にいく事に、自転車片手運転で駅まで。
地下鉄に乗り仕事場のゴミ捨て場に向かった。箱ごとビルのゴミ捨て場に捨てようと思い、最後に怖いもの見たさで箱の中をのぞくと、腰が抜けそうになりその場にへたり込んでしまった。
石が真っ二つに割れていた。
色は真っ黒に、中が真っ赤になっていた。むちゃくちゃ怖かった。手がものすごく震えだして、止まらなくなった。
最初この時間くらいに見た時は青ぽかったのになぁと、怖さで混乱しそんな事を思ってしまうほどだった。
急に震えが止まった。体はかなり冷えていた。玉の入った箱をゴミ置きに置いて、足早に駅へ。
駅までは行ったが、石を捨てた解放感?はあっても、何かすっきりしないので、普段はやった事のないパチンコ屋へ。
ぼーっと玉を追いかけていると、よけいな事を考えずに済んだ。気がついたら日が暮れてたし、金もほとんどなくなっていたw
夜家に帰って夕飯を終え、風呂に入ってると、夕方から幼児に出ていたオカンが帰って来て、オカンが「あんた!どこいってたんな!何回電話しても通じひんし!留守電聞いてないの?あんたA君っておったやろ?亡くなったらしいで、電話があってA君のお母さんが一度電話くれって」


Aが?嘘やろ!と思いつつA宅へ電話する。

僕「もしもし〇〇(僕の名前)ですが」
「ああ、〇〇くん…ちょっとね大変な事になってね、ちょっと奥さん呼んで来るからまっててね」

何か向こうはざわざわしている。

Aママ「〇〇君?Aがね」
僕「母から聞きました、今からいきますわ」
Aママ「いや、通夜はもうちょっと後やから今日はええよ明日でも。本人おらんしな」
僕「いや今日の方がいいんです。僕昨日Aと会っているんです」
Aママ「多分そうやろうと思いました。それやったら、まあ、家に来てください。気をつけてね」

電話を切りその足でタクシーを呼びA宅へ。昔はちょくちょく行ってた家だ。
A宅に着くとAママが見せたいものがあるから、Aの部屋へ案内した。
開けたとたんにちょっと嫌な感じがした。硝子テーブルに落書き帳?画鋲氏のやつがぽつんと置いてありそれを開けてみろと言った。
中に書いてあったのは僕とAママ宛ての手紙だった。
中身はこんな感じ(全文ではないです)


おかんへ
おかん、これ見たら〇〇へ電話してこれ読むように言って。絶対に!

〇〇へ
昨日は変な事急に言ってごめんな。
でもオマエも十分に変な事言ってたで、俺に会ったとかかなりキモイ事言ってたしな。
で、夢の内容やけどあの後家帰って見たのは下半身全部赤かった。そんで、じわじわ首の方まで赤くなって行きよった。もちろん俺もや。
気になってんけどオマエはなんか黒い何かを持ってて、その周りが異常に赤かった。
何かの固まりみたいなもん。それしか分からん。
今日は弟の命日やけど、ひょっとして俺の命日になるかも知れんなぁ。アホみたいな話やけど…。
俺ら誕生日同じ日やしな。
オカンには悪いけど先に行くかも知れんから、先に言っとくわ。生んでくれてありがとうな。
何やろうなこれは、こう引っ張られる感じって。最近何かに引っ張られる感じがするわ。


手紙はここまでしか書かれていませんでした。後半はちょっとした遺言?みたいになっていた。
死ぬのがわかったのかどうかは、誰にもわかりません。
Aママがお茶を淹れるわと、台所へ行った。その間手紙意外何も書かれてない落書き帳をぺらぺら。
めくっていて思わず手が止まった。そこにはあれがあった。
真っ黒な大きな丸が書かれていた中心には真っ赤にぶり潰されていた。クレヨンで。
何度も何度も塗り重ねて黒が盛り上がってた。
ページの端の方に小さく何か書いてあった。というか鉛筆で書いて消しゴムで消した感じ?
書かれていないけど、書いた跡。
「探し物」って。
しかも誰が見てもAとは明らかに違う筆跡で。
はっきり言って今でも一番鮮明に残っている場面。後は何かようわからん話ですが…。


どういう状況か分かりませんが、Aはベッドの上で眠るように亡くなっていたようです。
Aママが昼前になっても起きないAを起こそうとしたら、呼吸しておらずに病院へ運ばれその時はすでに亡くなっていたそうです。
病院で服を脱がす時、足から首にかけて何本か赤いミミズ腫れのようなものがあったと言っていました。
Aが手紙を夢から覚めてすぐに書き、何か途中で眠たくなったので寝たのでしょうか。
石の事も含め何も分かりませんが、なぜかすべてが石を拾った直後に起こった出来事です。
石に助けられたのでしょうか?Aに助けられたのでしょうか?
石とAが何か関係あったのか知りません。
12月31日夜中から1月2日の朝まで40度くらいの高熱が出た。
夢に何度もAが出て来た。何か叫んでいるようだったが何か分かりません。
僕の腕は正月明けの1月5日(たぶん)にふと上がるようになりました。
それ以来は何も起こっていません。


Aママから後から聞いた話しだと、偶然にも弟が亡くなった時同じ感じだったらしいです。
Aは自殺と思われましたが、心不全みたいな事になったみたいです。めちゃ怪死だと思うんだが。
そういう事なので、Aママの所に警察関係の人とか来て、事情聴取されてたみたいですが、外傷(ミミズ腫れは何故かすぐにひいたらし)や薬物(毒?)反応もなく殺人ではないと判断されました。
父親はAが5歳のときに亡くなったらしいのだが、Aパパは人の死期がわかる人だったらしい。
ちなみに手紙にあったようにAとA弟は同じ誕生日、僕も実は同じ誕生日です。
今もちょっと年末が怖いです。

2023年01月19日

拾った石


ここの人たちだったら信じてくれると思います。
霊感とかそんなもん無いと思うが、実体験を書いておきます。
というか僕と友人の話なんですが、どちらかというと友人の方が霊感みたいなものがあったんだろうと思います。
ひょっとして怖くないかも知れません。最初に言っておきます。
長くなります上に、文章へたくそなので面倒な人はスルーしてください。
大阪弁が使われており、読みにくいかもしれません。ある程度再現するには言葉そのままの方が良いと思いそうさせていただきました。
6年前の冬12月27日か28日だったか、その日の昼は仕事場の年末大掃除を終えて粗大ごみやら古雑誌なんかをゴミ置き場に出しに行った。
その時、ふと目の端っこに何かが見えた。
何となくフルっぽいし桐製の箱が捨てられていた。中身が何となく気になりフタを開けてみると白い薄紙に何重にもくるまれた綺麗な青っぽい石で出来た玉が入っていた。
すげえモン拾ってしまった!値打ちのあるものかも!と思いゴミの中からその箱と石を持って帰った。
夜家に帰って、部屋に飾ろうと床に置いてあった箱を持ち上げると、昼間よりも重く感じた。
え?と思い中の石を取り出そうとした瞬間、ピリっというかパチンと静電気?のような衝撃が手に感じた。
その時は静電気としか思わなかった。
反射的に手を引っ込めてもう一度医師に触れると静電気は無く、なぜか温かい感じがした。
取り出すと青ぽかった石が真っ黒になっていた。昼間明るいところで見るのと部屋のどちらかといえば暗い白熱灯の下では見え方が違うのかなと思った。
そう思って石に手に持ち光にかざしたら、携帯電話が鳴った。


久しぶりに友人Aが近所のバーで飲んでるから来ないかという。珍しい事もあるんだな、あいつと飲んだ事あったっけ?
しかし懐かしさが勝ち、誘いにのってバイクで5〜6分くらいのところにあるバー目指して行った。
11時くらいから飲んで夜中の3時くらいまで懐かしい話と、馬鹿話で盛り上がった。二人ともかなり酔っ払っていた。
帰りがけにAが「やっぱ今日オマエ誘っといてよかったわ、これに懲りずに付き合ってや」と言ったので「あたりまえやん!いつでも誘って、誘って」といって別れた。
酔っていたがそのやり取りだけは何故か鮮明に覚えている。
その後バイクで帰るのだがその道中は覚えていない(警察の人ごめんなさい、家に帰れた事が奇跡かも)。
家に帰って即ベッドで寝たのだろう。朝起きた時は服はそのまま、カバンも肩からかかったまま、何故かジーパンだけは脱いでいた。何でやと思いじーおあんをつまみ上げると膝から下が、真っ黒にと言うかどす黒く濡れていた。ドブに浸かった感じに、においは特にしなかったと思う。
うわっと思い、ジーパンを放した。すぐにバイクでコケてドブかどこかに落ちたのかな?と体の異常を探す。すぐに見つかった。


右手(腕から肩)が上がらない。例えるなら鎖骨の間の神経通っている部分をものすごい力で押さえつけられている感じ。
無理をすれば激痛が肩から下に走る。変な寝相だったかなと思いつつも、今度はガレージにバイクを見に行った。
バイクはまったく無傷だった。という事はコケていないという事らしい。でも痛い。
嫌に話すと病院に行けという事で、自転車にのり(片手運転w)救急病院へ(車で送らない親は鬼w)
レントゲンやMRIやらの検査をしたが、全く異常はなかったし、医者からはホントに痛いの?上がらないの?と聞かれたが痛いもんは痛いし、上がらんもんは上がらんとちょっとした押し問答になる始末。
家に帰ったら姉ちゃんに「何かに取り憑かれてんちゃう?」との一言で無性に昨日拾って来た石の事が気になりだした。
最近で変わった事といえば、昨日石を拾って来た事ぐらいだ。そういう幽霊とか、超常現象とかは全く信じてなかったが何となく石が気になって仕方が無かった。
急いで部屋に戻る。戻る間に何故かこの痛みは石のせいだと強く思うようになっていた。勘というやつか。
机の上の石は黒い透明?になり中が真っ赤になってた。


それを見て背筋がゾクっとなった。姉ちゃんにこの事を言おうと部屋を出ようとすると体が動かなくなった。足が動かない。
金縛りか?これが?あれって寝てる時やろ?と初めてなる金縛りに焦りまくった。
そん時不意に「やっぱ今日オマエ誘っといてよかったわ。これに懲りずに付き合ってや」というAの声が聞こえた。
聞こえたというか、頭の中で響いた。何回も言葉がぐるぐる回ってた。
そのうち何かぼーっとなって、ふと気づいたら部屋の床で寝ていたらしい。もう夕方になっていた。夢か?何だったんだろう。
すぐに机の上の石を見た。真っ黒だった。昨日の夜といっしょだ。
何か急に怖くなり、その石を処分しようと考えた。
晩飯を家族と食べた時も昼間の事は言わない事にした。どうせまともな答えが返って来るとは思えないから。
会話はテレビの年末番組(レコード大賞?忘れた)の話しか何かだったと思う。
夕食後すぐに部屋に戻り石をどうしたものか考えた。とにかくここにはおいておけない。
元の場所に捨てに行くか、適当なところに捨てるか。
何となく元の場所に戻す(捨てる)方が良いと判断し、昨日仕事場のビルのゴミ捨て場にいく事に決めた。
真っ黒の石を箱にしまい、風呂に入ってさあ寝ようと思ったときに家の電話が鳴った。
友人Aだった。

「今日暇やねん、〇〇(昨日行ったバーの名前)で飲もうや」


おいおい、昨日も飲んだやんwと思いつつも、まあ別にする事も無く寝ようと思ってたからOKした。

「オマエもたいがい暇やな。でも俺今日起きたら右手上られんへんくって、バイクでは無理やわ、自転車でいくわ」

と返事し、

「うそ!怪我したん?原因わからんの!大丈夫なん?そら大変やな、ほんじゃまた今度にしようや」

とAは言ったが「ええよ、行けるから」と行く事に。
距離的にもまあ行ける事もないし、片手がちょっとなれてきた事もあり、難なく到着。
年末だからバーには客はAしか居なかった。
第一声僕が「でもそういやオマエ、何で家に電話したん?携帯にしてくれたら良かったのに」というと

A「ひっさしぶりやなーしかし、元気しとったか?って手上あがらんねんなwつうかオマエの古い番号しか知らんし」
僕「アホ、何言うてんのん。今日やん別れたやん。今日。まだ酔うてんのかぁ?w」
A「今日て?何言うてんの?オマエ、今日なんか会ってるわけないやん」
僕「昨日から今日という意味や。もうえぇって!とりあえずちゃりんこ片手に運転して来てんから、ビールぐらい飲ませろや」
A「わけわからん、久々に会ったらキモさ爆発やなオマエ」
僕「おっ!とりあえず、何かわからんけどお疲れー!乾杯。つうか、昨日の帰りの事全然覚えてないんねんけど、オマエちゃんと帰れた?」
A「オマエな、さっきから何キモいこと言ってのん?頭おかしいんちゃうか?」
僕「〇〇さん(マスターの名前、以下マ)昨日こいつと俺来てたやんな!」
マ「いや、二人とも来てへんかったよ」

気になって携帯の着信履歴をみた。昨日の着信は3件、その中にAの名前は何故か無かった。
というかマスターいたっけ?と自問自答。


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2023年01月18日

祖父の死因



親父に聞いた話。
30年くらい前、親父はまだ自分で炭を焼いていた。
山の中に作った炭窯で、クヌギやスギの炭を焼く。
焼きにかかると、足かけ4日くらいの作業の間、釜の傍の小屋で寝泊まりする。
その日は夕方から火を入れたのだが、前回焼いた時からあまり日が経っていないのに、どうしたわけか、なかなか釜の中まで火が回らない。ここで焦っては元も子もないので、親父は辛抱強く柴や薪をくべ、フイゴを踏んで火の番をしていた。
夜もどっぷりと暮れ、辺りを静寂が支配し、薪の爆ぜる音ばかりが聞こえる。

パチ…パチ…パチ…
ザ…ザザザ…

背後の藪で物音がした。
獣か?と思い、振り返るが姿はない。

パチ…パチン…パチ…パチ…
ザザッ…ザザ ザ ザ ザ ザ ァ ァ ァ ァ――――――――

音が藪の中で凄いスピードで移動しはじめた。
この時、親父は(これは、この世のモノではないな)と直感し、振り向かなかった。

ザ ザ ザ ザ ザ ザ ザ ザ ザ ザ

音が炭釜の周囲を周り出した。いよいよ尋常ではない。
親父はジッと絶えて火を見つめていた。

ザ…

「よお…何してるんだ」

音が止んだと思うと、親父の肩越しに誰かが話しかけてきた。
親しげな口調だが、その声に聞き覚えはない。
親父が黙っていると、声は勝手に言葉を継いだ。

「お前、独りか?」
「なぜ火の傍にいる?」
「炭を焼いているのだな?」

声は真後ろから聞こえてくる。息が掛かりそうな程の距離だ。
親父は、必死の思いで振り向こうとする衝動と戦った。


声が続けて聞いてきた。

「ここには電話があるか?」
(なに?電話?)

奇妙な問いかけに、親父はとまどった。
携帯電話など無い時代のこと、こんな山中に電話などあるはずがない。
間の抜けた言葉に、親父は少し気を弛めた。

「そんなもの、あるはずないだろう」
「そうか」

不意に背後からの気配が消えた。時間をおいて怖々振り向いてみると、やはり誰も居ない。
鬱蒼とした林が静まりかえっているばかりだった。
親父は、さっきの出来事を振り返ると同時に、改めて恐怖がぶり返して来るのを感じた。
恐ろしくて仕方無かったが、火の傍を離れる訳にはいかない。
念仏を唱えながら火の番を続けるうちに、ようやく東の空が白んできた。
あたりの様子が判るくらいに明るくなった頃、祖父(親父の親父)が、二人分の弁当を持って山に上がってきた。

「どうだ?」
「いや、昨日の夕方から焼いてるんだが、釜の中へ火が入らないんだ」

親父は昨夜の怪異については口にしなかった。

「どれ、俺が見てやる」

祖父は釜の裏に回って、煙突の煙に手をかざして言った。

「そろそろ温かくなっとる」

そのまま、温度を見ようと、釜の上に手をついた。

「ここはまだ冷たいな…」

そう言いながら、炭釜の天井部分に乗り上った。。。

ボゴッ

鈍い音がして、釜の天井が崩れ、祖父が炭釜の中に転落した。
親父は慌てて祖父を助けようとしたが、足場の悪さと、立ちこめる煙と灰が邪魔をする。
親父は、火傷を負いながらも、祖父を救うべく釜の上に足をかけた。
釜の中は地獄の業火のように真っ赤だった。火はとっくに釜の中まで回っていたのだ・
悪戦苦闘の末、ようやく祖父の体を引きずり出した頃には、顔や胸のあたりまでがグチャグチャに焼きただれて、すでに息は無かった。


目の前で起きた惨劇が信じられず、親父はしばしば惚けていた。
が、すぐに気を取り直し、下山することにした。
しかし、祖父の死体を背負って、急な山道を下るのは不可能に思えた。
親父は、小一時間ほどかけて、祖父の軽トラックが止めてある道端まで山を下った。
村の知り合いを連れて、炭小屋の所まで戻ってみると、祖父の死体に異変が起きていた。
焼けただれた上半身だけが白骨化していたのだ。
まるでしゃぶり尽くしたかのように、白い骨だけが残されている。
対照的に下半身は手つかずで、臓器もそっくり残っていた。
通常、熊や野犬などの獣が獲物の臓器から喰らう。
それに、このあたりには、そんな大型の肉食獣などいないはずだった。
その場に居合わせた全員が、死体の様子が異常だということに気付いた。
にも拘わらず、誰もそのことには触れない。黙々と祖父の死体を運び始めた。
親父が何か言おうとすると、皆が静かに首を横に振る。
親父は、そこで気付いた。これはタブーに類することなのだ、と。
昨夜、親父のところへやってきた訪問者は何者なのか?
祖父の死体を荒らしたのは何なのか?
その問いには、誰も答えられない。誰も口に出来ない。

「そういうことになってるんだ」

村の年寄りは、親父にそう言ったそうだ。
今でも、祖父の死因は野犬に襲われたことになっている。
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