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2022年01月06日

姉さんそれはタラちゃんじゃないよ E

次の日、何もかも元通りになったかのようだった。
母さんと姉さんはいつも通り二人並んで朝食の支度をしていたし、笑い声も響いていた。
ただ、そこにはもう縫いぐるみはなかった。
ワカメは昨日の出来事がショックだったのか口数が少なかったが、明るく笑う姉さんを眺める視線に暗いものはなく、学校に行く時間にはいつもの彼女に戻っていた。
縫いぐるみをタラちゃんと呼んでいた姉さんは以前と変わらないようでいて、やはりどこか異様だった。
だけど今朝の姉さんは昨日までの姉さんとは雰囲気が違っている。
きっと姉さんもタラちゃんを失ったショックから立ち直り、現実を受け入れられるようになったのだ。僕はそう思っていた。

カツオ「ただいまー」

学校は何事もなく終わり、僕は家に帰って来た。
台所では姉さんが昨日のハンバーグで使った残りであろうひき肉をこねていた。
母さんは買い物にでもいったのか、ワカメはまだ帰っていないのか、二人とも姿が見えなかった。
僕は別段気にも止めずに、駆け足で部屋へと向かう。
仲島たちが野球をするためにいつもの公園で待っているのだ。
昨日の姉さんに噛まれた傷口も、巻かれた包帯こそ痛々しいが、痛みはすっかり引いていた。
僕は早く出掛けたいために、はやる気持ちを抑え切れずに机の上にランドセルを放り投げた。
衝撃でランドセルの中身が散らばるが、気にしてはいられない。

カツオ「いってきまーす!」

靴を履く時間ももどかしく、僕は公園へと走り出した。
だけどしばらく走った後、バットとグローブを忘れて来たことに気がつき、僕は元来た道を引き返すことになった。

カツオ「お、ワカメも返ってきたのか」

入れ違いになったのだろう、僕が玄関に戻るとワカメの靴が揃えて置かれていた。

カツオ「……姉さんじゃどうしたんだろう」

さっきは台所にいたはずの姉さんがいない。
だけど早く野球に行きたい僕は特に気にも止めずに自分の部屋へと急いだ。

カツオ「あれ」

てっきり部屋にはワカメがいるものだと思っていた僕は、だれもいないことに拍子抜けしてしまった。
姉さんの部屋にでもいったのか。

カツオ「姉さんの……部屋」

僕は昨日の出来事を思い出し、少しだけ顔をしかめた。
何故だか胸騒ぎがする。
だけど机の上にぶちまかれらたようなかばんの中身に目をやると、そちらに気を取られて勘違いのような不安なんて吹き飛んでしまった。

カツオ「これは……」
カツオ「まずいまずい、テストの答案がまる見えだ」

今日返された限りなくゼロに近い数字がかかれた紙切れを僕は慌てて拾い上げる。
こんなものが姉さんに見られたら大目玉だ。
その答案用紙も含め、散らばった荷物をそのままかばんに詰め直し、僕は目的のバットとクローブに手を伸ばす。
その時、廊下の方から物音が聞こえた。


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