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2022年01月11日

姉さんそれはタラちゃんじゃないよ H

サザエ「あら」
サザエ「やっぱりカツオ、帰って来ていたのね」

僕は一瞬見つかったのかと思った。
だけどそれは単なるはやとちりで、姉さんが見つめていたのは僕の机の上だった。

サザエ「さっきは中身が散らばっていたのに……きれいにしまわれてる」

いつ見たのだろう。僕が一度目に帰宅してから次に戻ってくるまでの間に違いないだろうが、その時にはワカメはどうしていたのだろうか。すでに姉さんに肉を殺がれた後だったのだろうか。
それを考えると胸が裂けそうな思いで苦しかったが、妹の悲惨な最期を哀れむ余裕など今の僕にはないのだ。

サザエ「まだ家のどこかにいるのかしら、ちょっと探してくるからここにいてねタラちゃん」

べしゃりと音を立ててワカメだったものの上に、肉の詰まった縫いぐるみが置かれた。
もしも姉さんに見付かってしまえばあれらの仲間入りだ。
それは絶対に避けなければいけない。
ワカメを切った時に刃毀れしたのであろう包丁は、傾き掛けた太陽の光で凸凹とした刃先を浮かび上がらせている。
それを手にした姉さんがくるりと後ろを振り向きこの部屋からでていくそぶりをした瞬間、僕は安堵のため息を漏らした。
それが、いけなかった。
息と共に体の力が抜け、床の一点に体重が集中してしまう。
ミシリ、となる床の音は静かすぎるこの部屋に響き渡るには十分過ぎる程だった。
ぴたりと動きを止めた姉さん。
僕は押し入れから飛び出して姉さんに体当たりでもしてみようかと考える。
だけどそれを実行するにはこの体の震えを止めなければ、立ち上がることもできないだろう。
僕は襖の穴から外を覗くことを止めた。振り返った姉さんの顔を見たくなかったからだ。
これが走馬灯というものなのか、様々な光景が頭に浮かんで消える。
こんなときだからなのか、みんなの笑顔や楽しかった思い出ばかりが出てくる。
そういえば母さんは町内の婦人会で今日は遅いって言っていたな、とか。
仲島たちは僕が行かなくても野球をしているんだろうな、とか。
今の僕には遠い世界の話のような言葉が浮かび、目の前の暗闇が裂けた。

サザエ「タラちゃん、今できるからね」

その声が聞こえた後、赤黒く染まった刃先が僕を


おわる
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