2015年09月06日
花まんま
さてさて、本日は
こちらでございます
朱川湊人著『花まんま』
収録されているのは
トカビの夜 / 妖精生物 / 摩訶不思議
花まんま / 送りん婆 / 凍蝶
以上の6篇です
こってりとした大阪弁
騒々しい、そんな場所での
子ども時代の思い出
舞台は昭和の中頃のようです
それは、きっと
信じてくれないでしょうね、と
言いつつ話す物語であり
夢かと今でも
疑わしいような物語であり
忌まわしい記憶に
思えるのに、
無性に恋しくなる物語
語り手が話す物語では
どれもこれも
不思議なことが起こります
怪奇現象と言っても
よいような……
それなのに、何か
違和感がないんです
起こって当たり前に
思えてしまう。
それはなぜだろう、
と考えて見たとき、
その不思議な現象は
語り手や、語り手の
周りの人々の気持ちが
ぐっと色濃く表れていて
その現象と、語り手が
切っても切れないような、
そんな関係性にあるから
ではないかと思います
だから、怪奇現象、と
いう言葉が似合わなくて
どうも、不思議な現象と
言ってしまいたくなるところが
ありますね
最初の「トカビの夜」で
ぐっと、この
哀しくも騒々しくも
遠慮がない、残酷で
そのくせ美しいように
思えてしまう
この短篇集の中での
大阪の世界観に
引き込まれます
語り手である子どもの
情けなさや、臆病さ
どうしようもない後悔が
丁寧に描き出されていて
気づかず、語り手に
十分すぎる程感情移入
してしまいます。
しかし、悪いのは語り手
ばかりではなく、むしろ
そのような状況に追い込んだ
大人達かもしれません
語り手は、大人達の
巧妙なずるさのようなものを
敏感に感じ取って
おそらくひそやかに反発
したい気持ちでいるのでしょう
そんな、子どもの心の
機微が描かれたうえで
当たり前のように、
トカビは姿を現すことになります
トカビが姿を現した時、
大人と、大人に染まって
いた子ども達にとって
それは、ただただ
怖ろしいものとなるが
語り手にとって、
それはむしろ……
不思議な現象の真相の
ようなもの、
不思議な現象の
語り手が考えた理由
それらが語られる時
切なくも、感動的な
物語として、
しっかりと一つ一つの
お話がまとまって
ゆきます
ぞっとするような
気味悪さがあるのは
この後の「妖精生物」
そのあとで、
「摩訶不思議」で
何だか少しホッとして
「花まんま」「送りん婆」
「凍蝶」
と、切なくて哀しい
けれども生きることに
希望が持てるような、
そんな話が続きます
どの話もハイクオリティ
この中でどの話が
一番好きですか?
と聞いてみたら
結構、ばらばらと
意見が分かれるんじゃ
ないでしょうか
それぞれの話に
しっかりと濃いドラマが
詰まっていて
そこに自然と不思議な現象が
起こっていて
けれども読者の視線は
あくまで、人間に
しっかりと向けられる
そんな、珠玉の短篇集です
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