2015年03月03日
砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない
さてさて、本日はこちら
桜庭一樹著
『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』
まず、最初に告白しますと、
最初の一ページ、うーん、読もうかな、読まないでおこうかな、
ちょっぴり迷いました…
個人的な趣向ですが、このような文体には
どうも馴染まないところが、あるんですね、私。
しかし、電車で読み始め、パタンと閉じても手持無沙汰だし
電車に乗っている間くらい……
とそのまま読み進め、結局電車を降りた後も読み切ることに…笑
山本なぎさ、中学生の少なくとも見た目にはごく普通の女の子
その山本なぎさのクラスに海野藻屑という転校生がやってくる
かなり奇行の目立つ、藻屑は、その名前のインパクト
彼女の持ち物が全て有名なブランド物であったこと
そして、彼女の父親が有名だった歌手だと言うこともあり
学校の注目をあび、そして浮いていく
しかし、山本なぎさは、知らんぷり。
彼女にとって、大事なのは「実弾」(お金)
自分が生きていく上で、助けとなるもののみ、と悟り
それ以外のことに、関わらない、と決めていたから…
しかし、そんな山本なぎさに、「死んじゃえ」と吐き捨て
さらに「友達になって」と藻屑。
藻屑は、自身を人魚であると言ってはばからず
その為、いつもミネラルウォーターを持ち歩いては
ぐびぐびと所構わず飲んでみたり、
足をひきずっていたり……
嘘で塗り固められた彼女を、山本なぎさは
お金持ちで、だから空想にひたれちゃう、幸せな子と
眺めていたのですが……
まず、中心となる登場人物の、いかにも思春期らしい
心の動きが、何とも生生しく描かれていて、引き込まれます
主人公である山本なぎさ
一見、よくある「自分の不幸を悟った風に
クールに振舞っている女の子」
に見えるのです
所謂引きこもりの兄を理想化し、
うっとりと眺める所に
あなたがするのは兄の世話じゃないでしょ、
と窘めたくもなる
しかし、よくよく読んでいくと、もっと深い
彼女は自分が未成年で力が無いことも、
十分過ぎるくらい分かっているし
自分が「私は不幸」という思いによって
支えられていることさえ認識し
そして、その上で、だから高校へ行かず
自衛隊へ行きたい、
となっている。
彼女の「高校へ行かず自衛隊へ行きたい」だけを見れば、
浅はかな、となりそうなものですが、彼女はただ思考を飛躍させている
だけ、とも言い難い。そういう所が見えてきだしてから
途端に、面白くなってきて、引き込まれてしまいます。
そして、山本なぎさ以上に複雑なのが、海野藻屑
やることなすこと、変で、嘘ばかりつく女の子
そんな、ありえないでしょ、と思いたくなるほどフィクションっぽい女の子
しかし、彼女のその「変」、という表面の裏の事情が見えてくるとまた
読む速度が上がってきます
そしてここらへんから物語も
かなり速い速度で不穏度を増していき
何だか分からないけれどもとにかく
ページをくる手が止まらない笑
お兄さんが、山本なぎさに話すことが、実は藻屑の精神状態を
説明していたりして、彼女の精神状態の複雑さは、かなりすさまじい
山本なぎさは、最後の最後まで、ちょっと悟った感じの女の子で
でも、それは子ども視点から悟った、という点で最後までぶれません
子どもとしての限界を知り尽くしている女の子視点の
強烈に心に残るお話です
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桜庭一樹著
『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』
まず、最初に告白しますと、
最初の一ページ、うーん、読もうかな、読まないでおこうかな、
ちょっぴり迷いました…
個人的な趣向ですが、このような文体には
どうも馴染まないところが、あるんですね、私。
しかし、電車で読み始め、パタンと閉じても手持無沙汰だし
電車に乗っている間くらい……
とそのまま読み進め、結局電車を降りた後も読み切ることに…笑
山本なぎさ、中学生の少なくとも見た目にはごく普通の女の子
その山本なぎさのクラスに海野藻屑という転校生がやってくる
かなり奇行の目立つ、藻屑は、その名前のインパクト
彼女の持ち物が全て有名なブランド物であったこと
そして、彼女の父親が有名だった歌手だと言うこともあり
学校の注目をあび、そして浮いていく
しかし、山本なぎさは、知らんぷり。
彼女にとって、大事なのは「実弾」(お金)
自分が生きていく上で、助けとなるもののみ、と悟り
それ以外のことに、関わらない、と決めていたから…
しかし、そんな山本なぎさに、「死んじゃえ」と吐き捨て
さらに「友達になって」と藻屑。
藻屑は、自身を人魚であると言ってはばからず
その為、いつもミネラルウォーターを持ち歩いては
ぐびぐびと所構わず飲んでみたり、
足をひきずっていたり……
嘘で塗り固められた彼女を、山本なぎさは
お金持ちで、だから空想にひたれちゃう、幸せな子と
眺めていたのですが……
まず、中心となる登場人物の、いかにも思春期らしい
心の動きが、何とも生生しく描かれていて、引き込まれます
主人公である山本なぎさ
一見、よくある「自分の不幸を悟った風に
クールに振舞っている女の子」
に見えるのです
所謂引きこもりの兄を理想化し、
うっとりと眺める所に
あなたがするのは兄の世話じゃないでしょ、
と窘めたくもなる
しかし、よくよく読んでいくと、もっと深い
彼女は自分が未成年で力が無いことも、
十分過ぎるくらい分かっているし
自分が「私は不幸」という思いによって
支えられていることさえ認識し
そして、その上で、だから高校へ行かず
自衛隊へ行きたい、
となっている。
彼女の「高校へ行かず自衛隊へ行きたい」だけを見れば、
浅はかな、となりそうなものですが、彼女はただ思考を飛躍させている
だけ、とも言い難い。そういう所が見えてきだしてから
途端に、面白くなってきて、引き込まれてしまいます。
そして、山本なぎさ以上に複雑なのが、海野藻屑
やることなすこと、変で、嘘ばかりつく女の子
そんな、ありえないでしょ、と思いたくなるほどフィクションっぽい女の子
しかし、彼女のその「変」、という表面の裏の事情が見えてくるとまた
読む速度が上がってきます
そしてここらへんから物語も
かなり速い速度で不穏度を増していき
何だか分からないけれどもとにかく
ページをくる手が止まらない笑
お兄さんが、山本なぎさに話すことが、実は藻屑の精神状態を
説明していたりして、彼女の精神状態の複雑さは、かなりすさまじい
山本なぎさは、最後の最後まで、ちょっと悟った感じの女の子で
でも、それは子ども視点から悟った、という点で最後までぶれません
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