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2019年02月15日
TVバランドフ(二月十三日)
チェコに来た2000年前後は、普通のテレビで見られる民放というとノバとプリマしかなかった。その後地上波のデジタル化が実施された際に最初に参入したのがTVバランドフだった。映画の制作スタジオとして名高いバランドフの名前を冠したテレビ局だというので、ものすごく期待したものの実際はかつてのさえなかった頃の、ノバの後塵を拝してばかりいた頃のプリマを思わせるような番組ばかりでがっかりしたのを覚えている。
プリマは、クール、ズーム、クリミなど、個性のある別チャンネルを開設して、それなりに成功しているようだが、バランドフも、キノ、ニュース、クリミ(以前は別の名前だった)と、本家と合わせて4つのチャンネルを展開している。ただ、多チャンネルの活用でプリマに後れを取っている感のあるノバ以上に迷走している。その迷走が最近さらにひどくなったというのが今日のお話である。
TVバランドフを率いているのはヤロミール・ソウクプ氏である。この人物が有名になったのは、2018年の大統領選挙の際に、勝者のゼマン大統領の選挙事務所にいて、大統領から感謝の言葉を捧げられたことによる。ということは、すでにこの時点で、政治に関する番組をバランドフで放送していたということになるのだが、思い返してみれば、大統領選挙の前から政治家が出て討論する番組を放映していた。適当にチャンネルを変えながら番組のチェックをしている際に、オカムラ氏の顔があると大抵はバランドフだったものだ。
ソウクプ氏は社長自ら番組の司会を務めて政治家同士の討論や、政治家とのインタビュー番組を放送しているのだが、最近その顔を目にする機会が増えているような気がする。ということで確認してみたところとんでもないことになっていた。
午後8時からの時間帯というのは、テレビ局によっては、ちょっとずらして8時15分とか、8時30分からのこともあるけど、その日一番視聴率を稼げそうな番組を持ってくるものである。一般向けの連続ドラマも、映画も、年齢制限のつくものでなければ、大抵最初の放映は午後8時からの時間帯になる。
それなのに、今このTVバランドフの午後8時からの番組は、毎日ニュースなのである。普通のニュースであれば他のテレビ局の7時台のニュースに間に合わなかった人たちのためと考えられなくもないのだが、その名も「Moje zprávy」。「私のニュース」と訳しておけばいいのだろうけれども、この「私」に込められているのは、恐らく私の主観的なニュースという意味であろう。ちらっと見た限りでは、昔俳優のクラウスがトーク番組の冒頭でしょうもないニュースを紹介していたのと同じような印象を受けて、これをニュースとして見ている人はいるのだろうかと思った。以前はメインのニュースを「Naše zprávy」と題して放送していたから、一人称複数から単数になって、主観性が強くなっただけだと考えておこう。
それだけでなく、今週の番組表によると、月曜日と火曜日には「ヤロミール・ソウクプのインスティンクト」、水曜日は「ヤロミール・ソウクプによる一週間」、木曜日は「大統領との一週間」というソウクプ氏が司会を勤める番組が、9時、10時台に放送されている。他にも、政治家を一人呼んでインタビューする番組や、二人呼んで討論させる番組、一般の観客を呼んで政治家と議論させる番組などがこれまでに放送されてきたけれども、すべてソウクプ氏が司会を勤めていた。社長自ら司会を務めることで経費削減というわけでもあるまい。ソウクプ氏が目立つためのテレビ局になってしまっている感がある。こんな番組構成ではたださえ多いとは思えない視聴者の数が減って広告収入も減ることになりそうである。
一説によると、テレビラジオ放送を管轄する役所が「私のニュース」の報道姿勢を、客観性に欠けるとして問題にしようとしているとか、ソウクプ氏の金融グループに出資している中国資本が、バランドフの過度の政治家に危機感を感じて資金を引き上げようとしているなんて話もある。ソウクプ氏とTVバランドフは、ゼマン大統領の再選に一角ならぬ貢献をしたと感謝されていたが、危機に陥った場合、大統領が救いの手を伸ばすことはあるだろうか。
個人的には、特に見るべき番組もなく、消滅しても全く困らないテレビ局なのだが、共産主義時代のテレビドラマを好んでいる人はなくなったら困ると感じているだろうか。ちなみにソウクプ氏が社長になったのが2012年ごろだというから、おかしくなり始めはその辺にあったのかもしれない。最初の頃は期待はずれだとは思ったけれども、ひどいとまでは思わなかったし。
2019年2月14日23時40分。
タグ:バランドフ