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2017年10月05日
タクシータクシー(十月二日)
プラハのタクシーは最悪らしい。自分では街中は基本的に歩くし、空港までは中央駅からバスを使うので、プラハでタクシーを使ったことはない。使ったことはないが、あれこれ漏れ聞くところによると使わないほうが賢明のようである。
以前知人が、プラハでタクシーに乗ったら、外国人だから道を知らないだろうと、滅茶苦茶遠回りをされたと怒っていたことがある。道を知らずに迷ったという可能性もなくはないけれども、ナビゲーションシステムの発達した現代、道を知らなければ遠回りする方が難しくなっているような気もする。
他にも、メーターを倒さずに走って正規の運賃かどうかもわからない額を請求されたとか、領収書を求めたら拒否されたとか、罵られたとかよからぬ話は枚挙に暇がない。特にチェコ語もプラハの地理もわからない外国人に対して、世界に轟くプラハの悪評の一部を構成しているのがタクシーのマナーの悪さであることは否定のしようがない。
そんな悪名高いプラハのタクシーの悪癖のひとつがささいなことで抗議のデモンストレーションをやるというところで、これまでにも何度もプラハ市の主要部の交通を阻害するような抗議活動を繰り返してきた。
プラハの空港の客待ちのタクシーが多すぎるのを規制しようとしたのに反対したり、タクシードライバーとして仕事をするための資格試験を厳格化しようとしたのに反対したり、とにかくプラハ市側がプラハのタクシーの悪名の高さを何とかしようとして改革案を出すたびにタクシー運転手側が反対の声を上げて、骨抜きにしているという印象である。
かつてプラハ市長を務めていた市民民主党のベーム氏が、この手の業界からの圧力やロビイストと呼ばれる連中からの要求に弱く、タクシードライバーたちの要求にも譲歩することが多かったのが今でも後を引いている。タクシー側は、タクシーが存在しなかったら空港から市内への交通の便が格段に悪くなるという事情を盾に、強気の姿勢を崩さないのだ。
実際、プラハの市内から空港までの公共交通によるアクセスは、近年エアポートエクスプレスが運行を始めた結果、中央駅からのものは格段によくなった。しかし、それ以外は地下鉄でデイビツカーなどまで移動して、市バスに乗り換える必要があるという不便極まりないもので、お金に余裕があって時間に余裕がない人がタクシーを使うのもよくわかる。正直な話、中央駅から空港までの直通バスが数年前まで存在しなかったのも、プラハ市の政治家とタクシー業界の癒着の結果だったのではないかと疑っているぐらいである。
そんなタクシードライバーたちが、今回またまたプラハ空港までの道路を渋滞させるという抗議行動にでた。一日中というわけではなかったようが、空港へ向かう途中のガソリンスタンドに集結したタクシーが、二車線ふさぐ形で空港まで徐行運転を行ったことで、市内からの所要時間が大幅に伸びることになった。
その後空港から市内までも同様の行為を繰り返したため、飛行機に乗るために空港に向かった人も、空港に到着して市内に向かった人も多大なる迷惑をこうむることになった。プラハの空港には鉄道は乗り入れていないため、公共交通機関のバスを使っても渋滞を免れることはできない。そして抗議運動に参加していたタクシーは市内までの客を取らなかったはずだから、普段タクシーを使っているような人たちもバスに乗るしかなかったのである。
今回の抗議は、これまでとは違って、規制に反対するものではなかった。逆に規制を求めるものだった。それが自分たちタクシー業界ではなく、ウーバーとかいう会社の運営する「白タク」に対する規制であるところが、さすがと言いたくなる。
世界的に評判の悪いプラハのタクシーが、ウーバーが提供する白タクによてって客を奪われているという現実があるらしい。それに対してプラハのタクシー業者が、規制の強化を求めて抗議行動に出たというわけである。タクシー業者は車両や料金などに関してさまざまな規制を受けているのに対して、ウーバーの白タクは野放し状態であるのが気に入らないらしい。
これが、仮にプラハのタクシーが親切で評判がいいというのであれば、タクシー業界側を応援する気にもなるのだけど、これまで好き勝手やってきて、ライバルとなりうる業者が出てきたらつぶしにかかるというのは、あまり応援したくない。ブルノのように裁判を起こして業務の差し止めを求めるのだったらまだわかるけれども、これまでにも、プラハのタクシー運転手たちはウーバーの白タクに対して身分を偽って利用して脅迫するなど実力行使的なこともしているのである。
ウーバーで白タクをやっている人のような空き時間と空いている自家用車を使って小遣い稼ぎというのは、ある意味で庶民が何とかしてお金を稼ごうとする知恵みたいなものだから、そんなに目くじらを立てる気にはならないのだが、やるなら個人でやれよとは思う。そして、そんな人たちを集めて、法律の穴を突くような形で事業化して、上前を撥ねるってのには嫌悪感を感じる。
だから、結論としてはどっちもどっちで、どちらも使うのやめようよではなく、プラハの空港までの鉄道、もしくは地下鉄の路線を建設しないプラハ市と国が責められるべきなのだ。空港へ鉄道で行けるようになれば、タクシーの需要は減るけれども、同時に白タクの需要も減る。その上で、エコロジーの観点から、空港への車での乗り入れを原則として禁止してしまえばいい。外国人が一番よく利用する空港から市内へのタクシーがなくなれば、プラハのサービスへの評判も多少は回復するというものである。
ちなみにオロモウツのタクシーは、プラハのとは違って全く問題ない。何度か使ったことがあるけれども不快を感じたことはないし、普通の車両は進入禁止の旧市街も走れるから、共和国広場から聖ミハル教会の前を通ってドルニー広場を抜けるという貴重な体験をさせてもらったこともある。やっぱ、プラハにゃあ住めねえし、あんまり行きたくもねえや。
10月4日17時。
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