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2019年10月07日

ラグビーでチェコ語を勉強する2(十月五日)



承前
 フォワードとバックスの間を取り持つハーフのことは「spojka(スポイカ)」という。これは二つのものを綱区という意味の動詞「spojit」と関連する名詞で、文法用語として接続詞という意味で使われることもある。他のスポーツでは、ハンドボールでセンターの選手をこの言葉で呼ぶが、ラグビーとは違って二つの部分をつなぐというわかりやすさはない。

 9番の選手はスクラム=ムリーン側のスポイカということで「mlýnová spojka(ムリーノバー・スポイカ)」と呼ぶ。長いので一語にして「mlýnovka(ムリーノフカ)」ということもある。語尾の「-ovka」は、チェコ語ではよく使われるもので、シュコダ社の自動社を「škodovka(シュコドフカ)」と言ったり、炭酸水=ソーダを「sodovka(ソドフカ)」なんて言ったりする。こういうのがわかってくると、トヨタの車を「tojotovka」、ホンダの車を「hondovka」なんて言って、チェコの人に笑ってもらうこともできるようになる。冗談のつもりで言ったら、普通に使われていて笑ってもらえないという落ちもあるかもしれないけど。
 10番のほうは、「útoková spojka(ウートコバー・スポイカ)」、略して「útokovka(ウートコフカ)」である。これは、チェコ語でラグビーのバックスのことを「útočník(ウートチニーク)」と呼ぶことからできた言葉なのだが、普通のスポーツではウートチニークはフォワードの選手を指す。昔初めてラグビーを見たときに、フォワードとバックスが逆じゃないかと思ったのを思い出した。

 チェコ語だと、ポジションとしての攻撃の選手はウートチニークだが、現在守備をしているは動詞の三人称複数の形から作る形容詞をつかう。つまり「útočící(ウートチーツィー)」となる。守備の場合も、ポジションとしては「obránce(オブラーンツェ)」で、守っている人は「bránící(ブラ−ニーツィー)」となる。だから、「bránící útočník=守備中のフォワード」とか「útočící obránce(攻撃中のディフェンス)」なんて表現も出てくる。ただ、ラグビーの場合には、ポジションに関係なく守備をしている選手をオブラーンツェと呼んだり、ブラ−ニーツィーと呼んだりしているような気がする。言い間違い、聞き間違いの可能性もあるけど、今後確認が必要だな。

 バックスの選手たちの呼び方は、11番と14番が「křídlo(クシードロ)」。これは翼と言う意味の言葉なので、ウイングをそのまま訳しただけだろう。12番と13番は「tříčtvrtka(トシーチトブルトカ)」で、四分の三を意味する「tři čtvrtě」を名詞化したもの。日本で昔使われていた呼称のスリー・クオーター・バックを訳したものだろうか。今ではセンターと言うことが多いのかな。
 バックスの中では15番だけが、チェコ語的で「zadák(ザダーク)」。背中を意味する「záda」、お尻を意味する「zadek」と関係がありそうだけど、背中の後ろにいる人という意味だろうか。「vzadu」なんて場所を示す副詞の存在を考えたら、「zad」だけで後ろを意味していたのかもしれない。

 ベンチに座っている控え選手は、他のスポーツと同じで「náhradník(ナーフラドニーク)」のはずなのだが、チェコのラグビー協会のページでは、選手の怪我で一時的にプレーする交替選手のことをこの言葉で呼ぶようなことが書かれていた。普通の交替選手のことは、動詞からできた「střídající(ストシーダイーツィー)」と呼ぶんだったかな。逆だったかもしれない。とまれ、他のスポーツでは、ベンチに座っているナーフラドニークの中からストシーダイーツィーが選ばれて出場するのが普通である。

 ところで、10番の選手ってスタンドオフじゃなかったっけ? 選手紹介でフライ・ハーフと書かれているのを見るたびに、あれっと思ってしまう。12番、13番は、昔から呼称が一致しなかったと言うか、ゆれがあってどう呼ぶのがいいのかよくわからなかったけど、10番はスタンドオフ以外の呼び方はないものだと思っていた。
 もうちょっと続く。
2019年10月5日25時。













タグ:ラグビー

2019年10月06日

ラグビーでチェコ語を勉強する1(十月四日)



 ワールドカップのおかげで、ラグビーを見る機会が増えて、チェコ語のラグビーに関する語彙も増えてきたので、まとめをしておこうと思う。スポーツニュースによれば、チェコ語のラグビー用語の多くは、19世紀末だったか、20世紀初頭だったか、チェコにラグビーが入ってきたときに、ラグビーに熱狂し導入に尽力したある作家が決めたものだという。作家の決めたものなので、日本語のラグビー用語と違って、英語の言葉をそのまま音写したものは少なく、聞いただけではわからないものも多い。

 一番最初に覚えるべきラグビー用語は、スクラムのことをいう「mlýn(ムリーン)」であろう。これは本来、水車や風車を努力としていて製粉所のことを表す言葉である。製粉のために使う碾臼を指すと考えてもいい。臼のように二つの部分がぶつかり合ってお互いをすり減らすという発想だったのだろうか。
 そしてスクラムの中心となる一列目の真ん中、背番号2の選手は、「mlynář(ムリナーシュ)」である。ムリーンと関係があるのはわかると思うが、ムリーンの所有者を表す言葉で、製粉業者と訳すこともある。製粉業者の両腋の1番と3番の選手は、「pilíř(ピリーシュ)」、つまり柱、もしくは橋脚である。水車小屋を支える柱のようなものという発想だろうか。

 4番と5番の選手には、特徴的な名前はない。二人まとめてセカンドローといわれるように、チェコ語でも二列目という意味の「druhá řada(ドルハー・ジャダ)」と呼ばれる。ただ、二人まとめてではなく個々の選手を呼ぶときには「druhořadník(ドルホジャドニーク)」と呼ばれることが多いようだ。

 6番と7番は、「rváček(ルバーチェク)」。スポーツの世界で「rváč(ルバーチ)」というと喧嘩っ早い選手で乱闘に好んで参加する喧嘩やを意味するし、「rvačka(ルバチカ)」は、喧嘩や乱闘を意味するから、一番血の気の多い選手が務めるポジションということだろうか、と考えたのだけど、大元にもどって、動詞の「rvát」から考えたほうがいいかもしれない。引き裂くとか毟り取るなんて意味があるから、相手のスクラムを引き裂き、ボールを毟り取る役割とっておこう。

 8番は、「vázat」という動詞から作られた「vazač(バザチ)」で、動詞の意味を考えると、スクラムを組み選手たちを結びつける役ということになりそうだ。動詞の「vázat」はタックルのときにも使われ、タックルした後は、相手が怪我をしないように両腕で「vázat」しなければならない。スクラムを組むときの掛け声、「バインドセット」のところでも使うかもしれない。

 ここまでのいわゆるフォワードの選手は、「rojník(ロイニーク)」と呼ばれることもある。これは、モールやラックなどの密集を「roj」と呼ぶからである。この言葉は、辞書には群、集団という意味が出ているが、群は群でも、蜂の群を指すのに使うことが多い。鳥の群を指す「hejno(ヘイノ)」でも、家畜の群を表す「stádo(スタード)」でもなく、「roj」が選ばれたのは、フォワードの選手たちがボールに群がるさまが蜂を思わせたからなのだろうか。さすが作家の選んだ言葉だと言いたくなる。 ちなみに、人の群、つまり群衆は「dav(ダフ)」という。
 この「roj」に含まれる、モールとラックに関しては、チェコ語でも英語の言葉をそのまま使っている。ただ、モールがチェコ語読みをして、「マウル」といわれるのに対して、ラックは「ラック」のままである。ラグビーの試合中に解説を聞いているときには、気にならなかったのだが、ハーフタイムにラグビーのルール解説コーナーのテーマがモールだったときに、はっきりと「マウル」と言っているのを聞いてぎょっとした。ラックも「ルック」と言っているんじゃないかと注意して聞いてみたけど、こちらはなぜかチェコ語読みはしていなかった。

 ラインアウトは、「vhazování(フハゾバーニー)」で、サッカーのスローインと同じ。アウトになったボールをグラウンドに投げ入れるということで、投げ込むという意味の動詞「vhazovat」から作られた名詞である。ラグビーのラインアウトの特徴である両チームの選手が一列に並んで対峙するという部分はこの言葉からは読み取れない。
 スクラムの際にスタンドオフが、ボールを入れるのも「vhazování」だと思うけれども、こちらは4名詞よりも動詞を使うことのほうが多い。今回のワールドカップで気になるのは、このスクラムとラインアウトのときに、真っ直ぐ、タッチラインに垂直に入れてなくても販促にならないシーンが多いことで、ラインアウトはまだたまに反則を取っているけど、スクラムになるとあからさまに自チーム側に向けてボールを入れても反則になっていないところを見ると、ルールが変わっただろうか。昔はこれものすごく細かく取っていたと思うんだけどなあ。
2019年10月4日24時。










タグ:ラグビー

2019年08月18日

怪しいメール其二(八月十六日)



 また、チェコ語の怪しいメールが来た。今回は本文なしで、件名だけで、その件名の内容が怪しいときた。件名だけだから短くて普段の一本分の記事にもならないかもしれないけど、たまには短く終わるというのも悪くないだろう。ということでまず、全文引用する。

Stále čekám na vaši odpověď na mé četné neodpověděné e-maily, které se týkají vašeho rodinného dědického fondu (14,5 milionu dolarů). Laskavě znovu potvrďte tento dopis pro další podrobnosti. Pozdravy. S úctou, pane, Martine.



 細かく見ていこう。冒頭の「Stále čekám na vaši odpověď na mé četné neodpověděné e-maily」だけ見たときには、しまったと罪悪感をちょっとだけ感じたから、うまい書き出しなのだろう。意味は「私の出したたくさんの返事がもらえていないEメールの返事を待ち続けています」とでもなるだろうか。特に「Stále čekám na vaši odpověď」を読んで、誰に返事してなかったっけと頭を抱えた。メールへの対応が遅いという自覚がある人は注意が必要である。
 しかし、その後「které se týkají vašeho rodinného dědického fondu (14,5 milionu dolarů)」とあるのを読んで、ああ詐欺メールなんだと理解できた。「貴家の相続基金」でいいのかどうかはわからんけど、うちの実家の遺産相続に絡んで1450万ドルなんて数字が出てくるわけがない。というか遺産に関してチェコ語でメールが来る時点でありえない。

 次の「Laskavě znovu potvrďte tento dopis pro další podrobnosti」は、次の細かい手続きのために、「この手紙」をもう一度確認するように求めているようだが、「tento dopis」が何を指すのかわからない。本文のないこのメールか? 「znovu」というのも、一度もやってないんだけどと、この辺りから、罪悪感や不安よりも、笑いの要素が強くなる。「Laskavě」というのは、命令形の二人称複数を使った丁寧な形と一緒に使って、さらに丁寧さを上げるための表現である。

 最後の「Pozdravy. S úctou, pane, Martine」はもう完全に笑うしかない。手紙の最後に「Pozdravy」なんて書くかなあ。普通は「s pozdravem」じゃないかと思うのだけど。次の「s úctou」と重なるのを避けたかったのかな。ちなみにこれは「敬意をこめて」と訳しておこう。最後の「pane, Martine」に気づいたときには、「俺ってマルティンって呼ばれたことあったっけ」と考えてしまった。カレルと呼ばれたことはあるけど、マルティンはないはずである。それに前の部分で、「Laskavě」なんて丁寧さを発揮しているんだから、ここも「doktore」とか「profesore」を入れておべっか使ったほうが平仄が合いそうだけどなあ。
 呼びかけにマルティンという名前を使うということは、このメールを出した人は、マルティンという名前の人が引っかかることを期待しているということなのだろうか。いくらチェコ人の中でマルティンは比較的多い名前だとはいっても、えらくピンポイントの詐欺メールである。それとも最後まで読まずに反応するのを狙ったのか。それなら呼びかけは名前じゃないほうがいいと思うんだけど。

 そして、この詐欺メールを出した人の名前が、フランク・マルティンスって、名字はマルティンの最後に「s」付けただけじゃないか。あり得ない名字ではないけど、何か怪しい。こんなあからさまに怪しいメールに反応してしまう人はいるのだろうか。いるんだろうなあ。だから、フィルターを通り抜けて、迷惑メールの中に落ちないようにあれこれ工夫してメールを送り続けているのだろう。人を選んで送れよととは言いたくなるけど。
 もし、チェコ語でこんな変なメールが来たら、一応読んで笑ってあげよう。
2019年8月16日22時。









タグ:詐欺メール

2019年08月01日

フラデツ・クラーロベー再考(七月卅日)



 プラハ在住の方から、フラデツに行ったことがあるというコメントを頂いた。プラハからなら直通の電車もあるはずだし、オロモウツから行くよりはるかに楽だよなあと少しうらやましく思ったのだが、チェコ鉄道の接続検索ページで調べてみたら、プラハ−フラデツの直行便が意外に少ないことと、時間がかかることに驚いた。
 直線距離としては大体同じぐらいのところにあるパルドルビツェまで、停車駅の数に左右されるけれども、ほとんど1時間以内に到着するのに、フラデツまでは1時間45分かかるので、パルドルビツェでフラデツ行きの普通、もしくは快速に乗り換えた方が早く着くのである。これがペンドリーノ導入によって高速化が進められた恩恵なのだろう。これならオロモウツから行くのと、それほど大きな違いはない。
 プラハからニンブルク、ポデブラディと気の惹かれる街が並んでいる路線だけど、幹線から外れるし改修工事が後回しにされているのだろう。ボヘミアのほうは土地勘がないから、どの街とどの街が鉄道で結ばれているのかとか、どのぐらい時間がかかるのかとか、知らないので、何となくのイメージで近そうだとか考えて、実際に調べてみると時間がかかりすぎて行けそうもないなんてところが出てくる。北ボヘミアのリベレツ行ってみたいんだけどね。オロモウツから日帰りは難しそう。

 さて、いただいたコメントには、チェコ語のフラデツ・クラーロベーの語源について書かれたものがリンクされていたので、訳はしないけれども引用しておく。

Nejstarší doložený název původně (od konce 10. století) hradiště a sídla Přemyslovců, od 11.–12. století sídelního hradu Přemyslovců je z roku 1073 (castrum Gradec), z čehož během 12. století vzniklo německé Grätz (k roku 1259 doloženo jako Gretz, 1352 Grecz). V češtině se díky hláskové změně g v h v první polovině 13. století vyvinulo v Hradec (staročeské hradec znamenalo „menší nebo vedlejší hrad“). Poté, co se již hrazené královské město stalo roku 1373 věnným městem českých královen, byl ke jménu připojován neshodný přívlastek Králové, což je genitiv singuláru substantiva králová („manželka krále, královna vdova“), latinsky Reginae (Hradecz regine, 1373), německy Königin (der Stat Khunigin Gract, 1557). Německá podoba se nakonec zkrátila na Königgrätz (Khuniggräcz, 1568), což je někdy mylně chápáno jako „králův hradec“ (německé König znamená „král“).



 斜め読みして、大事そうなところをつまみ食いすると、フラデツにはもともとプシェミスル家の城塞と集落が存在したこと、名称に関してドイツ語との関係が強調されていることから、おそらくドイツ系の住民が多かったことが考えられる。フラデツの意味に関しては、hrádekと同様、hradの指小形だと考えてよさそうである。

 フラデツの後にクラーロベーがついていることに関して重要なのは、13773年に「věnné město českých královen」になったと書かれているところである。これは十四世紀の初めにバーツラフ三世がオロモウツで暗殺された後の、王朝交代期のドサクサにまぎれて一瞬だけボヘミア王の地位に就いたハプスブルク家のルドルフが、再婚して王妃としたバーツラフ二世の王妃だったエリシュカ・レイチカ、もしくはポルスカーに、フラデツなどのいくつかの国王都市を御料地として与えたことから始まったものである。その後、ルクセンブルク家のカレル四世によって制度化され、最終的には東ボヘミアを中心とする全部で九つの都市が王妃に属するものとされた。
 中にはフラデツと同じで、後にクラーロベーのつく、動物園で有名なドゥブール・クラーロベーや、作曲家マルティヌーの出身地として知られるポリチカなどが含まれている。これらの都市からの税収が直接ボヘミアの王妃のものとされたり、各都市から特定の産物が王妃に対して献上されたのだろうと推測するが、詳細はよくわからない。重要なのは、フラデツが王妃に属する街だったということである。この制度は実質的には、1620年のビーラー・ホラの戦いの後に機能しなくなったが、形式上はチェコで王政が廃止された1918年のチェコスロバキア独立時まで存続していたらしい。

 つまり、クラーロベーは、フラデツが王妃のものであることを表すためにつけられた言葉で、これによって他にも存在するフラデツとの差別化が行なわれたと考えられる。ということは、引用の中にも書かれているが。クラーロベーは、形容詞ではなく名詞で2格にして後からかけたものだということになる。1格クラーロバーは王の妻、配偶者をあらわす言葉で、王妃(クラーロブナ)とほぼ同じだと考えていいのだろうか。クラーロブナの場合には女王の意味でも使用されるから、女性の王のことではないことを強調されるためにクラーロバーが使われたのかもしれない。
 問題は、単数二格になっていることで、具体的なある王妃の街の意味になり、代々の数々の王妃たちの街という意味にはならないから、引用の中でも「neshodný」と、適切ではないとされているのだろう。この解釈が正しければ、フラデツ・クラーロベーではなく、複数二格でフラデツ・クラーロビーフ(králových)、もしくはフラデツ・クラーロベン(královen)となるのが文法的に正しいということになる。気になるのはクラーロバーという言葉が、そんなに昔からあったのかということだけど、どうなのかな。

 ただし、そもそも町や村の名前に名詞の二格を使うこと自体が、チェコ語では一般的ではないことは忘れてはいけない。同じ地名が他にもあって区別が必要な場合には、チェスキー・クルムロフのように形容詞を使うか、フラニツェ・ナ・モラビェのように前置詞と町が属する地方名、もしくはテプリツェ・ナド・ベチボウのように前置詞とそばを流れる川を使うことが多い。人名に起源するなら、カルロビ・バリのように所有形容詞を作る。
 フラデツの場合には、特定の人物に起源があるわけではないから所有形容詞を使って、クラーロブニン(Královnin)・フラデツにはできなかったのだろう。ならば、クラーロブナから形容詞を作って、クラーロブニー(Královnní)・フラデツというのが、一般的なチェコ語の町の名前の作り方から想定できる形ということになる。このフラデツ・クラーロベーという地名がチェコ語の文法からも、一般的な地名の作り方からも外れているのを、誤りと取るべきなのか、東ボヘミア地方の習慣的な用法、つまりは方言と取るべきなのかはわからないけど。
 以上クラーロベーについての素人なりの考察である。
2019年7月30日24時30分。














タグ:地名 鉄道

2019年07月07日

dítě〈私的チェコ語辞典〉(七月五日)



 この言葉、単数では中性名詞でありながら、複数では女性名詞になるという厄介なものである。しかも、単数では、「kuře(ひよこ)」「kotě(子猫)」「štěně(子犬)」など、動物の子供を表す名詞と同じ特殊な変化、格変化をすると語幹が拡張されて「et」が出てくるという変化をし、複数では女性名詞なのに子音で終わる「kost(骨)」などと同じ特殊変化をするから、比較的使う機会の多い言葉でありながら、なかなか正しい格変化ができない言葉の一つである。

 だから、特に正しいチェコ語を使う必要のないときには、「děcko」という話し言葉的な、もしくは方言的な形を使ってしまう。これなら「o」で終わる典型的な中性名詞だから、格変化で悩む必要もなくなる。ただ、昔話の語り始めなんかに、子供たちに呼びかける「milé děti」という表現を「milá děcka」にするとまじめさが消えてしまうような難はある。
 逆に「děcka」が似合うのは、「děcka, jdem(ガキども、行くぜ)」なんて勢いよく声をかけるときだろうか。それでも、「dítě」を使うときに、複数の1格「děti」と2格「dětí」をしばしば混同していたから、いや、今でも混同することがあるから、ちょっと考えればわかるんだけど、ついつい楽なほうに走ってしまう。

 この「dítě」から派生した形容詞は、「dětský」で「dětský pokoj(子供部屋)」なんてのに使う。もう一つ「dětinský」というのもあるけど、こちらは「子供っぽい」という意味になる。「dětinské chování(子供っぽい振る舞い)」のように批判的につかわれる。それに「dětství(子供のころ)」なんて名詞もあることを考えると、本来「dítě」とは別に、「dět」という女性名詞が存在していたのではないかと思えてくる。二つの名詞の単数形と複数形の使用頻度に大きな差があって、使われなかったほうは忘れられ、使われていた二つの形が結び付けられて一つの言葉扱いされるようになったとかさ。
 こんなことを考えてしまうのは、「女の子」を意味する言葉に、女性名詞の「dívka」と中性名詞の「děvče」というよく似た二つの言葉が存在するからである。こちらは、両方とも単複存在していてどちらも使われている。昔、テレビで老婆を演じるボフダロバーが、同じぐらいの年齢の女性たちに「děvčata」と呼びかけているのを聞いて、「女の子」じゃなかったの? と不思議に思ったことがあるのだが、師匠の話では、「děcka」を子供以外に使うことがあるのと同様に、同じぐらいの年齢なら問題ないらしい。

 男の子を表す名詞で同じように、年齢が上でも使うものは「kluci」なのだけど、「děvče」とは違って中性名詞ではなく、普通の男性名詞である。女の子にだけ、動物の子供と同じ変化をする形が存在するのは、チェコ語が……なんて事を言い出す人もいそうである。そんなことを言い出したら、男性名詞だけど、動物の子供の中性名詞とほぼ同じ変化をする「hrabě(伯爵)」「kníže(侯爵)」なんていう貴族の爵位を表す言葉があるという反論はできる。そうすると貴族も動物と同じで、人間外の存在とされていたなんてことなのか。

 それはともかく、中性名詞の「dítě」だけれども、名字として使われると男性名詞となる。その場合の複数形は。女性名詞の「děti」にはならず、「hrabě」と同じになるなるはずである。「hrabě」は複数では中性扱いになって「kuře」と同じ変化をするんだったかな。ちょっとあいまいだけど、人の名字を複数形で使うことは滅多にないからこんなもんでいいのである。
 問題は名字の女性形で、普通に考えれば、語末の母音を取って「ová」をつけて、「Díťová」となるはずなのだけど、各変化した後の形から「Dítětová」とするようである。これは、「Hrabě」も同じで、女性の名字は「Hrabětová」となる。名字になっても厄介さは変わらないのである。

 ちなみに、子供を表す名詞には、他にも女の子なら「holka」、男の子なら「chlap」「chlapec」という言葉もあって、それぞれ「dívka」「děvče」、「kluk」との違い、境目がどこにあるのかはよくわからない。
2019年7月6日23













2019年06月18日

所有形容詞C(六月十六日)



 所有形容詞の作り方と格変化の説明は終わったので、今回は使い方である。まず、所有形容詞が使えない場合から説明しよう。

 女性名詞から作る所有形容詞のところでも少し触れたが、形容詞型の名詞からは、所有形容詞を作ることができない。だから、カレル大学、マサリク大学は、それぞれ所有形容詞を使って、「Karlova Univerzita」「Masarykova Univerzita」となるが、形容詞型の名字を使ったパラツキー大学とコメンスキー大学は、「Univerzita Palackého」「Univerzita Komenského」と2格にして後からかけなければならないのである。ただし、他の名詞が2格にすると必ず対象となる名詞の後ろに持っていかなければならないのに対して、形容詞型の名詞の場合には前で使うことも可能である。オロモウツのパラツキー大学の建物のひとつには、「Palackého Univerzita」という表示がついているものがある。
 これは、ちょっと古風な言葉遣いだという話だが、スポーツ新聞でサッカーの記事を読んでいたら「Poborského 何とか」という表現を見つけてびっくりしたことがある。サッカーの選手が書いた記事ではなかったけど、スポーツ選手って口語的なチェコ語の中にときどきこんな古めかしい表現を混ぜてくることがあるので油断がならない。そのスポーツで伝統的に使われている表現だったりするのかもしれない。「krom toho」とかさ。

 この形容詞型の名詞から所有形容詞が作れないと言うのは、日本人の名前にも関係する。基本的に母音で終わる日本語の名前のうち、ア段、ウ段、オ段で終わるものに関しては、母音を取り去って、男性か女性かによって「ův」か「in」をつければ、所有形容詞を作ることができる。ただし、女性の名字から所有形容詞が作れないのは、チェコ語の場合と同様である。
 それに対して、イ段とエ段で終わる名前の場合には、形容詞扱いになるので、所有形容詞は使えず、男性の場合には「ho」をつけて2格にして使用する。女性の名前がイ段、エ段で終わる場合には、女性形は2格が1格と変わらなくなってしまうので、名前だけでなく名字も一緒に使って2格であることをはっきりさせたほうがいいかもしれない。
 現在チェコで行なわれているソフトボールの世界選手権のチェコとの試合で大活躍した投手のマツダ選手からは、所有形容詞が作れて、中継のアナウンサーと解説者がしきりに「Macudův」というのを使っていた。ときどき間違えて「Macův」になっていたけど。それに対してチェコでも知られている作家村上春樹の名字からは、所有形容詞は作れず「Murakamiho」と2格にして名詞につなぐのである。

 それから、人を表すのに2語以上使う場合には、所有形容詞にはできない。だから、プラハのルジニェの空港がバーツラフ・ハベル空港と名前を変えたとき、「Letiště Václava Havla」となったのである。もし単にハベル空港だったら「Havlovo letiště」という名称になる可能性もあったのだけど。同様にチェコ各地にあるマサリク広場は、「MasarykovaMasarykovo náměstí」という名称のことが多いが、スロバキアのブラチスラバで新たに名付けられたT. G. マサリク広場は、略されているとはいえ一語ではないので、「Náměstí T. G. Masaryka」と呼ばれるのである。
 これは、名前と名字の組み合わせにとどまらず、「安倍首相」「ゼマン大統領」などと人名に肩書を付けたものも使えないし、「日本の国会議員」「チェコの大臣」のように形容詞を付けた場合も所有形容詞にすることはできない。このことから、固有名詞と化したカルロビ・バリなどの地名はともかく、普通の人のものの場合には、文章の最初から所有形容詞で表すことはできないということが想像できるだろう。つまり、「チェコのミロシュ・ゼマン大統領は」云々という文を受けて、「ゼマン氏の何々」というときに、「Zemanův」という所有形容詞が使われるのである。

 複数の人を所有者にする所有形容詞も作ることはできない。オロモウツの交通の要所である英雄広場は、「Náměstí hrdinů」と複数2格となっていることから、一人の英雄を記念した広場ではなく、たくさんの英雄たちを記念した広場だということがわかる。だから、一人の英雄のものになる「Hrdinovo náměstí」という名称にはできないのである。さらに言えば、この共産主義の時代に根差す英雄には、本来「無名の」という形容詞がついたはずなので、仮に単数であっても、具体的な英雄と称された人物をさすわけではない。これも「英雄」が、この場合に所有形容詞の形で使えない理由である。

 これまで、例として使ってきたのは、人名、名字などの固有名詞ばかりだったが、一般の名詞でも人を表わすものであれば所有形容詞の形で使うことができる。ただし、具体的な個人をさすことがはっきりしている文脈の中でしか使えない。これは固有名詞でも同じで、チェコにも同じ名前の人、同じ名字の人はたくさんいるが、どのカレルなのか、どのゼマンなのかがはっきりわかるような形で使うのである。
 だから、同じ「先生の仕事」という日本語でも、チェコ語に訳す場合に、一般に先生全体に関わるものであれば、「učitelská práce」という一般的な形容詞を使った形、もしくは複数2格をつかって「práce učitelů」とするのだが、直前に出てきた具体的な先生を受けての「先生(個人)の仕事」であれば、所有形容詞を使って「učitelova práce」とすることができる。もちろん、単数2格を使うことも可能だが、その場合は、「práce tohoto učitele」と指示代名詞を一緒に使ったほうがわかりやすくなる。まあ、簡単に「jeho práce」で済ませるという手もあるから、この手の所有形容詞の使用は必須ではない。
 それで覚えなくても何とかなると言うのだけど、使ってみると、実は意外と簡単で、ものすごく難しい文法を使っているように、見えたり聞こえたりするから試してみる価値は十分にあると思う。
2019年6月17日21時。













2019年06月17日

所有形容詞B(六月十五日)



 次は人を表す女性名詞から作る所有形容詞である。男性名詞と違って、特別な活動体というカテゴリーは立てられていないが、人の名前や、職業、役職などを意味する女性名詞から、所有形容詞を作ることができる。注意しなければいけないのは、男性の場合とは違って、女性の名字からは作れないことである。

 女性名詞からの所有形容詞のつくり方は、語尾に「in」をつけるだけである。ただし、語末の母音を取り去るのは忘れてはいけない。これは男性名詞活動体の母音でおわる名詞の場合と同様である。違うのは、「in」をつける際に子音交代を起す場合があることで、慣れて自動的に作れるようになるまでは気をつける必要がある。
 子音交替でも、「t」「d」「n」に関しては表記は変わらないから、気にしなくていいし、特に「n」は、発音においても日本人には子音交代を起したとは思えない。問題はそれ以外なのだが、実際に使う機会が多いものとしては、「k」が「č」になるものぐらいだろうか。だから、「Jana」から作る所有形容詞は、単に「in」をつけて「Janin」になるが、「Jitka」からは「Jitčin」になるのである。

 この二つ「Janin」と「Jitčin」は、もちろん男性名詞につくときの単数一格の形で、後に来る名詞と、格によって、形を変えなければいけないのは、男性名詞から作る所有形容詞と全く同じ。そしてありがたいことに所有形容詞の格変化は、男性名詞から作ったものでも、女性名詞から作ったものでも全く同じになる。

 ということで、格変化表はあげる必要はないだろうが、念のために一格の形だけ上げておく。

 単数
  Janin kamarád (男性名詞活動体)
  Janin most (男性名詞不活動体)
  Janina Univerzita(女性名詞)
  Janino město(中性名詞)

 複数
  Janini kamarádi(男性名詞活動体)
  Janiny mosty(男性名詞不活動体)
  Janiny Univerzity(女性名詞)
  Janina města(中性名詞)


 女性名詞から作られた所有形容詞を使った地名というのは思い浮かばないのだが、第二次世界大戦中にナチスの強制収容所があったことで知られるテレジーン(Terezín)は、母音が長くなっているとはいえ、テレザから作られる所有形容詞「Terezin」と関係があるようにも思われる。プラハの地名ヨゼフォフ(Josefov)がヨゼフからつくられる所有形容詞「Josefův」と関係がありそうなのと同じで、格変化に関しては7格に形容詞的な語尾が出てくることはないのだけど。
 もう一つ気になるのは、女性の名前であるマルタと、男性の名前マルティン、女性のマルティナの関係である。「Marta」の男性名詞につく所有形容詞形が「Martin」、女性名詞につく形が「Martina」であることを考えると、なんらかの関係がありそうな気がする。パブラ(Pavla)とパブリーナ「Pavlína」も何か関係がありそうだし。
 そんなことを言うと、女性の名字が「ová」で終わるのも、所有形容詞の女性につく形から形容詞化したと考えられなくもない。つまりは女性は男性の所有するものとして認識されていたのではないかなんてことも言おうと思えば言えるわけで、これもまたチェコ語が男性優位の言語だとして、批判されることがあるゆえんとなっている。

 気の早い夏ばて故、今日も短めでまた明日。明日は所有形容詞を使うときの注意点だ。
2019年6月16日23時30分。










タグ:名詞 形容詞

2019年06月16日

所有形容詞A(六月十四日)



承前


女性名詞
 1Karlova Univerzita
 2Karlovy Univerzity
 3Karlově Univerzitě
 4Karlovu Univerzitu
 5Karlova Univerzito
 6Karlově Univerzitě
 7Karlovou Univerzitou

 所有形容詞の語尾が名詞と一致しないのは、実用性が疑われる5格のみで、それ以外はまったく同じになる。問題は7格の語尾を形容詞型ととるか名詞型ととるかであるが、女性名詞硬変化の場合、男性名詞、中性名詞と違って、形容詞の語尾と名詞の語尾が同じになるという特徴があることを改めて確認しておこう。

 次は複数の名詞に付いた場合だが、男性名詞活動体を除けば、1格、4格、5格が同じ形をとるという名詞、形容詞の複数の格変化の特徴は、所有形容詞でも共通である。男性名詞活動体の複数は、1格と4格が共通で、4格は不活動体と同じ語尾を取る。そして、この1格、4格、5格の所有形容詞の語尾は、名詞の語尾と共通だが、残りの2格、3格、6格、7格の語尾は、形容詞と共通になるというのは覚えておいたほうがいい。

男性名詞活動体複数
 1Karlovi kamarádi
 2Karlových kamarádů
 3Karlovým kamarádům
 4Karlovy kamarády
 5Karlovi kamarádi
 6Karlových kamarádech
 7Karlovými kamarády

男性名詞不活動体複数
 1Karlovy Vary
 2Karlových Varů
 3Karlovým Varům
 4Karlovy Vary
 5Karlovy Vary
 6Karlových Varech
 7Karlovými Vary

中性名詞複数
 1Karlova města
 2Karlových měst
 3Karlovým městům
 4Karlova města
 5Karlova města
 6Karlových městech
 7Karlovými městy

女性名詞複数
 1Karlovy ženy
 2Karlových žen
 3Karlovým ženám
 4Karlovy ženy
 5Karlovy ženy
 6Karlových ženách
 7Karlovými ženami


 念のために所有形容詞と名詞を組み合わせた形で表示しておく。これを見てもらえば、形容詞型の語尾を取るところが厄介だということはわかってもらえるだろう。ただ、名詞と形容詞の基本的な格変化を覚えていれば、どの格が名詞型で、どの格が形容詞型の語尾をとるのかだけ覚えておけばいいから一から全部覚えるのに比べれば楽である。

 格変化表ばかりだと手抜きっぽいので、所有形容詞が使用されているものを紹介しておこう。一つは、音楽フェスティバルの名称である。プラハの例の有名な音楽祭は、「プラハの春」と名付けられているが、スメタナの生地リトミシュルで行なわれるのは、「スメタノバ・リトミシュル(Smetanova Litomyšl)」である。他にも「ドボジャーコバ・オロモウツ(Dvořákova Olomouc)」「ヤナーチコボ・ブルノ(Janáčkovo Brno)」なんてのもあるかな。
 もう一つはトラムやバスなどの停留所の名前で、考えてみればうちの最寄のトラムの停留所が、「ボルクロバ」で夭折した詩人イジー・ボルクルの名前を取ったものだった。「Wolkerova」と女性名詞につくときの形になっているのは、停留所を意味する「stanice」が女性名詞だからである。プラハの日本大使館に行くときに使うヘリホバも所有形容詞が停留所の名前に使われているものである。

 暑くて頭が働かないので、ぼろが出る前にこの辺で終わりにしておこう。次は人を表す女性名詞から作る所有形容詞である。
2019年6月15日23時。









2019年06月15日

所有形容詞@(六月十三日)



 一昨日の記事のビールの名前「プシュカジョバ」で思い出した。この所有形容詞については以前から書こうと思いつつ後回しにしていたのだった。六月にしては暑い日が続いて、あまり書くべきこともないので、これに挑戦してみよう。
 この所有形容詞は、一般の名詞でも人名でもいいのだが人を表す名詞から作るもので、後に続く名詞が誰のものなのか、誰に属するのかを表すのに使われる。機能としては二格にして名詞の後ろに持っていくのと同じなので、使わずに済ませようと思えば何とかなるものである。ただ、チェコの地名の中には、この所有形容詞が使われているものがかなりあって、そんな場所に行くときには、格変化させる必要があるので、ある程度は勉強して覚えておく必要がある。

 一番有名なのはカレル四世にちなむ「Karlův most(カレル橋)」「Karlovy Vary(カルロビ・バリ)」などだろうが、学校名や通りの名前などにも頻繁に登場する。 カレルは「Karlova Univerzita(カレル大学)」「Karlovo náměstí(カレル広場)」など、いろいろなところに使われているから、これを使って、男性名詞活動体からの所有形容詞の作り方を説明しよう。
 所有形容詞も形容詞の仲間のようなものだから、基本形は男性名詞単数につくときのものを使う。それはカレル橋の例からわかるように、「Karlův」である。つまり、男性名詞の活動体の後ろに「-ův」を付けてやれば、男性名詞単数一格につけるときの形が出来上がるのである。ただし、「Karel」→「Karlův」となるように格変化の際に落ちるいわゆる出没母音の「e」は消えるし、例外的に母音で終わる男性名詞の場合には、母音を取り去ってから語尾を付けることになる。「Smetana」→「Smetanův」のように。

 女性名詞、中性名詞につける場合は、語尾が少し変わって「-ova」「-ovo」になる。これに男性の「-ův」を合わせてみると、所有形容詞の語尾がどうなるかが見えてくる。原則として子音で終わる男性名詞につける場合には、所有形容詞も子音「v」でおわり、「a」で終わるものが多い女性名詞の場合は「a」、「o」で終わるものの多い中性名詞は「o」を取るのである。これから複数の場合も同様だと考えて、男性名詞活動体は「i」、不活動体と女性名詞は「y」、中性名詞は「a」になるということが想定できるが、その想定は正しい。
 つまり、硬変化のそれぞれの性に特徴的な名詞を選ぶ限り、1格においては、所有形容詞の語尾と、名詞の語尾が常に一致するのである。とりあえず、これを覚えておくと、所有形容詞の使い方は楽になる。念のために一覧にしておく。

 単数
  Karlův kamarád (男性名詞活動体)
  Karlův most (男性名詞不活動体)
  Karlova Univerzita(女性名詞)
  Karlovo město(中性名詞)


 複数
  Karlovi kamarádi(男性名詞活動体)
  Karlovy mosty(男性名詞不活動体)
  Karlovy Univerzity(女性名詞)
  Karlova města(中性名詞)


 軟変化や特殊変化の名詞が出てきて、所有形容詞の語尾に自信がないときには、硬変化に合わせて語尾を決めてから、名詞につなげてやると間違いが少なくなる。特に単数では、原則として所有形容詞の語尾は名詞格変化の語尾と共通するので、例外の部分さえ覚えてしまえば楽である。
 ということで格変化を示す。


男性名詞活動体
 1Karlův kamarád
 2Karlova kamaráda
 3Karlovu kamarádovi
 4Karlova kamaráda
 5Karlův kamaráde
 6Karlově/u kamarádovi
 7Karlovým kamarádem


 3格と6格は、男性名詞の活動体で特殊な語尾「-ovi」が出てくるが、二語以上の男性名詞が並んでいる場合、この「-ovi」をとるのは最後の名詞だけで、それ以外は「-u」になるというのを思い出せば、共通の語尾だととらえることができる。6格の「ě」に関しては、男性名詞硬変化の6格にしばしば「e」を取るものがあるからこれも共通すると考えておく。5格は使う機会があるとも思えないので、無視してもいいのだがここは例外。
 最大の例外は、7格で所有形容詞の語尾が、名詞の語尾ではなく、形容詞の語尾になっていることである。つまり、所有形容詞の格変化は、名詞と形容詞の格変化のハイブリッドというとチェコ語には似合わないので、ミーハネー・バイチコなのである。これは複数の格変化で形容詞の語尾を取るものが多いのの前触れだと考えておこう。


男性名詞不活動体
 1Karlův most
 2Karlova mostu
 3Karlovu mostu
 4Karlův most
 5Karlův moste
 6Karlově/u mostě/u
 7Karlovým mostem



 活動体で問題にしたのを除くと、語尾が一致しないのは2格である。ただこれも男性名詞不活動体の中に、特に古くから使われている言葉の中に、二格で「a」が出てくるものがある。たとえば「les」→「lesa」とか、地名でもプシェロフやプロスチェヨフは、2格で「a」を取るから覚えやすいはずである。
 念のために指摘をしておくと、所有形容詞も、活動体につく場合には、2格と4格が同じ形になり、不活動体の場合は、1格と4格が共通になる。

 次は男性名詞の場合と共通点の多い中性名詞から先に取り上げる。名詞と所有形容詞の語尾が完全に一致しているのがわかってもらえるはずである。


中性名詞
 1Karlovo město
 2Karlova města
 3Karlovu městu
 4Karlovo město
 5Karlovo město
 6Karlově/u městě/u
 7Karlovým městem


 長くなったので女性単数と、複数は明日に回すことにする。
2019年6月14日21時。










2019年05月17日

三格を取る前置詞➂(五月十五日)



 三回目は、セットで覚えておくといい二つの前置詞から始めよう。「おかげで」という意味の「díky」と、「せいで」という意味の「kvůli」である。チェコ語での使い分けも、ほぼ日本語のものと重なるので使いやすい。出た結果をありがたいと思っているときには「díky」、迷惑だと思っているときには「kvůli」を使うのである。
 だから同じ「日本に行った」でも、

 ・Díky kamarádovi jsem jel do Japonska.
 ・Kvůli kamarádovi jsem jel do Japonska.

 の二つでは、意味が変わってしまうのである。日本人なら、ありがたいという気持ち、迷惑だという気持ちを強調するために、ちょっと付け加えたくなる。

 ・Díky kamarádovi jsem mohl jet do Japonska
  友達のおかげで日本に行くことができた。
 ・Kvůli kamarádovi jsem musel jet do Japonska
  友達のせいで日本に行かなければならなかった。

 チェコ語では特に気にしないようだけど、日本語で「友達のおかげで/せいで日本に行った」と言われたら、違和感は禁じえないはずである。

 この二つの前置詞の使い方の説明は以上でお仕舞と言っていいぐらい日本人にとっては使いやすい(すくなくともそう信じられる)言葉なのだが、特筆すべきこととしては、「to, že」との相性が非常にいいことだろうか。連体修飾節を使って「〜したおかげで」とか、「〜しないせいで」なんて表現が簡単に使えてしまう。もちろんこの二つの前置詞の後ろでは「to」を「tomu」にするのを忘れてはいけない。

 ・Díky tomu, že se tyto dvě předložky dají používat stejně jako v japonštině, …
 ・Kvůli tomu, že se tyto dvě předložky dají používat stejně jako v japonštině, …

 この二つの前置詞は日本語と同じように使える「おかげで」、間違いにくいとか、この二つの前置詞は日本語と同じように使える「せいで」、ついつい濫用してしまうなんてことが、この二つの前置詞の「おかげで」言えてしまうのである。
 なぜか、この二つのうち「díky」は、大学書林の『現代チェコ語日本語辞典』には立項されていないのだけど、どちらも同じように重要でよく使う言葉である。ただ、師匠が言っていたのだが、チェコ人の中には、最近「おかげで」といういい意味の場合にも、「kvůli」を使う人が増えているらしい。外国人は真似してはいけないと師匠は付け加えていた。だから、自分では絶対にそんな使い方はしないのである。チェコ語がここまでできるようになったのは、ひとえに師匠の「おかげ」である。

 さて、その辞書に出てこない「díky」だが、しばしば「děkuji」の代わりに使われている。「děkuju ti」というような場面で、単に「díky」だけで済ませてしまうのである。人によっては単数形に見える「dík」を使うかな。
 実際の語源なんてことは知らないけれども、これは感謝を表す名詞「dík」の複数七格が前置詞化したのが「díky」だと考えていいのだろうか。そうすると、「kvůli」は、「k + vůle(意志)」だろうか。前者はともかく、後者は意味が通らない気がする。名詞の七格が前置詞的に使われているものとしては、二格を取る「pomocí(〜の助けで/おかげで)」があるのだけど、「díky」もそうなのだろうか。よくわからん。


 考えても仕方がないので、他の三格を取る前置詞を紹介だけしておく。どちらも自分では使わないけれども、使われたら理解はできるというレベルの前置詞である。
 一つ目の「vůči」は「(人)に対して」という意味で、もう一つの「navzdory」は、副詞的にも使え、意味は「〜に反して/に関わらず」である。前者は、普通に三格で済む場合が多いし、後者は「i když」を使った節で代用できるので、自分では特に後者は絶対に使わない。
 前者を使うのは「chovat se」と組み合わせる場合ぐらいである。

 ・Musím se vůči čtenářům zdvořile.
  読者に対して礼儀正しくふるまわなければなりません。

 とかね。
 他にもあるかもしれないけど、思いつかないので、三格を取る前置詞についてはこれでお仕舞ということにする。次にチェコ語について書くのは、所有形容詞かな。
2019年5月15日23時。












タグ:前置詞 三格
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