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2018年07月02日

第二次バビシュ内閣信任獲得か(七月二日)



 一回目の組閣で下院の信任をえられなかったバビシュ氏を首相とする二回目の内閣が、ゼマン大統領によって任命された。前回はANO単独の少数与党の内閣だったが、今回は社会民主党と連立した上での少数与党内閣である。共産党の閣外協力を得て信任に必要な過半数、101以上の票を確保する予定であるという。共産党も最後まで、駆け引きのつもりなのかなんなのか、信任案を支持するかどうか言を左右していたのだが、土曜日に最終決定として支持することを表明した。これで、第二次バビシュ内閣が下院で信任を得られることはほぼ確実になった。造反者がでるかもしれないけど。

 そのバビシュ内閣は、何の問題もないと言うわけにはいかず、現時点で最大の問題は、ゼマン大統領が社会民主党の外務大臣候補のポヘ氏を任命するのを拒否したことで、暫定でハマーチェク氏が外務大臣に任命されている。問題はハマーチェク氏が内務大臣に任命されていることだ。ポヘ氏は名目上は相談役か何かの役職について実質的には大臣の仕事をするというのだけど、そんな詐欺満みたいなやり口が許されるのかという疑問にはチェコだからと答えるにしても、内務大臣と外務大臣を同一人物が兼任するというのには無理がありすぎる気がする。
 普通、何かの事情で大臣がかけてしまったときには、後任が見つかるまでは首相が暫定で兼任するものだと思うのだが、今回は連立政権で、大統領が任命できないような候補者を出してきたことに対する責任を社会民主党が取るということで、党首のハマーチェク氏が兼任することになったようだ。ANOにしてみれば、連立交渉で散々譲歩させられたのだから、社会民主党の失態の尻拭いをさせられるいわれはないと言うことだろう。バビシュ氏は、外務大臣の件に関しては社会民主党と大統領で決めてくれというスタンスを取り続けている。

 そもそも、議席数で言えばANOとは圧倒的な差のある社会民主党なのだが、連立交渉の相手が見つからないというANOの弱みに付け込んで内務大臣と外務大臣という重要な役職をごり押しで獲得したのである。この既存の大政党の悪いところを凝縮したような社会民主党の交渉のあり方は、見ていて気持ちのいいものではなかったから、最近の世論調査でも支持率を上げられていない、むしろ一時期よりは下がっているように見える原因になっている可能性もある。
 一方で、ANOのほうも、第一回の組閣では連立交渉に対して、交渉がまとまらないのはANOに交渉する気がないからだと既存政党の側から批判されても、譲歩することなく結局は単独での組閣を選ぶという既存政党とは違う姿勢をみせていたのだが、今回の組閣では社会民主党、共産党にずるずると譲歩させられているようであった。ANOは既存政党とは一線を画しているというのが一番の支持を集めている理由なのに、一部とはいえ既存政党と馴れ合い始めたような印象を与えたのは、今後の支持率の低下につながるのではないかと予想している。

 ANOの大臣候補者にも問題があって、元防衛大臣で、第一次バビシュ内閣では外務大臣を務めた俳優のストロプニツキー氏は、外務大臣を社会民主党に譲ることになった時点で政界から身を引くことを表明した。防衛大臣になっていた産業大臣のシュレフトバー氏は、軽薄な言動で顰蹙を買い第二次バビシュ内閣では大臣の座を失うことになった。交通大臣のテョク氏こそ、政界引退の意向を撤回したものの、法務大臣のペリカン氏は、これ以上付き合いきれないと言うことなのか大臣も国会議員の職も辞任してしまった。

 その後任となったマラー氏の過去があれこれ問題を引き起こしている。一番最近のニュースは、学位をとった大学の卒業論文が盗作と言うか剽窃というかだったらしい。しかも学位を与えた大学がスロバキアの怪しい私立大学だったのかな。あれこれ、批判されているけれども、この件をつつくと問題になる政治家は、あちこちにいるはずである。
 十年ぐらい前にプルゼニュの西ボヘミア大学で、促成栽培によって短時間での卒業した学生がいることが問題になったとき、顧客の大半は政治家だった。ゼマン大統領にすりよりながら今回の連立を批判しているホバネツ氏もその一人で、その上で何事もなかったかのように内務大臣を務めていたのである。亡くなったグロス元首相の卒論もひどかったというしなあ。政治家の能力と学歴なんて全く関係はないのだから、そんなに無理して学歴をでっち上げる必要もあるまいに。「バカ田大学出身」なんて冗談をやってくれる政治家がいたら、それだけで支持してしまいそうである。
2018年7月2日0時15分。











2018年06月24日

チェコの政局混迷(六月廿三日)



 昨年の下院の総選挙の結果が出て以来、迷走を続けるチェコの政界であるけれども、最近は迷走の度合いが一段と深まっているように見える。総選挙が終わったときには、ドイツよりひどいことにはならないだろうと信じていたのだが、完全に負けてしまった。最大の原因は、ANOの党首で唯一の首相候補であるバビシュ氏が経済事件で犯罪者扱いされていることだけれども、中途半端な総選挙の結果に原因を求めてもいいかもしれない。
 一回目の組閣を行った後、少数与党の政権は下院の承認を得ることができず、バビシュ氏とANOは二度目の組閣に向けて、他の政党と交渉を始めたのだが、これがまたわけのわからないことになっている。連立交渉においては、ゼマン大統領に近いグループが主導権を握った社会民主党が、一番現実的な相手である。いや、共産党が閣外協力にとどまりそうなことを考えると、唯一の交渉相手だと言ってもいい。と、ここまで書いて前回この件についてどんなことを書いたかと確認してみたら、四月の初めに社会民主党とANOの交渉が頓挫したというのが最後だった。
 その後、社会民主党が再度方針を変更して、ANOとの連立に向けて具体的な交渉を再開した。その際、連立するかどうかは、党の指導部だけで決めるのではなく、党員全員の投票によって決めるとか言い出した。理解できないのは、その党員投票が一度に行われるのではなく、半月ほどかけて行なわれたことで、最初に投票が行なわれた地方では、連立に反対する方が多いという結果が出ていたから、社会民主党は連立政権には参加しないという結果になるものと考えていた。

 それなのに、ハマーチェク氏などの指導部は自信満々でANOとの連立の交渉を進め、どの省の大臣を社会民主党から出すとか、具体的な大臣候補の名前や、ANOの大臣の中で社会民主党が気に入らない大臣の懐妊を求めたりしていた。同時に廉利するかどうかは、党員投票の結果次第だということを強調して、ANOとの交渉の材料にしていた。よく言えば、したたかな交渉ということになるのだろうが、メディアを通してのやり口には、正直好感はもてなかった。こういうところが、チェコの有権者が既存の政党に対する信頼を失った原因のひとつだと思うのだが。
 そして、肝心の党員投票のほうは、こちらが忙しくてテレビのニュースを追いかけていなかった間に、ANOとの連立を認める結果が出たらしい。最初の地方での結果を受けて、指導部が地方組織の締め付けを行なっていたようだから、その説得、もしくは圧力を受けての結果だといえそうだ。これが民主主義民主主義とお題目のように唱える政党のやることである。最近、日本もそうだけれども「民主主義」という言葉が宗教的な盲目さを感じさせることが多いような気がする。

 多分、党員投票の結果が出る前だったと思うが、社会民主党から出すことになった外務大臣の候補にゼマン大統領がクレームをつけた。候補になっていたのはEU議会の議員でもあるポヘ氏だが、この人物のことは何も知らないので、どうしてゼマン大統領が反対しているのかはわからない。最近のゼマン大統領には特に理湯など必要ないような気もする。
 一週間ほど前だっただろうか。ゼマン大統領が、特別に発表することがあるといって、突然記者たちに招集をかけたらしい。体調の悪さをうかがわせることが増えていたこともあって、就任したばかりだが、大統領を辞任するという発表ではないかという憶測も流れた。逆に、NATOもしくはEUから脱退するという表明ではないかと考えた人もいたようだ。

 ふたを開けてみたら……。何年か前に、反ゼマン派のアナーキスト系の芸術家集団が、プラハ城の大統領官邸の屋根にひらめくチェコの国旗を盗み、その代わりに赤い巨大なトランクスを残して去るという事件を起こしたことがある。ゼマン大統領には、チェコの国旗はふさわしくないという主張だったのだろう。
 この事件に対する憤懣をゼマン大統領は忘れていなかったようで、集めた記者たちの前で、プラハ城に掲揚されたものなのか、どこかで買ってきたものなのかは知らないが、巨大なトランクスを持ってこさせて、焼却するという儀式を挙行したのである。最初は自分で火に投じて燃やそうとしたのだがうまく行かず、消火のために控えていた消防隊の人に任せていた。大統領が新聞記者を呼び集めてやることなのだろうか。

 現時点では、意外も意外、チェコでもっともまともな政党となっている海賊党も、上院の選挙に立候補するはずだった候補者に関して。40歳以上は信用しないとかいう理由で候補者から外すなんてことをしたらしい。チェコの上院の被選挙権って40歳以上じゃなかったっけ? つまり海賊党は上院に議席は要らないということなのだろうか。
2018年6月23日22時40分










2018年04月09日

バビシュ連立内閣不成立?(四月六日)



 一月ほど前から、社会民主党が、ANOとの連立の交渉に入り、共産党も連立はしないけれども内閣の信任に賛成票を投じてもいいという姿勢を見せていたので、ANOと社会民主党の連立与党と共産党の閣外協力によって、バビシュ政権が成立しそうな状況だった。それが連立交渉に於いて、社会民主党が国会銀の数の比からすると多すぎるほどの大臣ポストと、重要な財相、内相のポストを要求して、警察の捜査の対象になっているバビシュ氏が首相になるのを認めるのとバーターだといわんばかりの交渉をした結果、交渉は決裂して、社会民主党のハマーチェク党首が交渉の終了を宣言するにいたった。
 ANO側も、バビシュ氏とその右腕のファルティーネク氏に対する捜査に介入する可能性があるから、内相の座を渡せという社会民主党の主張に対して、そんなことはありえないと断固拒否するなどかなりかたくなだった。チェコでは政治的に理由で警察に特定の人物を捜査の対象にするように注文できるというのが、例のコウノトリの巣事件に対するANOの主張だったのだから、内務大臣ほど政策捜査を指示するにふさわしい役職はあるまい。

 社会民主党が、それまでの主張を変えて、ANOとの連立に向けて動いたのは、二月の臨時党大会で新執行部が誕生し、ゼマン大統領よりの路線に舵を切りなおしたというのが大きい。社会民主党では、それに加えて、事前の下交渉でANO側が政策面で大きく譲歩したことを理由としてあげていた。そういえば信任を得ないまま積極的に、野党に言わせればその権利のないまま、さまざまな政策を実現に移しているバビシュ内閣に政策を盗まれたなんて主張をしていたのは社会民主党ではなかったか。
 その盗まれた政策というのが、確か、高齢者と学生に対する長距離バス、鉄道などの運賃補助である。これは社会民主党のというよりは、またまたスロバキアのフィツォ政権のまねで、スロバキアでは高齢者と学生は無料で鉄道に乗れるのである。自分も実際に活用したというH先生の話では、高齢者の無料化はスロバキア人だけではなく、外国人にも適用されるらしい。バスが無料化されているかどうかは定かではないのだけど、バビシュ政権では当初はこの完全無料化を検討していたらしい。

 現在でも高齢者、学生に対する運賃の優遇策は存在している。それを、高齢者の場合には割り引き幅を拡大することで、学生の場合には日本の定期券と同じで通学のための区間にしか適用できなかった学生割引運賃をどこでも使えるようにすることで、公共交通機関の利用を促すという目的があるらしい。本来の運賃との差額は、国から運営会社に支払われることになるから、その分国庫の負担は大きくなる。
 ただし、この割引制度は完全に無制限に使えるというわけではなく、割引料金を適用できる便を運営会社が指定するという形になるという。朝夕のラッシュ時の混雑する便は適用外にして、昼間のすいている便の利用を拡大しようということらしいが、会社側でも実際の運用がどうなるかはわからないというコメントを出していた。

 ANOがポピュリスト政党であるのは今更いうまでもないことだが、社会民主党もこれはうちが先に主張していた政策だなんて、ANOをポピュリストだと批判する権利があるとは思えない。次の選挙に向けてどの政党も必死なのである。市民民主党が支出が増えるだけで何ももたらさないと主張しているのに賛同する気はないが、政府が自画自賛するほどすばらしいものでもないと思う。少なくともプラハ在住の人が、最近車が増えすぎて渋滞がひどいと嘆くプラハの状況が改善されることはあるまい。
 今回の政策はプラハなどの市内公共交通機関は適用外である。適用外なのはすでに高齢者の無料化も通学定期で通学区間以外のトラム、バスに乗れるというのも実現しているからである。自治体によっては高齢者に限らず運賃の完全無料化を実施しているところもある。運賃をとっても取らなくても市の交通局が大きな赤字で市の予算からお金を出して営業を続けていかなければならないことには変わりがなく、無料にすることによる市民へのサービス向上と、公共交通機関の利用が増え自動車の使用が多少減ることを考えると、切符の販売や検札などの手間も省けるし、無料にしてしまったほうが効率的だという判断らしい。市内在住者だけを対象にした割引を導入して批判を浴びていたところもあったなあ。

 閑話休題。

 そんな、政策面では社会民主党に譲歩したといわれるANOだったが、連立の交渉ではほとんど譲歩せず、バビシュ氏以外の首相とか、社会民主党の要求にANOが飲むとは思われないようなものが含まれていたこともあって、連立交渉は頓挫した。アリバイ作り的に交渉に臨んだ面もあるような気がしてならない。これは両方ともね。ANOも他の党から、これまでまともな連立の交渉をしていないと批判されていたわけだし。
 前回の選挙の後のソボトカ内閣の成立にも長い時間がかかったことを考えると、ANOの連立の交渉というのは、1990年代からチェコの政界にはびこる交渉のやり方とは一線を画しているのかもしれない。それがまた既存の政党をいらだたせているのだろうか。社会民主党や市民民主党が、自分たちが主張しているほど、ANOよりマシだとは思えないのだけど、ANOやオカムラ党の存在で、かつては既存の政党を批判していた自らの正しさに酔いたいインテリ層の支持を集めやすくはなっているのかな。それはともかく、現時点でダントツにまともな国政政党は、海賊党だという予想外の事態が発生しているのである。

 社会民主党との連立の可能性がなくなったANOがバビシュ氏への信任を獲得するためには、共産党とオカムラ党を頼りにするしかないという状況になったのだが、オカムラ党との連立はANOとしても避けたいところだろうし、これは解散総選挙ということになりそうである。
 それに、ANOへの閣外協力を表明していた共産党も態度を変えつつあるのだった。こちらはプラハで逮捕されたロシア人のコンピュータ犯罪者をアメリカの要求によってアメリカ側に引き渡す判断を、法務大臣が下したことが気に入らないらしい。このロシア人はロシアでも犯罪者として指名手配されておりロシアからも身柄の引渡し請求が来ているのにアメリカに渡すとはどういうことかというのである。共産党の人たちは、今でもロシア革命の聖地ロシアへの信仰を捨てられないようである。日本の共産党もそうなのかね。

 とまれかくまれ、今年の秋に行われる可能性が高くなってきた下院の臨時総選挙では、ANOと海賊党が第一党の座を争いオカムラ党が第三党になると予想しておく。
2018年4月6日24時。



 チェコではないけど……。

ドイツ社会民主党の社会化論 [ 小林勝 ]







2018年04月07日

エイプリルフールのお話(四月四日)



 イースターと重なってあまり話題にならなかったというか、恒例の偽ニュースやいたずらごとがネット上で公開されているのに気づかなかったのだが、実は今年もその手のニュースがいくつかあったらしい。うちのが笑いながら教えてくれたところによると、バビシュ傘下の日刊紙「ムラダー・フロンタ」のネット版「iDnes」に、チェコのイースターの行事をユネスコの無形文化遺産に登録しようという動きがあるというニュースが載ったらしい。

 チェコのイースターと言っても、その記事で登録の対象になるとされていたのは、イースターの彩色卵などの穏当なものではなく、ポムラスカと呼ばれる柳の若枝を編んでつくるしなりのある棒で、女性を叩いて健康と将来の安産を願うという部分だけだったらしい。その記事によれば、チェコ側の登録しようと言う動きは、EUの女性に対する虐待に相当しかねないものをユネスコの遺産に登録するのはいかがなものかという反対によって、頓挫しているということになっていたらしい。
 おそらく、この記事にはエイプリルフールの冗談だということがわかるようなコメントがついていたはずなので、これで終わっていれば、何事もなかったのだけど、真に受けてしまう人が出てしまったらしい。一人は、ではなく一つはオカムラ党で、もう一人はゼマン大統領の広報官のオフチャーチェク氏だったという。オフチャーチェク氏の場合はゼマン大統領の意向を汲んでのことだろうから、大統領も誤解したということになりそうである。

 当然、チェコの伝統を理解できないEUはこれだから駄目なんだとか、冗談ニュースに踊らされているだけだと気づかずに、いつもの反EUの言説を展開したらしい。さすがはオカムラ党とゼマン大統領一派だと言いたくなるし、この人たちだったらそんな反応をしてもおかしくないと納得してしまう。それだけにふと不安を感じてしまう。この反応も含めてエイプリルフールの冗談だったんじゃないかと。
 それに、実際にEU批判の反応をしていたとしても、それがエイプリルフール当日であれば、あれは冗談に冗談で返しただけだなんてことも言えてしまうわけである。オフチャーチェク氏の反応が出たのが、当日だったのか翌日だったのか確認する必要がある。本物のニュースだと誤解したまま、EU批判につなげたのだとしても、それを反省して発言を訂正するなんてことはしないだろうけどさ。この人たちは何でもかんでも反EUにつなげてしまうところがあるから、本当に反EUを展開すべきところで説得力を欠くことになるのである。

 そういえば、冗談ニュースへの読者の投稿で、この件が冗談だというのはわかったけど、念のためにEUに対しては反対しておいたほうがいいと思うというものがあったらしい。最初聞いたときには何馬鹿げたことを言っているんだろうと思ったのだが、チェコの歴史を考えると近隣に大国が存在することを警戒する気持ちが強いのかも知れないなんてことを考えてしまった。EUの権威をかさに着たドイツを隣国として持つのはなかなか大変なことなのである。いや、そこまで考えているわけではなく条件反射的にEUへの反感を表明しているだけなのかな。

 個人的には、オカムラ党にしてもゼマン派にしても、反EUということは、おそらくは反グローバリゼーションであるはずなのだから、EU批判ではなくユネスコ批判に持って行っていれば、ここまで嘲笑の対象にはならなかっただろうとは思う。世界遺産というもの、無形文化遺産というものに関しては、結構よからぬ話も聞くし、本来の目的を忘れて商業目的化しているさまは、醜悪でしかない。その運営を批判して、チェコに世界遺産なんかいらねえという方向に持って行くのか、こっちで申請したものは無条件で認めろという方向に行くのかは、それぞれの批判者の立場次第だろうけれども、観光客を集めるための単なるレッテルになってしまっている現在の制度に一石を投じることはできたはずである。まじめに受け取ってもらえるかどうかはまた別の問題だけど。
2018年4月5日23時。
 


無形文化遺産 ウィーンのカフェハウス 〜その魅力のすべて〜 [ 沖島 博美 ]









2018年03月11日

ミロシュ・ゼマン大統領就任式(三月八日)



 五年前の2013年と全く同じ3月8日に、ミロシュ・ゼマン大統領は、二期目の大統領就任の式典を行った。プラハ城の大ホールに集まった上下両院の国会議員たちを中心とする出席者の前で、憲法の原本に対して宣誓を行うという儀式なのだが、それに引き続いて就任演説を行うのが例となっている。その演説が、五年前以上に問題のある内容で……。
 そもそも今回の就任式には、出席するはずの国立大学の学長たちがさまざまな理由を付けて欠席するなど、ゼマン大統領が大統領選挙の後に語っていた国民統合のための大統領というのが絵に描いた餅にすらなっていないことを示唆する事実には事欠かなかったのだけど、前回もあれだけ批判された就任演説で、それを上回るような発言をするとは、さすがゼマン大統領というべきなのだろうか。

 今回は、自らの一期目の功績を誇った上で、大統領選挙に際してゼマン氏を批判するような報道を行ったマスコミの批判を始めた。一般的に一部のジャーナリストの姿勢を批判していたところまではまだましだったのだが、次第に批判が具体的になり、バビシュ首相と並ぶ成金のバカラ氏とその所有するメディアの批判になり、公共放送であるチェコテレビを批判するに至った。この時点で、市民民主党の元党首ニェムツォバー氏が席を立って退出した。
 ゼマン氏が主張するように、バカラ氏が非合法すれすれの手法で自らの資産を拡大し、チェコの財政に大きな損害を与えていて、それを政治家たちが、自分たちのクライアントだったからという理由で野放しにしてきたことは批判されるべきであろうし、そんな人物がメディアを所有しているのは問題でもあろう。しかし、バカラ氏が資産の大半を獲得した90年代に政界の中心にいた一人がゼマン大統領であることを考えると、この批判は天に唾するようなものである。

 話を戻すとゼマン大統領の具体的すぎる批判にあふれた演説に、右寄りの政党を中心に退席する議員が続出した。市民民主党、TOP09、キリスト教民主同盟あたりの議員はほぼ全員退席したのではなかったか。海賊党は退席はしない代わりに演説が終わった後の拍手もしないという、この政党、意外すぎるほどにまともだなあという対応を見せていた。それに対してANOも含めて左寄りの政党は、問題はあったにしても退席して抗議の姿勢を見せるほどでもないと評価していたようである。大統領の演説を手放しで絶賛していたのは、オカムラ氏だけである。
 演説の直後から、チェコテレビでは、各党の関係者や学者をスタジオに招いて解説する番組を報道していたが、やはり一番の問題は大統領の就任演説で話すような内容だったのかということである。特に国民を分断するのではなく、つなぎ合わせるような大統領になると宣誓した人物が、その就任演説でいきなり国民を賛成と反対と無関心に分けてしまうような内容の発言をするのは、宣誓は何だったんだということになりかねない。

 ゼマン大統領が、自分の親派以外のメディアに対してどんな意見を持っているかというのはすでに周知のことで、いまさら大統領の就任演説で繰り返すまでもない。それをあえてやってしまうところに、ゼマン大統領、老いてますます盛んというべきなのか、老いてこらえ性がなくなったというべきなのか。
 こういうゼマン大統領も含めた既存の政党、政治家のでたらめっぷりを見ていると、さまざまな問題を起こしながらもANOの支持が減らない理由、意外とまともな現実路線を走る海賊党の支持が伸び続けている理由が見える気がする。既存の正当に反省の色の見えない現状では、新しい政治家であるという一点でも支持の理由になりうるのである。
2018年3月9日23時。








2018年03月10日

ロマ人のホロコースト(三月七日)



 下院議員として二期目に入り、第四の政党を率いるトミオ・オカムラ氏は、国会の数の論理、政党の順位の論理に基づいて、下院に数人存在する副議長の座に座っているのだが、中道から右寄りの既存政党に解任動議を起こそうという動きがあった。政治の世界に進出して以来問題発言を繰り返しているオカムラ氏だが、今回問題にされたのは、第二次世界大戦中にナチス・ドイツがユダヤ人虐殺のための強制収容所と同様に運営していたロマ人に対する強制収容所に関する発言である。
 南ボヘミアのレティと呼ばれる地にチェコでは最も大きなロマ人用の強制収容所が設置され、多くのロマ人たちが犠牲となったのだが、その跡地をどうするかというのがここ十年ほどのチェコの政治問題の一つとなっている。そこにオカムラ氏がくちばしを突っ込んで、既存の政党からすればありえない発言をしたのである。

 ユダヤ人に対するホロコーストほどは知られていないが、ナチス・ドイツがユダヤ人と並ぶ撲滅の対象としてロマ人を選び、ドイツ本国、占領地だけでなく、ドイツと同盟を結んでいたいわゆる枢軸国でもロマ人に対する迫害と虐殺が行われた。ドイツの保護領となっていた現在のチェコでも事情は同様で、虐殺のための強制収容所の一つがレティという場所に置かれた。
 かつての東側の共産主義諸国の高官には、実はナチスの高官が変名でなんて話がまことしやかにささやかれていたのは冷戦の時代だが、そのせいでなのかどうかはともかく、共産主義の時代にはナチスによるロマ人虐殺はなかったことにされていたようだ。そして、強制収容所の痕跡を無くすため(と断言できるかどうかは不明だが)、跡地に養豚場が建設された。

 最初の問題は確か、ビロード革命後に民営化された養豚所にロマ人強制収容所の記念碑を設置するかどうかという問題だったはずだ。養豚所のオーナーと政府の話し合いが政治問題化したりしてややこしいことになっていたのだが、最終的には国が養豚所を買収した上で記念碑を設置するということになった。恐らく養豚所は廃止して記念館のようなものを建てる計画があるはずである。
 遺族のロマの人たちにとっては、養豚所に記念碑というのもあまり歓迎できることではなかったようだし、養豚所のオーナーも政治問題化したことで大変だったようだから、一番いい形で落ち着いたはずなのだが、そこに余計なくちばしを挟んだのがオカムラ氏だった。

 オカムラ氏の最初の発言によれば、レティの強制収容所には、周囲に柵がめぐらされていなかったのだという。後にその発言は誤りだったと謝罪していたが、それでも出入りを監視する者はいなかったのだという。つまり、強制収容所とはいっても、監視されていなかったのだから出入りは自由で、ロマ人たちは自分たちの意志で収容所にいたのだと主張しているのだろうか。批判を受けた結果、ロマ人に対するナチスのホロコーストを記念する日を制定して、この事実を知らしめる一助にしようなとと提案していたが、実はすでにそういう趣旨の日は存在していることを指摘されるという恥をさらしていた。
 オカムラ氏の政党SPDは反移民政策を掲げていて、チェコ国内では少数民族になるロマ人に対しても排斥を訴えているようである。反ロマ人的な風潮はチェコにも存在するけれども、すでに何世紀にもわたって定住している人たちを、難民だとか不法移民だとかと同列に扱うのは無理がって、この件に関しては、難民問題でオカムラ氏を支持する人たちの中にも批判は存在するようである。

 レティのロマ人強制収容所の問題に関しては、かかった経費をドイツに請求するように主張するぐらいにしておけばよかったのに。ユダヤ人とは違って、ロマ人に対するドイツ政府の対応は、西ドイツの時代から冷淡なもので、まともな補償など、特に旧共産圏のロマ人の遺族たちに対して補償などされたはずはないのだから、そこを指摘するのが反EU、反ドイツのオカムラ党の取るべき道だと思うのだけど。ロマ人を支援してドイツに補償を求める運動を起こすとなると、オカムラ党のカラーからは大きく外れてしまうけれども、ドイツの戦後処理の不備を言い立てて経済的な負担を迫るぐらいだったら支持者の許容範囲内じゃないかな。
 オカムラ下院副議長の解任動議は、与党のANOと共産党の画策でうやむやのうちに提案さえされないままに終わってしまったらしい。どうしてそんなことになったのかはニュースを見ていてもさっぱりわからなかった。
2018年3月9日14時。








2018年03月09日

過去に捕らわれる男(三月六日)



 昨年の下院の総選挙の結果が出て、国会内の役職をめぐる政党間の駆け引き、取り引きが本格化して以来、大きな問題の一つとなっているのが共産党選出の下院議員ズデニェク・オンドラーチェク氏の処遇である。おとなしく一般の国会議員として活動する分にはそれほど大きな反発もなかったのだが、所属する共産党がGIBSと呼ばれる警察の監査する組織を監督する国会議員からなる委員会の委員長としてオンドラーチェク氏を推薦したことで過去の行状が蒸し返されることになった。
 この人、1989年のビロード革命に際して、デモを鎮圧するための警察の部隊の一員として派遣されたという過去があるのである。それでも目立っていなければよかったのだろうけれども、積極的に任務をこなすさまがテレビカメラに収められ、この件に関してインタビューまで受けているのである。父親が共産党政権の高官だったという事情もあって特別扱いされたらしい。そんな人物が民主国家の警察を監査する組織にかかわるのはおかしいというのである。

 あのときの鎮圧部隊は、警棒を片手に、あれこれ抗議するデモの参加者をばんばん叩いて流血の巷を演出していた。オンドラーチェク氏は命じられた仕事を全うしただけで、何ら恥じるところはないと明言していて、それも一般社会の反感を買っている。ただ、父親が以前もらした話によると、オンドラーチェク氏も含めて、鎮圧に向かわされた部隊のメンバーは大半が、採用されたばかりのほとんど何の経験もない若者ばかりで、デモの群衆の圧力に負けてパニックを起こして、あれだけの暴力沙汰になってしまったのだという。
 共産党政権の内部に、デモを鎮静化させるのではなくて、拡大させることを狙った勢力があったということなのだろうか。そうなると、オンドラーチェク氏もある意味陰謀の犠牲者と言えなくはないし、当時の社会で命令を受けて遂行しないことは、自分自身が逮捕されることを意味していたから、命じられたことをやったのだという主張に説得力がないわけではない。ただ、現在でも共産党員を続けている人たちはみなそうなのだが、ビロード革命前に共産党に命じられて行ったことを謝罪していないのが、社会に受け入れられにくい理由になっている。

 オンドラーチェク氏は12月に一度GIBSの監督委員会の委員長に選出されたのだが、そのときの手続きに問題があるということで、改めて選出の手続きが行われ、先週の金曜日に与党のANOの支援を受けて、委員長に選出された。これに対して、国会だけでなくチェコ各地で、反対のデモが行われることになった。あまりの反対の大きさに一度はオンドラーチェク氏の選出を支持したバビシュ辞任中首相も、解任なんてことになるとあれだから、オンドラーチェク氏が自主的に辞任するのが一番いい解決法だなどと言い出していた。
 反共産党の政党が、解任動議を出すとか出さないとか騒いでいる中、オンドラーチェク氏は今日になって突然辞任を表明した。直前まで共産党の同僚議員がオンドラーチェク氏の任命に何の問題もないことを演説で述べていたのにである。本人の言葉によれば、自分が選出されない理由も、解任される理由も、辞任しなければならない理由もあるとは思えないが、家族の身の危険を感じるようになったので家族を守るために辞任するというのである。デモとか抗議集会で反対の意を示すのはいいのだけど、調子に乗りすぎて脅迫じみたことまでやってしまうのが、その脅迫じみた言葉が届いてしまうのが、現在のネット社会の恐ろしいところである。

 それにしてもビロード革命から30年近いときを経て、当時の行動が原因で批判を受ける。ゼマン大統領が大統領を続けているという事実も考えると、日本で戦後という時代がいつまでたっても終わらないように、チェコでもブロード革命後の90年代が未だに継続しているのではないかという気がしてしまう。仮にオンドラーチェク氏が、仕事だったとはいえ、デモ隊を警防で叩いたのは確かなのだから、その叩かれた人に対して謝罪をしていたら、今回の騒ぎは起こらなかったのだろうか。
2018年3月8日23時。







2018年02月23日

社会民主党臨時党大会(二月廿日)



 昨秋の下院の総選挙で惨敗した社会民主党の臨時党大会が、日曜日にフラデツ・クラーロベーで行われた。会場となったのは党が所有する射撃場という名前の建物で、その建物の現在の様子は、党の現状を反映してがたがたで大々的な改修工事の必要がありそうだった。ホテルなどを借り切って行われることが多い党大会が、党所有の建物で行なわれることになったのは、ビロード革命後に社会民主党が党本部として使っているプラハの建物を獲得するのに貢献した弁護士に対する謝礼を払わずに済ませようとして失敗し、裁判に負けた結果、膨大な額の借金を抱えることになったからだという。
 このフラデツ・クラーロベーの建物は、今から25年前にも党大会が行なわれ、ミロシュゼマン大統領が社会民主党の党首に選出された場所でもあるらしい。そのゼマン大統領が、見事なコウモリっぷりを見せている暫定党首のホバネツ氏の招待で、久しぶりに党大会に出席するというのも、社会民主党の今後を暗示しているように見える。

 党大会では、党首を筆頭に新しい党の指導部を選出するための選挙が行なわれるのだが、党首選では、ホバネツ氏と下院の副議長を務めるハマーチェク氏の二人の争いになるのではないかと予想されていた。二人とも発言が少しずつ変わっていって、最初のうちは刑事事件で検挙される可能性のある人物が首相となる内閣は支持できないと言って、ANOとの交渉には否定的だったはずなのだけど、いつの間にか交渉の余地はあるような談話に変わっていた。
 党大会ではなかなか激しい白熱した議論が行われたらしいが、出席者の中には社会民主党の解党を求める意見を出した人までいたらしい。来賓としては、ゼマン大統領以外にも、スロバキアの社会民主党的な政党であるSMERの党首のフィツォ首相も呼ばれていて、選挙に勝つコツみたいなことを語っていたようである(ニュースで聞いた断片的な発言を基にした推測なので違うかもしれない)。

 ゼマン大統領は、党首選挙の投票を前にした演説で、社会民主党に対してバビシュ首相の内閣を支持することを勧めていた。ゼマン大統領によると、ここで社会民主党が野党の側に回ることは、次の総選挙で5パーセントの壁を越えられずに議席を獲得できないことにつながるのだという。ただ、バビシュ内閣を支持するにしても、議席数が圧倒的に少ないことを考えると、連立与党として閣僚の座を求めるのは笑い話にしかなからないから、大臣ではなくて次官の座を求めようなんて、社会民主党よりもバビシュ氏にとって理想的な形の協力を勧めていた。ゼマン対バビシュの最終戦争は現時点では起こらないと考えてもいいのかな。
 バビシュ氏は、このゼマン大統領の発言に応えるように、社会民主党には与党内の野党として政権を監視する役割を期待しているとか何とかよくわからないコメントをしていた。よくわからないのはこちらのチェコ語の理解力が足りないせいかもしれないけど、大臣を輩出する形の連立よりは閣外与党としての連立を求めているというのは間違いないと思う。

 党首選のほうは、ハマーチェク氏、ホバネツ氏、元南ボヘミア地方知事のジモラ氏など9人の党員が立候補し、二回目の決選投票に進んだのは。一位のジモラ氏と二位のハマーチェク氏の二人だった。本命の一角と目されていたホバネツ氏はあえなく落選し、副党首の選挙には出ないことを表明していた。ホバネツ氏もソボトカ氏のチームの一員として、昨年の下院の総選挙の惨敗に責任があるわけだし、ホバネツ氏が党首になるということは社会民主党は変わらないということになるのが嫌われたのかな。昨年の夏に党首の座を投げ出して首相を続けたソボトカ氏が、党大会に現れず、党に対する責任を果たしていないと批判されていたのもホバネツ氏に支持が集まらなかった理由になろう。
 ハマーチェク氏とジモラ氏の間の決選投票では、ハマーチェク氏が一回目の結果を逆転し党首に選ばれた。ジモラ氏も第一副党首の座に選出されたので、ハマーチェク氏の言葉を借りれば、伝統的な左よりのグループと中道よりのグループからなる指導部が誕生したということになるようだ。ソボトカ首相の党運営は、対立グループを指導部などの重要な役職から排除して淡色の社会民主党を作ろうとしたという理由でも批判されていたから、その反省もあるのかもしれない。

 党首選出直後にニュースのインタビューに答えるハマーチェク氏は、ANOとの交渉に入ることを表明していたし、ANOとしてもオカムラ党の協力で信任を得るというシナリオは避けたいところだろうから、ANOと社会民主党の連立に共産党の協力を得て第二次バビシュ内閣が信任される見込みが高くなってきた。オカムラ党も自主的に協力してわれわれの協力で内閣が信任を得たとか言い出しそうだけどさ。
 問題は、新指導部がANOとの協力を決めた場合に、ソボトカ前首相と下院議員の中に多いそのお仲間がどのような動きに出るかである。2003年の国会で行なわれた大統領選挙で党の方針に逆らってゼマン氏に投票しなかったのがソボトカ氏である。今回も唯々諾々と党の決定に従うとは思えない。バビシュ氏としては社会民主党の議員からどのぐらい造反者が出るかというのも意識しながら交渉する必要があるということである。やっぱ、オカムラ党の協力も必要そうだなあ。

 既成の政党の多くは、ANOに共産党とオカムラ党が協力する形で新内閣が成立するのは避けたいと考えているようである。同時にバビシュ氏抜きの内閣であることも求めているのが、話をややこしくしている。ANOがバビシュ外しを認めることがない以上、上の二つは両立されることはない。今回は社会民主党が貧乏くじを引いて、内閣を成立させることになるのだが、それが次の選挙にどのように反映されるか楽しみである。
2018年2月21日22時。








2018年02月16日

政府不在?(二月十三日)



 一月の大統領選挙の前に、国会で信任を得られなかったバビシュ内閣は、総辞職したはずなのだが、後任が決まっていないことから、首相を含む閣僚たちは、辞任中の大臣(へんな言い方だけど)として仕事を続けている。それ自体は、内閣が不在の状態が続くよりはましだから、いいのだろうけれども、問題は国会の信任を得ていない内閣の閣僚がどれだけの権限を持てるのかということである。
 最近も、厚生大臣が厚生省の管轄化にあるらしい国立の大学病院の院長を二人解任して、問題視されている。この手の重大な決定は国会の信任を得てからするべきだというのである。解任されたオストラバの病院の院長が国会議員だというのも、議員達の気に入らない点かもしれない。

 厚生大臣はほかにもVZPという日本の国民健康保険のようなチェコ最大の健康保険会社の経営評議会(?)から国会議員を追放しようと画策していて、それに対する反発も受けている。これについては以前の厚生大臣も実施しようとして、国会議員たちの反発が強く実現しなかったらしい。議員達にとっては、この手の国営、半国営の企業の役員みたいなものになるのは、それなりの報酬が出るので、いい副業になるのである。
 ある国会議員は、議員は国民の代表として、国民の多くが加入する健康保険の経営に参画するのは当然のことだとかなんとか語っていたけれども、チェコはこういう政治家、元政治家優遇が多すぎるような気がする。日本と違って世襲というものがほとんどないのはまだましだけれども、こういうお手盛りの政治家優遇を続けてきた結果が、ANOをはじめとする新しい政治を主張する政党の台頭なのである。

 それはともかく、ドイツでも去年の秋の選挙以来連立交渉が続いているようだが、あちらは暫定か、もしくは辞任した選挙前の内閣が存在して機能しているのだろうか。まともな内閣が存在していなくても国の運営にはそれほど大きな問題が起こらないのは、官僚制が発達しているからなのだろうけれども、現在の状況が健全だとも思えない。その点、総選挙の後に首相だけを国会の投票で選出して組閣させる日本のやりかたは悪くない。

 チェコではバビシュ首相のANOが連立、もしくは閣外協力を求めて各政党と交渉を行なっているようだが、既存の政党は刑事事件で捜査の大将になっている人物が首班となるような政権に協力はしないという点では、選挙前から一貫している。変わる可能性があるとすれば、去年の選挙で惨敗した社会民主党だけで、今月行なわれる臨時の党大会の結果によっては、方針を変えるかもしれない。
 去年まで党の権力を握っていたソボトカ首相とその支持グループは明確に反ゼマン大統領の立場をとっていたが、その結果選挙に惨敗し、大統領選挙でゼマン大統領が再選された結果、党内のゼマン支持グループが息を吹き返して、党の代表などの地位を握る可能性があるのだ。問題はゼマン支持の社会民主党が復活した場合に、大統領がバビシュ内閣を支持する、もしくは連立に加わることを求めるのかどうかである。ゼマン対バビシュの権力闘争が始まるという憶測もあることだし、どちらに転んでもバビシュ氏としては気を抜けない状況が続きそうである。

 仮に社会民主党がバビシュ支持に転んだとしても、それだけでは下院の過半数である101の議席を押さえられない。そこで重要になってくるのがオカムラ党と共産党の存在で、過半数を確保するためにはどちらかと組む必要が出てくる。どちらもいろいろと問題のある党で、支持者がいるのはともかくとしてアンチの数も、その嫌われ具合もANOを上回るところがあるから、できればどちらとも組まずに済ませたいところなのだろうけど。
 社会民主党が転向してもしなくても、結局オカムラ党と共産党の力が必要だという現実には代わりがないため、バビシュ首相(辞任)は、二回目の組閣の交渉にそれほど熱心に見えないし、これが失敗したら再選挙だと言っているのだろう。再選挙になった場合に更に大きく議席を減らす可能性のある既存の政党の中から妥協しようと言う声が上がるのを待っているのである。

 再選挙を実施する場合には、今年の秋の上院と地方議会の選挙と同時に行い、それまでは国会の信任を得ないまま辞任状態の第二次バビシュ内閣が継続すると言うのだが、そうなると一年以上にわたって、内閣が存在しないか、辞任状態で政府を運営することになってしまう。昨年の下院選挙の後も12月まで三ヶ月ほどは、選挙前のソボトカ内閣が政府の仕事を担っていたようだし。
 これなら、これまでも何度か内閣が倒れて選挙までの間に成立したことのある政党色を廃した専門家による暫定内閣を成立させたほうがいいのではないかと思われてくる。いやいっそのこと、暫定内閣で次の下院の総選挙までしのぐってのはどうだろうか。選挙なんて金と手間がかかるばかりだし、今のチェコ社会を考えると、臨時選挙でも今と同様、袋小路に入り込んで出てこられないような状況になる可能性はあるのだし、次の総選挙までの間には、バビシュ氏のコウノトリの巣事件も、白黒ついているだろう。ついていなくてもバビシュ氏の論法に嫌気が差す人が増えてANOの人気に陰りが出ているかもしれない。既存政党の退勢は変わらないだろうから、また別のちょっと怪しい新政党が人気を集めているんだろうけど。

 チェコとドイツのどちらでまともな政府が存在しない状態が先に解消されるのか見ものである。最上のものであるかのように喧伝されることの多いヨーロッパ的民主主義ってやつも日本に負けず劣らず問題含みなのである。
2018年2月14日24時。








2018年02月01日

ゼマン大統領再選3(正月廿九日) 



 日曜日になって、繰り返し放送されるゼマン大統領の再選を喜ぶ記者会見の様子を見ていて気になることがいくつかあったので思いつくままにいくつか記しておく。
 ゼマン大統領の奥さんと、普段はあまり表に出てこない娘さんが、ちなみにロンドンの学校で勉強しているらしいけれども、近くに居たのはいい。側近中の側近のミナーシュ氏がいたのもいいけど、その奥さんの方がカメラに映りやすいところにいて目立っていたのはどうなのか。まあTVバランドフでアナウンサーをしているというからもともと目立つ存在ではあるんだろうけどさ。
 バランドフといえば、テレビ局のオーナーで自らも討論番組の司会者として、あれこれ物議を醸している人物も集まった人たちの中にいたらしい。立場を考えてなのか、あまり目立たないところに隠れるようにいたのに、ゼマン大統領は直接名前を挙げて、これまでの支援に感謝を述べていた。他にも半国営の電力会社であるČEZの社長もあの場にいたらしい。

 しかし、一番問題だったのは二人の政治家の存在である。そのうちの一人が、オカムラ氏で収支満面の笑みを浮かべて、テレビの画面に映っていた。昨年の下院の選挙でオカムラ党が大躍進を遂げたときにもここまでの笑みは浮かべていなかったと思うのだが。それに大統領選挙では、特に決選投票の前には、強くゼマン支持を打ち出していたけれども、それ以前はオカムラ氏は、ここまで熱狂的なゼマン支持者ではなかったと記憶する。
 そんなこんな事情からか、五年前の最初の直接選挙による大統領選挙で、現職のクラウス大統領がゼマン氏を推薦し、結果的に禅譲する形になったのと同様に、五年後の大統領選挙にゼマン大統領の支持を得てオカムラ氏が立候補するという約束ができているのではないかという憶測も流れている。ツイッターだったか、フェイスブックだったかに出没するらしい偽シュバルツェンベルク氏が、「TOP09はオカムラ氏に対立候補を立てることをあきらめない」とかなんとかいうコメントを残したのだとか。ゼマン氏の支持を背景に立候補するとこまではありえると思わなくもないのだが、当選はしないと信じたい。

 そして、もう一人オカムラ氏以上に問題じゃないかと思われたのが、社会民主党の暫定党首を務めているはずのホバネツ氏の存在である。社会民主党では下院の総選挙で惨敗を喫して以来、正確にはさらにそれ以前から党内が混乱を極めているのだが、現時点ではゼマン大統領が求めるバビシュ内閣への信任投票に協力しないという点だけでは一致している。
 大統領選挙に関しては党としての方針を出せる状態ではないようだが、上院の議長だったか、二月の党大会で党首選に立候補することを表明している人物が、決選投票を前にドラホシュ氏を支持することを表明していた。これは恐らく社会民主党内のソボトカ前首相などの反ゼマン派の主張を代弁したものと考えられる。

 しかし、ソボトカ氏の党首時代に抑圧されてしまったとは言え、社会民主党内にはゼマン支持者は、下院の総選挙で当選して議院になった中にも確実にいるのだ。思い返してみれば、ホバネツ氏は2013年の下院の総選挙の後、ゼマン大統領と会合を持って党首のソボトカ氏を追い落としてハシェク氏に首班指名が降りるように画策したグループの一人だった。つまりはゼマン支持派だったわけだ。その後、別件で誘われていったらそんな話になっただけだとか何とか言い訳をして、ソボトカ氏に擦り寄って内務大臣の座を手に入れて、反ゼマン派に鞍替えしたものだと思っていた。
 それが、ソボトカ路線の行き詰まりで後継者に擬されていながら、選挙での惨敗を受けて、元のゼマン支持者に戻ったということなのだろうか。そうなると見事なまでの蝙蝠っぷりである。それとも、社会民主党全体でゼマン大統領との関係改善を求める動きがあるのだろうか。いずれにしても、これまで出ないといっていた党首選に、結局出馬することを表明したホバネツ氏個人の考えではなく、社会民主党内の支持者と相談の上でのことだろうから、社会民主党内にゼマン派グループが再建されるのは間違いない。

 ここで気になるのは、二人の政治家がゼマン大統領の祝勝記者会見に同席していた意味である。最初に考えたのは、オカムラ党と社会民主党の一部を取り込むことで、バビシュ氏の内閣に信任を与えることを計画しているのではないかということだ。ANOとオカムラ党だけでは、100議席で過半数には一議席足りない。共産党なら簡単に取り込めるだろうけれども、それをやると内閣の支持率は最初から超低空飛行になりそうである。だから、社会民主党の一部を引き釣り込もうとしているのだろうと。一部の大きさによっては、オカムラ党の代わりに共産党を使ってもいいのか。どちらがいいのかなかなかに難しい選択ではある。
 しかし、そうではなくて、これはゼマン大統領からバビシュ氏への宣戦布告だという説もある。バビシュ氏がアグロフェルトを資金源にするなら、ゼマン大統領には半国営だけどČEZがあり、ムラダー・フロンタ、リドベー・ノビニの二紙に対してテレビ局のバランドフがあり、政党でもANOの代わりにオカムラ党と社会民主党がゼマン氏にはついているということを、宣言するのが目的だったというのだ。

 これまで、バビシュ氏は首相になるためにゼマン大統領を必要としていた。同時にゼマン大統領も再選のためにバビシュ氏とANOの支持を必要としてきた。だから五分五分の関係でいられたのだが、今後はゼマン大統領はバビシュ氏の支持など不要になる。そうなれば無理してバビシュ氏を支援する必要もなくなる。そんな裏切りをバビシュ氏が放置するとも思えず、これからゼマン対バビシュの最終戦争が始まるのかもしれない。結局大統領選挙は壮大な前座だったのである。

 もちろん、これはただの憶測である。
2018年1月30日24時。
 





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チェコとスロヴァキアを知るための56章第2版 [ 薩摩秀登 ]



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