2018年02月01日
ゼマン大統領再選3(正月廿九日)
日曜日になって、繰り返し放送されるゼマン大統領の再選を喜ぶ記者会見の様子を見ていて気になることがいくつかあったので思いつくままにいくつか記しておく。
ゼマン大統領の奥さんと、普段はあまり表に出てこない娘さんが、ちなみにロンドンの学校で勉強しているらしいけれども、近くに居たのはいい。側近中の側近のミナーシュ氏がいたのもいいけど、その奥さんの方がカメラに映りやすいところにいて目立っていたのはどうなのか。まあTVバランドフでアナウンサーをしているというからもともと目立つ存在ではあるんだろうけどさ。
バランドフといえば、テレビ局のオーナーで自らも討論番組の司会者として、あれこれ物議を醸している人物も集まった人たちの中にいたらしい。立場を考えてなのか、あまり目立たないところに隠れるようにいたのに、ゼマン大統領は直接名前を挙げて、これまでの支援に感謝を述べていた。他にも半国営の電力会社であるČEZの社長もあの場にいたらしい。
しかし、一番問題だったのは二人の政治家の存在である。そのうちの一人が、オカムラ氏で収支満面の笑みを浮かべて、テレビの画面に映っていた。昨年の下院の選挙でオカムラ党が大躍進を遂げたときにもここまでの笑みは浮かべていなかったと思うのだが。それに大統領選挙では、特に決選投票の前には、強くゼマン支持を打ち出していたけれども、それ以前はオカムラ氏は、ここまで熱狂的なゼマン支持者ではなかったと記憶する。
そんなこんな事情からか、五年前の最初の直接選挙による大統領選挙で、現職のクラウス大統領がゼマン氏を推薦し、結果的に禅譲する形になったのと同様に、五年後の大統領選挙にゼマン大統領の支持を得てオカムラ氏が立候補するという約束ができているのではないかという憶測も流れている。ツイッターだったか、フェイスブックだったかに出没するらしい偽シュバルツェンベルク氏が、「TOP09はオカムラ氏に対立候補を立てることをあきらめない」とかなんとかいうコメントを残したのだとか。ゼマン氏の支持を背景に立候補するとこまではありえると思わなくもないのだが、当選はしないと信じたい。
そして、もう一人オカムラ氏以上に問題じゃないかと思われたのが、社会民主党の暫定党首を務めているはずのホバネツ氏の存在である。社会民主党では下院の総選挙で惨敗を喫して以来、正確にはさらにそれ以前から党内が混乱を極めているのだが、現時点ではゼマン大統領が求めるバビシュ内閣への信任投票に協力しないという点だけでは一致している。
大統領選挙に関しては党としての方針を出せる状態ではないようだが、上院の議長だったか、二月の党大会で党首選に立候補することを表明している人物が、決選投票を前にドラホシュ氏を支持することを表明していた。これは恐らく社会民主党内のソボトカ前首相などの反ゼマン派の主張を代弁したものと考えられる。
しかし、ソボトカ氏の党首時代に抑圧されてしまったとは言え、社会民主党内にはゼマン支持者は、下院の総選挙で当選して議院になった中にも確実にいるのだ。思い返してみれば、ホバネツ氏は2013年の下院の総選挙の後、ゼマン大統領と会合を持って党首のソボトカ氏を追い落としてハシェク氏に首班指名が降りるように画策したグループの一人だった。つまりはゼマン支持派だったわけだ。その後、別件で誘われていったらそんな話になっただけだとか何とか言い訳をして、ソボトカ氏に擦り寄って内務大臣の座を手に入れて、反ゼマン派に鞍替えしたものだと思っていた。
それが、ソボトカ路線の行き詰まりで後継者に擬されていながら、選挙での惨敗を受けて、元のゼマン支持者に戻ったということなのだろうか。そうなると見事なまでの蝙蝠っぷりである。それとも、社会民主党全体でゼマン大統領との関係改善を求める動きがあるのだろうか。いずれにしても、これまで出ないといっていた党首選に、結局出馬することを表明したホバネツ氏個人の考えではなく、社会民主党内の支持者と相談の上でのことだろうから、社会民主党内にゼマン派グループが再建されるのは間違いない。
ここで気になるのは、二人の政治家がゼマン大統領の祝勝記者会見に同席していた意味である。最初に考えたのは、オカムラ党と社会民主党の一部を取り込むことで、バビシュ氏の内閣に信任を与えることを計画しているのではないかということだ。ANOとオカムラ党だけでは、100議席で過半数には一議席足りない。共産党なら簡単に取り込めるだろうけれども、それをやると内閣の支持率は最初から超低空飛行になりそうである。だから、社会民主党の一部を引き釣り込もうとしているのだろうと。一部の大きさによっては、オカムラ党の代わりに共産党を使ってもいいのか。どちらがいいのかなかなかに難しい選択ではある。
しかし、そうではなくて、これはゼマン大統領からバビシュ氏への宣戦布告だという説もある。バビシュ氏がアグロフェルトを資金源にするなら、ゼマン大統領には半国営だけどČEZがあり、ムラダー・フロンタ、リドベー・ノビニの二紙に対してテレビ局のバランドフがあり、政党でもANOの代わりにオカムラ党と社会民主党がゼマン氏にはついているということを、宣言するのが目的だったというのだ。
これまで、バビシュ氏は首相になるためにゼマン大統領を必要としていた。同時にゼマン大統領も再選のためにバビシュ氏とANOの支持を必要としてきた。だから五分五分の関係でいられたのだが、今後はゼマン大統領はバビシュ氏の支持など不要になる。そうなれば無理してバビシュ氏を支援する必要もなくなる。そんな裏切りをバビシュ氏が放置するとも思えず、これからゼマン対バビシュの最終戦争が始まるのかもしれない。結局大統領選挙は壮大な前座だったのである。
もちろん、これはただの憶測である。
2018年1月30日24時。
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