2018年02月16日
政府不在?(二月十三日)
一月の大統領選挙の前に、国会で信任を得られなかったバビシュ内閣は、総辞職したはずなのだが、後任が決まっていないことから、首相を含む閣僚たちは、辞任中の大臣(へんな言い方だけど)として仕事を続けている。それ自体は、内閣が不在の状態が続くよりはましだから、いいのだろうけれども、問題は国会の信任を得ていない内閣の閣僚がどれだけの権限を持てるのかということである。
最近も、厚生大臣が厚生省の管轄化にあるらしい国立の大学病院の院長を二人解任して、問題視されている。この手の重大な決定は国会の信任を得てからするべきだというのである。解任されたオストラバの病院の院長が国会議員だというのも、議員達の気に入らない点かもしれない。
厚生大臣はほかにもVZPという日本の国民健康保険のようなチェコ最大の健康保険会社の経営評議会(?)から国会議員を追放しようと画策していて、それに対する反発も受けている。これについては以前の厚生大臣も実施しようとして、国会議員たちの反発が強く実現しなかったらしい。議員達にとっては、この手の国営、半国営の企業の役員みたいなものになるのは、それなりの報酬が出るので、いい副業になるのである。
ある国会議員は、議員は国民の代表として、国民の多くが加入する健康保険の経営に参画するのは当然のことだとかなんとか語っていたけれども、チェコはこういう政治家、元政治家優遇が多すぎるような気がする。日本と違って世襲というものがほとんどないのはまだましだけれども、こういうお手盛りの政治家優遇を続けてきた結果が、ANOをはじめとする新しい政治を主張する政党の台頭なのである。
それはともかく、ドイツでも去年の秋の選挙以来連立交渉が続いているようだが、あちらは暫定か、もしくは辞任した選挙前の内閣が存在して機能しているのだろうか。まともな内閣が存在していなくても国の運営にはそれほど大きな問題が起こらないのは、官僚制が発達しているからなのだろうけれども、現在の状況が健全だとも思えない。その点、総選挙の後に首相だけを国会の投票で選出して組閣させる日本のやりかたは悪くない。
チェコではバビシュ首相のANOが連立、もしくは閣外協力を求めて各政党と交渉を行なっているようだが、既存の政党は刑事事件で捜査の大将になっている人物が首班となるような政権に協力はしないという点では、選挙前から一貫している。変わる可能性があるとすれば、去年の選挙で惨敗した社会民主党だけで、今月行なわれる臨時の党大会の結果によっては、方針を変えるかもしれない。
去年まで党の権力を握っていたソボトカ首相とその支持グループは明確に反ゼマン大統領の立場をとっていたが、その結果選挙に惨敗し、大統領選挙でゼマン大統領が再選された結果、党内のゼマン支持グループが息を吹き返して、党の代表などの地位を握る可能性があるのだ。問題はゼマン支持の社会民主党が復活した場合に、大統領がバビシュ内閣を支持する、もしくは連立に加わることを求めるのかどうかである。ゼマン対バビシュの権力闘争が始まるという憶測もあることだし、どちらに転んでもバビシュ氏としては気を抜けない状況が続きそうである。
仮に社会民主党がバビシュ支持に転んだとしても、それだけでは下院の過半数である101の議席を押さえられない。そこで重要になってくるのがオカムラ党と共産党の存在で、過半数を確保するためにはどちらかと組む必要が出てくる。どちらもいろいろと問題のある党で、支持者がいるのはともかくとしてアンチの数も、その嫌われ具合もANOを上回るところがあるから、できればどちらとも組まずに済ませたいところなのだろうけど。
社会民主党が転向してもしなくても、結局オカムラ党と共産党の力が必要だという現実には代わりがないため、バビシュ首相(辞任)は、二回目の組閣の交渉にそれほど熱心に見えないし、これが失敗したら再選挙だと言っているのだろう。再選挙になった場合に更に大きく議席を減らす可能性のある既存の政党の中から妥協しようと言う声が上がるのを待っているのである。
再選挙を実施する場合には、今年の秋の上院と地方議会の選挙と同時に行い、それまでは国会の信任を得ないまま辞任状態の第二次バビシュ内閣が継続すると言うのだが、そうなると一年以上にわたって、内閣が存在しないか、辞任状態で政府を運営することになってしまう。昨年の下院選挙の後も12月まで三ヶ月ほどは、選挙前のソボトカ内閣が政府の仕事を担っていたようだし。
これなら、これまでも何度か内閣が倒れて選挙までの間に成立したことのある政党色を廃した専門家による暫定内閣を成立させたほうがいいのではないかと思われてくる。いやいっそのこと、暫定内閣で次の下院の総選挙までしのぐってのはどうだろうか。選挙なんて金と手間がかかるばかりだし、今のチェコ社会を考えると、臨時選挙でも今と同様、袋小路に入り込んで出てこられないような状況になる可能性はあるのだし、次の総選挙までの間には、バビシュ氏のコウノトリの巣事件も、白黒ついているだろう。ついていなくてもバビシュ氏の論法に嫌気が差す人が増えてANOの人気に陰りが出ているかもしれない。既存政党の退勢は変わらないだろうから、また別のちょっと怪しい新政党が人気を集めているんだろうけど。
チェコとドイツのどちらでまともな政府が存在しない状態が先に解消されるのか見ものである。最上のものであるかのように喧伝されることの多いヨーロッパ的民主主義ってやつも日本に負けず劣らず問題含みなのである。
2018年2月14日24時。
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