2018年02月23日
社会民主党臨時党大会(二月廿日)
昨秋の下院の総選挙で惨敗した社会民主党の臨時党大会が、日曜日にフラデツ・クラーロベーで行われた。会場となったのは党が所有する射撃場という名前の建物で、その建物の現在の様子は、党の現状を反映してがたがたで大々的な改修工事の必要がありそうだった。ホテルなどを借り切って行われることが多い党大会が、党所有の建物で行なわれることになったのは、ビロード革命後に社会民主党が党本部として使っているプラハの建物を獲得するのに貢献した弁護士に対する謝礼を払わずに済ませようとして失敗し、裁判に負けた結果、膨大な額の借金を抱えることになったからだという。
このフラデツ・クラーロベーの建物は、今から25年前にも党大会が行なわれ、ミロシュゼマン大統領が社会民主党の党首に選出された場所でもあるらしい。そのゼマン大統領が、見事なコウモリっぷりを見せている暫定党首のホバネツ氏の招待で、久しぶりに党大会に出席するというのも、社会民主党の今後を暗示しているように見える。
党大会では、党首を筆頭に新しい党の指導部を選出するための選挙が行なわれるのだが、党首選では、ホバネツ氏と下院の副議長を務めるハマーチェク氏の二人の争いになるのではないかと予想されていた。二人とも発言が少しずつ変わっていって、最初のうちは刑事事件で検挙される可能性のある人物が首相となる内閣は支持できないと言って、ANOとの交渉には否定的だったはずなのだけど、いつの間にか交渉の余地はあるような談話に変わっていた。
党大会ではなかなか激しい白熱した議論が行われたらしいが、出席者の中には社会民主党の解党を求める意見を出した人までいたらしい。来賓としては、ゼマン大統領以外にも、スロバキアの社会民主党的な政党であるSMERの党首のフィツォ首相も呼ばれていて、選挙に勝つコツみたいなことを語っていたようである(ニュースで聞いた断片的な発言を基にした推測なので違うかもしれない)。
ゼマン大統領は、党首選挙の投票を前にした演説で、社会民主党に対してバビシュ首相の内閣を支持することを勧めていた。ゼマン大統領によると、ここで社会民主党が野党の側に回ることは、次の総選挙で5パーセントの壁を越えられずに議席を獲得できないことにつながるのだという。ただ、バビシュ内閣を支持するにしても、議席数が圧倒的に少ないことを考えると、連立与党として閣僚の座を求めるのは笑い話にしかなからないから、大臣ではなくて次官の座を求めようなんて、社会民主党よりもバビシュ氏にとって理想的な形の協力を勧めていた。ゼマン対バビシュの最終戦争は現時点では起こらないと考えてもいいのかな。
バビシュ氏は、このゼマン大統領の発言に応えるように、社会民主党には与党内の野党として政権を監視する役割を期待しているとか何とかよくわからないコメントをしていた。よくわからないのはこちらのチェコ語の理解力が足りないせいかもしれないけど、大臣を輩出する形の連立よりは閣外与党としての連立を求めているというのは間違いないと思う。
党首選のほうは、ハマーチェク氏、ホバネツ氏、元南ボヘミア地方知事のジモラ氏など9人の党員が立候補し、二回目の決選投票に進んだのは。一位のジモラ氏と二位のハマーチェク氏の二人だった。本命の一角と目されていたホバネツ氏はあえなく落選し、副党首の選挙には出ないことを表明していた。ホバネツ氏もソボトカ氏のチームの一員として、昨年の下院の総選挙の惨敗に責任があるわけだし、ホバネツ氏が党首になるということは社会民主党は変わらないということになるのが嫌われたのかな。昨年の夏に党首の座を投げ出して首相を続けたソボトカ氏が、党大会に現れず、党に対する責任を果たしていないと批判されていたのもホバネツ氏に支持が集まらなかった理由になろう。
ハマーチェク氏とジモラ氏の間の決選投票では、ハマーチェク氏が一回目の結果を逆転し党首に選ばれた。ジモラ氏も第一副党首の座に選出されたので、ハマーチェク氏の言葉を借りれば、伝統的な左よりのグループと中道よりのグループからなる指導部が誕生したということになるようだ。ソボトカ首相の党運営は、対立グループを指導部などの重要な役職から排除して淡色の社会民主党を作ろうとしたという理由でも批判されていたから、その反省もあるのかもしれない。
党首選出直後にニュースのインタビューに答えるハマーチェク氏は、ANOとの交渉に入ることを表明していたし、ANOとしてもオカムラ党の協力で信任を得るというシナリオは避けたいところだろうから、ANOと社会民主党の連立に共産党の協力を得て第二次バビシュ内閣が信任される見込みが高くなってきた。オカムラ党も自主的に協力してわれわれの協力で内閣が信任を得たとか言い出しそうだけどさ。
問題は、新指導部がANOとの協力を決めた場合に、ソボトカ前首相と下院議員の中に多いそのお仲間がどのような動きに出るかである。2003年の国会で行なわれた大統領選挙で党の方針に逆らってゼマン氏に投票しなかったのがソボトカ氏である。今回も唯々諾々と党の決定に従うとは思えない。バビシュ氏としては社会民主党の議員からどのぐらい造反者が出るかというのも意識しながら交渉する必要があるということである。やっぱ、オカムラ党の協力も必要そうだなあ。
既成の政党の多くは、ANOに共産党とオカムラ党が協力する形で新内閣が成立するのは避けたいと考えているようである。同時にバビシュ氏抜きの内閣であることも求めているのが、話をややこしくしている。ANOがバビシュ外しを認めることがない以上、上の二つは両立されることはない。今回は社会民主党が貧乏くじを引いて、内閣を成立させることになるのだが、それが次の選挙にどのように反映されるか楽しみである。
2018年2月21日22時。
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