2018年03月11日
ミロシュ・ゼマン大統領就任式(三月八日)
五年前の2013年と全く同じ3月8日に、ミロシュ・ゼマン大統領は、二期目の大統領就任の式典を行った。プラハ城の大ホールに集まった上下両院の国会議員たちを中心とする出席者の前で、憲法の原本に対して宣誓を行うという儀式なのだが、それに引き続いて就任演説を行うのが例となっている。その演説が、五年前以上に問題のある内容で……。
そもそも今回の就任式には、出席するはずの国立大学の学長たちがさまざまな理由を付けて欠席するなど、ゼマン大統領が大統領選挙の後に語っていた国民統合のための大統領というのが絵に描いた餅にすらなっていないことを示唆する事実には事欠かなかったのだけど、前回もあれだけ批判された就任演説で、それを上回るような発言をするとは、さすがゼマン大統領というべきなのだろうか。
今回は、自らの一期目の功績を誇った上で、大統領選挙に際してゼマン氏を批判するような報道を行ったマスコミの批判を始めた。一般的に一部のジャーナリストの姿勢を批判していたところまではまだましだったのだが、次第に批判が具体的になり、バビシュ首相と並ぶ成金のバカラ氏とその所有するメディアの批判になり、公共放送であるチェコテレビを批判するに至った。この時点で、市民民主党の元党首ニェムツォバー氏が席を立って退出した。
ゼマン氏が主張するように、バカラ氏が非合法すれすれの手法で自らの資産を拡大し、チェコの財政に大きな損害を与えていて、それを政治家たちが、自分たちのクライアントだったからという理由で野放しにしてきたことは批判されるべきであろうし、そんな人物がメディアを所有しているのは問題でもあろう。しかし、バカラ氏が資産の大半を獲得した90年代に政界の中心にいた一人がゼマン大統領であることを考えると、この批判は天に唾するようなものである。
話を戻すとゼマン大統領の具体的すぎる批判にあふれた演説に、右寄りの政党を中心に退席する議員が続出した。市民民主党、TOP09、キリスト教民主同盟あたりの議員はほぼ全員退席したのではなかったか。海賊党は退席はしない代わりに演説が終わった後の拍手もしないという、この政党、意外すぎるほどにまともだなあという対応を見せていた。それに対してANOも含めて左寄りの政党は、問題はあったにしても退席して抗議の姿勢を見せるほどでもないと評価していたようである。大統領の演説を手放しで絶賛していたのは、オカムラ氏だけである。
演説の直後から、チェコテレビでは、各党の関係者や学者をスタジオに招いて解説する番組を報道していたが、やはり一番の問題は大統領の就任演説で話すような内容だったのかということである。特に国民を分断するのではなく、つなぎ合わせるような大統領になると宣誓した人物が、その就任演説でいきなり国民を賛成と反対と無関心に分けてしまうような内容の発言をするのは、宣誓は何だったんだということになりかねない。
ゼマン大統領が、自分の親派以外のメディアに対してどんな意見を持っているかというのはすでに周知のことで、いまさら大統領の就任演説で繰り返すまでもない。それをあえてやってしまうところに、ゼマン大統領、老いてますます盛んというべきなのか、老いてこらえ性がなくなったというべきなのか。
こういうゼマン大統領も含めた既存の政党、政治家のでたらめっぷりを見ていると、さまざまな問題を起こしながらもANOの支持が減らない理由、意外とまともな現実路線を走る海賊党の支持が伸び続けている理由が見える気がする。既存の正当に反省の色の見えない現状では、新しい政治家であるという一点でも支持の理由になりうるのである。
2018年3月9日23時。
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