癌と共に生きる　手術→放射線治療→化学治療

父は今どこに居るのだろう

子供の頃、父は仕事と酒に追われていた

自宅ではいつも狭いリビングの定位置で

野球中継を観ていた記憶

休日の夕方は大相撲・・・その後は笑点だった

狭いリビングで父がタバコを吸うと

たちまち部屋中にタバコの煙が充満し

私はその隙間に残されているであろう空気のオアシスを探して

小さく呼吸をしていた

だからいつも息苦しかった

受動喫煙などという言葉は世間に知られていなかった時代

匂いの違い以外は焚火の煙と同じに考えていた

父が大便した直後のトイレに入る時も同様

父はトイレでも喫煙をした

トイレは一つしかなく

四の五の言っていられないタイミングは幾度となくあった

生理現象だから仕方がなかった

今でもあの時の匂いは思い出せる

父の思い出の詰まった匂いだ

今となっては父はいなくなり

あの空間もなくなってしまった

それでも

父を想えば色んな幸せが蘇る

それが当時不愉快に感じていたことであっても

今となっては幸せな想い出に変化した


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