2016年09月20日
日本発、夢の新素材、セルロースナノファイバー(CNF)
3日前に新素材セルロースナノファイバー(CNF)について本ブログに投稿しましたが、
昨日18日(日)のNHK Eテレ「サイエンスゼロ」でも放送されましたので、
その内容をまとめてみました。
セルロースナノファイバーに興味のある方は両方とも御覧頂ければ幸甚です。
尚番組では全く触れられなかったチクソ性の逆の性質(ダイラタンシー)に関する話も4)として追記しました。
ご参考まで。
しかし読むのは面倒、直接番組を見たいと言う方はここからどうぞ。
動画で見た方が面白く且つ判りも易いですよね。
当ブログは番組の文章での記録として以下記述しておきます。
サイエンスゼロ(2016.9.18)
「日本発、夢の新素材、セルロースナノファイバー(CNF)
ゲストの開発者は京都大学生存圏研究所 矢野浩之教授。」
1.初めに
植物は自身の細胞の壁を強くするために長い進化の過程で獲得した構造でありセルロースナノファイバー自身はとても強く細い繊維である。
これを人の手によって植物が持つ強さを最大限引き出したのがセルロースナノファイバー。
細い繊維をナノサイズまで細かく分離すると結合点の数が数万倍に増加し細かくなった繊維同士が絡み合う事で鉄をしのぐ強さになる。
ナノファイバーは非常に細く、細胞壁の厚みの中に1000本のCNFが入る位の細さ。
これは髪の毛を東京山手線の大きさにした時、僅か直径1mの棒になる位細い。
2.作り方の発見
矢野教授は少量をミキサーでかき混ぜて作る方法を開発しましたが、この方法では大量生産が難しかった。
しかし大量生産に結び付く技術を開発した日本人がいる。
それは東京大学の磯貝明教授。
2015年スエーデンで、森林分野のノーベル賞といわれる「マルクス・ヴァレンベリ賞」を日本人として初めて受賞。
この技術は、電荷の反発を利用するもので、CNFを簡単かつ大量取り出ることができるようになった。コストも約1000円/kgとなり、研究が世界中で加速するようになった。
具体的にはパルプの水溶液にマイナスの電荷を持たせる特殊な薬品を入れ反応させると、マイナスの電荷を帯びた繊維同士が互いに反発しあうようになるというもの。
3.CNFの特性と製品への応用
1)軽さと強さの利用
CNFは鉄の5分の1の軽さで、5倍の強さがある。
CNFの応用で現在最も期待されている産業は自動車産業で、
その軽くて強い性質を利用して鉄の代わりにドアやボンネットの利用が研究されている。
しかし、CNFは乾燥すると体積が10分の1に減少するため大きく変形し複雑な形状に加工することができない。
この欠点を、収縮し難いプラスチックと混ぜることにより、解決を図っている。
例えはCNFを10%混ぜることにより鉄より軽い同じ強度の製品が出来るようになった。
(但し現在は倍の厚みが必要)
ドアやボンネットに使うと20%位の軽量化が図れ、20%の燃費が向上するそうだ。
問題はCNFをプラスチックと混ぜるのが難しいことだった。
セルロースは基本分子単位の中に水酸基を6個も含むため水とよくなじむ。(木綿の吸水性)
この問題を解決するために、セルロースの水酸基(OH基)を化学処理して油と親和性のあるものに置き換えるとプラスチックとよく混じりあうようになった。
また思わぬ効果も現れた。
CNF内では水酸基同士が水素結合していて繊維同士が容易に分離しない構造になっていたが、
化学処理により水酸基ではなくなったので水素結合しなくなり容易に繊維同士が分離するようになり、
プラスチックと混合する時、自然とほぐれて良く混じる様になった。
これでコストが10分の1になった。
車以外の用途としては家電製品、ケータイ、情報端末が考えられている。夢はリニア。
2)CNF含有液体のチクソ性を利用した商品開発。
チクソ性とは、止まっているときには硬くて、力が加わるとトロトロになり、放置して置くとまた硬くなる性質。
ペンキが、攪拌して塗るとスーッと塗れ、塗った後ではタレない等の性質。
CNF混合液のチクソ性は、静止状態では繊維同士がくっ付きあって固まりゲル状になっていて、
これに力が加わると繊維同士の構造が壊れて液体となり、またしばらく放置していると繊維同士がくっ付きあってゲル状になる。
チクソ性を活かした製品。→ボールペン
ボールペンのインクには、増粘剤が入っているが十分混ざっていないと字がカスレたり、インクが固まりとなって出てくる。
増粘剤にCNFを混ぜたインクでは、ペン先に力が加わると増粘剤の粘土が下がり、すらすら書けるようになる。
別の応用では、日焼け止めクリームがある。
従来品は塗った後も肌がベト付くが、CNFが入った製品はサラサラしてべとつきが無くなる。
またスプレー製品は、出口で圧力が掛るとチクソ性がでて薄く均一に綺麗に広がる。
3)CNFが極めて細いことによる広い表面積を利用した商品開発
@消臭シート
一定の臭気成分を入れた容器に、CNFを入れない容器では、臭気が残っているのに、
CNFを入れた容器は完全に臭気が感じられない。臭気が吸着されている。
その応用として、大人用の紙オムツがある。
CNFを入れてない製品と比べると3倍以上「気になる臭い」が無くなるそうだ。
A食品
CNFはもともと水酸基があるので水分を抱き込む性質がある。
これを使って、ジューシーなハンバーグが出来る。
但し食品は体内に入るため、安全性の確認が必要である。
4)追記
CNFの性質のチクソ性はオリジナルの呼び方はチクソトロピーといいます。
これと反対の性質はダイラタンシーといい、力を加えた時に流動性が無くなり一時的に固まってしまう現象。
身近な現象としては海岸の砂がある。海水と一緒にゆっくり手で取るとさらさら流れてしまうが、強く握ったり、げんこつで打ったりすると硬くなっているのが分かると思います。
この性質を利用した面白い実験を米村でんじろう先生が良くやっていたのを覚えている人は多いはず。
内容は、大きな箱に入った白い液体にゆっくり足を突っ込むと当然そのまま足が沈んで隠れてしまうが、足をバタバタさせて液面を速く押すと沈まず何と水面の上に人が留まれるのです。
長い箱にこの液が入れてあれば水面を渡れる仕掛けも出来る訳です。(一度見た様な)
水に分散された(完全に溶けてはいない点が要注意)白い粉は片栗粉だそうです。(他にも色々あるのかも知れません。興味のある人は調べて下さい。)
このチクソ性(チクソトロピー)とダイラタンシーという言葉と意味は覚えておけば
意外なところで役に立つかも知れませんよ。(見直される?)
昨日18日(日)のNHK Eテレ「サイエンスゼロ」でも放送されましたので、
その内容をまとめてみました。
セルロースナノファイバーに興味のある方は両方とも御覧頂ければ幸甚です。
尚番組では全く触れられなかったチクソ性の逆の性質(ダイラタンシー)に関する話も4)として追記しました。
ご参考まで。
しかし読むのは面倒、直接番組を見たいと言う方はここからどうぞ。
動画で見た方が面白く且つ判りも易いですよね。
当ブログは番組の文章での記録として以下記述しておきます。
サイエンスゼロ(2016.9.18)
「日本発、夢の新素材、セルロースナノファイバー(CNF)
ゲストの開発者は京都大学生存圏研究所 矢野浩之教授。」
1.初めに
植物は自身の細胞の壁を強くするために長い進化の過程で獲得した構造でありセルロースナノファイバー自身はとても強く細い繊維である。
これを人の手によって植物が持つ強さを最大限引き出したのがセルロースナノファイバー。
細い繊維をナノサイズまで細かく分離すると結合点の数が数万倍に増加し細かくなった繊維同士が絡み合う事で鉄をしのぐ強さになる。
ナノファイバーは非常に細く、細胞壁の厚みの中に1000本のCNFが入る位の細さ。
これは髪の毛を東京山手線の大きさにした時、僅か直径1mの棒になる位細い。
2.作り方の発見
矢野教授は少量をミキサーでかき混ぜて作る方法を開発しましたが、この方法では大量生産が難しかった。
しかし大量生産に結び付く技術を開発した日本人がいる。
それは東京大学の磯貝明教授。
2015年スエーデンで、森林分野のノーベル賞といわれる「マルクス・ヴァレンベリ賞」を日本人として初めて受賞。
この技術は、電荷の反発を利用するもので、CNFを簡単かつ大量取り出ることができるようになった。コストも約1000円/kgとなり、研究が世界中で加速するようになった。
具体的にはパルプの水溶液にマイナスの電荷を持たせる特殊な薬品を入れ反応させると、マイナスの電荷を帯びた繊維同士が互いに反発しあうようになるというもの。
3.CNFの特性と製品への応用
1)軽さと強さの利用
CNFは鉄の5分の1の軽さで、5倍の強さがある。
CNFの応用で現在最も期待されている産業は自動車産業で、
その軽くて強い性質を利用して鉄の代わりにドアやボンネットの利用が研究されている。
しかし、CNFは乾燥すると体積が10分の1に減少するため大きく変形し複雑な形状に加工することができない。
この欠点を、収縮し難いプラスチックと混ぜることにより、解決を図っている。
例えはCNFを10%混ぜることにより鉄より軽い同じ強度の製品が出来るようになった。
(但し現在は倍の厚みが必要)
ドアやボンネットに使うと20%位の軽量化が図れ、20%の燃費が向上するそうだ。
問題はCNFをプラスチックと混ぜるのが難しいことだった。
セルロースは基本分子単位の中に水酸基を6個も含むため水とよくなじむ。(木綿の吸水性)
この問題を解決するために、セルロースの水酸基(OH基)を化学処理して油と親和性のあるものに置き換えるとプラスチックとよく混じりあうようになった。
また思わぬ効果も現れた。
CNF内では水酸基同士が水素結合していて繊維同士が容易に分離しない構造になっていたが、
化学処理により水酸基ではなくなったので水素結合しなくなり容易に繊維同士が分離するようになり、
プラスチックと混合する時、自然とほぐれて良く混じる様になった。
これでコストが10分の1になった。
車以外の用途としては家電製品、ケータイ、情報端末が考えられている。夢はリニア。
2)CNF含有液体のチクソ性を利用した商品開発。
チクソ性とは、止まっているときには硬くて、力が加わるとトロトロになり、放置して置くとまた硬くなる性質。
ペンキが、攪拌して塗るとスーッと塗れ、塗った後ではタレない等の性質。
CNF混合液のチクソ性は、静止状態では繊維同士がくっ付きあって固まりゲル状になっていて、
これに力が加わると繊維同士の構造が壊れて液体となり、またしばらく放置していると繊維同士がくっ付きあってゲル状になる。
チクソ性を活かした製品。→ボールペン
ボールペンのインクには、増粘剤が入っているが十分混ざっていないと字がカスレたり、インクが固まりとなって出てくる。
増粘剤にCNFを混ぜたインクでは、ペン先に力が加わると増粘剤の粘土が下がり、すらすら書けるようになる。
別の応用では、日焼け止めクリームがある。
従来品は塗った後も肌がベト付くが、CNFが入った製品はサラサラしてべとつきが無くなる。
またスプレー製品は、出口で圧力が掛るとチクソ性がでて薄く均一に綺麗に広がる。
3)CNFが極めて細いことによる広い表面積を利用した商品開発
@消臭シート
一定の臭気成分を入れた容器に、CNFを入れない容器では、臭気が残っているのに、
CNFを入れた容器は完全に臭気が感じられない。臭気が吸着されている。
その応用として、大人用の紙オムツがある。
CNFを入れてない製品と比べると3倍以上「気になる臭い」が無くなるそうだ。
A食品
CNFはもともと水酸基があるので水分を抱き込む性質がある。
これを使って、ジューシーなハンバーグが出来る。
但し食品は体内に入るため、安全性の確認が必要である。
4)追記
CNFの性質のチクソ性はオリジナルの呼び方はチクソトロピーといいます。
これと反対の性質はダイラタンシーといい、力を加えた時に流動性が無くなり一時的に固まってしまう現象。
身近な現象としては海岸の砂がある。海水と一緒にゆっくり手で取るとさらさら流れてしまうが、強く握ったり、げんこつで打ったりすると硬くなっているのが分かると思います。
この性質を利用した面白い実験を米村でんじろう先生が良くやっていたのを覚えている人は多いはず。
内容は、大きな箱に入った白い液体にゆっくり足を突っ込むと当然そのまま足が沈んで隠れてしまうが、足をバタバタさせて液面を速く押すと沈まず何と水面の上に人が留まれるのです。
長い箱にこの液が入れてあれば水面を渡れる仕掛けも出来る訳です。(一度見た様な)
水に分散された(完全に溶けてはいない点が要注意)白い粉は片栗粉だそうです。(他にも色々あるのかも知れません。興味のある人は調べて下さい。)
このチクソ性(チクソトロピー)とダイラタンシーという言葉と意味は覚えておけば
意外なところで役に立つかも知れませんよ。(見直される?)
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