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2023年11月02日
【年収120万円】低収入セミリタイア生活5年目で思うこと
僕は5年前、
離婚を機に「低収入セミリタイア生活」を始めた。
最低限だけ働いて、
残り時間をやりたいことに全振りするライフスタイル。
カテゴリー的には
「寝そべり族」「静かな退職」「隠居生活」に近い。
この生活をしていて思うことや、
メリット・デメリットを書いてみる。
人生に疲れた方や、
「シアワセのレールから外れた」と悩む方、
「週5・8時間労働」に疑問を持つ方の参考になれば嬉しい。
ー目次ー
政令指定都市・1人暮らし
精神障害者手帳を所持(広汎性発達障害:3級)
・収入
◎非正規、障害者雇用枠
労働時間:週4日、週20〜21時間、残業ゼロ
労働収入:8〜9万円
◎副業収入(アフィリエイト広告・アンケートモニター・ポイ活等)
月1500〜3000円(成果次第)
・支出
◎固定費(家賃・光熱費・通信費等)
月5万〜5万5000円
・貯金
数ヶ月は問題なく生活できる程度
ということで、収支は幸い黒字。
出勤している時間以外、
ほぼすべて趣味と副業に没頭している。
具体的には次の5つ。
・バスケをする
・野球をする
・筋トレする
・ブログや小説を執筆する
・MMD動画を制作する
ブログとYouTube動画制作は楽しいから続けてきたが、
ありがたいことに少しずつ伸びている。
なので、趣味と副業の境界線はあいまい。
なお、スポーツでは
道具・体育館/グラウンド・移動などの費用がかかる。
もしバスケと野球に出逢っていなければ、
週3日労働でもやっていけると思われる。
だがスポーツは生きがい。
辞める選択肢はないため悪しからず。
僕は16年前にうつ病を患った。
今はかなり回復したが、毎晩薬を飲んでいる。
1人で生活できて趣味に没頭していると、
つい忘れそうになる。
今の自分は、毎日の服薬でようやく保てていること。
少しでも無理したら、またすぐに心が壊れること。
「自分はこんなものじゃない」
「努力は必ず報われる」
そう思いたい人の気持ちもわかる。
ただ、「心の脆さ」「人間という生き物の弱さ」を
心に留めておいて損はない。
「自分は強いから大丈夫」
「心を患うなんて弱いヤツの甘えだ」
そう思っている人は1度、
自分のキャパシティーを把握してほしい。
多くの荷物を持っても平気な人もいれば、
少しの荷物で限界な人もいる。
⇒【うつ病経験】”生きている”と、”死んでいない”は違う。
縁あって恋愛や結婚を経験できたことは
とても幸せだった。
だが、僕は結婚生活を経験したことで、
「家庭を持つ人生を望んでいない」
という本音に気づいてしまった。
僕の本音は
・好きなことに没頭したい
・一生、自由に遊んでいたい
・自分を表現したい、創作したい
だった。
いつまでも”プレーヤー”でいたい。
自分がプレーできる機会をガマンして、
たとえば子どものプレーを見守るなんてイヤだ。
僕は今もなお、
1度も試合を観に来てくれなかった親へ
「僕のプレーを観に来てよ!」と言い続けている。
僕に無関心だった親へ
「僕の作品を見てよ、内面を知ってよ!」と訴え続けている。
僕は精神の発達段階も欲求レベルも
”子どものまま”だと自覚している。
⇒【大人強要社会】ピーターパン症候群のまま生きて何が悪い?
僕は働きたくない。
やりたいこと=”スポーツと創作”が明確なので、
それができない時間≒出勤している時間が
ムダに思えてしまう。
「有限な人生の大半をなぜ労働に費やすの?」
そう思っても飲み込んでいる人が多い中、
僕は飲み込めない人だった。
最も回避すべき状況は、
・イヤな労働をせざるを得ない状況≒家族を守る責任を負う
その責任が幸せだと思える人ならいいが、
僕は子どものままでいたいのでそんな責任を負いたくない。
なので、自分1人養えばいい生活にたどり着いた。
僕は、マンガで恋人や夫婦が言う
「あなたと一緒にいると落ち着く」
というセリフに憧れている。
だが自分にはできないため、
「どんな鍛錬で身につけるんだろう?」
「人といても安心できない自分がおかしいの?」
と悩んできた。
そこで、
「よし!誰かと一緒いると安心しよう!」
と試みてきたが、習得への道は険しい。
誰かと同じ空間にいると、
体内のバッテリー残量が音速で減っていく。
僕の気質はおそらく「hsp」「内向型」に当てはまる。
それもあって、僕は周囲からの
「お前のために苦労したんだぞ」
という無意識のメッセージを
強く受け取ってしまったのかもしれない。
今でこそ立ち直ったが、僕は人生の多くの時間を
「安楽死したい」と思って過ごしてきた。
根底には
「親から共感される体験やぬくもりをもらえなかった」
ことへの悲しみがある。
⇒話が通じない親には、”心の実体”が存在しないのではないか。
「抱きしめられたい」
「無条件に安心できる人がほしい」
そんな幼児のままの欲求は、
もう満たされることはないと悟った時、
叶わない欲求を抱えて長生きしたら余計に苦しくない?
なら人生、太く短くでよくない?
内面の虚しさを埋める作業に没頭してさ。
と思った。
叔父も父も60歳前後で逝った。
僕も最長そこまででいい。
お金はそれまで持つくらいあれば十分。
⇒低収入でも、欲望絞り込みで賄えることに気づいた。
人間の気質は、
誰かと一緒にいるのが好きな人が7割、
1人でいるのが好きな人が3割らしい。
1人が好きな人も”寂しい”という感情を持っている。
たまには誰かと過ごしたいと思う。
ただ、1人が好きな人は
刺激や他者の感情をすぐに読み取るので、
誰かといると無意識に疲れる。
低収入セミリタイアすると、
もっとも疲れる時間⇒職場にいる時間を減らせる。
さらに低収入なため、
退勤後の寄り道(外食・娯楽・飲み会など)の選択肢も消える。
何より、早く帰って没頭したいことがある。
結果、自然と出費が減り、節約する癖がつく。
現代社会は勤勉に働くこと
≒イヤなことでもガマンして続ける力が評価される。
だから多くの人は
「なぜ週5日8時間もイヤなことに費やすの?」
「何のために生きているの?」
という疑問を飲み込んで生きている。
日々ガマンして働き、
鬱憤を溜めている人にとって、僕のような者は
「怠け者」「わがまま」
「社会で役割を果たさないフリーライダー」
に映っても仕方ないだろう。
そう思われるリスクを恐れ、
無理して社会のラットレースへ復帰するか。
定年まで労働に明け暮れ、健康も気力も衰えた頃、
あの時にしかできなかったことを後悔するか。
誰に何を言われようと、
自分の時間を大切にして生きるか。
低収入セミリタイア生活は、
人生の時間配分を考え直すきっかけになる。
低収入、且つやりたいことが明確なら
自然に1点集中投資になる。
やりたいことが特にない人や、
お金がかかる趣味がある人は、
優先順位付けが必要になる。
今は”ファッション欲”を切り捨てている。
本当はゴシック系、ヴィジュアル系、
ホスト系のファッションが好きだが、
「バスケしたい」「好きな服を着たい」を天秤にかけ、
バスケを選択している。
これはとても悔しいので、今後の解禁を目指している。
世俗的な恋愛観とは、ここでは
・ずっと一緒にいるのが当たり前
・もし結婚したら同居するのが当たり前
・正社員/年収●百万円以上のスペックが当たり前
・人生の大半を労働に費やすのが当たり前
のような
”カネや将来性がある前提の相手を求めること”
を指すことにする。
低収入セミリタイア生活の人は、
こういう恋愛観の人とはうまくいかないと思う。
この生活は高負荷や重責に意味を見出せず、
働きたくないからたどり着いたのだ。
低収入セミリタイア生活者と相性が良い人は、
同じように”シアワセのレールへの違和感でいっぱいな人”だろう。
たとえば
・働きたくない
・たまに会うだけの気楽な関係でいい
・養う/養われる責任や負い目はNG
・一般的な恋愛観や結婚観が合わない
・世間体とかどうでもよくて自分の考えを貫きたい
僕はこの山奥ニートの方に深く共感した。
自分そのものじゃないかとさえ思った。
こういう人も奥様も、まだマイノリティだと思う。
あるいは
「働きたくないダメ人間」と思われるのが怖くて
胸の内を明かせずにいるかもしれない。
もし出逢えたら、
たとえ低収入でもドロップアウト組でも、
素敵な関係になれるんじゃないかな。
⇒「男のくせに泣くな」とは誰が決めたのか。
「幸せのカタチは無限にある」
「自分が幸せならそれでいい」
いくら頭で理解しても、幼少期からすり込まれた
「シアワセのレール」の幻影は強力だ。
そのレールとは、たとえば
・良い学校、良い会社に入る
・バリバリ仕事して家族を養う
「シアワセのレール」への執着が強いほど、
そこから外れた自分を”不幸”と決めつけやすい。
特に同年代や年下が
順調にレールに乗れているところを見るたび、
自分との比較が始まる。
油断すると、
「自分はダメ人間⇒劣等感の塊⇒性格が歪んで社会的に孤立」
という破滅ルートへ堕ちてしまう。
そこで、いかに立ち止まれるか。
「自分は本当にシアワセのレールを望んでいるのか?」を
問い直す必要がある。
今はSNSでもリアルでも、
簡単に他者と比較できてしまう世界。
低収入セミリタイア生活は、
「劣等感から破滅ルートへ墜ちる自分を引き戻す闘い」
でもある。
⇒劣等感とは、誰と比べて”劣っている”のか。
低収入セミリタイア生活は楽ではないが、
没頭型人間の自分には合っている。
メリット・デメリットはまだあると思うが、
今回はこの辺で。
繊細な人や社会不適合者は、
つい自分を卑下してしまう。
だが、それはあなたが悪いのではなく、
資本主義・競争社会に適合できなかっただけ。
「週5日8時間労働っておかしくない?」
それに気づくことが、
自分の人生を取り戻すきっかけになる。
人間である以上、
どんな底辺も世界的な成功者も、
不安や劣等感を消すことはできない。
だったら、不安も劣等感も連れて行こう。
人生の残り時間を、悔いなく生きるために。
⇒他記事
話が通じない親には、”心の実体”が存在しないのではないか。
優しい人が突然いなくなるのは、我慢の限界を超えた時。
⇒参考書籍
離婚を機に「低収入セミリタイア生活」を始めた。
最低限だけ働いて、
残り時間をやりたいことに全振りするライフスタイル。
カテゴリー的には
「寝そべり族」「静かな退職」「隠居生活」に近い。
この生活をしていて思うことや、
メリット・デメリットを書いてみる。
人生に疲れた方や、
「シアワセのレールから外れた」と悩む方、
「週5・8時間労働」に疑問を持つ方の参考になれば嬉しい。
ー目次ー
- 現在の収支
- 人生の時間配分
- 低収入セミリタイア生活を選んだ理由
(1)うつ病罹患で弱さを思い知った
(2)とにかく自由でいたい
(3)労働時間がムダに思える
(4)人とずっと一緒にいると疲れる
(5)長生きするつもりがない - 低収入セミリタイア生活のメリット
(1)内向的で没頭型の人に向いている
(2)時間と健康こそ人生の宝と気づく
(3)本当に必要な欲望に集中投資できる - 低収入セミリタイア生活のデメリット
(1)”世俗的な恋愛観の人”との恋愛は難しい
(2)劣等感や無力感との闘い - まとめ
1.現在の収支
政令指定都市・1人暮らし
精神障害者手帳を所持(広汎性発達障害:3級)
・収入
◎非正規、障害者雇用枠
労働時間:週4日、週20〜21時間、残業ゼロ
労働収入:8〜9万円
◎副業収入(アフィリエイト広告・アンケートモニター・ポイ活等)
月1500〜3000円(成果次第)
・支出
◎固定費(家賃・光熱費・通信費等)
月5万〜5万5000円
・貯金
数ヶ月は問題なく生活できる程度
ということで、収支は幸い黒字。
2.人生の時間配分
出勤している時間以外、
ほぼすべて趣味と副業に没頭している。
具体的には次の5つ。
・バスケをする
・野球をする
・筋トレする
・ブログや小説を執筆する
・MMD動画を制作する
ブログとYouTube動画制作は楽しいから続けてきたが、
ありがたいことに少しずつ伸びている。
なので、趣味と副業の境界線はあいまい。
なお、スポーツでは
道具・体育館/グラウンド・移動などの費用がかかる。
もしバスケと野球に出逢っていなければ、
週3日労働でもやっていけると思われる。
だがスポーツは生きがい。
辞める選択肢はないため悪しからず。
3.低収入セミリタイア生活を選んだ理由
(1)うつ病罹患で弱さを思い知った
僕は16年前にうつ病を患った。
今はかなり回復したが、毎晩薬を飲んでいる。
1人で生活できて趣味に没頭していると、
つい忘れそうになる。
今の自分は、毎日の服薬でようやく保てていること。
少しでも無理したら、またすぐに心が壊れること。
「自分はこんなものじゃない」
「努力は必ず報われる」
そう思いたい人の気持ちもわかる。
ただ、「心の脆さ」「人間という生き物の弱さ」を
心に留めておいて損はない。
「自分は強いから大丈夫」
「心を患うなんて弱いヤツの甘えだ」
そう思っている人は1度、
自分のキャパシティーを把握してほしい。
多くの荷物を持っても平気な人もいれば、
少しの荷物で限界な人もいる。
⇒【うつ病経験】”生きている”と、”死んでいない”は違う。
(2)とにかく自由でいたい
縁あって恋愛や結婚を経験できたことは
とても幸せだった。
だが、僕は結婚生活を経験したことで、
「家庭を持つ人生を望んでいない」
という本音に気づいてしまった。
僕の本音は
・好きなことに没頭したい
・一生、自由に遊んでいたい
・自分を表現したい、創作したい
だった。
いつまでも”プレーヤー”でいたい。
自分がプレーできる機会をガマンして、
たとえば子どものプレーを見守るなんてイヤだ。
僕は今もなお、
1度も試合を観に来てくれなかった親へ
「僕のプレーを観に来てよ!」と言い続けている。
僕に無関心だった親へ
「僕の作品を見てよ、内面を知ってよ!」と訴え続けている。
僕は精神の発達段階も欲求レベルも
”子どものまま”だと自覚している。
⇒【大人強要社会】ピーターパン症候群のまま生きて何が悪い?
(3)労働時間がムダに思える
僕は働きたくない。
やりたいこと=”スポーツと創作”が明確なので、
それができない時間≒出勤している時間が
ムダに思えてしまう。
「有限な人生の大半をなぜ労働に費やすの?」
そう思っても飲み込んでいる人が多い中、
僕は飲み込めない人だった。
最も回避すべき状況は、
・イヤな労働をせざるを得ない状況≒家族を守る責任を負う
その責任が幸せだと思える人ならいいが、
僕は子どものままでいたいのでそんな責任を負いたくない。
なので、自分1人養えばいい生活にたどり着いた。
(4)人とずっと一緒にいると疲れる
僕は、マンガで恋人や夫婦が言う
「あなたと一緒にいると落ち着く」
というセリフに憧れている。
だが自分にはできないため、
「どんな鍛錬で身につけるんだろう?」
「人といても安心できない自分がおかしいの?」
と悩んできた。
そこで、
「よし!誰かと一緒いると安心しよう!」
と試みてきたが、習得への道は険しい。
誰かと同じ空間にいると、
体内のバッテリー残量が音速で減っていく。
恩きせがましい親に育てられると、
自分の存在が他人に喜ばれているという感情はもてない。
自分という存在は他人にとって負担なのだ、
という感じ方を心の底にこびりつかせてしまう。
だから心地よく他人と一緒にいることができない。
他人といると気がひけてしまう。
すると、
相手に何かしてあげなければいられない気持ちになる。
相手の得になるようなことをすることによって、
その居心地の悪さから逃れようとする。
『愛されなかった時どう生きるか 甘えと劣等感の心理学 』 より
僕の気質はおそらく「hsp」「内向型」に当てはまる。
それもあって、僕は周囲からの
「お前のために苦労したんだぞ」
という無意識のメッセージを
強く受け取ってしまったのかもしれない。
(5)長生きするつもりがない
今でこそ立ち直ったが、僕は人生の多くの時間を
「安楽死したい」と思って過ごしてきた。
根底には
「親から共感される体験やぬくもりをもらえなかった」
ことへの悲しみがある。
⇒話が通じない親には、”心の実体”が存在しないのではないか。
「抱きしめられたい」
「無条件に安心できる人がほしい」
そんな幼児のままの欲求は、
もう満たされることはないと悟った時、
叶わない欲求を抱えて長生きしたら余計に苦しくない?
なら人生、太く短くでよくない?
内面の虚しさを埋める作業に没頭してさ。
と思った。
叔父も父も60歳前後で逝った。
僕も最長そこまででいい。
お金はそれまで持つくらいあれば十分。
⇒低収入でも、欲望絞り込みで賄えることに気づいた。
4.低収入セミリタイア生活のメリット
(1)内向的で没頭型の人に向いている
人間の気質は、
誰かと一緒にいるのが好きな人が7割、
1人でいるのが好きな人が3割らしい。
1人が好きな人も”寂しい”という感情を持っている。
たまには誰かと過ごしたいと思う。
ただ、1人が好きな人は
刺激や他者の感情をすぐに読み取るので、
誰かといると無意識に疲れる。
低収入セミリタイアすると、
もっとも疲れる時間⇒職場にいる時間を減らせる。
さらに低収入なため、
退勤後の寄り道(外食・娯楽・飲み会など)の選択肢も消える。
何より、早く帰って没頭したいことがある。
結果、自然と出費が減り、節約する癖がつく。
(2)時間と健康こそ人生の宝と気づく
絶大な権力を手に入れ、頂点まで登りつめた人は、
ふと、こんな本音を漏らすことがあります。
暇な時間がほしい、
時間のゆとりはどんな幸福にも替えがたいものだ、と。
神皇アウグストゥスにしても、
国務から解放され、自由になることを願ってやみませんでした。
『人生の短さについて 』 より
現代社会は勤勉に働くこと
≒イヤなことでもガマンして続ける力が評価される。
だから多くの人は
「なぜ週5日8時間もイヤなことに費やすの?」
「何のために生きているの?」
という疑問を飲み込んで生きている。
日々ガマンして働き、
鬱憤を溜めている人にとって、僕のような者は
「怠け者」「わがまま」
「社会で役割を果たさないフリーライダー」
に映っても仕方ないだろう。
そう思われるリスクを恐れ、
無理して社会のラットレースへ復帰するか。
定年まで労働に明け暮れ、健康も気力も衰えた頃、
あの時にしかできなかったことを後悔するか。
誰に何を言われようと、
自分の時間を大切にして生きるか。
低収入セミリタイア生活は、
人生の時間配分を考え直すきっかけになる。
(3)本当に必要な欲望に集中投資できる
「欲望に優先順位をつけよ」
お金が足りなくなるのは宝石や装飾品など
必ずしも必要のないものまで欲しがっているからだ。
だったら優先順位の低い欲望は切り捨ててしまえ。
生活水準は大して変わらない。
そうすれば
本当にやりたいことのためにお金を使うことができる。
『漫画 バビロン大富豪の教え 「お金」と「幸せ」を生み出す五つの黄金法則 』 より
低収入、且つやりたいことが明確なら
自然に1点集中投資になる。
やりたいことが特にない人や、
お金がかかる趣味がある人は、
優先順位付けが必要になる。
今は”ファッション欲”を切り捨てている。
本当はゴシック系、ヴィジュアル系、
ホスト系のファッションが好きだが、
「バスケしたい」「好きな服を着たい」を天秤にかけ、
バスケを選択している。
これはとても悔しいので、今後の解禁を目指している。
5.低収入セミリタイア生活のデメリット
(1)”世俗的な恋愛観の人”との恋愛は難しい
世俗的な恋愛観とは、ここでは
・ずっと一緒にいるのが当たり前
・もし結婚したら同居するのが当たり前
・正社員/年収●百万円以上のスペックが当たり前
・人生の大半を労働に費やすのが当たり前
のような
”カネや将来性がある前提の相手を求めること”
を指すことにする。
低収入セミリタイア生活の人は、
こういう恋愛観の人とはうまくいかないと思う。
この生活は高負荷や重責に意味を見出せず、
働きたくないからたどり着いたのだ。
低収入セミリタイア生活者と相性が良い人は、
同じように”シアワセのレールへの違和感でいっぱいな人”だろう。
たとえば
・働きたくない
・たまに会うだけの気楽な関係でいい
・養う/養われる責任や負い目はNG
・一般的な恋愛観や結婚観が合わない
・世間体とかどうでもよくて自分の考えを貫きたい
『「山奥ニート」やってます。』 より
僕が定職に就かず、ニートであることを、
彼女はなんとも思ってなかった。
もともと男に養われるなんて嫌、という人だ。
かといって養うつもりもないらしく、結婚してからも財布は別だ。
彼女にとって僕は、地域猫くらいの感覚なのかもしれない。
たまに寄ってきたときにかわいがる。
僕にとってはその距離感がちょうど良かった。
ずっと一緒にいなくてもいいし、養う必要もないなら、
これから先も別れる理由がないように思った。
ニートだから異性と付き合えないってこともない。
恋をするのって、基本無料だ。
必要なのはお互いの心と体だけ。
「お金がないと恋愛や結婚ができない」
なんて言う人もいるけど、それは稼ぎ男に操り女、
という古い男女観に囚われてるんじゃないかと思う。
2人で川で釣りをしたり、縁側に座って夕日を眺めたり、
夜抜け出して星を見たりするだけでいい。
そんなデートを許してくれる女性は少ないって?
こんな辺鄙な場所へ来た女性は、その時点で
山奥ニート的な生き方に共感してくれてるんじゃないかな。
僕はこの山奥ニートの方に深く共感した。
自分そのものじゃないかとさえ思った。
こういう人も奥様も、まだマイノリティだと思う。
あるいは
「働きたくないダメ人間」と思われるのが怖くて
胸の内を明かせずにいるかもしれない。
もし出逢えたら、
たとえ低収入でもドロップアウト組でも、
素敵な関係になれるんじゃないかな。
⇒「男のくせに泣くな」とは誰が決めたのか。
(2)劣等感や無力感との闘い
「幸せのカタチは無限にある」
「自分が幸せならそれでいい」
いくら頭で理解しても、幼少期からすり込まれた
「シアワセのレール」の幻影は強力だ。
そのレールとは、たとえば
・良い学校、良い会社に入る
・バリバリ仕事して家族を養う
「シアワセのレール」への執着が強いほど、
そこから外れた自分を”不幸”と決めつけやすい。
特に同年代や年下が
順調にレールに乗れているところを見るたび、
自分との比較が始まる。
油断すると、
「自分はダメ人間⇒劣等感の塊⇒性格が歪んで社会的に孤立」
という破滅ルートへ堕ちてしまう。
そこで、いかに立ち止まれるか。
「自分は本当にシアワセのレールを望んでいるのか?」を
問い直す必要がある。
今はSNSでもリアルでも、
簡単に他者と比較できてしまう世界。
低収入セミリタイア生活は、
「劣等感から破滅ルートへ墜ちる自分を引き戻す闘い」
でもある。
⇒劣等感とは、誰と比べて”劣っている”のか。
6.まとめ
低収入セミリタイア生活は楽ではないが、
没頭型人間の自分には合っている。
メリット・デメリットはまだあると思うが、
今回はこの辺で。
繊細な人や社会不適合者は、
つい自分を卑下してしまう。
だが、それはあなたが悪いのではなく、
資本主義・競争社会に適合できなかっただけ。
「週5日8時間労働っておかしくない?」
それに気づくことが、
自分の人生を取り戻すきっかけになる。
人間である以上、
どんな底辺も世界的な成功者も、
不安や劣等感を消すことはできない。
だったら、不安も劣等感も連れて行こう。
人生の残り時間を、悔いなく生きるために。
⇒他記事
話が通じない親には、”心の実体”が存在しないのではないか。
優しい人が突然いなくなるのは、我慢の限界を超えた時。
⇒参考書籍
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2023年11月01日
【オリジナル小説・PV動画】『ツンデレという凶器』制作背景
オリジナル小説:『ツンデレという凶器』の
PV動画を作ってみました。
この小説と、PV動画の制作背景を紹介します。
「ツンデレの先に幸せな2人はいるの?」
本作はそう問いたくて書きました。
「気弱な男子と、幼馴染みのツンデレ女子」
これは幼馴染みでなくても、
ラブストーリーの王道設定の1つでしょう。
長く一緒に過ごす仲なら、本当は優しいことや、
ツンの裏にある好意に気づく機会はあります。
悪い人じゃないことも、
照れ隠しが行きすぎているだけなことも理解できます。
それでも、
僕はうつ病を患った1人として確信しています。
人間の心は脆いです。
人間はとても弱い生き物です。
どんなに筋骨隆々な人でも、
言葉の槍を数ヶ月、数年と刺され続けたら、
心なんて簡単に壊れます。
いくら親しい間柄でも、
好意の裏返しで罵倒し続けたら?
相手の心を傷つけ続けたら?
それでも2人が一緒にいるのは、
片方が耐えてようやく成立しているとしたら…。
その未来には、
幸せに寄り添う2人はいるのでしょうか?
「どうして…もっと早く…素直に…。」
そうやって、
相手を壊した後悔を引きずって生きる結末に
ならないでしょうか?
本作が
「素直になれなかった未来は明るいか?」
を考える一助になれば嬉しいです。
⇒他作品
【オリジナル小説・PV】『Sounds of reincarnation』制作背景
【オリジナル小説・PV】『Memory Snow』制作背景
PV動画を作ってみました。
この小説と、PV動画の制作背景を紹介します。
- 制作した動画
- 作品の概要
- 制作の所感
1.制作した動画
2.作品の概要
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『ベガロスト』 - 楽曲提供
魔王魂さま - 動画制作期間
45日 - Vroid衣装提供
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「AviUtl」
「MikuMikuDance(MMD)」
「VRoid Studio」 - 使用したフリー画像素材サイト
「ニコニ・コモンズ」
3.制作の所感
「ツンデレの先に幸せな2人はいるの?」
本作はそう問いたくて書きました。
「気弱な男子と、幼馴染みのツンデレ女子」
これは幼馴染みでなくても、
ラブストーリーの王道設定の1つでしょう。
長く一緒に過ごす仲なら、本当は優しいことや、
ツンの裏にある好意に気づく機会はあります。
悪い人じゃないことも、
照れ隠しが行きすぎているだけなことも理解できます。
それでも、
僕はうつ病を患った1人として確信しています。
人間の心は脆いです。
人間はとても弱い生き物です。
どんなに筋骨隆々な人でも、
言葉の槍を数ヶ月、数年と刺され続けたら、
心なんて簡単に壊れます。
いくら親しい間柄でも、
好意の裏返しで罵倒し続けたら?
相手の心を傷つけ続けたら?
それでも2人が一緒にいるのは、
片方が耐えてようやく成立しているとしたら…。
その未来には、
幸せに寄り添う2人はいるのでしょうか?
「どうして…もっと早く…素直に…。」
そうやって、
相手を壊した後悔を引きずって生きる結末に
ならないでしょうか?
本作が
「素直になれなかった未来は明るいか?」
を考える一助になれば嬉しいです。
⇒他作品
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【オリジナル小説・PV】『Memory Snow』制作背景
2023年10月29日
【短編小説】『アロマンティックと孫のカオ』2 -最終話-
⇒【第1話:恋愛できない罪悪感】からの続き
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<登場人物>
・西谷 永愛(にしたに えれん)
主人公、24歳の社会人
幼少期から”恋愛感情を持てない”
”恋バナや恋愛ドラマに共感できない”ことに悩む
・西谷 智美(にしたに ともみ)
永愛の母親、水橋 ヒサエの長女
・水橋 ヒサエ(みずはし ひさえ)
永愛の祖母、西谷 智美の母親
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【第2話:本音でも建前でもあるの】
ヒサエばあちゃんの通夜が終わった。
集まった親戚たちは、昔話に花を咲かせた。
そんな中、
母が私を里帰り出産した時の話になった。
叔母
『永愛はばあちゃんの初孫だから、それはもう喜んでね!』
『毎日、永愛をお風呂に入れる役を買って出たのよ。』
親戚
『そうそう、智美から永愛を取り上げる勢いでね!』
『目に入れても痛くないくらい、かわいがっていたの。』
私の胸の奥から、
幸せな気持ちがじわっと広がってきた。
私はこんなに愛されていたんだと。
ただ、すぐさま罪悪感が押し寄せてきた。
初孫を喜んだヒサエばあちゃん。
私はお母さんに同じ喜びを届けることができない。
そのことへの罪悪感が。
葬儀場では相変わらず、
私が赤ちゃんの時の話で盛り上がった。
幸せな時間のはずなのに、
私は1人で居たたまれなくなった。
私は恋愛に興味を持てない。
そんな自分の気持ちに素直になったら、
お母さんをがっかりさせるかもしれない。
好きではない人と結婚して、
お母さんに初孫の幸せを届けたら、
パートナーと私を裏切ることになる。
八方塞がり…。
私は罪悪感に耐えきれなくなり、
永愛
「ごめん、職場から電話来た。」
「ちょっと出てくるね。」
私は適当なウソで、その場から逃げてしまった。
ーー
私は親族の控室へ引きこもり、
自責の念を解放させた。
永愛
「どうして私はアロマンティックなの?」
「何十億人の中で、どうして私なの?」
「どうして私にこんな選択をさせるの?!」
涙が止まらなかった。
誰かと比べたって不毛。
そんな理屈はわかり切っていた。
誰かの期待のために生きたって、
幸せになれないことも。
それでも、私は自分のことを
「大切な何かが欠落している」
としか思えなかった。
その時、
智美
『永愛、ハンカチ…使って?』
永愛
「……お母さん……?」
智美
『孫の話…辛かったんでしょう?』
永愛
「…気づいていたの…?」
お母さんは、
家では私にあまり話しかけなかった。
私から元彼の話をした時も、
詳しく聞いたり『孫が見たい』と言ったりしなかった。
娘のことを深く聞かないお母さんは、
「私に興味がないの?」と思ったこともあった。
智美
『永愛、無理して期待に応えなくていいんだよ?』
永愛
「期待?」
智美
『「お母さんに孫の顔を見せなきゃ」って。』
永愛
「どうしてわかるの?!」
「お母さん、私のこと何も聞かなかったのに…。」
智美
『それは本当にごめんなさい。』
『永愛に興味がなかったわけじゃないの。』
『あなた、彼氏や孫の話になると辛そうな顔をするでしょう?』
永愛
「…バレていたの…?」
「上手く隠してきたつもりなのに…。」
智美
『うふふ、見逃すわけないじゃない?』
『これでも永愛の母親歴は長いんだから。』
永愛
「じゃあ『孫の顔が見たい』って言わなかったのは…。」
「私を傷つけないため……?」
智美
『ええ…そう。』
『思えば、私も不器用だったね…。』
永愛
「それじゃあ、お母さんはずっと…私のために…。」
「けど、お母さんだって『孫の顔が見たい』と思うでしょ?!」
智美
『そりゃあね。』
『思わないって言ったらウソになるわ。』
『”永愛が幸せならそれでいい”なんて、本音でも建前でもあるの。』
永愛
「やっぱりそうだよね…。」
「お母さんも、私の子どもの顔が見たいよね…。」
智美
『……お母さんはね。』
『それで辛い思いをする永愛を見るのが1番辛いの。』
永愛
『…え…?孫が見られないことよりも?!』
智美
『当然よ。大切な娘だもの。』
『永愛が生まれて喜んだのはおばあちゃんだけじゃない。』
『お母さんだって最高に幸せだったんだから!』
永愛
「…本当…?」
智美
『もちろん!だから無理しなくていいの。』
『幸せなんて、もうとっくにもらっているんだから。』
『恋愛や結婚に興味がないならそれでいい。』
『これからも、幸せな永愛の姿を見せてちょうだい?』
永愛
「…嬉しい…お母さん、ありがとう!」
ーーーーー
後日、私はお母さんに
アロマンティックであることを
カミングアウトした。
「恋愛感情をほとんど持たない人がいる」
初めは不思議そうにしていたけど、
智美
『やっぱりそうだったの…。』
『永愛、伝えてくれてありがとうね。』
『勇気を振り絞ったことは十分伝わるから。』
お母さんは、
私のことをちゃんと見てくれていた。
むしろお見通しだった。
そして、お母さんは私を傷つけないよう、
決して『孫が見たい』とは言わなかった。
「孫を諦める」
それは親にとって、どれほど辛いことだろう。
それでもお母さんは、
私がアロマンティックであることを理解し、
私の生き方を尊重してくれた。
私は、こんなにも
愛情に溢れた人たちに恵まれていた。
ずっと
アロマンティックである自分を嫌ってきたけど、
初めからそんな必要はなかったんだ。
ーー
1年後、ヒサエばあちゃんの1周忌。
ばあちゃん久しぶり、永愛だよ。
仕事?大丈夫。
職場の人たちは、みんないい人だから。
この前ね、
友達と海外旅行へ行ってきたの。
空港でパスポート見せる時にね、
友達がパスポートを飛行機内に
落としてきちゃってさ。
あはは。
警備員さんが集まってきて、
ちょっとした騒ぎになっちゃった。
それとね、
先月お母さんの誕生日をお祝いしたの。
お父さんがお母さんにプロポーズした時に
行ったレストランを予約したんだよ。
お母さんったら泣いちゃってさ…。
まるで私がプロポーズしたみたいになったよ(笑)
お父さんへの報告?もちろん行ったよ。
お父さんが好きだったお酒をお供えしてきたの。
お父さん、
今ごろそっちで酔っぱらっているんじゃない?
お父さんを見かけたら、義母として
『飲み過ぎよ』って言ってやってよ(笑)
曾孫?
ごめんね。それは叶えてあげられない。
私、ずっと悩んできたんだ。
ばあちゃんを安心させてあげられないことに。
こんな私は欠陥だらけだって、
自分を責めてばかりだったよ。
けど、今はもう大丈夫。
アロマンティックであることは、
私の個性だもん。
受け入れるには、
まだまだ時間がかかるけど、
私は私のまま幸せに生きてみせるよ。
私がそっちへ行くまで待っていてね。
幸せな話、たくさんするからね。
私はこれからも、
ばあちゃんが大切にしてくれたのと
同じくらい大切にするよ。
残り少ない、家族との幸せな時間を。
ーーーーーENDーーーーー
<あとがき>
全ての人が
「恋愛すれば幸せ」
「誰かを好きになるのが当たり前」
ではありません。
たとえ恋愛感情を持てなくても、
何かが欠落していると思わなくていいんです。
「あなたが幸せならそれでいい」
それは親の本音でも建前でもあるでしょう。
親だって、悪気があって
「孫の顔が見たい」と言っているのではありません。
あなたがそれを叶えてあげられなくても、
どうか自分を責めないでください。
あなたがアロマンティックでも、
そうでなくても、
親や祖父母が1番見たいのは、
「あなたが幸せに生きる姿」なんですから。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
⇒他作品
【短編小説】『恋の麻酔と結婚教』全4話
【短編小説】『片翼の人形が救われた日』全4話
⇒参考書籍
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2023年10月28日
【短編小説】『アロマンティックと孫のカオ』1
<登場人物>
・西谷 永愛(にしたに えれん)
主人公、24歳の社会人
幼少期から”恋愛感情を持てない”
”恋バナや恋愛ドラマに共感できない”ことに悩む
・西谷 智美(にしたに ともみ)
永愛の母親、水橋 ヒサエの長女
・水橋 ヒサエ(みずはし ひさえ)
永愛の祖母、西谷 智美の母親
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【第1話:恋愛できない罪悪感】
『早く曾孫の顔が見たいわ。』
ヒサエばあちゃんの通夜が粛々と進む中、
私は彼女の言葉を思い出していた。
罪悪感が押し寄せ、胸が苦しくなった。
なぜって?
私はお母さんにも、
亡きヒサエばあちゃんにも、
孫を見せてあげることができないから…。
私は社会人になってから、
「アロマンティック」と自覚した。
「アロマンティック」とは、
恋愛感情がないか、薄い人のこと。
言葉を知ったのは最近だけど、
私は小さい頃からずっと悩んできた。
・女友達の恋バナに興味が持てない
・恋愛マンガやドラマを観ても、
”エンタメとして”しか楽しめない
・自分の恋に置き換えて胸キュンしたり、
「私も彼とあんなことがしたい」
と思ったりできない
周りは恋愛に興味津々。
友達には次々に彼氏ができていった。
ただ、いくら惚気話を聞いても、
それに共感できない自分がイヤになった…。
大学の時、先輩に告白され、
お付き合いしたことがあった。
女癖が悪いとか、不誠実とか、
そういう噂はまったくない人だった。
私は彼を人として尊敬していたが、
恋愛感情はなかった。
こう言うと不誠実に思われるかもしれないが、
付き合ったら好きになるだろうと思った。
彼はとても誠実な人で、私を大切にしてくれた。
2人で幸せな時間を過ごせた。
けど、それは恋人同士ではなく、
親しい人と楽しんでいる感覚。
やっぱり恋愛感情は生まれなかった…。
2年後、
彼
『ごめん…永愛のことは好きだけど…。』
『僕のことを好いてくれているのかわからない…。』
結局、私は彼に別れを切り出させてしまった。
彼の誠意と、私自身を裏切るカタチで…。
ーーーーー
「恋愛感情を持てない」
「恋愛対象として好きになれない」
「こんな私は何かが欠落しているの?」
私はしばらくの間、そんな自己嫌悪に囚われた。
大学の友達に相談したら、反応は様々だった。
『恋愛感情を感じない?』
『そういう人もいるんだね。』
『あなたの気持ちに素直になればいいんじゃない?』
そうやって理解を示してくれた子もいた。
『恋愛感情を感じない?』
『本当に好きな相手と出逢っていないだけじゃないの?』
『もっと恋をすれば、きっとわかるようになるって!』
そう言う子もいた…。
無理もない。
この世界では、
「他者へ恋愛感情を抱く」のが
”普通”で”当たり前”だと思われているんだから…。
永愛
「私はおかしいの…?」
「どうなの?!わからない…。」
私は失恋を引きずる日々に耐えかねて、
1人でヒサエばあちゃんの家に帰省した。
いきなりの帰省だったのに、
ばあちゃんは私の顔を見ると、
目を輝かせて喜んだ。
ヒサエ
『永愛、遠いところよく来たねぇ。』
『寒いでしょ?早くお上がり。』
ヒサエばあちゃんは私の手をぎゅっと握って、
あたたかく迎えてくれた。
それだけで、私は救われた。
ばあちゃんは私がテーブルに着くなり、
お茶を煎れ始めた。
私がほっと一息ついた頃、
ばあちゃんは私の向かいに座った。
たわいない雑談、大学のこと、ばあちゃんの近況。
失恋が癒えていく時間が続いたが、
ヒサエ
『そういえば、彼氏とは上手くいっているの?』
あぁ…。
そういえば言ってなかったっけ…。
何も知らないばあちゃんは言葉を続けた。
ヒサエ
『智美から聞いているよ。』
『誠実な彼でよかったねぇ。』
『卒業したら結婚は考えているの?』
『早く曾孫の顔が見たいわ…。』
永愛
「…ごめんね…別れちゃったの…。」
ヒサエ
『おやまぁ……そうかい……。』
永愛
「…うん…。」
ヒサエ
『永愛、元気出して?』
『今夜は永愛が好きな肉じゃが作るからね。』
ばあちゃんはそれ以上、彼のことを聞かなかった。
私に気を使ってくれたんだろう…。
『早く曾孫の顔が見たい』
この言葉が、私の胸に突き刺さった。
ーー
ヒサエばあちゃんに悪気なんてなかった。
純粋に私を心配してくれた。
”皆婚時代”を生きたばあちゃんと、
”自由恋愛時代”を生きる私との違い。
ただそれだけ。
わかっていても、私の葛藤は止まらなかった。
もし私が結婚して子どもができたら、
きっとばあちゃんは安心してくれる。
けど、私は恋愛感情を持てない。
好きではない人と結婚して子どもを?
そんなの、私の相手に失礼じゃないの?
私の人生、それでいいの?
ばあちゃんやお母さんを安心させるために、
自分にウソをついていいの?
「アロマンティックの私には、曾孫は無理」
そんなこと、ばあちゃんに言えるはずがない。
どの道を選んでも、
誰かの気持ちを裏切ってしまうの…?
その夜、
私は気まずさを押さえつけながら、
ばあちゃん特製の肉じゃがを頬張った。
⇒【第2話:本音でも建前でもあるの】へ続く
2023年10月18日
【オリジナル歌詞】『存在ヲ許サレタイ』
「生まれてきてもよかったのかな?」と
自分自身に 問いかけ続けてきた
「私の存在を許してほしい」
理解されぬ願い 虚空(ソラ)へ投げてきた
心閉ざして 闘うと決めた
「好きの反対:無関心」と
孤独の手を取り 孤独と歩いていく
虚しさなんて もう怖くない
私自身という 味方がいるから
もう どんな冷たい夜にも負けない
「私、今ここにいる」
自分自身の力で証明してみせる
𠮟られること 諦め続けたら
いつからだろう 感情も凍りついた
「抱きしめられたい」「ぬくもりがほしい」
叶わない願いと 割り切れたなら
「期待」という 苦しみの種
少しずつ捨てていける
「助けて」の声が 届かなくてもいい
私だけには届いているから
冷たい指先 握りしめてみて?
今確かに ここで生きているでしょう?
それこそが証明になる
「私は存在してもいいよ」という証明
生い立ちを嘆き 運命を呪い
すべて諦めて 涙すればいい
生きる糧になるから…。
孤独の手を取り 孤独と歩いていく
虚しさなんて もう怖くない
私自身という 味方がいるから
もう どんな冷たい夜にも負けない
「私、今ここにいる」
自分自身の力で証明してみせる
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
⇒他作品
【オリジナル歌詞】『生キテルアカシ』
【オリジナル歌詞】『色恋シゴト』
【オリジナル歌詞】『願い』
⇒参考書籍
自分自身に 問いかけ続けてきた
「私の存在を許してほしい」
理解されぬ願い 虚空(ソラ)へ投げてきた
心閉ざして 闘うと決めた
「好きの反対:無関心」と
孤独の手を取り 孤独と歩いていく
虚しさなんて もう怖くない
私自身という 味方がいるから
もう どんな冷たい夜にも負けない
「私、今ここにいる」
自分自身の力で証明してみせる
𠮟られること 諦め続けたら
いつからだろう 感情も凍りついた
「抱きしめられたい」「ぬくもりがほしい」
叶わない願いと 割り切れたなら
「期待」という 苦しみの種
少しずつ捨てていける
「助けて」の声が 届かなくてもいい
私だけには届いているから
冷たい指先 握りしめてみて?
今確かに ここで生きているでしょう?
それこそが証明になる
「私は存在してもいいよ」という証明
生い立ちを嘆き 運命を呪い
すべて諦めて 涙すればいい
生きる糧になるから…。
孤独の手を取り 孤独と歩いていく
虚しさなんて もう怖くない
私自身という 味方がいるから
もう どんな冷たい夜にも負けない
「私、今ここにいる」
自分自身の力で証明してみせる
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
⇒他作品
【オリジナル歌詞】『生キテルアカシ』
【オリジナル歌詞】『色恋シゴト』
【オリジナル歌詞】『願い』
⇒参考書籍
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2023年10月08日
【オリジナル歌詞】『労働教からの解放』
時間は命 そのものだというのに
なぜ週5日8時間も 労働に費やすの?
「働きたくない」口にしたなら
「怠け者」という罵声 浴びせられるけど
気づいてよ その”ジョウシキ”は
誰にとって好都合なの?
資本主義支配 終わりない競争
欲望に天井なんてない
だから立ち止まってよ その欲しいモノは
見栄?セケンテイ?優越感のためじゃない?
人生の残り時間 「労働教」に捧げて
我慢ばかりでいいの?
ー
手に入れるのが 幸せに見えても
維持するために 労働から逃れられなくなる
「あの人よりも稼ぎが少ない」
劣等感の渦に 飲み込まれるけど
他の誰かと比べる限り
欠乏に悩み続ける
「社会人ならばそれが当たり前」
「みんな我慢して働いている」
少し立ち止まってよ その”アタリマエ”は
「労働教」に洗脳されていない?
守るもの 比べるもの
選ばされるのは止めて 自分自身で選ぼう
ー
長時間労働 ストレスが増えて
解消に浪費 無限の鎖
どうか疑ってみて…?
「働きたくない」 「気楽に生きたい」
もっともっと 声高に叫んで
我慢押し付けずに 心の声聞いて?
もっともっと 自由に生きられるから
人生の残り時間 「労働教」に捧げて
我慢ばかりでいいの?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
⇒他作品
『生キテルアカシ』
『結婚教信者』
なぜ週5日8時間も 労働に費やすの?
「働きたくない」口にしたなら
「怠け者」という罵声 浴びせられるけど
気づいてよ その”ジョウシキ”は
誰にとって好都合なの?
資本主義支配 終わりない競争
欲望に天井なんてない
だから立ち止まってよ その欲しいモノは
見栄?セケンテイ?優越感のためじゃない?
人生の残り時間 「労働教」に捧げて
我慢ばかりでいいの?
ー
手に入れるのが 幸せに見えても
維持するために 労働から逃れられなくなる
「あの人よりも稼ぎが少ない」
劣等感の渦に 飲み込まれるけど
他の誰かと比べる限り
欠乏に悩み続ける
「社会人ならばそれが当たり前」
「みんな我慢して働いている」
少し立ち止まってよ その”アタリマエ”は
「労働教」に洗脳されていない?
守るもの 比べるもの
選ばされるのは止めて 自分自身で選ぼう
ー
長時間労働 ストレスが増えて
解消に浪費 無限の鎖
どうか疑ってみて…?
「働きたくない」 「気楽に生きたい」
もっともっと 声高に叫んで
我慢押し付けずに 心の声聞いて?
もっともっと 自由に生きられるから
人生の残り時間 「労働教」に捧げて
我慢ばかりでいいの?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
⇒他作品
『生キテルアカシ』
『結婚教信者』
2023年10月04日
【短編小説】『黒い羊と無菌狂』2 -最終話-
⇒【第1話:黒い羊を狩るゲーム】からの続き
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<登場人物>
・風木 美青音(かざき みおね)
主人公、23歳
地元の田舎町を離れ、都会で就職して2年目
幼馴染の万優(まゆ)たちと、地元のお祭りへ向かうが…?
・外川 万優(とがわ まゆ)
美青音の幼馴染、23歳
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【第2話:ニンゲンの狂気に包まれ眠る】
すでに今年のお祭りのメインイベント
”リアル人狼ゲーム”が始まっている。
もう何人か消えた気がするのに、
会場はいつもと変わらない楽しげな雰囲気。
…異常を感じているのは私だけ?
怖くなる。早く逃げた方がいい。
けど、消えた万優(まゆ)たちを放っておけない。
私は3人の幼馴染を探して会場を歩き回る。
メインストリートを歩いていると、
盛況なお祭り会場に見える。
だけど、木や岩の影に少し注意を向けると気づく。
時おり、さっきの紫色の煙が立ち上った後で、
紅い光が弧を描くこと。
そして煙が晴れる頃、
さっきまでそこにいたはずの人が消えていること。
美青音
「はぐれただけだよね…?」
「まさか消されてなんかないよね…?」
万優たちの安否がますます気になる。
私は湧き上がる不安をムリヤリ押さえつける。
スタッフの女性
『ちょっとあなた!』
『P〇R検査を受けていないでしょう?!』
突然、背後から怒気をまとった女性の声がする。
私はびっくりして立ち止まる。
長身で細身の女性がこちらを睨んでいる。
さっき、ステージで煙を出してきた
スタッフさんの1人だ。
スタッフの女性
『あなた人狼なんでしょう?』
『違うなら”検査を受けた”って言えるはず。』
彼女の決めつけるような言い方に、
私は少しムッとする。
美青音
(受けたくないです。)
(PC〇検査は強制ではありませんよね?!)
私は、喉元まで出てきたその言葉を慌てて飲み込む。
周囲の空気が、
歓喜から狂気へ変わったことに気づいたから。
紅い”人狼狩り”の狂気に。
ーー
スタッフの女性は怒気を殺気にすり替え、
私へ迫ってくる。
近くの人たちも、
彼女に呼応するように距離を詰めてくる。
美青音
(何…?この凶暴性は何なの…?)
まるで、愚王の公開処刑を
嬉々として見物する民衆のそれだ。
悪者を裁く快感が待ち遠しい、
という目をしている。
スタッフの女性
『捕らえろ!生死は問わん!』
彼女が叫ぶと、
近くの人たちが一斉に私へ飛びかかってくる。
私は間一髪で身をかわし、
空いている後方へ必死で走る。
もう幼馴染を探すどころじゃない。
会場の全員が村人で、私は狩られるべき”人狼”だから。
さっきまで全身が痛かったのに、今は何も感じない。
狂気に当てられて麻痺したのかな。
美青音
「ハァ…ハァ…もう走れない…。」
もう少しで会場を出られる。
体力の限界を迎えた私は、岩陰に身をひそめる。
せめて、もう少しだけ見つからないで…!
そんな淡い期待は見事に打ち砕かれる。
会場の男性
『いたぞ!ヨウセイシャを逃がすな!』
『あいつはバイ菌だ!消せ!!』
私はお客さんらしき男性に見つかってしまう。
彼の目が血走っていることは遠巻きにもわかる。
美青音
「逃げなきゃ…!!…ハァ…逃げ……!」
私は痙攣する足を引きずって走り出す。
逃げれば逃げるほど、
目を血走らせた追手が増えていく。
この会場は
ついさっきまで喜びに満ちていたのに、
『PC○検査を受けていない者がいる』
人間の凶暴性に火をつけるには、
こんな疑惑1つで十分だというの?
『ヨウセイシャはバイ菌だ』
『無菌を乱す輩には何をしても構わない』
狂ったメッセージが、
私の背中に何度も突き刺さる。
美青音
「もうダメ…息が……!」
全身に酸素不足のアラートが鳴り響く。
私の意識が遠のいていく。
ここで捕まったらどうなるの…?
消されちゃうの…?
こんな狂った”リアル人狼ゲーム”なんて…。
万優…みんな…どうか生きていて…。
プツン。
ーーーーー
美青音
「んん……ここは……?」
ふわり。
やさしい風が草をなでる匂いで、
私の意識が戻る。
ここは私の地元?
いつもお昼寝をしていた草原?
美青音
「私…生きているの…?」
私はお祭り会場から逃げ切ったらしい。
立ち上がろうとしても、足の感覚がない。
疲れた…ちょうどいいや。
しばらく休もう。
やはり万優たちの姿はない。
3人とも、どこへ行ってしまったんだろう…?
幼馴染を助けられなかった後悔と、
自分だけ助かった罪悪感が忍び寄ってくる。
万優
『あー!やっぱりここにいた!』
『あんた、また草むらで昼寝?』
『ほんと好きだよね。』
…?…この声は…。
美青音
「万優?!よかった!無事だったんだ!」
万優
『無事?何のこと?』
『まだ寝ぼけているの?(笑)』
変わらない笑顔がそこにある。
なぁんだ。
すべては私の夢だったというオチ?
安直だけど、心底ホッとする。
美青音
「…何でもない…(涙)」
「ともかく、また会えてよかった!」
万優
『うん、私もまた会えてよかった…!』
『だって…。』
カチャリ
万優は突然、見覚えのある器具を構える。
私へ向けられる笑顔に、どんどん影が入っていく。
美青音
「万優…?どうしたの?」
「様子がおかしいよ?」
万優
『おかしい?私は美青音に会えて嬉しいの。』
『こうやって…。』
『”ヨウセイシャ狩りの続き”ができるんだもの。』
あぁ残念、夢オチじゃなかった。
逃げる気力も残っていないし、もういいや。
私はすべてを諦め、草むらに仰向けになる。
雲は緩やかに形を変えながら流れていく。
透き通る青空がどこまでも広がっている。
すべてが「ありのまま」の世界。
狂っているのはニンゲンだけ。
万優の指が、手にした器具のスイッチに掛かる。
紫色の煙が、少しずつ私に被さってくる。
万優
『……潔いね…。』
美青音
「…うん。」
何よ…。
最後の”最期”に、
少しだけ正気を見せてくれるなんてずるいよ。
美青音
「眠くなってきた…。」
万優
『……おやすみなさい……。』
私は草の匂いとニンゲンの狂気に包まれ、
ゆっくりと目を閉じる。
ーーーーーENDーーーーー
⇒他作品
【短編小説】『緑の砂と夢色の川』全2話
【短編小説】『反出生の青き幸』全4話
⇒この小説のPV
⇒参考書籍
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2023年10月03日
【短編小説】『黒い羊と無菌狂』1
<登場人物>
・風木 美青音(かざき みおね)
主人公、23歳
地元の田舎町を離れ、都会で就職して2年目
幼馴染の万優(まゆ)たちと、地元のお祭りへ向かうが…?
・外川 万優(とがわ まゆ)
美青音の幼馴染、23歳
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーー
本当に怖いものは自然災害か、
見えないウィルスか。
それとも「ニンゲンの狂気」か。
ーーーーーーーーーーーーーー
【第1話:黒い羊を狩るゲーム】
美青音
「んん…よく寝た…。」
ふわり。
やさしい風が草をなでる匂いで、
私は昼寝から目覚める。
ここは私の地元。
都会からローカル線を乗り継いで2時間の田舎町。
今日は地元のお祭りへ行く。
数年ぶりの帰省を存分に楽しもう。
幼馴染
『あー!やっぱりここにいた!』
『あんた、また草むらで昼寝?』
『ほんと好きだよね。』
3人の幼馴染が私を迎えに来る。
私に声をかけたのは、
1番仲の良かった外川 万優(とがわ まゆ)。
町に1つだけの小学校から高校まで、
ずっと一緒に過ごしてきた。
今はみんな地元を離れていて、
久しぶりに顔を合わせる。
万優
『早く行こ!お祭り!』
子どもの頃から慣れ親しんだお祭り。
しばらく離れていたから、とても新鮮に感じる。
それはみんなも同じみたい。
初めて行くようにわくわくしている。
ーー
互いの近況報告をしながら、
いつもの公園への道を歩く。
しばらくすると、
普段の静けさとは打って変わって
賑わうお祭り会場が見えてくる。
公園の中央には大きなステージがある。
毎年、歌手や芸人さんが来て盛り上げてくれる。
美青音
「今年はどんなイベントか知ってる?」
万優
『”リアル人狼ゲーム”らしいよ。』
美青音
「リアル人狼ゲーム?」
万優
『会場に紛れる人狼を突き止めるんだってさ!』
美青音
「へぇ、おもしろそう!」
テーブルで議論を重ねて、お互いの矛盾を見つけて…。
ではなく、それを会場全体でやるらしい。
自分たちで動き回ってヒントを探しながら。
楽しみ!
ーーーーー
お祭り会場に着いた私たちはしばらくの間、
食べ歩きを楽しむ。
地元に残った旧友や、
懐かしい人たちとの昔話に花が咲く。
そうこうしているうちに、
公園中央のステージがひときわ盛り上がる。
MCの女性がステージへ上がり、
マイクを手に取る。
美青音
「わぁ……綺麗な人…!」
モデルさんのような長身の女性が、
会場中の視線を釘付けにする。
同性の私でも見惚れてしまう。
MCの女性
『皆さーん!楽しんでますかー?!』
透き通った、力強い声が響く。
リアル人狼ゲームってどんな感じだろう。
私たちは群衆の後方から見守る。
ーー
彼女の軽快なトークに魅せられること数分。
ステージ左右からスタッフさんが3名ずつ登場する。
1人1人、
ハンドドライヤーのような器具を握っている。
舞台袖から”準備OK”の合図が送られると、
MCの女性がひときわ明るい声色で叫ぶ。
MCの女性
『それでは皆さん!』
『リアル人狼ゲームのスタートです!』
いよいよだ。
あれ?役職が振り分けられていないけど、
私って村人?人狼?
そっか、お客さんはみんな村人で、
人狼に扮したスタッフさんを見つけるのかな。
などと1人で納得していた矢先、
MCの女性
『準備はいいですかー?!』
『P〇R検査を始めますよー!』
美青音
「……は……?」
ワァァァァァーーーー!!!
MCの女性の言葉に、
ステージに集まった人たちは熱狂する。
まるでライブのスタートを待ちきれないみたいに。
美青音
「…は…?…え…?!PC〇検査?!」
「どこに盛り上がる要素があるの?!」
隣を見ると、
万優も他の2人も歓喜に沸いている。
誰ひとり戸惑っている者はいない。
私を除いて…。
MCの女性
『いきますよー?!』
『3!2!1…!』
彼女のカウントダウンに合わせて、
ステージ上のスタッフさんが
手にした器具を私たちに向けて構える。
美青音
「ちょっと…!何なのこれ?!」
「新年のカウントダウンライブ?!」
私は謎の熱狂に困惑する。
考えるヒマもなくカウントダウンが0になる。
それと同時に
スタッフさんが手にした器具のスイッチを入れる。
紫色の煙が勢い良く吹き出し、
ステージ前の人たちを覆っていく。
毒ではなさそう。
だけど私は直感で身の危険を感じる。
美青音
「この煙…浴びたらマズい…!」
私は隣で熱狂する万優の手を引く。
美青音
「ねぇ万優!何だか危なそうだよ?!」
「後ろへ行こうよ!」
万優
『離してよ!』
『今”人狼があぶり出される”の!』
『いいところだから邪魔しないで!』
バシッ
美青音
「きゃあッ!」
ドスン!
万優は私の腕を振り払い、
私を後ろへ突き飛ばす。
私は背中から地面に叩き付けられる。
それでも痛みをこらえながら叫ぶ。
美青音
「待って!一体どうしたの?!」
「そっちへ行っちゃダメ!」
私の制止もむなしく、
万優たちは煙の中へ突撃していく。
これがライブで言う”ダイブ”なら
私も加わりたいところだけど、
美青音
「痛ッ…!」
私は全身の痛みをこらえ、
やっとの思いで煙が届かない後方へ這い出る。
間もなくステージ前面が紫色の煙で覆われる。
万優たちの姿も見えなくなってしまう。
耳が痛くなるくらい大きかった歓声が
次第に小さくなっていく。
気のせいかな…?
歓声が小さくなる瞬間、
煙の中で”紅い閃光”が走ったように見える。
まるで何かを斬るような弧を描いて。
美青音
「まさか”リアル人狼ゲーム”って…。」
「強制○CR検査で”ヨウセイシャ”をあぶり出すってこと?!」
ーーーーー
少しずつ紫色の煙が晴れてくる。
あんなに騒がしかったのに、
すっかり静かになっている。
私は痛む背中をさすりながら、
煙の中に立ち尽くす人たちを眺める。
美青音
「…人が減っている…?」
気のせいかな?
紅い閃光が見えた場所には、
さっきまでいたはずの人がいない。
考えたくないけど、
万優たちが走って行った先にも。
憶測だけど、
あの紅い閃光は”ヨウセイシャ”の反応。
ゲームで言う”人狼”かもしれない。
彼らはどうなったの?自主退場?
それとも…消されたの…?
沈黙していた人たちが再び騒ぎ始める。
会場中が、ゲームが始まる高揚感に包まれる。
MCの女性
『さぁ”村人”の皆さん!人狼狩りの始まりです!』
『今日を楽しんでくださいねー!』
マイク越しに透き通った声が響く。
残った人たちは、意気込んで会場の各地へ散っていく。
まるで、何事もなかったかのように…。
⇒【第2話:ニンゲンの狂気に包まれ眠る】へ続く
⇒この小説のPV
2023年09月28日
【短編小説】『なぜ学校にはお金の授業がないの?』2 -最終話-
⇒【第1話:独占する者、使い捨てられる者】からの続き
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<登場人物>
・深澤 真知(ふかざわ みしる)
主人公、10歳、小学5年生の少女
親も学校もお金について教えてくれないことに
疑問を持ち始める
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【第2話:逃げ切る者、ラットレースに勤しむ者】
<後日:真知の通う小学校・職員室>
担任
『うーん…もう少し点数を伸ばせないか?』
『深澤ならもっとできると思うんだがなぁ。』
『小学生のうちからこれじゃあ、良い学校へ入れないぞ?』
真知
「先生、良い学校へ入れないとどうなるんですか?」
担任
『どうなるって…良い会社へ入れなくなるんだよ。』
真知
「良い会社ってどんな会社ですか?」
担任
『もらえる給料が高い会社だよ。』
真知
「咲姫ちゃんのパパみたいに会社をやっている人も?」
「1回は良い会社へ入らないといけないんですか?」
担任
『?!ま、まぁ、そりゃそうだろうな…。』
(マズイ…経営者のことはよくわからんが、まぁいい…。)
真知
「じゃあ学校の勉強やテストは?」
「良い学校や良い会社に入るためにあるんですか?」
担任
『そうだな。』
真知
「それって、お金をたくさん”もらう”ためですか?」
担任
『ああ。』
真知
「先生も会社からお給料をもらっているんですか?」
担任
『先生は公務員だから、国から給料をもらっているんだ。』
真知
「じゃあ学校の勉強を頑張ったら「しゃちょう」になれますか?」
「咲姫ちゃんのパパみたいに会社を作れますか?」
担任
『?!…ま、まぁな(汗)』
真知
「そうですか…。」
(先生は本当に知ってるのかなぁ?)
(焦っているように見えるけど…。)
担任
『……。』
真知
「学校の勉強は、お金をもらえる場所へ入るためですか?」
「難しい算数も理科も社会も?」
担任
『も、もういいだろ?』
『次のテストではもう少し成績を…。(汗)』
真知
「先生!」
担任
『…何だ?』
真知
「どうして学校にはお金の稼ぎ方の授業がないんですか?」
担任
『そ、それ以上はいいだろう?』
『授業の内容は国が決めているんだ。』
『先生が決めているわけじゃないからなッ!』
真知
「…ですが…。」
担任
『ホラ、遅くなったら親御さんが心配するぞ?』
『さっさと帰って勉強しろ。』
真知
「はぁい…。」
私はモヤモヤしたまま、
職員室を追い出されてしまいました。
真知
(どうして?)
(どうして学校では国語とか算数ばっかりやるの?)
(パパもママもあんなにお仕事をしている。)
(お金をもらうために、毎日くたくたになって…。)
(お金がないと生きていけないくらい大切なもの。)
(なのにどうして学校では、大切なお金のことを教えないの?)
私の疑問はどんどん膨らんでいきました。
ーーーーー
<後日:真知の家>
真知
「ねぇママ。」
「この前、先生に聞いてみたの。」
「どうして学校にはお金の授業がないの?って。」
母
『お金の授業?』
真知
「そしたら先生、なぜかすごく焦り出して…。」
「”もういいから帰りなさい”って言われた。」
「結局教えてもらえなかったの。」
母
『そ、そうだったの…。』
真知
「ねぇママ。」
「どうして先生はお金のことは教えてくれないの?」
「良い会社に入るためにテスト勉強するって教えてくれたのに…。」
母
『…先生にも色々と…事情あるのよ。』
真知
「事情?」
母
『ええ、先生も国からお金をもらっている立場だから。』
真知
「うーん…。」
母
『それと、お金のことばかり話すものではありませんよ?』
真知
「どうして?お金は大切だよ?」
「お金がないと生活できないんでしょ?」
母
『大切だけど、あまり口にしない方がいいの。』
真知
「どうして?」
母
『お金のことばかり考えているとね。』
『”はしたない”って思われるからよ。』
真知
「はしたないの?」
「お金があるから生きていけるのに?」
母
『…そ、そうよ…。』
真知
「お金をもらうためにパパもママもあんなに働いている。」
「毎日くたくたになってまでお金をもらっている。」
「なのにどうして話しちゃいけないの?」
母
『あなたの気持ちもわかるわ…。』
『けど…これだけは飲み込んでちょうだい…。』
真知
「でも…!」
母
『お願い…。』
『その内わかるときが来るから…ね?』
真知
「…わかった。」
「私、これ以上ママを困らせない!」
とはいえ、私の疑問は消えません。
どうしてお金について話すのは
”はしたないこと”なの?
生きていくために必要なもの、
大切なもののはずなのに?
どうして誰も
お金について教えてくれないの?
ねぇ、どうして?!どうしてなの???!
ーーーーー
<現代:とある国の中枢>
国の指導者
『側近よ。』
側近
『はい。』
指導者
『学校教育の首尾は?』
側近
『今のところ公立私立ともに成功しています。』
『従順なサラリーマンを量産する教育が浸透しています。』
指導者
『そうか、今後も基本方針はこのままで行ってくれ。』
『定期テストでは”社会で何の役に立つのかわからない問題”を中心に出すように。』
側近
『かしこまりました。』
指導者
『それから比較と競争の文化も継続してくれ。』
『常に成績や偏差値で競わせるのだ。』
側近
『心得ております。』
指導者
『必要なのは他人と比べて劣等感を抱きやすい人材だ。』
『他人に優越するため、やりたくないことも黙ってやるようになる。』
『そうなれば社会へ出ても、思考停止して上の命令に従うようになる。』
側近
『これで資本家からの要望が減ってくれればいいですね。』
指導者
『ああ。次回の当選にも資本家のバックアップが不可欠だ。』
『票を集めるためにも財界や資本家に寄り添う政策を続けたい。』
『そのためには無個性で従順なサラリーマンがもっと必要だ。』
『彼らの会社で馬車馬のように働く”人材”がな。』
側近
『1つ問題があります。』
『最近、お金についての書籍が大量に出回っています。』
『お金について学ぼうという機運が高まっています。』
指導者
『そうだな。ならば当然来ているだろう?』
『”学校教育にお金の授業を取り入れろ”という要望が。』
側近
『来ています。数も年々増えています。』
『いつまでも隠し通せるものではないでしょう。』
学校でお金について教えないのは
お金の稼ぎ方を知られて力を持たれては困るから
側近
『などということは。』
指導者
『おいおい側近、そのような発言は控えてくれ。』
『どこにメディア連中の盗聴器があるかわからん。』
側近
『大変失礼いたしました。』
『つい本音が漏れてしまいました。』
指導者
『確かに時代は変わっていくだろう。』
『いずれは学校でお金の授業をせざるを得なくなる。』
側近
『それは避けられないでしょうな。』
指導者
『だが”お金は汚い”という風潮はまだ根強いだろう?』
側近
『はい。とある会社に統計を取らせたところ…。』
『国民の8割がお金の話を嫌がる傾向にあるとか。』
指導者
『それでいい。』
『いずれ変わるにしても、あと数十年持ってくれれば十分。』
『我々が権力の座に居る間は安泰よ。』
側近
『はい、我々さえ逃げ切れれば良いのです。』
『世の中のお金についての認識が変わり切ってしまう前に。』
指導者
『ここまで苦労して権力者へ上り詰めたのだ。』
『人生の豊かな逃げ切りに使うくらい大目に見てもらおう。』
『次世代の若者には気の毒だが…。』
『せいぜいラットレースに勤しんでくれ。』
『見栄とセケンテイを気にして消費に勤しんでくれ。』
『まだお金について学ぶ機会を与えるわけにはいかんのだよ。』
『何しろ…。』
お金は汚いもので、
お金の話をするなんて”はしたない”からなぁ!!
ーーーーーENDーーーーー
<あとがき>
現代は「お金の認識」についての過渡期です。
権力者が学校教育を通じて
・工場労働者を量産したい時代
・従順な兵士を量産したい時代
・サラリーマンを量産したい時代
を経て、
「もう国民の面倒を見る余裕はない」
「財産は各自で守ってくれ」
と言い始めています。
「清貧⇒良い」「お金⇒汚い」という認識を広めたのは、
国民がお金に詳しくなったら困る人がいるからでしょう。
それが崩れ始めた時代だからこそ、
お金について1から学ぶ良い機会です。
いつか学校で「お金の授業」が行われる未来を描きながら。
ーーーーーーーーーー
⇒他作品
【短編小説】『片翼の人形が救われた日』全4話
【短編小説】『スマホさん、ママをよろしくね。』全4話
⇒参考書籍
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2023年09月27日
【短編小説】『なぜ学校にはお金の授業がないの?』1
<登場人物>
・深澤 真知(ふかざわ みしる)
主人公、10歳、小学5年生の少女
親も学校もお金について教えてくれないことに
疑問を持ち始める
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【第1話:独占する者、使い捨てられる者】
<紀元前1世紀頃:欧州・とある地域>
お金持ちが神の国へ入るよりも
ラクダが針の穴を通る方がまだ易しい
宗教家
『この教えを民衆へ広めてください。』
『”清貧”の尊さを説くのです。』
幹部信者
『かしこまりました。』
『異を唱えるわけではありませんが…。』
『なぜこのような教えを広めるのですか?』
『貧する者なら誰しも豊かになりたいと思うのでは?』
宗教家
『そうです。』
『だからこそ清貧を正しいと思い込ませることが大切です。』
幹部信者
『どういうことでしょう?』
宗教家
『民衆の反乱を抑えるためです。』
『”一握りの権力者だけが富を独占する権利を持っている”』
『”自分たちの貧しい暮らしは神から与えられた最高のもの”』
『そう信じ込ませればよいのです。』
幹部信者
『なるほど!』
『そうすれば富の独占への不満を逸らせると。』
宗教家
『そういうことです。』
『民衆から少しでもお金について考える機会を奪うのです。』
幹部信者
『かしこまりました。』
とある宗教家が唱えた教えは数百年後、
ヨーロッパ地域のほとんどの人々が信じる
巨大な宗教となりました。
「お金は卑しいもの」
「お金持ちが天国へ行くのは難しい」
そういった
お金に対する負の思想も、
同時に広く信仰されるようになっていました。
それから2000年以上の月日が流れ…。
ーーーーー
<19世紀:欧州・とある国>
国の指導者
『側近よ、工場建設の状況はどうだ?』
側近
『順調です。』
『もうじき大量生産の準備が整います。』
指導者
『そのまま進めてくれ。』
『財界から要望が届いている。』
『”工場で働かせたい人材が不足している”』
『もっと労働者を確保できないか”とな。』
側近
『聞いております。』
『与えられた仕事を従順にこなす機械のような労働者がほしい”と。』
指導者
『私が言うのも何だが、あんな劣悪な労働条件ではな…。』
『募集したところで、よほど困っている輩しか来ないだろう。』
『民衆もバカではあるまい。』
側近
『仮に人数が集まっても、遠からず反乱が起きるでしょう。』
指導者
『だろう?』
『そうなったら最悪、操業停止に追い込まれるかもしれん。』
『何とか反抗させず、都合よく労働者を動かす方法はないか?』
側近
『少し時間がかかりますが、こんな方法はいかがでしょう?』
指導者
『ほう、何か良い案があるのか?』
側近
『はい、幼い子どもたちを集めて教育する場所を作るのです。』
『つまり”学校”です。』
指導者
『ガッコウ?』
側近
『はい、大人と違い、幼い子はまだ疑うことを知りません。』
『それを利用して、学校で”これ”を教え込むのです。』
ひそひそ
指導者
『それは名案だ!』
『これで都合の良い工場労働者を大量生産できる!』
『さっそく各地域へ教育機関の設置を手配してくれ。』
側近
『かしこまりました。』
数年後、
この国の空は昼間でも
どんよりした灰色に染まりました。
その下には黒煙を吐き続ける、
無機質な工場が立ち並んでいました。
その中では
気力も表情もなくした労働者たちが、
ひたすら手を動かしていました。
それから、さらに200年ほど月日が流れ…。
ーーーーー
<現代:とある国>
真知
「ねぇママ。」
母
『どうしたの真知?』
真知
「パパ、毎日帰りが遅いよね。」
「それに、いつも疲れて帰ってくる。」
母
『パパはお仕事を頑張ってくれているからね。』
真知
「お仕事ってそんなに辛いの?」
母
『内容によるけど、辛いことが多いわ。』
真知
「ママが昼間に行っているお仕事も?」
母
『…そうね…。』
真知
「パパはどこでお仕事しているの?」
母
『会社というところよ。』
真知
「カイシャ?」
母
『ええ、会社をやっている人に雇ってもらってね。』
『そこで働かせてもらっているの。』
真知
「そっか。やっぱりパパってすごいね!」
母
『…そうね。』
真知
「ねぇママ。」
母
『なぁに?』
真知
「パパとママがこんなに働くのはどうして?」
「お金をもらって生活するため?」
母
『そうよ。』
『働いてお給料をもらっているから生きていけるの。』
真知
「会社からお金をもらっているの?」
母
『そうよ。』
真知
「会社に入るってすごいこと?」
母
『すごいことよ。』
『たくさんお勉強して、やっと入れるの。』
真知
「そっか、そうだよね。」
「ママ、いつもお仕事してくれてありがとう!」
「パパが帰ってきたら、パパにも伝えるね!」
母
『ええ…パパもきっと…喜ぶわ…。』
ーー
後日の放課後、私はクラスメイトの
咲姫(さき)ちゃんの家に招待されました。
咲姫ちゃんのお父さんは
いくつかの会社を経営しているそうです。
咲姫ちゃんの家は
絵本に出てくるようなお屋敷ではありません。
それでも、
小学生の私でも高級だなと感じるものが
そこかしこにありました。
真知
「咲姫ちゃんのパパが会社をやっているって本当?」
咲姫
『本当だよ。』
真知
「どんなお仕事をしているの?」
咲姫
『うーん…詳しくは知らないけど…。』
『色んな”とりひきさき?”っていうところへ行ったり。』
『あとは、会社を”しさつ?”に行ったりしているよ。』
真知
「そっか、パパ忙しそうだね。」
咲姫
『うん…だから、なかなかパパに会えないの…。』
『帰ってきても書斎にこもってお仕事ばっかり…。』
真知
「そっか…。」
(私のパパは会社に雇われてるんだよね?)
(咲姫ちゃんのパパは会社をやっている。)
(仕事は全然違うけど、会社をやるって大変なんだなぁ…。)
咲姫
『たまにパパとお話できたときにね。』
『パパはどんなお仕事しているのって聞いてみたの。』
『そしたらね…。』
『パパの会社でみんなが喜んでくれるものを売ってるんだよ。』
『そしてパパの会社で働いてくれている人たちにお給料を払うんだよ。』
『って言ってたの!』
真知
「そっか!」
「咲姫ちゃんのパパはお給料を払う人なんだね!」
咲姫
『うん、だから私パパを尊敬してるんだ。』
『あんまり会えないのは寂しいけどね。』
『私や会社の人のために頑張っているパパはかっこいいもん!』
真知
「ほんとにかっこいいよね!」
「咲姫ちゃんのパパはどうやって会社を作ったの?」
咲姫
『うーん…わかんない。』
『パパは私が生まれる前から”しゃちょう”だったから。』
『親戚もみんな会社をやっていて、パパが”継いだ”?みたい。』
私は、私のパパと
全然違うお仕事があることに驚きました。
お金をもらう方法は
会社に入るだけじゃないことを知りました。
けど咲姫ちゃんのパパがどうやって会社を作ったのか、
どうやって「お給料を払う側の人」になったのかを
知ることはできませんでした。
そして私は気づきました。
学校にはお金の授業がないことに。
どうして学校では、
生きるために大切なお金について
教えてくれないのでしょう?
⇒【第2話:逃げ切る者、ラットレースに勤しむ者】へ続く