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2023年08月04日

【オリジナル歌詞】『生きる価値なんてどうでもいい』

「私なんかに生きる価値なんてない」
そう思ってた

だけど人生の儚さを 知ったとき
すべて変わった

たかだか数十年
生まれて消えてくだけの存在
輝いて終わりたい

  生きてる価値なんて あってもなくてもいい
  「私はここにいる」 それだけでいい!

  私は決めたんだ 誰に否定されても
  「私だけは私の味方でいる!」



「私なんか誰からも愛されない」
そう思ってた

だから見捨てられるのが怖くて
必死に「良い子」演じた

だけど私 気づいたんだ
誰かに好かれようとするたびに
「私」が消えてくこと

  私の人生は 誰かの気まぐれな
  期待のためなんかに使わない!

  私は決めたんだ 誰に嫌われても
  「私だけは私を好きでいる!」



『アンタさえいなければ…!』
『本当にワガママな子…!』

傷ついた心の 奥から響いてくる声
消せなくてもいい

私の人生に 付き合わせてあげる
「さぁ一緒に来て?」

  生きてる価値なんて あってもなくてもいい
  「私はここにいる」 それだけでいい!

  私は決めたんだ 誰に否定されても
  私だけは私の味方で…!

  輝いてみせる 短い人生!




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



⇒他作品
【オリジナル歌詞】『生キテルアカシ』

【オリジナル歌詞】『きみらしく』



⇒参考書籍







posted by 理琉(ワタル) at 19:55 | TrackBack(0) | 歌詞

2023年08月02日

【オリジナル小説・PV動画】『Sounds of reincarnation』制作背景

オリジナル小説:
『孤独の果てに自由あり』
のPV動画を作ってみました。

この小説と、PV動画の制作背景を紹介します。


  1. 制作した動画
  2. 作品の概要
  3. 制作の所感

1.制作した動画




2.作品の概要


3.制作の所感


本作は、

名著:『自由からの逃走』

の内容を、ストーリー形式で伝えたくて書きました。



人は
「自由になりたい」
「支配されたくない」
と願うにもかかわらず、

なぜ、
ときに自分から自由を捨てて
何かに服従したがるの?


『自由からの逃走』では、この疑問に
中世以降のヨーロッパの歴史を通じて答えています。



自由⇒自分のやりたいようにやる
だとしたら、

自由⇒孤独で何の保証もないもの
です。

成功した前例も、
みんなと同じという安心感もありません。

人が自由を捨てるのは、
その孤独に耐えられないときです。

安心するため、
自分を押し殺して”多数派”や”絶対的権威”に服従します。
そのウラには貧困や戦禍、宗教対立があります。




現代の日本は恵まれています。

(今のところ)戦争に行かなくていいし、
コンビニも病院も完備です。

(建前では)多様性が受け入れられ、
1人でも生きていけます。

それぞれ好きにやればいいはずなのに、
我慢して、まわりに合わせている人が多いと感じます。

それは
自由になる⇒”みんなと違う”ことが怖いから
ではないでしょうか。

自由の不安に耐えるくらいなら、
不自由の不満を甘受した方がマシ


だから自分の本音を抑え、
”みんなと同じ”を演じているんじゃないでしょうか?



「窮屈な現状を変えるためにどうすればいいか」
「少しでも自由になるためにどうすればいいか」

本作が少しでも、自由な人生について
考えるきっかけになれば幸いです。



ーーーーーーーーーー



⇒他作品・MMD動画
【オリジナル小説・PV動画】魔王魂『捩花(ネジバナ)』制作背景

【オリジナル小説・PV動画】『It’s my Life』制作背景



2023年07月31日

【短編小説】『もし自己肯定感の高さが見える世界になったら』6 -最終話-

【MMD】Novel Jiko Koutei SamuneSmall1.png

【第5話:幸せを遠ざける”他人との比較”】からの続き

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<登場人物>

沢田 イリス
 主人公
 23歳、身長145センチ
 怖い父親の影響で、大人になっても男性恐怖に悩む


<この世界へ普及している発明品>
 『プライド・ビューワー』

 スイッチを入れると
 相手の自尊心(自己肯定感)の高さが可視化される
 高い⇒バスケットボールより大きく
 低い⇒ゴルフボールより小さく

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



【第6話(最終話):ダメな自分でも”幸せ”になっていい】



ある朝のニュースで、
プライド・ビューワーの開発中止が発表された。


「アイツよりはまだマシ」というマウント合戦や、
逆ギレによるトラブル多発を重く見て、とのこと。

プライド・ビューワーを開発したチームの
記者会見が始まった。

研究チーム
『心の中が見える発明は、我々人間には早すぎた。』
『他者との比較や、優越の欲求を抑えられるほど、人間は高尚な生き物ではない。』


イリス
「本当にね…。私も、やらかしたし。」


苦い思い出が蘇った。
もしもあのとき、通行人が警察を呼んでくれなかったら。
きっと、私の人生は大きく狂っていた。

研究チーム
『今回の挑戦は失敗に終わった。』
『だが反省とともに、幸せになる方法の一端を示せたと思う。』

『不幸になりたければ、他者と比べればいい。』
『幸福になりたければ、昨日の自分と比べればいい、と』


すでに出回っているプライド・ビューワーは、
順次サポートを終了していく。

多くの発明と同じように、
「昔、そういうのあったね」と言われるだろう。



イリス
「これで、”あの人、本当は自信ないんだ”ってわからなくなる。」
「あーあ。そしたらまた来るのかなぁ?クレームのお客さん。」
「でも、今度は大丈夫な気がする。」


今まで、やみくもに怖がっていた私とは違う。

プライド・ビューワーはなくなったけど、
おかげで私は多くを学ぶことができた。

男性の怖いしぐさを見ても、

(本当は怯えているのかも)
(本当は怖くて怒鳴っているのかも)

そう思うと、心に余裕が持てそう。

イリス
「今度こそ、幸せな恋愛ができるかな?」
「こんな私が誠実な人に好かれるはずがない?」
「コラ!また始まったよ!自己否定!」


そう。比べるのは他人じゃなく、昨日の自分。

イリス
「大丈夫!私、昨日より成長したから!」
「変な男に引っかかったり、危ない目に遭ったけど…。」
「それも今の私を作ってくれたの!」


私は私だ。
失敗しても、恥をかいても、誰に何を言われても。



ーーーーー



私は沢田 イリス
最近、気になる男の人がいる。
去年、ウチの書店に配属された後輩社員。

彼は、今まで私にアプローチしてきた男性とぜんぜん違う。
もの静かで、休憩時間はいつも隅っこで本を読んでいる。

彼は女性に免疫があまりないみたい。
仕事中、私や他の女性社員と話すとき、明らかに緊張している。

普段の彼は、少し頼りなさそうに見える。
けど仕事モードになると、とたんにキリッとした表情になる。



過去の私だったら、きっと彼に興味を持たなかった。

「いい人だけど、もの足りない、面白みがない」
それで終わっていた。

けど、なぜだろう。
普段の無害な彼の近くにいると、すごく落ち着く。

そして、ときおり見せる”仕事モード”になる瞬間に、
ドキッとさせられる。

イリス
「もしかして私、変われたのかな…?」


今までは無意識に、暴力的な男性ばかり引き寄せてきた。

「こんな私が、誠実な人に愛されるわけがない」
という自己否定があったから。


今では、一緒にいて安心できそうな人を
好きになりかけている。

それは
「私は誠実な人に愛されていいんだ」
と思えるようになった証拠。



イリス
「恋愛の刺激もロマンスもいいけど、それだけじゃない。」
「平凡で、安らげる人間関係もいいかも。」


そんなことを考えていた、ある日の夕方。

後輩
『あの…沢田先輩!』


イリス
「なぁに?」


振り返ると、顔を真っ赤にした後輩社員がいた。
彼はもじもじしながら、覚悟を決めた口調で言った。

後輩
『今週の金曜、何かご予定ありますか?』


イリス
「ないよ。」


後輩
『じ、じゃあ…よかったら仕事終わりに…。』
『2人で食事に行きませんか…?!』


(彼、まさか私のこと…。)
私はあふれる期待を抑えながら答えた。

イリス
「…いいよ。行こっか。」


後輩
『ありがとうございます!』
『まさかOKしてもらえるなんて…嬉しいです!』


イリス
「…(ニコッ)」




”ダメな自分も受け入れ、心を育てる”

それができたとき、
人生はきっと、良い方向へ動き出す。



ーーーーーENDーーーーー



⇒他作品
【短編小説】『反出生の青き幸』全4話

【短編小説】『恋の麻酔と結婚教』全4話


⇒参考書籍














2023年07月30日

【短編小説】『もし自己肯定感の高さが見える世界になったら』5

【MMD】Novel Jiko Koutei SamuneSmall1.png

【第4話:”私だけは大丈夫”という自惚れ】からの続き

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<登場人物>

沢田 イリス
 主人公
 23歳、身長145センチ
 怖い父親の影響で、大人になっても男性恐怖に悩む


<この世界へ普及している発明品>
 『プライド・ビューワー』

 スイッチを入れると
 相手の自尊心(自己肯定感)の高さが可視化される
 高い⇒バスケットボールより大きく
 低い⇒ゴルフボールより小さく

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



【第5話:幸せを遠ざける”他人との比較”】



<数ヶ月後、とある公園>

私は男性を見下さなくなったものの、
恋愛がうまくいかずに落ち込んでいた。

世界はプライド・ビューワーのおかげで、
理不尽には「No」と言えるようになった。

が、反撃を「自分そのものの否定」と捉えた者が逆ギレ。
そこからのトラブルが多発するようになった。

自尊心が高い者が、低い者をバカにする。
優越感の奪い合い。

いつしか、誰もが
「アイツより、私の方がマシ」
という比較でしか、自分を認められなくなった。




イリス
「ハァ…私、どうすればいいのかな…。」


私は公園のベンチで、途方に暮れていた。

公園の砂場を見ると、
子どもたちが楽しそうに遊んでいた。

ほとんどの子はグループで砂遊びをしていた。
砂場の隅で、1人の女の子が黙々と砂の山を作っていた。

グループの男の子A
『お前!隅っこで何を作ってんだよ?!へたくそ!』
『オレたちの山の方が大きいだろ?』


グループの男の子B
『そうだそうだ!なんで1人なんだよ?!』
『ぼっちは出てけよ!』


イリス
(ひどい…もしかしてイジメ?!)
(止めた方がいいのかな?親御さんに言った方がいいの?)


私はオロオロしながら辺りを見回したが、
親御さんらしき人は見当たらなかった。



グループの男の子A
『そんなへたくそな山、オレたちが壊してやるよ!』


グシャッ

グループの男の子B
『ほら!ぼっちは出ていきな!』


女の子が作っていた砂の山は、
男の子たちに踏まれてしまった。

イリス
(いくらなんでもやりすぎ!)
(私が何とかしなきゃ!)


私は我慢できなくなり、ベンチから立ち上がった。
が、すぐにその必要はないとわかった。

その女の子は泣きもせず、毅然と立っていたから。

プライド・ビューワーで見る彼女の”大きな自尊心”は、
少しも揺らいでいなかったから。



女の子
『ねぇ、あなたたち、わたしと比べないと立ってられないの?』




ギクリ。



女の子からの強烈な”圧”によって、男の子たちは怖気づいた。

『私は私のままでいい。誰と比べる必要もない。』
彼女から放たれる、圧倒的な存在感。

グループの男の子A
『…お、おい。あっち行こうぜ…。』


グループの男の子B
『…ああ。なんか怖いし。』


静かになった砂場で、
彼女はまた、黙々と砂遊びを始めた。


ーー


私は女の子の姿を見て、ハッと気づいた。
いえ、目を逸らしていた事実に向き合った。

イリス
「人間から幸せを奪っているのは、低い自尊心じゃない。」
「他人との”比較”だ…!」


私はダメだ
私には価値がない
私には愛される資格がない

そうやって自己否定するたび、自尊心が下がる。

じゃあ、私はどうなれば価値があるの?
誰と比べてダメなの?

それは、いつの間にかできていた「理想の私」



そして「理想の私」の正体は、
他人や社会がすり込んだ”こうあるべき”の集合体。

いくら理想に近づいても、他人は無限に求めてくる。


『あの人より優越しなさい』
『あの人より劣っているあなたはダメ』
『あなたは理想の人になりなさい、”私を”満足させるために』


その圧力に負けて、ついに私自身も言い始める。
「他人と比べて劣っている私はダメだ」と。

イリス
「私は、他人が勝手に言ってくる評価の方が大事なの?」
「違うでしょう?私は私。誰がどう言おうと、私はここにいる!」


小柄なところ、男性が怖いところ、
自分に自信がないところ、恋愛が上手くいかないところ…。

ダメなところも、全部ひっくるめて私なの!
誰かと比べる必要なんてないの!




私は、プライド・ビューワーのスイッチを入れなかった。
もう、見る必要がなくなったから。



【第6話(最終話):ダメな自分でも”幸せ”になっていい】へ続く

2023年07月29日

【短編小説】『もし自己肯定感の高さが見える世界になったら』4

【MMD】Novel Jiko Koutei SamuneSmall1.png

【第3話:自己否定と逆ギレの果てに】からの続き

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<登場人物>

沢田 イリス
 主人公
 23歳、身長145センチ
 怖い父親の影響で、大人になっても男性恐怖に悩む


<この世界へ普及している発明品>
 『プライド・ビューワー』

 スイッチを入れると
 相手の自尊心(自己肯定感)の高さが可視化される
 高い⇒バスケットボールより大きく
 低い⇒ゴルフボールより小さく

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




【第4話:”私だけは大丈夫”という自惚れ】



<半年後>

イリス
「フン!男なんて、イバってるだけ!」




小動物系の私は、男性からモテた。
出会いの場へ行くたびに、男性からアプローチを受けた。

「私は無意識に、暴力的な男性との関係が”心地よい”」
「だから私に寄ってくるのは、そういう男性が多い」

それをわかった上で、その男性の本性を見極めた。

少し、仲が進展する相手も増えた。
けど、いい感じになると、決まって男性が少し強引になった。

やんわりフッていたつもり。
けど、私は無意識に”上から目線”になっていた。

イリス
「フン!男なんて、イバってるだけで小心者ばっかりじゃない!」


私のそういう態度を読み取った相手に、
必要以上の”失恋の痛手”を負わせ、恨みを買ってしまった。


ーー


この前、仲良くなった男性と2人で飲みに行った帰り、
”夜” のお誘いを受けた。

少し、強引に。

イリス
「まだお付き合いしてるわけじゃないし…。」
「もう少し仲良くなってからにしたいな。」
「それまで待ってくれる?」


私は相手を傷つけないよう、やんわり断った。
誠実な男性なら、きっと待ってくれる。
私はそういう人を選んだはず。

なのに、

男性
『はぁ?!ここまで来たら同意してるようなもんだろ?!』


とたんに、男性が凶暴な本性をあらわにした。

私は穏便に断ろうとしたが、
男性はますます強引に迫ってきた。



ここでやめておけばいいのに、
私はプライド・ビューワーのスイッチを入れてしまった。

イリス
「あなた、エラそうにしてるけど、自尊心こんなに小さいじゃない?」
「たった1度断られたからって、何が傷ついたの?薄いプライド?」


私はつい、相手の低い自尊心を刺激し、
逆ギレのスイッチを入れてしまった。


男性
『な、何だと?!この…!』


男性は手を振り上げ、拳を握った。

私は内心、怯えながら、
彼のしぼんでいく自尊心を煽ってしまった。

イリス
「思い通りにならないからって、力に訴えることしかできないの?」


彼の自尊心は、どんどん縮んでいった。
同時に、私の自尊心も…。

男性
『う、うるせぇ!いいから来いよ!』


イリス
「キャッ!!」


逆上した男性は、私の腕を力まかせに掴んだ。

このままでは、
”宿泊施設”が立ち並ぶ区画へ連れて行かれる。


それだけはイヤ…!
私は恥を捨てて、大声で叫んだ。

イリス
「痛い!離して!誰か助けて!!」


男性
『この…!!大声出すなよ!』


慌てた男性は、私の口をハンカチで塞ごうとしてきた。
もうダメ…!連れて行かれる…!

仕方ないか…。
煽ったのも、暴力的な人を見抜けなかったのも、私のせい…。

半ば諦めた、そのとき、



通行人
『お巡りさん、こっちです!早く!』


警察官
『コラー!何してる!手を離しなさい!』


たまたま、私たちのやり取りを見ていた通行人が、
警察を呼んでくれた。

私の腕を掴んでいた男性は、
2人の警察官に取り押さえられた。

警察官
『大丈夫ですか?!ケガはありませんか?!』


イリス
「ハァ…ハァ………大丈夫…です…。」


掴まれた右手首が痛かった。
見ると、引っ搔き傷から血が滲んでいた。

それ以上に、私の手首に黒い手跡が残った気がした。
暴力的で、支配的な、男性の大きな手跡が。



ーー


その後、私は傷の手当や、
警察からの事情聴取を受けて帰宅した。

……助かった……。けど、

イリス
(半分は自業自得だ…。)
(私、男を見る目がぜんぜんなかった。)
(その上、男性を見下して、挑発して…。)


私は、いま世界で起きている
「相手の低い自尊心を刺激し、逆ギレされるトラブル」を
他人事だと思っていた。

”私だけは大丈夫”と、うぬぼれていたことを後悔した。

相手の心の状態が見えるのは、良いことばかりじゃない。
見えるからこそ”比較”しやすくなる。

そして、少しでも優越しようとする。
すると、相手は劣等感から逃れるために反撃する。

悲しいけど、それが人間なんだ…。



私はおそるおそる、
プライド・ビューワーを自分へ向けた。

半年前は卓球のボールくらいだった、私の自尊心。
それが今は、モデルガンの弾くらい。

イリス
「こんなに小さくなってる…。」
「男性恐怖だったときより、自己否定が強くなってるの?」


私は痛い目を見て、初めて反省した。
この日、私は男性を見下すのを止めると決意した。



【第5話:幸せを遠ざける”他人との比較”】へ続く

2023年07月28日

【短編小説】『もし自己肯定感の高さが見える世界になったら』3

【MMD】Novel Jiko Koutei SamuneSmall1.png

【第2話:小心者とバレる世界】からの続き

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<登場人物>

沢田 イリス
 主人公
 23歳、身長145p
 怖い父親の影響で、大人になっても男性恐怖に悩む


<この世界へ普及している発明品>
 『プライド・ビューワー』

 スイッチを入れると
 相手の自尊心(自己肯定感)の高さが可視化される
 高い⇒バスケットボールより大きく
 低い⇒ゴルフボールより小さく

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



【第3話:自己否定と逆ギレの果てに】



<ある朝・通勤電車>

女性
『あのー、少し詰めてもらえませんか?』


男性
『(ムッ…)……。』


男性は、ドカっと広げた足を閉じることを、無言で拒否した。
むしろ腕を組み、ますますふんぞり返って見せた。

女性がプライド・ビューワーのスイッチを入れると、
モデルガンの弾ほどの、小さな自尊心が映し出された。

(クスクス…。)
(やっぱりねぇ…虚勢を張る男ってカッコ悪い…。)


ひそひそと、周囲からそんな会話が聞こえてきた。

男性
『おい!よくもバラしたな!』


突然の、男性の逆ギレ。

女性
『はぁ?!何をエラそうに。』
『ほんとは怖いんでしょ?見えてるよ?あんたの小っさい自尊心。』


男性
『うぐッ…お、お前、誰に向かって…!』
『オレは大手●会社の部長だぞ?!』


女性
『肩書きがないとイバれないの?』
『公共の場で他人の迷惑も考えられないくらい、”心のヨユー”がないくせに!』


車内は騒然となった。

その後、通勤のイライラを抑えていた他の乗客も参戦。
大ゲンカになり、電車は1時間近く止まってしまった。

私は大遅刻。
その後、店長に理由を説明すると、

書店店長
『仕方ないよ。この手の電車遅延、最近すごく多いから。』
『沢田さんは初めて?』


イリス
「初めてです…。」


書店店長
『そうか。さっき聞いたようなケンカが大半の原因らしいよ。』
『今後もよくあるだろうから、気にしなくていい。』



ーー


<その日の夜>

イリス
「仕事終わったー。」
「今日は朝から疲れた…。あんなケンカ、初めて見た。」


あまりお酒を飲まない私だけど、今日は飲みたい気分。
明日に引きずりたくないし、1人飲みしてスッキリしよう。

私は、お気に入りのダイニングバーで、まったりしていた。
すると、近くの席の男性の声がした。

男性
『おーい、そこのキミ!注文!早く来て!』


女性店員
『は、はい!お待たせしました!』


男性
『ったく…遅いんだよ。呼ばれたらさっさと来いよ。』


女性店員
『も、申し訳ございません!』


同席の女性
『ちょっと!この方、他のお客さんの対応してたじゃないの。』
『それくらい待てばいいでしょ?!』


男性
『オレが呼んだんだから、優先して来るのが当然だろ?』


同席の女性
『当然じゃないし!店員さんに失礼な態度はやめなよ…。』


同席の女性は、男性を止めようとしたが、
彼は終始、横柄だった。


聞こえてくる限り、お店側に非はない。

私はこっそり、プライド・ビューワーのスイッチを入れた。
男性の自尊心は、とても小さく映っていた。



店長
『失礼ですが、お客様。』
『当店スタッフへの、あのような態度はお止めください。』


涙目の女性店員さんが、店長を呼んできた。

男性
『な…?!て、店員のくせに、客に口答えか?!』


店長
『当店では正当な理由がない場合、毅然とした対応をすることにしています。』


男性
『こ、こっちは金を払うんだぞ?お客様は神様だろうが?!』


店員
『おや?また小さくなりましたね?お客様の自尊心。』


同席の女性
『ねぇ、いい加減やめなよ!全然かっこよくないよ!』
『店長さん、ほんとにごめんなさい!』


その後、2人は申し訳なさそうにお店を立ち去った。
男性は冷や汗をかき、背中を自信なさげに丸めていた。


ーー


プライド・ビューワーを開発したチームの
『自尊心の低さからくる”攻撃性”に怯える人を救いたい』
という目的は、見事に達成された。

今までは、理不尽でも
「態度や声が大きい者」が得をする社会。
ぶつけられる方は耐えるしかなかった。

それがプライド・ビューワーのおかげで、
「弱い自分や、なけなしのプライドを守るため」
だとわかるようになった。

人々は心理的にも、
理不尽には「No」と言える気運が高まった。



ただ、

自尊心が低い人の行動心理が可視化されたことで、
新たなトラブルも発生した。

自尊心が低いと「0か100か思考」になりやすい。
反撃されると「自分自身が否定された」と拡大解釈し、
逆ギレする人が続出した。


逆ギレした男性が白熱し、
暴力事件に発展するケースも増えた。

イリス
「多少のトラブルは増えたけど…。」
「私にとっては良いことの方が多いかなぁ。」


そう、私はプライド・ビューワーのおかげで、
長年の男性恐怖を克服できそうなのだ。

そして、

イリス
「もう、男の人なんて怖くないから、恋愛…してみようかな。」
「大丈夫!相手の低い自尊心を刺激しなければいいんでしょ?簡単!」


”私だけは大丈夫、トラブルなんか起こさない”

私はそう勘違いをしたまま、長年諦めてきた恋愛へ突き進んだ。
私の自尊心が、少し小さくなったことに、気づかないまま。



【第4話:”私だけは大丈夫”という自惚れ】へ続く

2023年07月27日

【短編小説】『もし自己肯定感の高さが見える世界になったら』2

【MMD】Novel Jiko Koutei SamuneSmall1.png

【第1話:行動心理学界の”iPhone”】からの続き

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<登場人物>

沢田 イリス
 主人公
 23歳、身長145p
 怖い父親の影響で、大人になっても男性恐怖に悩む


<この世界へ普及している発明品>
 『プライド・ビューワー』

 スイッチを入れると
 相手の自尊心(自己肯定感)の高さが可視化される
 高い⇒バスケットボールより大きく
 低い⇒ゴルフボールより小さく

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



【第2話:小心者とバレる世界】



相手の自尊心(自己肯定感)の高さがわかる
『プライド・ビューワー』は、
スマホよりも早く、全世界へ普及した。

私、沢田 イリスも、
男性恐怖を克服したくて
プライド・ビューワーを持ってみた。

ある朝、いつもの通勤電車で立っていると、

ドカッ!!

私の背筋が凍った。
これは…男性が荒々しく着席した音だ。
振り返ると、足を大きく広げて座る男性の姿があった。

イリス
(怖い…けど、もしかしたら…。)


私はそっと、プライド・ビューワーのスイッチを入れた。
すると、

イリス
「…あの男性の自尊心…あんなに小さいの…?!」


彼の胸のあたりには、
モデルガンの弾くらいの、小さな自尊心が映し出された。


心理解説機能をオンにし、イヤホンで聞いてみると、

AI
『足を広げて座るのは虚勢、もしくは自信のなさによる強い縄張り意識です。』
『相手に見くびられないため、自分を大きく見せています。』


イリス
「そっか…。確かに、自分の領域を主張してるようにも見える…。」


AI
『また、足を広げて男性器を目立たせるという性的アピールの意味もあります。』
『無意識に”自分に関心を向けてほしい欲求”が漏れています。』


イリス
「…///(照)…それは聞かない方がよかった(苦笑)」
「腕を組んでて、余計に強そうに見えるけど、あれは?」


AI
『腕を組むのは”本心を悟られたくない”心理です。』
『もしくは不安から、大事な胸部を包むように守りたい心理です。』


この日から、私は少しだけ、
電車で足を広げて座る男性が怖くなくなった。


ーー


<勤務先の書店>

イリス
「…!!あの人…また来た…。」


私がレジから離れた本棚で品出しをしていると、
件のクレーム男性が連日の来店。

やっぱりレジで文句を言っていた。

私は、震える背中にぐっと力を入れ、
プライド・ビューワーのスイッチを入れた。

今朝の電車にいた男性よりも、小さな自尊心が映し出された。
私の位置からは見えないくらい、小さな自尊心が。

AI
『立場の弱い人にしかイバれないのは、普段から抑圧されている反動です。』
『自分を出せず、小さく見せている鬱憤を、反撃してこない相手にぶつけるのです。』


イリス
「もしかして、女性と食事に行った先で、横柄な態度を取る男性も同じ?」


AI
『同じです。女性に自分の強さを誇示し、関心を引きたい心理も加わります。』


イリス
「そっか…。本当はあの人、何かに怯えてるのかな…。」


レジ対応した同僚も、駆けつけた店長も、
プライド・ビューワーのスイッチを入れたみたい。

2人とも、哀れみの表情で彼を見ていた。

その後、男性は警備員に連れ出された。
さすがにやり過ぎたのか、ふたたび来店することはなくなった。


ーー


終業後、私は書店のある繫華街をぶらぶらしていた。
幸せそうなカップルとすれ違うたびに思った。

イリス
「過去に1度でも告白をOKしてたら、私もあんなふうになれたのかな…。」


意味のない「ifの世界線」を思い描いた。

ただ、私に告白してきた男性はみな、短気で暴力的な人。
もしかして、これも自尊心の低さと関係あるの?

気になった私は、
プライド・ビューワーの心理解説機能をオンにした。

AI
『正確にはわかりません。』


イリス
(だよね。今さら何やってんだろ、私。)




AI
『ただ。』


イリス
「?!」


AI
『中には、”この人なら力で支配できる”と思った男性もいたでしょう。』


イリス
「やっぱり…。」


AI
『また、あなたのお父さんも暴力性が強い場合…。』


イリス
「?!どうしてわかるの…?」


AI
『あなた自身が、無意識に”そういう男性との関係が心地よい”ことも原因です。』
『何しろ、男性との”慣れ親しんだ関係”ですから。』


イリス
「私は、暴力的な男性との関係が心地よい?そんなわけ…。」


AI
『そのウラには、あなた自身の自尊心の低さがあります。』
『原因は、”私には誠実な男性から好かれる価値がない”という自己否定です。』


イリス
「?!……。」


私はおそるおそる、
プライド・ビューワーを自分へ向け、スイッチを入れた。
卓球のボールくらいの、小さな自尊心の球が浮かんできた。



図星…か。
私、自己否定が強いから、良い人に慣れてないんだ。


誠実な人と付き合いたいと思っていても、
無意識では居心地が悪かったんだ。

それなら、
自己否定をやめる努力をすれば、
私も幸せな恋愛ができるかも!

男性の怖い言動の心理もわかったし、
プライド・ビューワーって良いことずくめ!



このときの私は、
プライド・ビューワーのおかげで
人生が好転すると信じて疑わなかった。

どんな光にも影があることに、考えが及ばなかった。



【第3話:自己否定と逆ギレの果てに】へ続く

2023年07月26日

【短編小説】『もし自己肯定感の高さが見える世界になったら』1

【MMD】Novel Jiko Koutei SamuneSmall1.png

<登場人物>

沢田 イリス
 主人公
 23歳、身長145センチ
 怖い父親の影響で、大人になっても男性恐怖に悩む
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【第1話:行動心理学界の”iPhone”】



 ----------------------------------------

 ”比較”は、喜びを奪う泥棒だ』


 第26代アメリカ合衆国大統領:セオドア・ルーズベルト

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私は沢田 イリス
本が好きで、書店で働いている。

いきなりだけど、私は男性が怖い。

男性の大きな声や、高圧的な態度を見聞きすると、
背筋が凍ってしまう。

私の身長は145センチ。
たいていの男性から見下ろされる。
だから男性とすれ違うだけでも怖い。

相手には何の非もないので、申し訳ない気持ちになる。



私の男性恐怖のルーツはたぶん、
いつもイライラしているお父さんを見てきたこと。


お父さんは私に手を上げたことはない。

けど、モノに八つ当たりしたり、
お母さんに高圧的な態度を取ったりしていた。

お父さんは時間や規則に厳しかった。
門限を過ぎると家に入れてもらえなかったり、
就寝時間を過ぎると押し入れに閉じ込められたりした。

「いつでも手を出せるんだぞ」
そう態度で示しながら、実際には手を出さない。
私は、そんなお父さんがいつ爆発するかと怯えていた。

私にとって、家は安心できる場所ではなく戦場だった…。


ーー


通勤電車で、
足を広げてドカッと座る男性がよくいる。


本人は無意識かもしれないけど、
「オレは強いぞ」という威圧感がある。

私はその姿に、お父さんを重ねてしまう。
恐怖で意識を失いそうになる。

車内が混んでいて離れられないときは、
降車するまで、ぐっとこらえる。



仕事中、たまにレジカウンターで、
大声でクレームを言ってくる男性がいる。


この前、古本の買取金額に納得できないお客さんが、
レジにいた私に怒鳴ってきた。

「おい!この本がどうしてこんな安値しかつかないんだよ?!」

その男性はたぶん50代、身長は160センチくらい。
普段は控えめで、おどおどしてそうな見た目。

だから、豹変した姿が余計に怖かった。

力を行使してきそうで、態度だけに留める。
その姿が、やっぱりお父さんと重なった。

幸い、店長が助けてくれたけど、
その後、私はバックヤードで泣いた…。


ーー


私は、男性には”小動物”に見えるみたい。
だからか、学生時代に何度か交際を申し込まれた。

私を好いてくれることは嬉しい。
なのに、私に告白してくる男性は皆、短気で暴力的な人。

そういう人は、すぐわかる。
お父さんと同じ空気をまとっている。

結局、すべて断ってしまった。
いま思えば、DVを回避できてよかった。

けど、私は恋愛に興味津々な時期を、
交際経験ゼロで過ごすことになってしまった。



ーーーーー



<ある朝>

イリス
「はぁ…またあの人が来たら怖いなぁ…。」


前日、件のクレーム男性がまた来店し、ひと暴れした。
このとき私は遠くにいたけど、やっぱり怖かった。

暗い気持ちのまま、出勤の準備をしていると、
ある新製品のニュースが私の目に留まった。



『世紀の発明ふたたび!行動心理学界の”iPhone”』



イリス
「行動の…心理?」


その製品は、
自分や相手の自尊心・自己肯定感の高さが可視化される、

『プライド・ビューワー』

スイッチを入れると、その人の胸のあたりに、
自尊心の高さがボール状に表示される。

自尊心が高い人は、バスケットボールより大きく。
低い人は、ゴルフボールより小さく。

さらに、”行動心理の解説機能”も付いている。

オンにすると、AIが過去の心理研究結果を参照し、
その人の行動のウラにある心理を解説してくれる。

イリス
「これ…今の私にぴったりかも…!」




プライド・ビューワーを開発したチームは、
記者会見で目的を語った。

『自尊心の低さからくる”攻撃性”に怯える人を救うため。』

イリス
「??どうして自尊心の”低さ”から?」


頭に「?」が浮かぶ私をよそに、研究チームは続けた。

研究チーム
『他者を攻撃するのは、多くの場合、他者への怯えからだ。』
『弱い自分を守るため、攻撃される前にこちらから攻撃する。』
『自信のない者ほど、それを悟られないよう、自分を大きく見せようとする。』


イリス
「そうだったの?!」


研究チーム
『我々は、一見強そうな者からの攻撃に怯える人を救いたい。』
『彼らの行動の背景を知ることで、自らの心に余裕を生み出してほしい。』


イリス
「強い人が、弱い人を攻撃するんだと思ってたけど、違った…。」
「弱い人が、弱さを隠したくて攻撃するんだ…!」


私の目から、複数のウロコが落ちた。
今まで私は、必要以上に男性に怯えてきたのかもしれない。

確かに、力では男性に敵わない。

けど、プライド・ビューワーがあれば、
相手が本当は自信がないことが”見える”。


私、もしかしたら男性恐怖を克服できるかも!



【第2話:小心者とバレる世界】へ続く

2023年07月15日

【短編小説】『恋の麻酔と結婚教』4 -最終話-

【MMD】Novel Koino Masui SamuneSmall2.png

【第3話:空想に救われた少女】からの続き

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<登場人物>
白神 想虹亜(しらかみ そにあ)
 主人公
 20歳、大学生、文学部在籍
 中学生時からWeb小説家として活動

秋月 心楽(あきづき みらん)
 主人公と同じ大学に通う幼馴染み
 20歳、デザイン学部在籍
 イラストレーター志望
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



【第4話(最終話):私自身でいるために】



私、白神 想虹亜
中学生の頃から小説投稿サイトへ作品投稿を始めた。

最初の数年間は読者がほとんどいなかった。

数年後、少しだけ人気が出てきた。
けど作品への酷評や心無い言葉も増えていった。

どうして私は、
このときに小説投稿を辞めなかったんだろう。

人気になればファンは増えるけど、
当然アンチも増える。

人気作家を目指すなら、
それに耐えたり受け流したりする術が必要。

私、はっきり覚えてる。

私は作品を投稿するとき、
アンチがどうとかランキングがどうとか、
まったく頭になかった。

心無いコメントを見たら悲しくなったけど、
「投稿を辞めよう」という考えには結びつかなかった。

私はただ物語を作るのが好きで、
誰かに読んでもらえることが嬉しかった。
わくわくしながら投稿ボタンを押していた。


気づいたら多くの読者さんや、
Web小説界隈での人気が付いてきてくれた。

本当に、ただそれだけだった。


ーー


想虹亜
「私、やっぱり小説を書きたい。」
「自由な空想の世界へ行くのが楽しいから。」
「売れなくても、人気が下がっても構わない!」


心楽
『…スッキリした顔しちゃって。』
『たどり着いたみたいね、答えに。』


想虹亜
「うん。ありがとう心楽。」
「また助けてもらったね。」


心楽
『お礼を言いたいのは私だよ。』
『想虹亜と出逢わなかったら、きっと絵を諦めていたから。』


想虹亜
「あのときは急に話しかけられてびっくりしたよ。」
「私、友達いなかったから。」


心楽
『…すごく興味を引かれたの。』
『私と同じ”独りぼっちの空気”をまとってる気がして。』


想虹亜
「あはは、何よ?”独りぼっちの空気”って(笑)」
「その通りだけどさ(笑)」


心楽
『類友でしょ?(笑)』
『けど想虹亜は私と違って、諦めに抵抗していた。』
『この子すごいなぁ、強いなぁって思ったんだよ?』


想虹亜
「あの頃の暗い私を見てそう思ったの?」
「やっぱり心楽は変わってる(笑)」


心楽
『うるさいなー、自覚あるわ!(苦笑)』
『だから私たちお似合いでしょ?変わり者同士。』


想虹亜
「あはは(笑)お似合いのカップルね(笑)」


心楽
『カップル///(照)』


想虹亜
「照れてる?」


心楽
『照れてるッ!(汗)』


想虹亜
「素直でよろしい(笑)」


心楽
『何でいつの間にか私がイジられてるのよ?(照)』


想虹亜
「おかげで元気出た!」


心楽
『まったくもう…(苦笑)』
『とにかく自信持ちなって!』
『あんたには十分、人を救える力があるんだよ!』


想虹亜
「…うん。ありがとう……親友。」


心楽
『どういたしまして!』
『で、私が表紙を描きたいって話は承諾してくれる?』
『 セ ン セ イ ?』


想虹亜
「もちろん!よろしくお願いします!」
「次の作品、書くよ!」




ーーーーー



<数年後>

私、白神 想虹亜
大学を卒業し社会人になった。

漫画動画の制作会社で、
シナリオライターとして働きながら、
Web小説家を続けている。

商業作家ではないけど、
私にとってはそれが良かった。

売れ線を気にしなくなり、
以前にも増して”私の色”を出せるようになった。




書籍化の話が流れて以来、
ハッピーエンドのラブストーリーは書いていない。

最近で1番よくできたと思える作品は、
「恋愛の先に幸せを見いだせないヒロインの成長物語」

家庭環境から、
恋愛や結婚への不幸なイメージを持ったヒロインが、
主人公と出逢い、少しずつ前向きになっていく。

小説というより自伝に近い。

作中には交際もプロポーズもドキドキもない。
逆にそれが大人気になった。

同じような境遇の読者さんが、
ヒロインの現実的な葛藤に共感してくれた。




親友の秋月 心楽は、
私と同じ会社でイラストレーターとして働いている。

会社では私がシナリオを書き、
心楽がイラストを描いている。

そしてプライベートでは
「恋愛の先に幸せを見いだせないヒロインの成長物語」
の表紙も担当してくれた。

この作品が大人気になったのは、
心楽の美麗なイラストあってこそ。

私たちは公私ともに、
2人で作品を作るという夢を叶えることができた。




やっぱり、これが私だ。

きれいごと抜きの心理描写。
不器用にさらけ出した感情表現。

バッドエンドでも、
現実的すぎて救いがなくてもいい。

誰か1人でも読んでくれる人がいるなら、
その人に届けばいい。

私が物語を作るのは、私自身でいるためだから。



ーー


私がこの先、
ハッピーエンドのラブストーリーを
書くことはあるんだろうか?

わからない。
恋愛や結婚への不幸なイメージはそのまんま。

今までは、
そんなイメージを持つ私はダメだと思っていた。
払拭しなきゃいけないと思ったこともあった。

けど今は、
それも私の一部だと受け入れられるようになった。



もし書くとすれば、心楽みたいに
「誰かと歩む人生も悪くないかも」と
思えるようになったとき。

そう思えるなら幸せだけど、
一生思えないならそれでもいい。

自分にウソをついてムリヤリ家庭を持つより、
家庭を持たない選択をする方が私自身でいられる

私がすることは昔も今も同じ。
大好きな物語を書き続けること。

私自身が心から納得する結末を、
登場人物に迎えさせること。




ーーーーーENDーーーーー



⇒他作品
【短編小説】『どんな家路で見る月も』1話完結

【短編小説】『孤独の果てに自由あり』全5話


⇒参考書籍















2023年07月14日

【短編小説】『恋の麻酔と結婚教』3

【MMD】Novel Koino Masui SamuneSmall2.png

【第2話:売れ線 ≒ 結婚教信者向け?】からの続き

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<登場人物>
白神 想虹亜(しらかみ そにあ)
 主人公
 20歳、大学生、文学部在籍
 中学生時からWeb小説家として活動

秋月 心楽(あきづき みらん)
 主人公と同じ大学に通う幼馴染み
 20歳、デザイン学部在籍
 イラストレーター志望
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



【第3話:空想に救われた少女】



<大学近くのカフェ>

心楽(みらん)
『で?!何があったの?正直に話してよ?』


私が小説執筆を休止して1ヶ月。

今日は親友の心楽(みらん)に、
行きつけのカフェへ呼び出されていた。

彼女は明らかに様子がおかしい私を気遣って、
外へ連れ出してくれた。

心楽(みらん)
『想虹亜(そにあ)が1ヶ月も小説を書かないなんて初めてだよね。』
『原因は書籍化の話がなくなったこと、ではないように見えるけど、どう?』


やっぱり親友には、お見通しだ。
私は心楽(みらん)に、すべての悩みを打ち明けた。

一般受けする”シアワセな恋愛”が書けないこと。
商業作家として致命的なのに、心は売れ線を拒んでいること…。

そして、



想虹亜(そにあ)
「実は、もうWeb小説家を辞めようと思ってるの…。」




心楽(みらん)
『…そっか。』
『想虹亜(そにあ)が悩んで決めた道なら、いいんじゃない?』
『人生、何も小説がすべてじゃないし。』


心楽(みらん)は、あっさりした口調でそう言った。

そう…だよね。
引き止められたいなんて、私のエゴ。
彼女は、私が決めた人生の選択を応援してくれただけ。

私がお礼を言おうとすると、

心楽(みらん)
『けどね。』


彼女は、これまでとは打って変わって、寂しそうな顔をした。

心楽(みらん)
『本当は、想虹亜(そにあ)が小説を辞めてしまうのは寂しい。』
『私がイラストレーターの夢を追い続けられるのは、想虹亜(そにあ)のおかげだから。』


想虹亜(そにあ)
「私のおかげ?どういうこと?」


心楽(みらん)
『出逢った頃、あんたは私の心を救ってくれた。』
『空想の世界へ行けば自由になれるって、教えてくれたでしょ?』


想虹亜(そにあ)
「…あ…!」


そうだ。
彼女も私と同じ、空想へ救いを求めた1人…。



ーーーーー

<十数年前:心楽(みらん)の回想>

心楽(みらん)の母
「普通にしなさい!」
「セケンサマに恥ずかしい…!」
「みんなと違うことはしないでちょうだい!」


私、秋月 心楽(あきづき みらん)の両親は、
世間体ばかり気にする人たちだった。

私は小さい頃から、絵を描くのが好きだった。
けど、

心楽(みらん)の父
「絵で食べていけるわけないだろ!」
「そんな不安定な仕事は許さん!」


心楽(みらん)の母
「絵なんか描いてるヒマがあるなら勉強しなさい!」
「良い大学に入って、良い会社に勤めなさい!」


親は”普通じゃない””世間体が悪い”という理由で、
私が絵を描くことを許さなかった。

「好きなことを見つけても、両親が気に入らなければ否定される…。」

そう思い知った私は無気力になり、
いつも教室の隅でじっとしていた。



そんな私は、
小学校のクラス替えで白神 想虹亜(しらかみ そにあ)と出逢った。

彼女も教室の隅で、静かに過ごしていた。
私と同じ、”諦観の空気”をまとって。

1つ違ったのは、彼女が黙々と何かを書いていたこと。

心楽(みらん)
『ねぇ、何書いてるの?』


私はその子が気になり、勇気を出して話しかけてみた。

想虹亜(そにあ)
「自分で作った物語を書いてるの。」


心楽(みらん)
『自分で作ったの?すごい!』
『ちょっと読ませてもらってもいい?』


想虹亜(そにあ)
「うん、恥ずかしいけど、いいよ。」


心楽(みらん)
『ありがと!』


これが、私たちの初めての会話。



私は、想虹亜(そにあ)が書いた小説に感動した。

物語はもちろん、すばらしかった。
それ以上に、まるで全身の鎖が解かれるようだった。

このとき、私は気づいた。
空想の中でなら、自由になれる。
どんな私を表現しても、両親に否定されないことに。


名前、想虹亜(そにあ)ちゃんっていうんだ。
この子、すごいなぁ。

私が諦めかけていた自由を、
彼女は手に入れようと、もがいている。
私も自己表現すれば、自由になれるかな…?

私、やっぱり絵を描きたい!

親は”ムダだ”と言う。
けど、やっぱり好きなことを諦めたくない!



<心楽(みらん)の回想終わり>

ーーーーー



想虹亜(そにあ)
「…あれが出逢いだったね、懐かしいね…。」


心楽(みらん)
『うん。だから想虹亜(そにあ)のおかげ。』
『それでね、ずっと目標にしてたんだ。』
『いつか、想虹亜(そにあ)の小説の表紙を描きたいって。』


想虹亜(そにあ)
「そうだったの?!」
「そんなこと、今まで一言も…。」


心楽(みらん)
『うん、言わなかった。』
『私にはまだ、想虹亜(そにあ)みたいな実力も実績もないし。』
『力不足の私が、想虹亜(そにあ)の足を引っ張りたくなかったの。』


想虹亜(そにあ)
「そんなことないよ!むしろ嬉しいよ!」


心楽(みらん)
『ありがと。』
『そんなわけで、今の私がいるのは想虹亜(そにあ)のおかげ。』
『いつか2人で作品を作るっていう目標を持たせてくれたから。』


想虹亜(そにあ)
「2人で作品を…。」
「けど、それを言ったら、今の私こそ力不足だよ…。」


心楽(みらん)
『恋愛小説への苦手意識?』


想虹亜(そにあ)
「うん…。」


心楽(みらん)
『私は十分、救われてきたよ。』
『読者に不評でも、私はもっと読みたい。お世辞なんかじゃない。』
『そして、いつか表紙を描きたい。その思いは変わってないよ。』


想虹亜(そにあ)
「…どうして…?あんなに”ウソっぽい幸せ”なのに…?」


心楽(みらん)
『あんた自身が、恋愛の先に幸せを見出せないのはムリない。』
『それでも、小説で結ばれる2人を見てると、こう思えるんだ。』
『私、”幸せな恋愛を諦めなくていいのかも”って。』


想虹亜(そにあ)
「諦めなくて…いい?」


心楽(みらん)
『うん。想虹亜(そにあ)はウソっぽく思ってもさ。』
『きっと、作者の葛藤を読み取って共感してる読者もいるよ。』
『むしろ、幸せ一色で完結する方がウソっぽい。』
『ぎこちない悩みがにじみ出てる方がいい、ってさ。』


想虹亜(そにあ)
「そっか…それなら、嬉しいな…。」


心楽(みらん)
『私はずっと、想虹亜(そにあ)の小説のファンだから。』
『売れなくても、人気がなくなっても変わらないよ。』
『もちろん、2人で作品を作りたい目標も!』




親友の言葉で、私は目が覚めた。

私のウソっぽくて、納得いかない恋愛小説でも、
誰かを救えていたんだ。


それに気づいた私は、自分に問い直した。

私は、誰かに認められるために小説を書いているの?
他人に認められない作品には、価値がないの?

基準は他人?
私にとって、小説は承認欲求を満たす道具?

想虹亜(そにあ)
「私は人気作家になりたいの?」
「それとも、物語を作るのが好きなの?」


私は…。



【第4話(最終話):私自身でいるために】へ続く
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理琉(ワタル)
自閉傾向の強い広汎性発達障害。鬱病から再起後、低収入セミリタイア生活をしながら好きなスポーツと創作活動に没頭中。バスケ・草野球・ブログ/小説執筆・MMD動画制作・Vroidstudioオリキャラデザインに熱中。左利き。 →YouTubeチャンネル
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