2023年07月15日
【短編小説】『恋の麻酔と結婚教』4 -最終話-
⇒【第3話:空想に救われた少女】からの続き
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<登場人物>
・白神 想虹亜(しらかみ そにあ)
主人公
20歳、大学生、文学部在籍
中学生時からWeb小説家として活動
・秋月 心楽(あきづき みらん)
主人公と同じ大学に通う幼馴染み
20歳、デザイン学部在籍
イラストレーター志望
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【第4話(最終話):私自身でいるために】
私、白神 想虹亜は
中学生の頃から小説投稿サイトへ作品投稿を始めた。
最初の数年間は読者がほとんどいなかった。
数年後、少しだけ人気が出てきた。
けど作品への酷評や心無い言葉も増えていった。
どうして私は、
このときに小説投稿を辞めなかったんだろう。
人気になればファンは増えるけど、
当然アンチも増える。
人気作家を目指すなら、
それに耐えたり受け流したりする術が必要。
私、はっきり覚えてる。
私は作品を投稿するとき、
アンチがどうとかランキングがどうとか、
まったく頭になかった。
心無いコメントを見たら悲しくなったけど、
「投稿を辞めよう」という考えには結びつかなかった。
私はただ物語を作るのが好きで、
誰かに読んでもらえることが嬉しかった。
わくわくしながら投稿ボタンを押していた。
気づいたら多くの読者さんや、
Web小説界隈での人気が付いてきてくれた。
本当に、ただそれだけだった。
ーー
想虹亜
「私、やっぱり小説を書きたい。」
「自由な空想の世界へ行くのが楽しいから。」
「売れなくても、人気が下がっても構わない!」
心楽
『…スッキリした顔しちゃって。』
『たどり着いたみたいね、答えに。』
想虹亜
「うん。ありがとう心楽。」
「また助けてもらったね。」
心楽
『お礼を言いたいのは私だよ。』
『想虹亜と出逢わなかったら、きっと絵を諦めていたから。』
想虹亜
「あのときは急に話しかけられてびっくりしたよ。」
「私、友達いなかったから。」
心楽
『…すごく興味を引かれたの。』
『私と同じ”独りぼっちの空気”をまとってる気がして。』
想虹亜
「あはは、何よ?”独りぼっちの空気”って(笑)」
「その通りだけどさ(笑)」
心楽
『類友でしょ?(笑)』
『けど想虹亜は私と違って、諦めに抵抗していた。』
『この子すごいなぁ、強いなぁって思ったんだよ?』
想虹亜
「あの頃の暗い私を見てそう思ったの?」
「やっぱり心楽は変わってる(笑)」
心楽
『うるさいなー、自覚あるわ!(苦笑)』
『だから私たちお似合いでしょ?変わり者同士。』
想虹亜
「あはは(笑)お似合いのカップルね(笑)」
心楽
『カップル///(照)』
想虹亜
「照れてる?」
心楽
『照れてるッ!(汗)』
想虹亜
「素直でよろしい(笑)」
心楽
『何でいつの間にか私がイジられてるのよ?(照)』
想虹亜
「おかげで元気出た!」
心楽
『まったくもう…(苦笑)』
『とにかく自信持ちなって!』
『あんたには十分、人を救える力があるんだよ!』
想虹亜
「…うん。ありがとう……親友。」
心楽
『どういたしまして!』
『で、私が表紙を描きたいって話は承諾してくれる?』
『 セ ン セ イ ?』
想虹亜
「もちろん!よろしくお願いします!」
「次の作品、書くよ!」
ーーーーー
<数年後>
私、白神 想虹亜は
大学を卒業し社会人になった。
漫画動画の制作会社で、
シナリオライターとして働きながら、
Web小説家を続けている。
商業作家ではないけど、
私にとってはそれが良かった。
売れ線を気にしなくなり、
以前にも増して”私の色”を出せるようになった。
書籍化の話が流れて以来、
ハッピーエンドのラブストーリーは書いていない。
最近で1番よくできたと思える作品は、
「恋愛の先に幸せを見いだせないヒロインの成長物語」
家庭環境から、
恋愛や結婚への不幸なイメージを持ったヒロインが、
主人公と出逢い、少しずつ前向きになっていく。
小説というより自伝に近い。
作中には交際もプロポーズもドキドキもない。
逆にそれが大人気になった。
同じような境遇の読者さんが、
ヒロインの現実的な葛藤に共感してくれた。
親友の秋月 心楽は、
私と同じ会社でイラストレーターとして働いている。
会社では私がシナリオを書き、
心楽がイラストを描いている。
そしてプライベートでは
「恋愛の先に幸せを見いだせないヒロインの成長物語」
の表紙も担当してくれた。
この作品が大人気になったのは、
心楽の美麗なイラストあってこそ。
私たちは公私ともに、
2人で作品を作るという夢を叶えることができた。
やっぱり、これが私だ。
きれいごと抜きの心理描写。
不器用にさらけ出した感情表現。
バッドエンドでも、
現実的すぎて救いがなくてもいい。
誰か1人でも読んでくれる人がいるなら、
その人に届けばいい。
私が物語を作るのは、私自身でいるためだから。
ーー
私がこの先、
ハッピーエンドのラブストーリーを
書くことはあるんだろうか?
わからない。
恋愛や結婚への不幸なイメージはそのまんま。
今までは、
そんなイメージを持つ私はダメだと思っていた。
払拭しなきゃいけないと思ったこともあった。
けど今は、
それも私の一部だと受け入れられるようになった。
もし書くとすれば、心楽みたいに
「誰かと歩む人生も悪くないかも」と
思えるようになったとき。
そう思えるなら幸せだけど、
一生思えないならそれでもいい。
自分にウソをついてムリヤリ家庭を持つより、
家庭を持たない選択をする方が私自身でいられる。
私がすることは昔も今も同じ。
大好きな物語を書き続けること。
私自身が心から納得する結末を、
登場人物に迎えさせること。
ーーーーーENDーーーーー
⇒他作品
【短編小説】『どんな家路で見る月も』1話完結
【短編小説】『孤独の果てに自由あり』全5話
⇒参考書籍
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