2024年10月20日
【短編小説】『なぜ学校にはお金の授業がないの?(リメイク)』3
⇒【第2話:お金の歴史を知る旅へ】からの続き
【第2話:お金は国家の商品】
<紀元前700年頃:アナトリア地方>
戦乱のアナトリアを統一した某王国には
”エレクト”という通貨が流通していました。
今日は国王と財務大臣との会議の日。
真知はさっそく”女神のパスポート”を使い、
王宮での会議を見せてもらうことにしました。
国王
『国内は安定したが、隣国に軍拡の動きがある。』
『防衛費を調達したいが、良い方法はないか?』
財務大臣
『あります。』
『新たに”100エレクトのコイン”を流通させましょう。』
国王
『なるほど、10エレクトコインだけでは買い物が大変だな。』
財務大臣
『それだけではありません。』
『コインの製造費との差額でさらに利益を出せます。』
真知
「???」
国王
『では安価に作れるコインのデザインを検討する。』
『決まったら招集通知を出す。』
財務大臣
『御意。』
真知
「あの…どういうことでしょう?(汗)」
「セイゾウヒとのサガク?」
国王
『説明不足で失礼した。』
『ここに10エレクトコインがあるだろう?純銀製だ。』
真知
「はい、きれいな絵柄ですよね。」
国王
『実は、これ1枚作る費用は1エレクトなのだ。』
真知
「えぇ?!すごく手が込んでるように見えますよ?」
財務大臣
『鋳造技術は年々発達していますから。』
『それに、作ったコインの価値を決めるのは国王です。』
真知
「王さまが”10エレクト”と言えば…。」
国王
『青銅の粗悪なコインでも10エレクトだ。』
『国民が王家の力を信用する限り。』
真知
「じゃあコイン1枚作るごとに…。」
「国は差額で9エレクト儲かるんですか?」
財務大臣
『そういうことです。』
真知
(そういえば現代で聞いたことある。)
(1万円札を1枚作る費用は数円って…。)
国王
『エン?聞いたことのない通貨だな。』
真知
「な、何でもないです!(汗)」
国王
『そうか。』
『私は戻るが、真知もデザインの案を出してくれぬか?』
真知
「わ、私が?」
国王
『なにぶん多忙でな、協力してくれると助かる。』
真知
「わかりました!」
”お金は国家の1番の商品”
それは真知にとって衝撃でした。
コインを安価でたくさん作るほど
製造費との差額で儲かります。
さらに出回るお金が増えれば、
国民はお金をたくさん持って豊かになるはず。
真知
「そっか!コインをどんどん作ればみんな幸せ!」
真知は浮かれながら
100エレクトコインのデザインを考えました。
そこにとんでもない落とし穴があるなんて
思いもしないまま。
<数ヶ月後:某王国、城下町のパン屋>
真知
「お姉さんこんにちは!」
パン職人
『あら真知ちゃん!これ、いつものパンよ。』
真知
「ありがと!」
「やっぱりお姉さんのパンは大人気だね!」
パン職人
『おかげで商売繫盛よ!』
『けど最近、お客が出すコインの質が気になってね。』
真知
「コインの質?」
パン職人
『ホラ、少し錆びてるでしょ?』
『噂だけど、混ぜものコインも出回ってるんだって。』
真知
「混ぜもの?純銀製だけじゃないの?」
パン職人
『そうらしいの。』
『錆びていても価値は同じだから問題ないけど…。』
『その内、価値が下がるんじゃないかと不安なの。』
真知
(おかしいなぁ…。)
(たくさんお金が出回ったら幸せなはずなのに…。)
パン職人
『だから値上げを考えてるの。』
『パン1個1エレクトから2エレクトへ。』
真知
「だ…大丈夫だよね?」
「みんなお金たくさん持ってるから買えるよね?」
パン職人
『物価高が心配ねぇ…。』
間もなく
某王国と隣国との戦争が始まりました。
序盤は優勢だった某王国ですが、
資源に恵まれた隣国に押され、
さらに多額の戦費がかさみました。
結果、純銀製のコインだけでは足りず、
粗悪なコインが大量に出回りました。
そんな”悪貨”も、国王の権力にかかれば
純銀製と同じ100エレクトになりました。
が、城下町では
コインの価値の低下を恐れた店が
値上げを繰り返しました。
さらに数ヶ月後、パン1個1エレクトから
1000エレクトになっていました…。
⇒【第4話:お金が紙切れになる時】へ続く
この記事へのトラックバックURL
https://fanblogs.jp/tb/12741931
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。
この記事へのトラックバック